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人生激情1287(話術)

2011-06-29 07:17:47 | Weblog
 今の若い人は知らないかもしれないが、一昔前のNHKに
人気アナンサーで、相手の話を聞き出す名人がいた。
高橋敬三、宮田輝は今も伝説に残るNHKの名アナンサーだった。
懐古番組でちらりとお二人の顔が通り過ぎた。
宮田輝は「三つの歌」「素人のど自慢」、高橋敬三は「話の泉」「ジエスチャー」
さらに、両者とも紅白歌合戦のメーン司会者の経験も数回あったはずだ。
お二人の特徴は、相手の話を誘導し、あいづちの打ち方が非常にうまいことだ。
 「素人のど自慢」での、宮田輝の場合はたとえばこんな風にだ。
「おばあちゃん、どちらからおいでですか?」
「はい、茨城からです」
「それはそれは、遠いところをようこそ」
「宮田さんにお会いできて、うれしくて」
「あら~、私もお婆ちゃんに会えて、うれしくてーー」
「フフフフ」
「ヘヘヘヘ」
 ーー宮田さんの笑顔と話のテンポとが相まって、公開場もどっと笑いに包まれる。

 高橋敬三と歌手の村田英雄との対談でその片鱗をうかがえられる。
高橋「ほう、お若い頃アパート住まい…」
村田「それで面白い話があるんです。私が駆け出しの頃、仕事が遅くなって
 テレビ局に立派な自動車で送ってもらったまではよかったのですが、帰る我が家が
 1900円の安アパートじゃ、<村田だー>と意気がってる手前、さまにならない」
高橋「その安アパート前に車を付けては、面子が立たん」
村田「自動車に乗っていながら身も世もあらぬ思いでしたよ。
   今売り出し中の歌手が、安アパート住まいじゃカッコウ悪い。
 そこで思い出したのが、お付き合いはないがその安アパート近くに立派な家がある」
高橋「これは名案だ」
村田「運転手さんに、その家の前で、<ここだよ>」
高橋「言いましたね」
 --「これは名案だ」「言いましたね」ーーこれがうまい。
 短いながら的確に相手の言葉を先取りしたあいづちを打っているのだ。
この呼吸の見事さに拍手を送ったものだった。

人生激情1286(全員集合)

2011-06-28 07:11:53 | Weblog
 かって、テレビの人気番組に「8時だよ、全員集合!」というのがあった。
そう、人気絶頂のドリフタ―ズのコントで笑わせてた番組だった。
当時なぜ8時なのか疑問に思ったものだ。7時でもいいではないか。
6時でもいいではないか。これには製作者側の魂胆があったのだ。
8時、9時台はテレビ界のゴールデンタイムと言う。
8時を視聴者に意識させることで、チャンネル権の獲得にあった。
8時だから、ドリフの時間だと思わせてしまえば目的は達したのだ。
そういえば「8時半の男」なんてドラマもあったと記憶している。
製作者のそれは見事に成功したといえよう。
8時になったらテレビの前に君も僕も家族も「全員集合」するというわけだ。

 年度末の道路工事、美人の整形美容、健康な人が守る健康法、
 金持ち優待の消費税の増税、地球平和のための核武装、
これらの不合理性を、誰もがおかしいと思わぬようにしむける意思。
それを感じさせないように工夫する騙しの手段がこの世には絶対にあるものだ。

人生激情1285(現代怪談)

2011-06-26 06:37:57 | Weblog
 昔なら、
「何が怖いか?」と訊かれたら、
「お化け」と答えるのが相場と決まってた。
今なら「放射能」と言うだろう。
しかし、本当に怖いのは、お化けでも放射能でもなく、
何もしてくれない政治家に国を託しているこの事実なのだ。
現代の怪談は、20年前にバブルがはじけて以来、
不景気だ、不景気だと言われ続けながら、
何も変わっていないこの現実を恐ろしいと思うのだ。
 今度は議員削減は棚上げで、消費税を上げる怖い話が出た。

 定例の慢協の展示会が会場の都合で8月末に決まったことで、
時事漫画を描いたり、時事川柳を詠んでるが、
そのせいか、政治や世相の暗さが目について仕方がない。
つまり、明るい話はスポーツにしか見いだせないこの頃だ。
 プロ野球の日本ハムが首位のソフトバンクに肉薄したとか、
ゴルフの石川遼君が3位まで昇って来たとか、
最近はこんなことを独り手酌の焼酎の摘まみにしているよ。

 最近のテレビドラマはゆっくり楽しめるものがないよね。
なんで、刑事ものや警察ものが多いのだろう。
人殺しを契機に、暗い動機と暗い人間関係のあれやこれやばっかりだ。
心安らいで観れるものがまるでない。
かっての「時間ですよ」とか、「北の国から」「男はつらいよ」など
のような茶の間チックなもんが創れるプロデユーサがいないのかね。

人生激情1284(巷の話)

2011-06-25 08:40:34 | Weblog
 粘る菅首相、6月一杯の退陣は無くなった。
 今週は2日続きの30℃超えで、塩ふく汗。
 高速道路無料化は中止。試験でやっただけ。 

 7,8歳の男の子が80キロの車速度で国道を運転してた。
一旦は聴きとり調査の末、厳重注意で保護者に引き渡された。
「何処へ行くつもりだった?」
「どっか遠くへ」
 そうか、子供だってどこでもいいから遠くへ行きたいのか。
それなら、大人だって遠くへ行きたいはずだ。
しかし、遠くへ行ったからとて、何か目的があるじゃなし。
かって、ジエリー藤尾が眉間に皺寄せ深刻な表情で歌っていたな。
 ♪知らない街を
  歩いてみたい
  どこか遠くへ行きたい~

 小学2,3年生ぐらいの男の子と女の子が手をつないで
ステップ踏みながら行き過ぎる。微笑ましげに見るお婆ちゃん。
子供たちに気を取られていたお婆ちゃん、
つい通路の段差につまずき転びそうになる。
子供たち、それに気づいて走り寄り、
「おばあちゃん、大丈夫?」
「だいじょうですよ。ありがとう」
 二人の子はお婆ちゃんの背を叩きながら、
「痛いの、痛いの、飛んで行け!」
 件のお婆ちゃん、感激して涙声で、
「ありがと、ね……」
 ちょっといい話。

人生激情1283(猫とばあさん)

2011-06-24 07:14:48 | Weblog
 息子夫婦が経営する床屋の入り口脇に2坪ぐらいの狭い店を作って
もらって、ばあさんは1日中猫と一緒に坐りきりで、往来を眺めながら
客が来れば嬉しそうに納豆と豆腐と油揚げだけを売っていた。
いわば、ばさんは気楽な隠居生活だったのだ。
ところが、ある日、ばあさんの膝に飽きた猫がひょいと路上に飛び出し、
オートバイに轢かれて死んでしまった。

 ばあさんは、ほんとうにあの猫を可愛がっていたんだな。
近頃豆腐を買いに行くたびに、どうも様子がおかしい。
豆腐を頼んだのに納豆を寄こしたり、お釣りを寄こさなかったりで、
薄ぼんやりした表情をしていた。
可愛がってた猫が死んでしまったので、頭が少々どうにかなってしまったらしい。
 猫なんていうものはミミズとおんなじで干支にも入っていない。
3年の恩を三日で忘れるくらい薄情な動物だ。それにあの婆さんの猫ときたら、
油揚げが大好物だという変なヤツで、タヌキみたいにぶくぶくふとっていて、
一匹だって鼠を取ったなんて話をきいたことがない。無精で臆病で、無愛想で、
それでもばあさんは、あの猫を可愛くてたまらなった。

 考えてみると、無理もない。
あの猫がばあさんのたったひとりの仲間だったのだ。
息子も嫁さんも共稼ぎでばあさんの話し相手をする暇などなかったようだし、
孫も小さい頃はよく店番を手伝っていたようだが、最近はよりつかない。
隣の仲良しの米屋の爺さんも、昔の仲間たちもみんな死んでしまった。
要するにばあさんはひとりぼっちだった。
猫しか話し相手がいなかったんだ。
 それから何日も経たずにばあさんの店は閉じていた。

人生激情1282(モダン・タイムス)

2011-06-23 07:47:59 | Weblog
 男は煙草に火を付ける。
半分も吸わずに灰皿にもみ消す。
また新しい煙草に火を付ける。
すぐもみ消す。火を付ける。消す。
それを目撃した人間はくすくす笑う。

 菓子を頬張り続ける。
菓子皿は空になる。
空っぽになった菓子皿に手を突っ込む人を見ることがある。
それを見ていて人は笑う。

 チャップリン映画「ライムライト」のひとコマ。 
 機械化の進んだ工場で労働者が働いている。
人間にとって、単純な繰り返し作業が続く。
労働者役のチャップリンは、仕事を終えても
単純作業の手つきを無表情で繰り返している。
工場内では目的を持っていたその仕草だったが、仕事を離れても
哀れな彼は、無意味な運動を繰り返しているにすぎない。
 日々、食って、寝て、働いて、
 人間の目的は食う為にあるのでもない。
寝るため、働くためにあるのでもない。
チャプリンは機械化された人間を皮肉っている。

人生激情1281(堂々たるお粗末)

2011-06-22 09:23:10 | Weblog
「堂々たるお粗末」
ふと耳にはさんだこの言葉に、なんともいい言葉だなーと感動した。
そして、西郷隆盛を例にあげていた。
 西郷の日常は、上野公園のあの銅像通りの、カスリの着流しに、
へこ帯姿だったそうだ。およそ、政府の高官らしくない質素なものだ。
昼の弁当といえば、でっかい握り飯に味噌をぬっただけ。他の高官たちが
料亭などから贅沢な昼食を取り寄せて食べる。その前で、悠々、平然と
竹の皮包みを開いてパクつく。恥ずかしくもない、わが道を行くである。
 ああ、堂々たるお粗末!、なんと素晴らしい精神ではあるまいか。

 考えてみるまでもなく、人間なんてお粗末な存在なのだ。
誰もが「至らぬ者」である。
お粗末の具合に、50歩、100歩位の差があるにすぎない。
はげ頭、まずい顔、機転は利かないーーその他お粗末さは人それぞれにある。
隠そう、飾ろうという見栄を捨て、堂々とお粗末をさらけ出せばなんと
生きやすい世の中になるだろうか。お粗末を笑われたくないと、力むから
生きずらい世の中になってしまうのだ。そんなことを考えさせたものだ。

人生激情1279(サギにご用心)

2011-06-19 07:30:08 | Weblog
「ピ~ンポ~ン」 
 インターホーンが鳴るから応じたが、ぼそぼそと何を言ってるか
聞きとれない男の声と、もじゃもじゃ頭の画像。玄関ドアを開けて顔を出すと、
「ごめんなさい、おじゃまします」
 背にバカでかいバックを背負ってる。
「何?」
「帽子なんだけど……」
「いらないよ」
「そう云わずにーー、実は茨木の帽子工場がこの福島の原発事故でつぶれた。
 それで、退職金が出ないので、その代わりに売れ残りの帽子を支給
されたわけだ。だが、帽子を貰ったって親子5人の飢えを満たせられない。
それで、帽子を金に換えなければならないので、北海道くんだりまで売りに
歩いて来たってわけだ。この帽子、どれも一流デパートでは一個1980円
で売ってるもんだが、今夜の晩飯分だけ間に合えばいいから、1000円で
なんとか、買ってくれないだろうか? いや、いや、この際500円でもいいよ」
「いらないよ。帽子ならうちにも売るほどあるよ」
「ご主人、見るだけでもいいから見てよ」
「要らないよ、見てもしょうがないよ」
「北海道の人は情が深いってんで、はるばる茨木から来たんだ。助けてよ」
「いらないったら、いらないよ」
 やっとのことで帰ってもらった。
哀れっぽい顔を、さらに曇らせて悄然と肩を落として帰って行った。

 うまい泣き落としだ。千両役者そのものだった。
仕舞には女房も子供も不治の病にしかねない。
同情を買う為なら、オールキャストの筋書きだ。
この世にいない爺ちゃん婆ちゃんまで介護の主役に登場させられる。
この手の詐欺商法はよくあることだ。
 茨木に帽子工場があるなんて真っ赤な嘘だし、
原発事故と帽子工場との関わりなんか聞いたこともない。
北海道くんだりとは、北海道を馬鹿にしてる。
晩飯代を工面してるわりには結構栄養の行き届いた表情だった。
茨木から歩いて来たわけじゃあるまいし、旅費はどうした。
 世の中ことごとく眉唾ものだ、詐欺仕掛けだ。
効きもしない薬を誇大広告で売りつけたり、
くだらぬ本をベストセラーなどと新聞広告するのも常習詐欺だ。

 一国の総理だって、辞めると言って、辞める気なしの開き直りだ。
「この菅を引き摺り下ろしたかったら、俺の挙げた法案を通してくれれば、
即刻辞めてやらあ~~!、いかがかな? 皆の衆!アハハハハ、アハハハハ」
 これは「辞任詐欺」という新語だよ。

人生激情1278(求む、元気者)

2011-06-18 07:28:02 | Weblog
 ある老人ホームに勤めている介護士のお嬢さんに聞いた。
 現在、老人ホームの住人の85パーセントが女性、
つまりは、未亡人の世界でもある。
老いててもすこしはしゃれた二枚目が入所してくると
おばあちゃんたちの眼が輝きを増すという。
それまで、化粧など忘れていたお婆ちゃんが、突然
化粧箱を開けて、精一杯のオシャレをするのだそうだ。
だから、元気なお爺ちゃんを探してます、ということだった。

 所属する第九合唱団員300名構成の男女比は3対7。
更にベース、テナーは皆年老いてきて、元気な若い人が少ない。
新人の入団紹介でたまたま若い男声バスの紹介に、
女性群からため息とも歓声ともいえない声が漏れた。
特に多数を占める女声アルト側からの声が大きい。失笑。
たかが趣味の集いというなかれ、意欲ある女性が多数を占める。
若い男声の応募を求めてる。

 かって「猿の軍団」という映画がヒットした。
愚かな人間たちが自滅し、地球が猿たちに征服されるお話だった。
物語は奇想天外な逆転の面白さが興味を引いた。
 現代の日本は、世間への出不精な男たちが目立つ。
長く生活を営む中で、精根が尽きてしまったものか。
あるいは、街を歩く男たちの背がなぜか寂しげに映る。
この日本は、いずれ活発な女性たちに征服される日も遠くない。