その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今はクラシック音楽、美術、映画、本などなどについての個人的覚書

優れた経営実論!: 三枝匡 『ザ・会社改造』 (日本経済新聞社、2016)

2017-06-09 08:00:00 | 


 昨年発刊された三枝氏の経営本。これまでの事業・企業変革シリーズ(『戦略プロフェッショナル』、『経営パワーの危機』、『V字回復の経営』)と同様、ストーリー仕立てで企業変革について論じてます。今回は、筆者が社長を務めたミスミを題材に、事実がそのままナマナマしく描かれている点が今までと違い。一義的にはプロ経営者またはプロ経営者を目指す人向けに書かれているけど、内容はあらゆるリーダーに普遍的に応用できます。

 倒産の危機にあったわけではない状況下での事業トランスフォーメーションの実践が描かれてます。メインテーマは本業復帰、国際進出、長期的コミットメントと人材育成など。読んでいると、次々に胸に刺さるシーンや指摘に突き当たり、自らの至らなさに自省を迫られること多数。理論・知識と実践を結んでくれる優れた経営書です。

 個人的な話ですが、この本に描かれた時期、米国大学院のMBA資格も持つ優秀な友人がミスミ社に転職しました。しかし、理由は明確には話してもらえなかったのっですが、数年で退職。この経営者のもとでやっていくのは相当のタフさがいるのは事実のようです。ミスミに勤めずとも、本を読んでわかった気になることはできても、実践に結び付けること、自ら当事者となるには覚悟と行動が必要です。


【メモ】
 いくつかの気づき・学びの抜粋

■ 戦略:企業の競争優位
 ・「会社が大企業病になると「開発→生産→営業」の連携速度が鈍くなる。顧客要求を社内に戻し、その答えをまた顧客に届けるスピードも遅くなる。このグルグル廻しを競合より迅速に廻す企業は次第に市場で勝っていくが、遅い企業は負けていく《商売の基本サイクル》」(p65)
 ・「改革シナリオの3枚」(p87—90):
   1枚目 現実直視、問題の本質、強烈な反省論、2枚目 改革シナリオ、戦略、計画対策、3枚目 アクションプラン

■ビジネスプラン:組織論と戦略論の一体化、骨太のメインストーリー
 ・「ビジネスプランは数字をまとめる作業が主眼ではない。「戦略ストーリー」が肝要だ。競争相手は誰か。勝ち負けを決めている要素は何か。それに対して自社の強み、弱みは何か、そうした思索を経たうえで、経営リーダーとしての事業戦略は何か。」(p140)

■マネジメント:変革の3つの原動力
 ・強烈な反省論を出発にする戦略・ビジネスプロセス・マインド行動(p318)
 ・「リストラや事業の切り売りを実行した日本企業で、あとに残った社員が見違えるように元気になって、その会社の「戦闘力」が著しく高まったというケースはまず聞かない。・・・日本企業を元気にするポイントは、人減らしの発想ではなく、<いま、そこにいる人々>の目を輝かせる手法を追求すること」(p80)

■リーダーシップ
 ・「切断力」の発揮こそがリーダーシップの要諦
 ・「数字に対する感性が低く、儲けることへのしぶとさが弱かった。・・・理屈は言うが戦略の組み立てが弱い。しかも実行となれば、地に足がついた姿勢で組織を束ねていくリーダーシップにおいて軟弱なものが少なくなかった」(p434)


【目次】
(会社改造1) 「謎解き」で会社の強み・弱みを見抜く
創業40年で売上高500億円だった上場会社をわずか4年で1000億円に伸ばし、世界大不況を乗り越えて2000億円超の企業に変身させた経営者は、あらかじめどんな「謎解き」をして会社改造に乗り出したのか。

(会社改造2) 事業部組織に「戦略志向」を吹き込む
戦略とは何か。それを知らなかった事業部の社員たちは、のたうち回りながら「戦略シナリオ」を描き、売上高150億円の事業部を1000億円超のグローバル事業に成長させた。

(会社改造3) 戦略の誤判断を生む「原価システム」を正す
不正確な原価計算は重大な戦略的誤謬を生みかねない。世界の多くの企業が導入に失敗した「ABC原価計算」を、社員たちは日常的に使う戦略目的のシステムとして確立した。

(会社改造4) 成長を求めて「国際戦略」の勝負に出る
「海外に無関心、本社の海外事業組織はゼロ、戦略もなし」の状態から、13年後に海外社員7000人、海外売上高比率50%に迫る国際事業へ。「世界戦略」はどのようにして構築され、実行されたのか。

(会社改造5) 「買収」を仕掛けて「業態革新」を図る
商社専業40年の歴史に別れを告げ、メーカー買収に踏み切ったミスミ。「事業モデルの弱点」を一挙に解き放つ業態変革を敢行した戦略の裏には、どのような「歴史観」が、そして「ねらい」があったのか。

(会社改造6) 「生産改革」でブレークスルーを起こす
現場の抵抗によって「死の谷」にまで追い込まれかけた生産改革は、何をきっかけにして蘇ったのか。トップと一体になった知的戦いと汗まみれの現場改善は、ミスミの業態に最も適した「世界水準の生産システム」を生み出す。

(会社改造7) 時間と戦う「オペレーション改革」に挑む
以前であれば600人でやっていたはずの仕事を、いまはわずか145人でこなせる体制に。カスタマー・センターで行われた、汗と涙と我慢の「業務改革のステップ」とは何だったのか。時間と戦うオペレーションとは?

(会社改造8) 「元気な組織」をどう設計するか
「組織末端やたら元気」と「戦略的束ね」の両立が会社の理想。だが、日本の経営の実験場として試行錯誤を重ね、高い成長率を生み出した「ミスミ組織モデル」にも大企業病の脅威が迫る。
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