原石鼎

一枝の椿を見むと故郷に
 『頂上の石鼎』 深夜叢書刊

大いなる初日据りぬのぼるなり    昭和18年

2012年01月01日 | 1月・石鼎句鑑賞
 ここには太陽しか描かれていない。光が形になって徐々に昇ってきた陽の全円が地平線上に現われた瞬間、それが「大いなる初日据りぬ」となるのだろう。万葉調の大らかな詠みぶりが、太古から変わらない雄大な初日の出を差し出している。改めて俳句の季語の奥行きを教えられる一句である。

初日を見たら誰れも「大いなる初日」と言いそうなほど日常的な叙述法である。しかし、その次にくる「据りぬ」によって、地平線上の一瞬の太陽の姿を詠み手に印象付けている。多くの言葉を使わずに対象物の真髄へ迫るのは石鼎に備わった才能だと言える。

 この句を得た昭和十八年には、石鼎は神奈川県二宮に移り住んでいたので、掲出句の初日は海からのもの。見ている間に昇った太陽を「据りぬ」として、直ぐに「のぼるなり」と畳みこみ、日輪の動きの一瞬を捉えている。

  やゝ高く見えてまどかの初日かな
  不平消して永久に明るし初日影

 掲出句は上記の2句と共に「鹿火屋」昭和十八年一月号が初出。この三句を発表した後に石鼎は俳句を作らなくなり、句集は昭和二十三年まで空白である。その理由は夫人の『石鼎と共に』によれば、ーーこのような世上の中で句を作る気持ちにはなれないと言って一句も作られなかった。ーーとある。このような世上とは、やがて日本が負けることになる第二次世界大戦である。
(岩淵喜代子)
ジャンル:
俳句
キーワード
第二次世界大戦
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2 コメント

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あけましておめでとうございます (ケンジ)
2012-01-02 06:46:56
俳句初心者ですので勉強になりました。
ありがとうございます (岩淵喜代子)
2012-01-05 21:51:25
ケンジ様
お立寄りくださいまして光栄です。
ブログも拝見させていただきました。
よいお年でありますように  

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