ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

赤沢岳西尾根

2013年12月03日 21時11分11秒 | クライミング
高校の同窓会があったにも関わらず、それをドタキャンし、土日を挟んで四日間、セクシー登山部の奈目太郎氏と北アルプス赤沢岳西尾根を登って来た。

妻が12月下旬に子供を出産するので、その前にぜひとも雪山に登っておきたかった私は、当初は立山の雄山東尾根に登ろうと考えていた。この時期にまともな雪稜になるのは立山ぐらいしか考えられない。しかし奈目氏は11月29日から12月2日までしか休みを取れないという。12月に入ると立山黒部アルペンルートの営業が終了してしまうため、第一志望の雄山東尾根は無理である。それでしょうがなく我々は後立山の赤沢岳西尾根を登ことにした。後立ならアルペンルートに下山しなくても頂上を越えて扇沢に下山すれば車に戻れるからだ。

だが、予想されたこととはいえ、やはりこの時期の後立の黒部側ルートはきつかった。季節的にまだ藪の上に一メートルぐらい新雪が積もっているような状態なので、雪はまだ全然締まっていない。冬山好きには分かると思うが、これが一番きついラッセルだ。雪が閉まっていないので、一歩踏み出すたびにズボッと踏み抜き、何度も落とし穴にはまるみたいに足が藪の中に抜けてしまう。おまけに赤沢岳西尾根は取り付きからしばらく岩がちに急傾斜が続き、その上に雪がうっすら積もっているだけ。雪だと思ってアイゼンを踏み込もうと思っても、岩にガリガリと引っかかってしまうばかりで足が決まらない。当然、バイルも決まらないので、いやらしい登りを強いられる。

事前の計画では私も奈目氏も二泊三日でサラッと下りてくるつもりだったが、四日間フルに行動し、予備日も使って何とか計画内の日程で下山することができた。

三日目は赤沢岳頂上に泊り、四日目は屏風尾根を下山するつもりで出発したが、ハマった山行の時は何もかもうまくいかないもので、天気が良くなく、風とガスがひどくて視界が全然ない。屏風尾根付近を何度も言ったり来たりし、ロープで確保してもらい雪庇を切り崩して尾根を探したが、結局どこが尾根の分岐なのか全然分からず、再び赤沢岳に登り返して反対側の新越尾根から下山した。最後のほうはもうヘロヘロである。

しかし収穫はなかったわけではなく、赤沢岳大スバリ側の積雪期の尾根ルートの状況はよくわかった。三月に来たらよだれモノの雪稜ルートがたくさんあるし、スバリ岳中尾根も正面から見たらかなりかっこいいルートである。来年あたり是非登りたい。また西尾根Ⅲ峰北西壁もものすごいスケールの壁だった。現在日本屈指のアルパインクライマ―である奈目氏をして、ちょっと冬は登れるところが想像できないというほどの壁である。

結論としては、積雪期の黒部を登るのに、立山黒部アルペンルートを使うなどというせこいことは考えるな、ということだろうか。あとは奥さんが臨月を迎えたときぐらいは、家で大人しくしていろ、ということか。
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