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庭師のブログ(9) 蚊

2016年04月10日 | 日記
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(第9話) 蚊

世の中になくてはならない生き物がいるとしたら、私は蚊を一番に推挙する。

もし、蚊がいなかったら、人間はとうの昔に滅んでいた、という説がある。人間が、森をどんどん侵食し、自然を破壊しつくした挙句、荒涼とした砂漠のようになって、地球は死んでいく。その人間の侵入を食い止めてきたのが、蚊であったと、その人は言っている。

グァム島から28年ぶりに生還した、横井庄一さんが、それまで住んでいた洞穴の近くを新聞記者と一緒に訪れた話が興味深い。全身の肌が黒くなるほどの蚊が身体に群がってきたそうである。

私の体験。

高校生の私は、ウラクロシジミという蝶をとりに比良山系の沢を登っていた。道に迷って、谷から崖をよじ登り、何とか木の生えている斜面にたどり着いたときは、陽も落ち薄暗くなっていた。谷に転がり落ちないよう、木に体をしばりつけて、一晩野宿をした。その時は、小さな遭難を楽しんでいた。

ところが想像してなかったことが起こったのである。どこにいたのか蚊が次から次へと襲ってくる。およそ人間などめったに来ないこんなところで、蚊はどうして繁殖してきたのかと、そんなことを考えて、眠れぬ夜を過ごした私は、明け方早々に山を下りた。期せずして、蚊は私を撃退し、ウラクロシジミを守ったのである。

私も蚊は好きでない。人間、痛いのは我慢できるが、かゆいのは我慢できない。そこで剪定作業中は、蚊取線香の渦の先端と、真ん中の芯の両方に火をつけ、腰にぶら下げて作業をする。モウモウと煙が出るので、さすがに蚊はやってこないが、作業着が燻製のようになる。

どうして蚊はやってこないのか。除虫菊の粉末だけでは効き目がないので、たぶん何かが混ぜてあるのだろうと思っている。問題は、その煙を吸っている人間の方であるが、蚊と人間の体積比は、何十万倍も違うのでそれほど心配しなくてもいいのかもしれない。


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