カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

小川さんのうたから(メモ)

2006-05-28 16:08:07 | Weblog
 日録メモ。

 新宿区立中央図書館で、FM放送で流れるスイス・ジュネーブ歌劇場公演のワーグナーの『タンホイザー』を聴きながら、先年自ら命を絶ってしまった小川さんの歌集を読む。。。

 メモです。

 小川太郎氏:ジャーナリスト、歌人。早稲田短歌会では福島泰樹氏らと同期。2001年自死。生前、「風馬の会」を結成。短歌を中心に活動。早稲田大学高等学院在学中に歌人・寺山修司の作品に触れて短歌に親しむようになり、終生、寺山修司作品を愛した。寺山修司研究家。元、小学館「週刊ポスト」記者。歌集「路地裏の怪人」(発行所:月光の会、発売元:彌生書房、1989年10月刊行)。

 小川さんの歌集「路地裏の怪人」より。

                **

屋上園寝ころべば空あるばかり あゝ死は誰の死も客死  小川太郎
神田神保町の路地裏古酒場、戸を開け放ち呑む初夏来たり  小川太郎
母われとわが死を産みき灯の壁の小面(こおもて)が裏にためる暗黒  小川太郎
真夜は死者たちの沈黙のうた空に流れ 愛は悲しみの砂の把手  小川太郎
落暉(らっき)の空にのびたる塔の尖端の密室に死にゆく若き捕虜豹  小川太郎
ただ彼らの糧となるため生まれたるわれらにあらず 逃げろ逃げきれ  小川太郎
窓に流星とび交う夜は父母求めさまよいし恐龍の仔も在りしと思う  小川太郎
無限なる時空の果てに思いおよびし真夜中にわれ神と出会えり  小川太郎
この路地にも幾世代かがありまして、街はいずこも誰かの死後の街  小川太郎
前略ワレニ詩才アラヌハ存居候(ぞんじおりそうろう) されどこの夕まぐれ  小川太郎
死後屍体やかれるまでの束の間も尖がり続けておらんわが鼻  小川太郎
目に見えるものみな遙かなるごとき夕べ遙かなり卓這う蟻も  小川太郎
妻と老母と四匹の猫と破船めく家にて死までの路地裏の航海  小川太郎
怪人二十面相も老い路地裏に棲みて皺持つ貌晒すのみ  小川太郎
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 芥川さんの遺作『佛立開導日... | トップ | 出口光氏の天命に関する話(... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。