井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

平均率から純正率に変化するピアノ

2017-08-17 20:57:00 | 音楽
自分が習ったことを、次の世代に必ずしも伝えていないことがあることに、時々気づく。
その必要がなかったからなのだが。

私が中学生だか高校生だったある日のヴァイオリンのレッスンで、先生がアップライトピアノで長三和音(H-Dis-Fis)を弾き、しばらくして根音と第5音の鍵盤を離し第3音(Dis)だけ残す。その後すぐ第3音だけ弾くと、明らかにそれは高く聞こえる。

また長三和音を鳴らしてずっと鍵盤を押さえておくと、だんだん第5音が上がって聞こえる。

これがどのような状況で行われたかは全く忘れたが、全く同じ話を大学に入ってからまた聞いたのである。だから余計によく覚えている。

それは民族音楽学者の小泉文夫先生の「音楽通史」。
そこで出自がわかった。小泉先生曰く、斎藤秀雄先生の教室を見学していたら、この実験があったとのことだった。

その後この話は平凡社の「音楽大事典」や「斎藤秀雄講義録」にも部分的に現れた。要するに、ピアノは打鍵の後、限りなく純正率に寄っていく楽器だ、ということを証明する実験として。

これが何故なのかはわからない、というのが斎藤秀雄先生の談話である。

何らかの解答はあるはずだ、とずっと思っていたら、事もなげにある高名な調律師がおっしゃった「それは響板が響いているからです」

あのリヒテルから信頼され「ピアノをストラディヴァリに変える男」の異名をとる村上さんに直接伺った話だ。

今から15年くらい前だったと思う。
深く感銘を受けたのだが、あまり他人に話したことがない。
それは響板の振動が弦の振動に影響を与えるメカニズムがよくわからなかったからということもある。

しかし、私の先生方はまだご存知ないことまで付加されて、それでも立派に価値ある話なのだが。

とりあえずブログで公開したので、私は使命を果たしたことにしておこう。