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正太郎シリーズ    「宝くじ」の巻 

2013-12-26 08:08:04 | Weblog
正太郎シリーズ
   「宝くじ」の巻   作 山脇一郎
「博士、宝くじを買ってきました」
「一等はいくらだい」
「一等、5億円です」
「5億円もあったら無線機が300台くらい買えるね」
「それだけ並べている人はいません」
「それに、ぼくの好きなひよこ饅頭が好きなだけ食べられる」
「博士、そんなにたくさんひよこ饅頭食べる人はいません」
「それでは正太郎君、宝くじで受け取れる金額を高等数学を使って計算してみよう」
「それはいろいろな人が計算をしています」
「チッチッチッチッ、ぼくのはひと味違うのさ。極限という小難しい理屈を使うんだ」
「はあ」
「5億円あたる確率をXとおくと、確率は果てしなくゼロに近いから、X→0となる」
「ふむふむ」
「賞金が5億円だから、かけ算するとこうなる。
 『うけとれる賞金=5億円×(X→0)』」
「ということは」
「そう、極限の計算では、この場合は5億×ゼロでゼロ円ということになる」
「なんだか夢がないですね」
「高等数学を使うとこうなるのさ。だから、宝くじは買っても買わなくても一等にはあたらない、というのが結論さ」
「当選発表の前にそういう計算をみると、ぼくなんだかがっかりしてきました」
「そんなもんだよ。それでは昼を食べにいくとするか」
「博士、今ぱらっとサイフから落ちましたよ。あれ、これは宝くじではないですか」
「ああ、それ、まあ、いい」
「博士の計算でいくとゼロなんだから、この宝くじもらっときます」
「いや、だめだめ。それは実は当たりくじなんだ」
「えっ、発表はまだでしょ」
「いや、ゆうべ、神のお告げがあってね。そのくじは大事にせよと」
「お告げは午後の九時ですか」
「いやあ、正太郎君もしゃれのわかる人間になってきたね」
「博士、よく見るとこのくじははずれです」
「そんなことがわかるのかね」
「よく見たら『た・空くじ』と書かれています」
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