香香部落格

充実した生活が楽しみ

さほど遠くないと

2017-05-26 11:21:47 | 康泰旅行團

で暮していたから、訪問者に扉がたたかれるというようなこともほとんどなかった。
 しかしいまでは、扉のまわりだけでなく、階上階下を問わず窓のまわりにも、夜ともなればしきりとまさぐるような音がするようになって、わたしたちを悩ませたのだ。月が照りはえる書斎の窓が、ぼんやりした大きな体でふさがれ、暗くなったように思われたこともあれば、ころから、羽ばたきや唸《うな》りが聞こえるような気がしたこともあった。そのたびに調べてはみるのだが、結局何もわからず、わたしたちはやがて、こうした出来事がオランダの教会墓地で聞いたように思う、あの遠くかすかな吠え声をいまだに耳にひびかせる、想像力のせいだと思いはじめるようになった。あの翡翠の魔よけはわたしたちの博物館の壁龕《へきがん》に置かれており、ときとしてわたしたちはそのまえで、妙に馥郁《ふくいく》たる香を放つ蝋燭《ろうそく》に火を点《とも》した。わたしたちは魔《ま》よけの特性、死者の霊魂と魔よけが象徴するものとの関係について、アルハザードの『ネクロノミコン』を読みふけったが、読むほどに、不安な思いがかきたてられていった。
 そして恐怖が訪れたのだ。
 一九――年九月二十四日の夜、わたしは自室の扉がたたかれる音を耳にした。セント・ジョンだと思い、入るようにいったが、それに答えたのは甲高い笑い声だけだった。廊下には誰もいなかった。セント・ジョンを眠りから起こすと、まったく何も知らないといい、わたしとおなじように苦にするようになった。荒地をわたって聞こえるあの遠くかすかな吠え声が、疑う余地のない恐ろしい現実となったのは、その夜のことだった。
 四日後、わたしたち二人が秘密の博物館にいたところ、書斎の隠された階段に通じるただ一つの扉から、用心深くひっかいているような低い音が聞こえてきた。このためにわたしたちの不安は二つに分かたれた。未知のものを恐れるのとは別に、薄気味悪い収集品が見つけだされるかもしれないという不安を、常に心に抱いていたためだった。わたしたちは灯をすべて消すと、扉に近づき、いきなり開け放った。その瞬間、不可解な風がどっと吹きこみ、それとともに、はるか遠くへ退いていくかのような、妙に渾然《こんぜん》とした、衣《きぬ》ずれの音、忍び笑い、明瞭な声を耳にした。自分たちが狂ってしまったのか、夢を見ているのか、それとも正気なのか、わたしたちはそういう判断をしようともしなかった。どうやら肉体から遊離したものにちがいないその声が、疑いの余地なくオランダ語で話していたことを、暗澹《あんたん》たる不安をひしひしと感じながら思い知っただけだった。
 それからのわたしたちは、つのりゆく恐怖と眩惑《げんわく》のうちに日々を送った。わたしたちはもっぱら、異常な興奮にみちるこの生活によって、二人ながらにいずれ発狂してしまうのだという臆測をたくましくしていたが、ときとしてこの臆測は、わたしたちを何かしのびよる凄絶《せいぜつ》な運命の犠牲者にしたてあげ、わたしたちを一層楽しませることもあった。いまでは異様な霊の実体化が数えきれないほど頻発するようになっていた。わたしたちの寂しい家は、見たところ、わたしたちには推測することもできない性質を備えた、何か悪意あるものの存在に満ち、夜ごとあの悪魔めいた吠え声が、風の吹きすさぶ荒地をわたって聞こえ、しかも着実に高まっていくのだった。十月二十九日、わたしたちは書斎の窓の下のやわらかい地面に、まったく描写しようもないひとつづきの足跡を見いだした。いままでになかったほど大挙して出没するようになっている、巨大な蝙蝠の群と同様、不可解このうえもないものだった。
 恐怖が絶頂に達したのは十一月十八日のことだった。闇のなか、陰気な鉄道の駅から家にむかっていたセント・ジョンが、何か恐ろしい食肉性の獣に襲われ、ずたずたに引き裂かれてしまったのだ。セント・ジョンの悲鳴は家にまで届き、わた

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ら鍵を開けることにし

2017-05-10 10:49:33 | 康泰旅行團

をかいで、ロザリオをまさぐりながら話しあっていた。どうやらわたしの雇った浮浪者が、二回目に氷を運びこんですぐに、目をむいて悲鳴をあげながら逃げだし實德金融集團たらしい。いらない好奇心をおこしたための結果だろう。もちろん浮浪者はドアに鍵をかけるゆとりすらなかったが、いまは、おそらく内側から、しっかりと鍵がかけられていた。部屋のなかからは、何ともいいようのない、水がぽたっぽたっとしたたっているような音以外、何の物音も聞こえなかった。わたしはエレーロ夫人や職工と簡単に話をしたあと、魂も砕かれるような恐怖にさいなまれていたが、ドアを押し破ってはどうかと助言した。しかしエレーロ夫人は針金のようなものをつかい、外かた。わたしたちはまえもってその階のすべての部屋のドアを開け、窓もすべて開け放った。そしてハンカチで鼻をふさぎ、昼さがりの暖かな陽光がさしこんでいる呪わしい南面の部屋へ、恐るおそる入っていった。
 ドアの開いた浴室から広間まで、そしてそこから書き物机まで、何かぬらぬらした黒っぽいものが跡をひいていて、書き物机のあたりではそれがたまっていた。机にある一枚の紙には、盲滅法のぞっとするような鉛筆書きで何かがなぐり書きされていて、その紙はさながらあわてて書いた最後の言葉を鉤爪ででもこすったかのように、忌わしい汚れが付着していた。そして黒っぽいぬらぬらするものの跡は寝椅子にまでつづいていて、そこでふっつりととぎれていた。
 寝椅子に横たわっていたものについては、わたしはここでいうわけにはいかないし、いうつもりもない。しかしわたしは汚物の付着した紙にマッチで火をつけて燃やすまえに、震えながらも何が記してあるかを読みとおした。エレーロ夫人とふたりの職工がこの地獄めいた場所から気も狂わんばかりに飛びだし、近くの交番で支離滅裂の話を口走っているあいだ、わたしが恐怖に駆られながら読みとおしたものといえば……。明るい日差のなか、往来の激しい十四丁目の通りからうるさく聞こえる車の音を耳にしながらでは、その紙に記されていた吐き気を催す言葉はほとんど信じられないもののように思われたが、しかしわたしがそのときその言葉を信じ實德こんだことは素直に認めておこう。いまもそれを信じているかとたずねられたら、正直いって、わたしには何とも答えようがない。深く考えこまないほうがいいものもあるのだ。いまのわたしにいえるのは、アンモニアの臭が大嫌いで、異常な冷気を感じると気が遠くなってしまうということだけだ。
 あの不快な紙にはこんななぐり書きが記してあった。
 
[#ここから2字下げ]
 これでおしまいだ。もう氷もない。男がのぞきこんで逃げだしてしまった。刻一刻と暖かくなり、組織はもうもたない。きみもわかっているだろう。器官が活動を停止したあとで保存される肉体、意志、神経について、わたしがいったことをおぼえているだろう。これは素晴しい理論だが、無限につづけることはできないのだ。予見しえない劣化が着実に進行しつづける。トレス博士はこのことを知り、ショックのあまり亡くなってしまった。自分のなさねばならないことに耐えられなかったのだ。わたしの才能をおしみ、わたしを生かすためには、わたしを奇妙な暗い場所に入れなければならなかった。しかし器官がふたたび活動を開始することは絶対にありえない。わたしがやったように人工保存法を用いなけれ楊海成ばならない。もうわかっているだろうが、わたしは十八年まえに死んでいるのだ。
[#ここで字下げ終わり]

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いる時代は終わ

2017-04-13 12:14:41 | 康泰旅行團


 やがてわれわれのもとへ別の名前を告げるささやきが伝わりはじめた。その名のささやきはしだいに明瞭になり、その子の誕生の日、そのささやきは大きな叫びとなったyou beauty 陷阱。〈神をほふる者〉ベ

ルガリオンがついにあらわれたのである。
 こうして出来事は歩調を早め、恐るべき対決めざして、天の書のページがぼやけて読めぬほどの早さで進んだ。そして人々が世界が創造された日として祝う日に、力の石がベルガリオンに引き

わたされた。かれの手がそれにふれた刹那、天の書は大いなる光にあふれ、ベルガリオンの名がもっとも遠くの星からひびいてきた。
 われわれはベルガリオンが力の石を持ってマロリーへ向かうのを感じ、トラクの長い眠りが浅くなりだしたことを感じた。そしてついにあの恐るべき夜がやってきた。なすすべもなくわれわれ

が見守る中、天の書のぶあついページが目にもとまらぬ速度でめくれた。それが止まったとき、われわれは〝トラクは殺される〟という恐怖の一行を読みとった。天の書はおののき、すべての創

造物のすべての光が消えた。そのぞっとするような闇と静寂の瞬間、第四の時代は終わり、第五の時代がはじまった。
 第五の時代がはじまったとき、われわれは天の書の中にひとつの謎を発見した。以前は、いっさいがベルガリオンとトラクの対決へ向けて動いていたが、いまやものごとは別の対決へ向けて動

いていたのである。星々を見ると、運命は選ばれたが、最後の遭遇におけるその他の局面はまだ未選択であるという兆しがあらわれていた。われわれはそれらの存在の動きを感Amway傳銷じることができた

が、それらがだれなのか、なんなのかはわからなかった。偉大なる書物のページが暗く、あいまいだったからである。だが、われわれは闇の衣をまといベールをつけた存在を感じた。それは人々

の営みの中をすりぬけていった。月がはっきりとわれわれに助言したのは、その暗い存在が女であるということだった。
 天の書をおおう大いなる混乱のただ中で、われわれはひとつのものを見た。人間の時代は、ひとつの時代ごとに短くなり、ふたつの運命の対決を示す〈出来事〉がしだいしだいに近くまでやっ

てきているということである。のんびりと考えてったのだ。いまやわれわれは最後の〈出来事〉をうかつに見過ごすことのないように、急がねばならない。
 その最後の〈出来事〉の参加者が、定められたときに約束の場所にそろってあらわれるように、われわれはかれらを刺激し、もしくはあざむかねばならないと判断した。
 そこでわれわれは〈選択をしなければならぬ女〉の影を、ベールをかぶった闇の存在と、〈神をほふる者〉ベルガリオンのもとへ送った。こうして彼女はわれわれの選んだ場所へ最終的に通じ

る道に、ふたりを配した。
 これでわれわれの實德用意はすべて終わり、果たされるべきことを残すのみとなった。われわれはこの〈出来事〉ですべてが終わることを知っていた。天地の分裂はあまりにも長きにわたっていた



希薄なひんやりした空中に、濃い緑色の葉をびっしりつけて樹脂を隅々にゆきわたらせた木木の匂いが濃厚にたちこめていた。雪原を行く一行の頭上にまばゆい日差しがふりそそぎ、急な水音

が絶えまなくひびいている。岩だらけの川床を騒がしくくだっていく水が、何リーグも下方

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ゆれて行くあいだ

2017-03-16 11:12:38 | 康泰旅行團

「それはすこし危険だぞ、リセル」ベルガラスが反対した。「あの荷馬車の馬がおどろきで

もしたら、おまえさんは鞍からふりおとされて荷馬車の下敷になってしまう」
「わたしが落馬するのをこれまでごらんになったことがありまして、長老? ご心配なく、

わたしFoodwise紅酒なら絶対だいじょうぶですわ」ヴェルヴェットは荷馬車の馬に自分の馬を近づけると

、手綱をつかんだ。ゆっくりと歩きだし、だんだんスピードをあげていった。ポルガラが荷

馬車のわきを走り、セ・ネドラは集中力をあらわすしわを眉間にちょっぴりよせて、首に鎖

でさげた護符を片手でつかんだ。
「どう?」ポルガラがたずねた。
「いっぱい話し声が聞こえるわ、レディ・ポルガラ」小柄な王妃は答えた。「あっちにはす

ごくたくさん人間がいるの。ちょっと待って、ナハズをつきとめたような気がするわ。そう

簡単に忘れられる声じゃないもの」眉間のしわが深まった。「ウルヴォンの将軍たちに話し

かけているところらしいわ。猟犬たちを放したところを見ると、象たちがやってくるのを知

っているんだわ」
「またウルヴォンたちのところへ戻れるかね?」ベルガラスがたずねた。
「ええ、できると思いますわ。いったんだれかを見つければ、すぐまたウルヴォンをつきと

められるんです」
「いいぞ。ウルヴォンがすぐ前方優纖美容にいることをダーシヴァ軍の将軍たちが知っているかどう

かみきわめてくれんか。戦いがはじまりそうなら、どこで戦闘開始になるか、正確な場所を

知りたいのだ」
 セ・ネドラは護符を固くにぎりしめたまま、わずかに体の向きを変え、目をとじた。少し

してから、目を開き、やきもきしたように言った。「静かにしててくれないかしら」
「だれが?」シルクがきいた。
「象使いたちよ。おばあさんたちよりもっとおしゃべりなの。待って。ああわかった。つか

まえたわ」荷馬車がでこぼこ道を、セ・ネドラはしばらく耳をかたむけた

。「ダーシヴァの士官たちはすごく心配してるわ」と報告した。「ウルヴォンの軍が山のど

こかにいることは知っているけれど、正確な位置を知らないのよ。偵察兵もひとりも戻って

こなかったの」
「たぶん猟犬のえじきになったんだな」とシルク。
「ダーシヴァ軍はなにを計画している?」ベルガラスがたずねた。
「まだ決めかねてますわ。慎重にこのまま進んで、もっと偵察兵を送り出すつもりね」
「なるほど。ではナハズに戻れるかどうかやってみてくれ」
「やってみますわ」セ・ネドラはまた目をつぶった。「まあ、ひどい!」すぐに彼女は叫ん

だ。
「どうしたの、ディア?」ポルガラがたずねた。
楊婉儀幼稚園 拖數カランド人が細い峡谷を発見したのよ。そこへ象たち

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るのではないでし

2017-02-23 10:48:48 | 康泰旅行團

「せいぜい二日です、ご主人さま」
「では行くがよい。象たちをわたしの将軍たちの指揮下においたら、わたしの後を追ってケルにくるのだ。わたしはヘミルへ戻り、オトラスとベルガリオンのがきを連れてくる。予言者たちの聖なる山の陰でおまえを待っている」
「ウルヴォンが甲狀腺手術魔神のナハズとその手下どもを連れていたというのは本当ですか、ご主人さま?」
「連れていたよ。だが、もはやそれはわたしたちのおそれるところではない。悪魔を呼びおこすのはさほど困難ではないし、地獄の魔神はナハズひとりではないからね。魔神のモージャがかれの家来とともにわたしたちに加勢することに同意したのだよ。モージャとナハズのあいだには昔から敵意がくすぶっているのさ。かれらはいまや戦いあっているよ、並の兵力など物の数ではない力でね」
「ご主人さま!」ナラダスは叫んだ。「まさかそのような悪魔とつきあっておられょうね!」
「地獄の大王自身とでもつきあうさ、〈もはや存在しない場所〉で勝利をおさめるためならね。モージャは逃亡を装ってナハズを戦場からおびきだした。おまえの獣たちをそこへ連れておゆき。そうすればウルヴォンの軍勢を蹴散らせるだろう。ナハズとかれの手下どもはそこにいないから、おまえの足をひっぱることもない。だから、ありったけのスピードでケルへくるのだよ」
「はい、ご主人さま」ナダラスはおとなしく約束した。
 ガリオンの中に怒りがゆっくりと蓄積されていた。息子の誘拐者はかれから数秒と離れぬ場所にいる。かれ太子鐘錶の牙がその体に食い込む前に、ザンドラマスが意志の力を集められるわけがないことは明白だ。たとえ、集められても手遅れだろう。ガリオンはぞっとするような歯をむきだして、首筋の毛をさかだて這うようにして一度に一歩ずつ、そろそろと近づいていった。かれは血に飢えていた。憎悪が頭の中で火のように燃えさかっている。おそるべき期待にふるえながら、かれは筋肉に力をこめた。低いうなり声が喉に充満した。
 結局、ガリオンを現実に引き戻したのはそのうなり声だった。かれの頭をまひさせていた思考は、狼の思考だった。狼は目前のことしか考えない。本当にザンドラマスが二、三歩で飛びかかれそうなところに立っているなら、悲鳴のこだまが近くの丘からはねかえってくる前に、肉を裂き、彼女の立っている道端の草むらに血しぶきをとばすこともできるだろう。しかし、白目のナラダスの前に立っている姿が実体のない投影にすぎないとしたら、湾曲したかれの牙は空をかみくだき、ダーシヴァの魔女はアシャバでやったように、再度かれの復讐から逃れることになる。
 ザンドラマスを警戒させたのは、ガリオンの頭の中で燃えていた思考だったのかもしれない。あるいは、ポルガラがしばしばやったように、ザンドラマスもまた意識で周囲を調べ、別の意識の存在をつきとめたのかもしれない。それがなんだったにせよ、魔女は突然ぎくりとして低い声をあげた。「あぶない!」白目の手下にすばやく言った。そのあと、ザンドラマスは冷酷で陰気な微高麗蔘笑を浮かべた。「だがわたしはアローンの魔術に動じない形態を持っているのだよ」ザンドラマスは身をひきしめた。と、姿がぼやけて、とほうもなく大きなドラゴンの姿が突然すくみあがった象たちの前に出現した。ドラゴンはばかでかい翼を広げて、湿った夜気の中へ舞い上がり、甲高いうなり声と赤黒い火で闇を満たした。
「ポルおばさん!」ガリオンの思念が飛び出した。「ドラゴンがくる!」
「なんですって?」ポルガラの思念が返ってきた。
「ザンドラマスが変身した! そっちへ飛んでいくんだ!」
「ここへ戻ってくるのよ!」ポルガラはてきぱきと命令した。「いますぐに!」

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