Carry on!! ~旅のお供に音楽を~

アラカン過ぎてクラシックやオペラの旅が何よりの楽しみです。旅先で街の人たちと音楽談義をしたり、暮らすように旅したいです。

私のオペラノート38

2015年07月29日 | オペラ

            《期待を込めて新国立の『蝶々夫人』を観る》

 オペラを観はじめてから2014年で3年と少し経っていたころですが、やはり正直言うと日本人によるオペラ上演にはどうしても抵抗感というか違和感を覚えてしまって、知人の根っからのオペラファンの意見などを聞いて日本人キャストの出ている作品をテレビで観たり、新国立にも足を運んでみましたがやはり納得のいくものとは出逢えませんでした。タイトルロールほか4人ぐらいは外国人キャストで演じられるわけですが、私の中にはアルフレッドと名乗ってもどうしても中村さんにしか見えないわけで・・・・ビジュアル的なことはハナから承知していても、偏見といわれようがあのヨーロッパや外国の層の厚い歌い手たちの豊かな声と演技を観てきたのでどうしてもこの違和感は拭い去れません。それでも、日本人歌手の中に”私のお気に入り”が出現することを願ってこの時も足を運ぶことにしたわけです。2015年の今でも決してそれを諦めているわけではありません。そして、これなら日本人が舞台のオペラなのだからいけるのではないか、と出かけたのが『蝶々夫人』でした。

                 

            

               ャストは2011年の歌手たちです

 

          ☆2014年2月8日(土)開演14:00 新国立歌劇場

          ☆プッチーニ 『蝶々夫人』

          ☆出演 蝶々夫人: アレクシア・ヴルガリドゥ

              ピンカートン: ミハイル・アガホノフ

              シャープレス: 甲斐栄次郎

              スズキ: 大林智子

              ゴロー: 内山信吾

              ヤマドリ:小林由樹

          ☆指揮 ケリ=リン・ウィルソン

                ☆演出 栗山民也

          ☆演奏 東京交響楽団

                               

          ☆オペラ難易度 C (音楽評論家黒田恭一さんの著書に

               よるものです)

          ☆おすすめ度 悲 中 (音楽評論家 加藤浩子さんの著書

            によるものです)

 

 まずはこれも逆に突っ込まれそうな蝶々さんが外国人なのはどうなのか?と言われそうですが、2014年の上演の際のヴルガリドゥは細面でかつらもよく似合い、それほど違和感はなく聴くことができました。それと同時に脇役で重要な役どころのスズキ(何もカタカナにしなくても鈴木さんでいいのに)を歌った大林智子さんは声量的にもたっぷりとしていて(もっともこの日は最前列だったのにオーケストラに負けていなかったということで満足して聴いた歌手のひとりでした)よかったと思います。なぜこういう人たちが海外でもっと歌うことに挑戦しないのか不思議でなりません。ま、ともかく、この分だときょうはいけるかも、と思って観始めたのですが、却って日本人が演じる日本人がパッとしなかったのです。これはどういうことなのかよくわかりませんが、やはりオペラという表現方法は日本人の文化ではなく、無理があるということなのでしょうか。

 蝶々夫人役のヴァルガリドフは初日こそ体調が悪く降板したものの、私が観劇した千秋楽にはのびやかで優しいソプラノの響きを堪能させてくれました。第一幕目では少し声のインパクトが弱い気がしましたが(やはり、この役は日本人で観たほうがよかったかも・・・なんて一瞬後悔したかも)、声の強弱にメリハリがついてきて,その心中を表現するのがとても自然で(つまり、自分の声をコントロールしたり自己分析が出来る)smartな歌手だと思い、中盤ぐらいからは(やはりソプラノは外国人じゃなくてはね)という風に変わってきてしまいました。素人はこれだから大変なのです。常に混乱し自分を納得させつつ観ているのです。で、ヴァルガリドフはヨーロッパでも同役で成功を収めているそうですので実力はあるのでしょうね。

 だからこそ言いたいのです。いつまでも海外からのゲスト頼みではなく、海外で鍛えてきた日本人歌手がもっと多ければ蝶々さんの役はすんなりと日本人が歌えるのに、と私はいつも日本人歌手に期待を込めて「海外に挑戦してください!」と思っています。とのかくこの日はスズキ役の大友さんををのぞけばやはり細かいことですが、日本人の動きがちょこまかし過ぎてプッチーニが書いたオペラにはそぐわない感が強くて困りました。イタリア語って結構わからないようで上手下手が判りますからね。それでも、新国立の合唱団は世界の歌劇場の中でもとびぬけてうまいと、そしてプログラムはとてもよく編集されていて読みやすい(それはそうです、日本語ですからね)とそれは強く思ったのでした。


             

             アレクシア・ヴルガリドゥはうまく日本人になっていました 


 2011年の公演の際の動画がアップされていますので、新国立でのオペラ鑑賞を決める手掛かりにしてみてください。どこか一か所でも日本人の日頃の努力が感じられれば、あとあと日本でもオペラを存分に楽しめる日が来るかもしれませんから。https://www.youtube.com/watch?v=H2Yy2pPdDhQ

 さて、次はピンカートンですが予習で観たDVDはMET版ですのでこれは比較しても仕方がないのですが演出力で圧倒されてしまい、ピンカートンの役どころはどうでもよかったものでした。その役を昨今世界中の歌劇場を席巻しているロシア人ソリストの中のひとり、ミハイル・アガホノフが務めていましたが、強烈な印象はなかったもののやはりロシアオペラ界の底力は感じました。ふくよかな体型ではありましたが、繊細な耳なじみの良いテノールでオーケストラをスルっと声が飛び越えてきました。虫が良すぎるピンカートンというよりは人が良すぎて人の悲しみに気付かないそんな男性かなと。MET版のM・ジョルダーニよりは雰囲気は良かったと思って観てきました。

                   

               ピンカートン役のミハイル・アガホノフ

 この日の演奏は聴き慣れてきて実力を高めているな、と思っていた東フィルではなく東京交響楽団でした。日本のオーケストラも来日する有名指揮者達に鍛えられて数年前より弦の音一つとってもだいぶ力強くなってきたと私は思っています。この日も聴かせどころを女性指揮者のリン・ウィルソンがうまく引き出していて目をつぶって聴いていれば私の耳にはウィーンで聴いているのとそれほど差がないかと・・・とそこまで言うと何様?な感じですが、正直最近の日本のオーケストラは結構いい線まで来ているのではとひとり思っております。演出も新国立の演目の中では一番よかったと思っています。舞台の色彩が美しかったです。何しろ、回りすぎた『セヴィリア』で懲りていますからシンプルな舞台設定は大歓迎で落ち着いて観ていられます。とまぁ、わたしがなんだかんだと御託を並べても、新国立には結構な人数の観客が押し寄せているわけで私と同じようにソリストは外国人でないと、どうのこうのという人はそもそもここにはいないのでしょう、と思った次第です。最後にもうひとつ、どう考えてもプッチーニは日本と中国を混同している曲を書いているのでそこも違和感の原因の一つになっているのかもしれませんね。

 ☆こんなたよりのないオペラノートではなく新国立劇場のプログラムにも「プッチーニヒロインの背景~プッチーニとその妻、という解説を寄せている音楽評論家加藤浩子さんのブログはこちらから。http://plaza.rakuten.co.jp/casahiroko/

 

  


私のオペラノート37

2015年07月21日 | オペラ

             《パリ・オペラ座で『清教徒』を観る》

 毎度おなじみの言訳けからスタートです。リアルタイムでのオペラノートづくりができないのは、Liveオペラを観ることになってから「これは記録としてかいておかねば、もったいないし記憶がうすれてしまう!」と思い、それから記憶をさかのぼって『私のオペラノート』を書くことになったためなのですが、それにしてもなかなか2015年の今にたどり着けないので自分としても焦り始めています。ですが、とにかくひとつづつ記録してゆこうと思います。5年日記をつけているわがつれ合いのその”日記”が記憶の助けとなっていつもこのオペラノートは書かれています。(トホホ・・・)

 その久々のオペラノートに登場するのは大好きなバリトン歌手M・クヴィエチェンが登場する『清教徒』ですが、これはまず、冬のパリに旅しようという話になった時に真っ先にやるべきこととして『パリ・オペラ座』に行って観てみたい!!ということから予定を立て始めました。プログラムを探していてどうしても一度は行ってみたかったあの有名な『ガルニエ宮』のほうのオペラ座の公演には残念ながら観たい演目がなかったので、『パリ・バスティーユ』でのバレエ公演『眠れる森の美女』とこの『清教徒』を自分たちでチケットを予約し、数年ぶりのパリ訪問となりました。あーオペラの話までが長いですね~!!

      ☆2013年12月17日(火)開演 19:30 パリ・バスティーユ

      ☆ベリーニ 『清教徒(LES PURITAINS)』

      ☆出演 (正しい読み方がわからない歌手が多いので当日のキャスト表そのまま記述)

            Elvira: Maria Agresta

                            Lord Arturo Talbot: Rene Barbera

                            Sir Ricardo Fortb: Mariusz Kwiecien (頼みの綱はこの人、クヴィエチェン)

                            Seu Bruno Roberton: Luca Lombardo

      ☆指揮 M・マリオッティ (ようやく聴けました!!若手なんばー1)

      ☆演出 L・ペリー (おしゃれ度No.1!!)

      ☆演奏 ORCHESTRE ET CHOEUR DE L'OPERA

                 ☆オペラ難易度 C  黒田恭一さんの著書『オペラへの招待』には入っていません。

       同じベリーニの『ノルマ』と同様の難易度かと自分で観て判断しました。

       参考(予習したDVDは2001年版リセウ劇場でのE・グルヴェローバ主演のものです)

 

               

              パリ版のプログラムですが例によって読めないところが多い…です


 スキャンが使い物にならないので手元にある資料をデジカメに収めながら記事を書くということをやっておりますが、それでも自分が現地のWebサイトではじめて予約したチケットを当日バスティーユの劇場のチケットブースで本券に引き換えたときは本当にうれしかった覚えがあります。なかなか劇場で発券されるチケットで入場することがなかったもので、その劇場らしさがあることはそこからこだわりたいと日ごろから思っておりました。自分たちだけでオペラを観に行きたいと思う方々にはお役に立つ情報かもしれませんので、後から余裕がありましたらバスティーユにたどり着くまでの観光情報なども書いてみたいと思いますが、まずは『オペラノート』からでしょう。

 DVDで予習していた『清教徒』はコスチュームもので初めにグルヴェローバありき、の解りやすい演出というかハイダーの指揮も歌手の呼吸にぴったりのお手本的なものでした。ですから、あらすじを意識的に追わなくても内容は理解していたつもりです。そのうえ『プロヴァンス音楽祭』の『椿姫』の演出でも有名になったように、ロラン・ペリーの舞台というのはシンプルな美しさというのでしょうか、無駄なものを極力はぎとって歌の力で観ている人の想像力を掻き立てていくような、素人にとってはやや高度なものかと思うので気を抜くとあきらめて眠気との戦いになりかねないので、ひたすらそのエッフェル塔のような美しい鉄骨の建物ごしに展開される歌手たちの動きに目を凝らして見つめました。衣装だけは清教徒がすぐイメージできるものでしたので、歌にさえ集中していれば何とか聴きどころを逃さずに観ていられました。


                           

          少し無機質な印象のある鉄骨だけの舞台ですがなぜか引き込まれました

 

 私はどちらかというと、『狂乱の場』というのがあるようなオペラは苦手なほうですが、このオペラの観どころは何といってもエルヴィーラが第2幕目に歌う『おお、教会に参りましょう』だと思いますが、というのはあまりにもグルヴェローバの歌唱が美しくて拍手が鳴りやまなかったのを覚えているのですごく期待していたので、M・アグレスタがそれほどヒステリックではなく抑え気味に歌っているようで、これはどうかな・・・と思っていたのですが、やはりパリに出演するぐらの歌手は半端な実力ではありませんでした。本当にじわじわと迫りくる共感、感動はなかなか印象的な歌唱だったと思いました。 もちろん、唯一今回のプロダクションで名前の認識があったクヴィエチェンは申し分のない安定した歌唱で、絶対裏切らないと大満足でしたが、もう一人の主役 アルトゥーロ役のRene Barberaに関しては全く予備知識なくパリに行ってしまいましたので、毎度のことながら付け焼刃でこのオペラノートのために参考資料としてHPを載せておきます。声の印象がなかったのは彼の声が良くなかったのではなく、エルヴィーラとリッカルドを追いかけるのに精いっぱいだったということです。いずれにしても、ベリーニの音楽はどのフレーズも美しい、という単純な言葉しかかけないのが申し訳ないぐらい美しさで埋め尽くされているので、もし内容がわからないからベリーのオペラは観ないという人も、思い切ってその場に行って旋律に身を埋めてみてください、ということは私にも言えますね。http://renebarbera.com/

 

 

        

             2014年にオペラビューイングで上映されました

 この美しさ満点のオペラのもう一人の立役者は後から気づいたので大きな声では言えませんでしたが、指揮者のマリオッティでした。2013年当時は殆ど聞き覚えのない指揮者だったのですが、その前に一度ここかの劇場で聴いたことがある指揮者だというぐらいのあいまいな認識で失礼なことをしておりました。だいぶ時間がたってからオペラ講座やFacebookなどでロッシーニ音楽祭のことを知り、そこでマリオッティがどのような人なのかを知るにつけ、あぁパリに行ったときもっと指揮者に注目して聴くべきだったなぁ、という反省と、目の付け所が一つ増えた喜びも感じたのでこれからのオペラ鑑賞がますます楽しみになったと思いました。そして2013年から二年がたった頃、その喜びはほホンマモンになるのですが・・・・?

              

            ペーザロでロッシーニを聴きながら育ったというマリオッティです


 余談ながらパリでの滞在先は初めてインターネットで航空券と抱き合わせて予約したホテルレジーナでしたが、そこは映画『ボーン・クレマシー』などのボーンシリーズでM・ディモンが派手に打ち合いをしたりロケをしたホテルだそうで、日中はわざわざ日本のファンが写真を撮りに来たり、「道理で安かったわけだわ」というのが外装工事まっただ中でしたので、その優美らしい外観はすっかり足場でおおわれ、目の前にあるジャンヌ・ダルク像も極まりが悪そうなぐらいの環境でした。ただ、地下鉄のアクセスも良くクリスマスマーケットのあるシャンゼリゼ大通りまでも歩いて行ける距離感でしたので、少し治安なりが落ち着いたらならばまた行ってみたい場所ではあります。

 同様にパリ・バスティーユ劇場は地下鉄の『バスティーユ』駅の真上にありとてもアクセスが良く、観客も普段着過ぎる格好で仕事帰りにオペラみたいな気楽な感じで荷物を座席前にどさっと置いたりして来ています。周辺の環境は決して良くなかったような、落書きだらけだったりパリ全体もそうでしたが少し汚れていたような印象でした。ヨーロッパ全体は少し経済問題の影響で環境まで目が行き届かなくなっているのかもしれないと思ったりしたパリ旅でした。

 一方でモンマルトルはスリが多い、とか脅かされて恐る恐る知り合いのお薦めのレストランに食事に行ったのですが、思ったよりは怪しげな人はおりませんでおいしく楽しい和食レストランで過ごしてくることができました。このレストランは日本から予約が取れないとかで、世界各地で大活躍されている枝國シェフがオーナーを務める『技魯技魯(ギロギロ)』は舌の肥えたパリっ子で満席でした。ただし半年先まで予約でいっぱいとか言われますが、だめもとで予約してみてください。それなりの価値あり大満足請け合いです。http://www.guiloguilo.com/


           

              パリの地下鉄モンマルトルから歩いて4,5分ぐらいにあります


 ということでオペラノートのついでに以前に書いていた『寄り道』の内容までしるしてみました。このあと夏休みの間にできる限りこのオペラノートを現在の時間2015年まで近づけることを目標にまた書いていこうと思います。パリの『技魯技魯』は口コミも上々のようです。

 

☆私が見習いたいオペラノートの達人のお話はこちらからhttp://provenzailmar.blog18.fc2.com/


    

※2019年9月情報の間違いなど少し手直ししました。