Begoing

韓国ドラマ・映画見てます。日本のドラマ・映画も見てます。

『パッチギ』

2006-03-16 | J-Movie
 うまい。監督:井筒和幸 音楽:加藤和彦 エグゼクティブプロデューサー:李鳳宇

 井筒和幸監督の映画は今まで見た事がない。「パッチギ」だから見た。

 これは、基本は、青春ムービーなんだと思う。ふたつの軸がある。ひとつは、府立高校の番長グループと、朝鮮高校の番長リ・アンソン(高岡蒼介)グループの敵対とけんか(乱闘)。もうひとつは、府立高校の普通の生徒松山康介(塩谷瞬)と、朝鮮高校の番長の妹リ・キョンジャ(池尻エリカ)との恋物語。

 ケンカをしまくる高校生たちが、ひとりひとりみな、アクが強いぐらいに、とっても個性的に魅力的に描かれている。それに対比するように、主人公の松山康介は、純粋で「フツー」で、キョンジャは愛らしくて美しい。

 若者たちを縦軸とすると、大人たちが横軸だ。康介がギターを習う坂崎(オダギリ・ジョー)の家は酒屋。その酒屋の立ち飲みカウンターで、常連さんたちが、米ソ冷戦やベトナム戦争や朝鮮半島の南北分断などについて、酒を飲みながら、話すシーン。朝鮮高校生のひとりが亡くなり、葬儀に出席した康介に対して厳しく投げかけられる言葉。

 大学紛争が起きていた1960年代の世相や時代を描く目線が、高くもなく低くもなく、それでいて、ちょっと離れて見ている感じ。

 エンタティメントとしての面白さがきちんとあって、事実を直球で語って、フォーククルセダーズの歌が見事に使われていて、激しい対立を描きつつ、同時に対立をあっさりと超えるものを、静かに描いている。複雑な要素が、巧みに練り上げられている。うまいなあと思う。

 フォーククルセダーズは、「帰ってきた酔っ払い」がヒットした事を覚えている。メインテーマ曲「イムジン河」も、エンディングテーマ曲「あのすばらしい愛をもう一度」も、挿入曲「悲しくてやりきれない」も知っている。