香香部落格

充実した生活が楽しみ

こともあった

2017-07-12 10:40:31 | 康泰旅行團

て漠然とした、きれぎれの断片があるだけで、そんな断片も正しい順序であらわれたのではないと思う。たとえば、わたしは夢の世界で、自分用の大きな石造りの部屋をもっているようだったが、生活用品といったものについては、きわめて不完全な印象しかない。囚人としての拘束がしだいになくなっていくと、いくつかの夢には、ものすごい密林の道を進むなまなましい旅や、風変わりな都市での逗留や、〈大いなる種族〉が妙な恐怖におびえて遠ざかる、黒ぐろとした広大な無窓建築物の廃墟でおこなう探検の様子などがあらわれるようになった。信じられないような速さで進む、何層もの甲板のある巨大な船に乗って、長い航海をしたこともあるし、電気的な反擬力で離陸し、推進する、弾丸状の飛行船に乗って、荒野を旅した。
 広大な暖かい大洋のむこうには、〈大いなる種族〉の別の都市群があった。遙か彼方のある大陸では、〈大いなる種族〉がしのび寄る恐怖から逃れるため主要な精神を未来に送りこんだ後、支配種族として進化することになる、黒い鼻をもつ有翼生物の粗末な村落を目にした。平坦さと繁茂する植物が常に景色の基調をなしていた。丘はすべて低く、ごくわずかに散在しているだけだったが、きまって火山活動の徴候を示していた。
 わたしが目にした動物についてなら、何冊もの本を書くことができる。野生の動物しかいなかった。〈大いなる種族〉の機械化された文明は、遙か昔に家畜を排除しており、食物も植物か人工食品に限られていたからだ。大きな体をした動作ののろい爬虫類が、蒸気を発する湿地帯でのたうったり、濃密な大気中ではばたいたり、海や湖で水を吹きだしたりしていた。こうした爬虫類のなかに、わたしはおぼろげながら、古生物学を通じて馴染深いものになっている――恐龍、翼龍、魚龍、長頸龍といった――多くの爬虫類の古い原型が認められるように思った。鳥類や哺乳類はどこにも見あたらなかった。
 地面や沼沢地には、蛇や蜥蜴《とかげ》や鰐《わに》がかならず群がっている一方、みずみずしい植物のなかでは昆虫がたえず飛びまわっていた。そして海の遙か沖合では、姿をあらわすことのない未知の怪物が、蒸気のたちこめる空に大きな水|飛沫《しぶき》をあげていた。一度わたしは、探照燈を備えた巨大な潜水艦で海面下に連れて行かれ、悍ましいほどの大きさをした生ける恐怖を一瞬目にした。海面下に沈んだ驚くべき都市の廃墟も目にした。海百合、三昧線貝、珊瑚、魚類の宝庫がいたるところにあった。
〈大いなる種族〉の生理、心理、習俗、詳細な歴史について、わたしの夢はきわめて漠然とした情報しか与えてくれなかったので、以下に記す断片の多くは、わたし自身の夢から得たものというよりも、むしろ古い伝説や多くの事例を研究することによって集めたものである。
 もちろん、わたしの読書や調査は、やがて多方面にわたって夢に追いつき、追いこすまでになったので、特定の夢の断片は、あらかじめ詳《つまび》らかにされたり、学びとったことの確認になったりした。このため、わたしの第二の人格

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