記念式の夜に

去年の記念式は

見慣れない土地の山の中の

会館を探し

山道を走っているうち

車ごと崖からずり落ちてしまった。

今年も

出席する気持ちはなかったけど

車の中にスーツだけ入れていた。


夜昼の感覚のない生活をし

ほとんど記念式から

とおざかった。

満月を見ると二千年前の

沈黙の音が聞こえてくるようだ。



一時間前もスーツをきて

ゆくかどうか迷っていた。

満月から吸い込まれる

月の引力を鼓膜に感じた。


旅先の会場に15分前に到着

半分も集まっていない。

読者から送られた新しい

ネズミ色の英語の聖書だけもって

座った。

数人が形式のあいさつにきた。

旅のもので…とはぐらかす。

すると目の前にフィリピンからきた

美しい姉妹とビコル語を話す姉妹が

いたのでタガログ語であいさつし

もっていた英語の歌をコピーして

もらった。

話し手は、それぞれの聖句がどんな役割かほとんど認識をしめさない老人だった。

幸い話してはパンとぶどう酒がまわる

間一切はなさなかった。


パンとぶどう酒がまわったとき

強烈な力で

二千年前にイエスの身体が砕かれ

血が飛び散り

その残骸が二千年の空間を経て

自分たちの時代に飛び散ってきたような

映像がうかんだ。

きがついたのは

イエスが、愛があったとか

奇跡をしたとかどんな人格だったかとか

実はどうでもよかったんだと

気がついた。

イエスが砕かれること

そのことのみが重要だと

イエスが砕かれたこたとは

二千年たってもなんの隔たりがないこと

どんな宗教代弁者も意味がないことなど

感じた。


祈りが終わり

先ほどのフィリピンの姉妹にお礼を

いいにいくと

フィリピンの姉妹は目を

つむって心から泣いていた。

その姿に響いた。


まわりのお祭り騒ぎのかんじの日本人が

何をしているかわからない人にみえた。


久しぶり味わう宗教体験だ。

さっと集会場所をあとにした。

誰もあとを追わなかった。