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『沈まぬ太陽』(09) を見て

2011年02月10日 | 映画・ドラマ
 WOWOWで録画していたのを見ました。明日、地上波でも放送するみたいですね。原作は、山崎豊子。この方の作品の重厚さには毎回唸ります。(『白い巨塔』『華麗なる一族』好きです)多くの時間をかけ自ら歩いて取材をし、それを基に深い洞察力で切り込む。この作品は、JALを題材にしています。あくまでも、フィクション。その山崎氏のモデル小説の映画化です。といっても作品を見ていると、85年に起きた520名もの方が亡くなられた墜落事故も描かれているし、かなりリアルなものも感じます。ノン・フィクションの部分と、フィクションを合わせた作品って、ある意味、見る人に誤解は与えると思います。経営再建に翻弄するJALが、圧力をかけたといわれるのもわかります。ただ本当に、いろいろな要素をつめこんだ物語だと思います。企業とは?家族とは?正義とは?信念とは?生きるとは?働くとは?出世とは?名誉とは?幸福とは?いろいろな言葉が出てきます。
 日本アカデミー賞も総ナメだそうです。主演は、渡辺謙。他、豪華キャスト。個人的に印象に残ったのは、三浦友和。渡辺謙は、日本航空ではなく国民航空(←笑える)の労働組合委員長を務めていた恩地という人を演じる。この作品は組合運動も重要な要素となっている。今とは時代背景がかなりちがうので、今の時代では当時の組合運動というのもピンとこない人も多いのかも。おれも60年代、70年代の組合運動全盛期のエネルギーは知りませんが、現在、多くの人が整備された労働環境を享受しているのは、過去の労働組合運動の成果だと思います。。企業の健全な発展には、健全な労使交渉が必要だと思います。法律でも認められている正当なものです。
 ただこの作品を見ると、JALの労働組合は歪というか異常なものを感じます。大企業だからでしょうが、8つの労組が乱立していたというのがまず歪。そして、それぞれの労組の思惑が異なるというのも歪。使用者側のコントロール下にある御用組合もある。
 この『沈まぬ太陽』を見て、JALという会社に興味がわき本を探してたら、『「JAL崩壊」-ある客室乗務員の告白-』という本が目に入って読んだのですが、この内容がまたすごい。

JAL崩壊 (文春新書)
日本航空・グループ2010
文藝春秋

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 客室乗務員の方の暴露本のような感じなので、この本を100%鵜呑みにするのもどうかなとは思うのですが、話半分でもJALの内情のひどさが感じる。スッチー(今使わないか)とパイロットって仲いいと思ったら、尊敬どころか軽蔑の対象になってるし…パイロット側の告白本も読みたいな。日本を背負っていたJALが、崩壊したのは当然だと思う内容です。経営陣にコスト意識がなく(国がバックにいるという安心感か)、縁故採用のオンパレード。ドロドロの人間関係。JALに寄生していた輩もいたのでしょう。そこに既得権益がありいろいろな私利私欲も渦巻く。
 何事もバランス感覚というか、常識というか、モラルというのは大事だと思います。その尺度は、人によって微妙に違うのでしょうが、その尺度が大きくずれている人はやはり世の中的には“変な人”と言われると思います。世の中、何かしらのGive and Takeで成立しているとも思います。そのバランスが崩れるとやはりもめる。我々も労働の対価として給与をもらう。仕事がおもしろかろうが、つまらなかろうが、きちんと自分の責務をはたすことは労働者としての最低条件。JALの内情を見ると、求めることの比重がすごく高いのを感じます。誰もが簡単にできる仕事ではないのは理解しますが、それ以上何を求めるんだというのを感じました。
 作品の中で恩地という人は、過激な手法の組合活動による懲罰的な人事で、海外の僻地勤務を10年させられます。その後。帰国するも窓際。しかし、航空史上最大の墜落事故が起き、会社は一気に窮地に。その立て直しに外部から招かれた会長から、再建の担い手の一人として抜擢される。この恩地という人のモデルが、小倉寛太郎(1930-2002)という不屈の精神で生き抜いた人だそうです。
 恩地という人は、頭も切れ、謙虚で人望もある。しかし出世するのは、あちこちで立ち回りをし、人を利用し、金を使いのし上がっていく三浦友和演じる行天。でも行天に心の平穏はあるのか、本当に幸福なのかと考えてしまいます。
 この作品を見て思うのが、JAL内のドロドロの人間関係、ゴタゴタだけならまだ許せるけど、人の命を預かる仕事をしているわけです。この本や作品を見ると、この会社の体質の悪さが、あの大惨事を招いた遠因となったと思わざるを得ない。坂本九さんもこの事故の被害者でした。明石家さんまもこの便に乗る予定だったそうですが、スケジュールが変わって早くなったそう。
 JALはなんかステータスの象徴のような存在に思えます。いろいろな要素が最高レベルのものが求められる。初めて航空機に乗ったっとき、こんな鉄の塊がなんで飛ぶんだってカルチャーショックを受けました。それが上空1万メートルを十数時間も飛ぶ。そこには、人類の英知と技術が凝縮されているのでしょう。(理解できないけど)そして、それを操るパイロットは、いろいろな意味でタフで冷静で優秀(なはず)。おれも小さいころ(なりたいとは思わなかったけど)かっこいーと思いましたよ。そして美しくエレガントな客室乗務員も憧れの対象。そこにはある種、最高峰の世界のように思います。そしてその華やかな世界を支える裏方の存在が、さらに重要。 
 JALの崩壊は、古き良き日本の崩壊の象徴のように思います。既得権益もリセット。そして時代も変わった。だからこそ、現在のこの厳しい時代にJALには再生してもらいたい。(とっても利用する機会はほとんどないけど・・・)

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