その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、映画、本などなどについての個人的覚書。SINCE 2008

東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.8 『ニーベルングの指環』 第3日 《神々の黄昏》

2017-04-03 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 序夜「ラインの黄金」は聴き逃したのですが、3年越しで遂にリング最終回「神々の黄昏」に辿り着きました。毎年、素晴らしい演奏を聴かせてくれるヤノフスキとN響のコンビ。直前の水曜日にシークフリート役のロバート・ディーン・スミスとブリュンヘルデ役のクリスティアーネ・リボールが交代するとの連絡をもらい一抹の不安はあったのの、今年も緊張感と集中力一杯のパフォーマンスで、リングの締めのくくりに相応しい至高の演奏会でした。

 人間国宝の職人さんのようなヤノフスキですが、今年もN響から筋肉質で引き締まった音を引き出してくれました。「神々の黄昏」は初めて聴くので、比較の対象がないのですが、煽りすぎることなく、かといって抑えているわけでもなく、直球のワーグナー・ワールドでした。更に、毎年恒例のライナー・キュッヒルがゲストコンサートマスターとして引っ張り、弦の迫力、厚みがぐっと増します。欧州演奏帰りのN響は、更にスケール感が出たような。管があれっと思わせるところはあったのですが、休憩を除いて4時間を超える長丁場を気合一杯の気持ちの入った演奏で、ちょっとした「?」は全く気になりませんでした。

 歌手陣では、ハーゲン役アイン・アンガーの地獄からの響きのような迫力あるバスが圧倒的。舞台を完全に支配してました。急遽、代役出演となった2人のうち、ブリュンヒルデのレベッカ・ティームは全く代役とは思えない堂々たる歌唱。逆に、ジークフリートのアーノルド・ベズイエンは、まだこの役に慣れていないのか、終始楽譜を見ながらの歌唱。声量において他の歌手陣に見劣りしたため、重唱場面ではちょっと苦しく、聴いているものもかなりハラハラするところがありました。ただ、ソロ歌唱が中心の第三幕は彼の美声がよく通ってました。それ以外の外国人歌手、日本人歌手、そして合唱陣も堂々たるレベルの高い歌唱で、こんな公演は、欧州でもなかなか聴けないレベルと言ってよいでしょう。

 ステージ奥には、恒例のスクリーンに、岩山、城、川の中など場面場面のイメージ映像が投射されます。賛否両論あるようですが、適度に物語の場面を想起させるツールとして、私は嫌いではありません。

 休憩入れて5時間10分ほど。開演前は、果たしてそんなに長時間、私自身耐えられるか不安があったのですが、長さはほとんど感じなかったです。それだけ、演奏に集中できていたのでしょう。こんな音楽を聴ける自分の幸運にひたすら感謝です。やっとリングを通しで全曲聞き終え、達成感一杯でホールを後にしました。






東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.8
『ニーベルングの指環』 第3日 《神々の黄昏》
(演奏会形式/字幕・映像付)

■日時・会場
2017.4.1 [土] 15:00開演(14:00開場)
東京文化会館 大ホール

■出演
指揮:マレク・ヤノフスキ
ジークフリート:アーノルド・ベズイエン
グンター:マルクス・アイヒェ
ハーゲン:アイン・アンガー
アルベリヒ:トマス・コニエチュニー
ブリュンヒルデ:レベッカ・ティーム
グートルーネ:レジーネ・ハングラー
ヴァルトラウテ:エリーザベト・クールマン
第1のノルン:金子美香
第2のノルン: 秋本悠希
第3のノルン:藤谷佳奈枝
ヴォークリンデ:小川里美
ヴェルグンデ:秋本悠希
フロースヒルデ:金子美香

管弦楽:NHK交響楽団(ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル)
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:トーマス・ラング、宮松重紀
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
映像:田尾下 哲

■曲目
ワーグナー:舞台祝祭劇 『ニーベルングの指環』 第3日 《神々の黄昏》
(全3幕/ドイツ語上演)[上演時間:約5時間30分(休憩2回含む)]


Tokyo-HARUSAI Wagner Series vol.8
"Der Ring des Nibelungen" Dritter Tag 'Götterdämmerung'
(Concert Style / With projected images and subtitles)

[ Date / Place ]
April 1 [Sat] at 15:00
Tokyo Bunka Kaikan Main Hall

[ Cast ]
Conductor: Marek Janowski
Siegfried: Arnold Bezuyen
Gunther: Markus Eiche
Hagen: Ain Anger
Alberich: Tomasz Konieczny
Brünnhilde: Rebecca Teem
Gutrune: Regine Hangler
Waltraute: Elisabeth Kulman
Erste Norn: Mika Kaneko
Zweite Norn: Yuki Akimoto
Dritte Norn: Kanae Fujitani
Woglinde: Satomi Ogawa
Wellgunde: Yuki Akimoto
Flosshilde: Mika Kaneko
Orchestra: NHK Symphony Orchestra, Tokyo
Chorus: Tokyo Opera Singers
Chorus Master: Thomas Lang, Shigeki Miyamatsu
Musical Preparation: Thomas Lausmann
Video: Tetsu Taoshita

[ Program ]
Wagner (1813-83): "Der Ring des Nibelungen" Dritter Tag 'Götterdämmerung'

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