БЛОГ/Bava44

ロシア映画の他、日本では主流ではない、非公式的な映画作品や映画批評等の紹介。

魅力を失う日米映画産業

2012年04月24日 | Weblog
●若い世代の価値観の変化と、供給過剰への危惧
震災の影響によって、被災地の若者が地元志向を強めたり、経済の先行き不透明感から、全国的に若者の就職先の公務員志向が強くなったりしているというニュースを聞く。これらはいずれも、若い世代の価値観が良くも悪くも保守的になっていることを意味している。

もっとも、そのような内向き傾向は今に始まったことではない。ただし、それが致命的にまで加速してしまった観はある。このような状態になってくると、映画のような華やかなショウ・ビジネスが敬遠されやすくなるのは当然である。また、ただでさえデフレなのに、節約志向によって、映画は削減対象になっている。
作品に対する好みの点でも、極端な内向き志向は、若い世代の視野を委縮させるので、洋画や新しい価値観を受け付けなくさせる。(実際に、レンタル市場でかつて70%あった洋画のシェアは、徐々に下落し、2011年には20%を切っている。映像産業で深刻な空洞化がおきているのである。)知的好奇心の衰退も考えられ、日本のガラパゴス化が一層ひどくなるのではないかと心配である。

大切なのは、彼らの価値観に迎合して若い世代を袋小路に追い込むことではなく、未熟な彼らを導くことである。
残念ながら、映画はそのようなことには向いていないので、我われ映画ファンは、先細りのドン詰まりであり、需要の減少、映画館やレンタルビデオ店の減少、市場の縮小に伴う配給会社の経営悪化と、ろくなことはない。

円高を機会に、日本の配給会社は作品を大量に買い付けたという噂だが、それも配給作品の乱発に終わる可能性が高い。さらに悪いことに、映画製作はお金がかかるので経済の影響を受けやすく、世界的に景気の悪い時には、作品の品質が劣る傾向がある(美術費の削減や、撮影期間の短縮による早撮り等)。ギリシャ問題もあと一年ぐらいは作品のクオリティに反映されるはずであり、状況的に、粗悪品の大量流入がおこる可能性が考えられる。

どうすればいいのか、私にはさっぱり分からないが、映画産業が危ないという危機意識の共有は絶対に必要である。華やかさを“売り”にする業界だけあって、表には全く出ないが、内部では本当に危なくなってきている。



●やっぱり衰退していたハリウッド
MPAAから2011年度のオフィシャルな統計が発表されたので、さっそく中身を見たところ、速報値とまったく同じ数値だったので、訂正の必要がなく安心(?)した。


映画入場料金の値上げによって興行収入の水増しをしていたハリウッドだが、ついに高止まりがおきてしまったようである。このまま観客数が減少していけば、まず映画館が厳しくなり、スクリーン数が減少して、映画産業の衰退が加速することになるだろう。


若年層の映画離れは、未来の映画需要の減少を予告するものであり、危機的である。

ハリウッドは、国内市場が衰退し始めているにもかかわらず、海外の映画市場が拡大していることによって、かえって厄介なことになっている。国内市場の衰退に対して見て見ぬふりをする一方で、海外市場の拡大にいそしむメジャーの経営のやり方は映画産業の状態をさらに悪化させる。そして、映画製作が無理に今の在り方のまま継続され、世界中の映画産業の状態を悪化させることになるのである。



●国内市場がジリ貧のハリウッドは、政府と結託して海外市場に圧力をかける。
「2012年2月19日、香港中国通訊社は、規制緩和による米国映画の輸入拡大が今後の中国映画市場に与える影響について報じた。21日付で中国新聞網が伝えた。 17日まで訪米していた習近平(シー・ジンピン)中国国家副主席はバイデン米副大統領と米国映画の輸入規制緩和で合意した。これは、WTO(世界貿易機関)から昨年、WTO規定に抵触していると宣言された中国にとって「大きな突破口になった」と市場アナリストは指摘する。 今後は現行の年間制限枠である20本の他に、3DやIMAXなどの大型作品を主にした米国映画14作品が新たに中国市場に参入することに。さらに、興行収入分配率も現行の13%から25%に引き上げられる。」
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=58977

中国に対して、以前からWTO経由で圧力をかけていたハリウッドであるが、中国の映画市場の拡大と比例して、美味い汁を吸おうと本性を露わにしてきたようである。ハリウッドは現在、つまらない大作映画を連発したおかげで、国内市場の収益性が悪化しており、そのつけを海外市場で取り戻そうと、かなり焦っている。バイデン副大統領まで持ち出すあたり、裏でよく手が回っていると思う。

政治的なことを書けば、アメリカ政府は、「国内の基幹産業の一つであるハリウッドの死守」、「慢性的貿易赤字国アメリカにおける貿易黒字部門ハリウッドの死守」、「映画を利用した文化帝国主義」の国益三点セットのために、積極介入を続けており、全然リベラルではない。(例えば、日本政府が、中国や韓国に対して、日本映画を公開しろ、日本映画の利益をよこせ等の圧力をかけたとしたらどう思いますか?)

だからといって、映画の政治性を強調しすぎる必要はない。私はあくまで、米国政府とハリウッド・メジャーの経営のやり方に問題があると考えているだけで、ハリウッドの映画人たちにそれらの責任はない(業界が提供する海外市場を、ナイーヴに「映画の国際性」と信じている点はあるにせよ)。
間違った会社経営で産業が衰退すると、困ることになるのは映画人たちである。我われ映画観客だって、つまらない作品を見せつけられることになるのだから、迷惑である。だから、ハリウッドには、政治を利用せず、作品の魅力で勝負しろと言いたい。



●スコセッシのお薦め映画
http://eiga.com/news/20120329/5/
注目すべきは、ピクサーの社内で上映会を行っているという点だろう。社員の映画的教養が高まれば、作る映画の質も高まる。


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