映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

クロニクル

2013年10月16日 | 洋画(13年)
 『クロニクル』を新宿のシネマカリテで見てきました。

(1)アメリカで大ヒットしたSF作品(2012年、84分)で、日本でも見た人の評判が高いようなので映画館に行ってきました。

 高校生のアンドリュー(デイン・デハーン)が主人公。
 友達がいなくて一人で過ごす生活を、中古のビデオカメラで記録しています。



 ある日、同じ学校に通ういとこのマット(通学の際にマットを車に乗せてくれます)とパーティーに出席した際に、学校の人気者・スティーヴとも一緒になって、林の中の空き地で見つけた穴に潜り込み、そこで3人は、巨大な結晶状の不思議な物体に触れます。




 それをきっかけに3人は驚くべき超能力(「念動力」というのでしょうか)を身につけますが、最初のうちは、ボールを投げ合って力を確認したり、スーパーマーケットでおもちゃのクマを宙に浮かばせて女の子を驚かせたり、駐車してある車を移動させ持ち主の女性をビックリさせたりと、他愛のないことにその力を使うだけでした。
 そのうちに空をも自在に飛べるようになり(自分自身に念動力をかけることにより)、さらにアンドリューは高校で開催されたタレントショー(日本の「文化祭」でしょうか)で超能力を使って見事な手品を披露し、一躍人気者となります。
 ですが物事は順調にいかず、次第に不満を募らせるアンドリューは(注1)、3人で決めたルール(注2)を外れて自分の超能力を使い始めます。
この先一体どうなることでしょうか、………?

 本作に登場する3人の高校生のキャラクターが実にうまく造形されていて(注3)、ありきたりの高校生の生活にちょっと変化を与えるに過ぎなかったところから出発しながらも、次第に事態が自分でコントロール出来ないほどオオゴトになっていく様子が巧みに描かれており、その面白さに画面を見入ってしまいます。

(2)本作のように、素人がVTR機器を持って撮影した映像を編集して映画にしたという設定の作品(POV)については、以前『クローバーフィールド』を見たことがありますが、最近ではノルウェー映画『トロール・ハンター』を見たところです。
 ただ、様々の方が指摘するように、本作においては、ビデオカメラを念動力によって自在に操れることから、これまでの同類の作品とは違って、色々な視点から安定した画像を得ることができるため、映画の面白さが増幅されることになります(注4)。
 例えば、高層ビルの屋上の縁に座るアンドリューらを、空中に浮かんだビデオカメラが撮影するという具合です。
 これが可能になれば、従来のPOV作品では見られなかった客観的な映像(神の視点からの映像)もふんだんに使えることになるので、まだるっこさがなくなり面白さが増すというわけです。

 また、下記(3)で触れる相木悟氏が、「大友克洋の漫画にもろに影響をうけたアクション描写」と述べているように、本作と大友氏の『AKIRA』との関係も注目されています(注5)。
 確かに、TSUTAYAで『AKIRA』を借りてきて見てみると、鉄男が超能力で周囲の物をことごとく破壊する有り様は(ついには、ネオ東京が海中に沈むことになります)、ずっと小規模とはいえ本作を彷彿とさせます。
 ただ『AKIRA』の鉄男は、単に、自分を取り押さえてコントロールしようとする勢力(「大佐」の一派)に対抗しようとしてその超能力を発揮しますが、本作のアンドリューの場合は、そのラストの方での行動について一応の理屈付けがなされているように思われます(注6)。

 本作は、SF映画を観客がスムースに受け入れることができるよう様々な工夫を凝らされていて、そこが興味深いところだなと思いました。

(3)前田有一氏は、「85年生まれの若いジョシュ・トランク監督による低予算映画ながら、全米初登場1位となった「クロニクル」は、スタイリッシュな映像が見所のSF映画。と同時に、迫真の青春学園ヒエラルキードラマでもある」として80点をつけています。
 また相木悟氏は、「若手クリエイターの才気がみなぎる、刺激的な一本であった」云々と述べています。




(注1)人気者になったアンドリューは、一人の女の子とベッド・インしますが、イザという時に女の子の頭に嘔吐してしまい、その話が学校中に広まって、またもや引きこもりの生活に入ってしまいます。

(注2)その力を、生き物に対して使わないこと、怒っている時に使わないこと、そして公衆の面前で使わないこと(誰にもそのことを話さないこと)をマットが決めます。
 アンドリューは承服できない素振りを見せるものの、マットとスティーヴはルールが必要だと主張します。

(注3)アンドリューは他人とうまくコミュニケーションが出来ない引きこもりタイプ(したがって、女の子はおろか、男の子の友達もいません)、マットは熟慮して行動するタイプ、スティーヴは根っから開放的なスポーツマン、という具合です。
 特にマットは、哲学方面の知識を持っており、ショーペンハウアーの本を読んでいますし(ショーペンハウアーに基づいて「すべての感覚的で肉体的な欲望は達成され得ない」などと言ったりします:この言葉は本作のラストを見ると意味深長といえます!)、パーティー会場に行くと、「ユングは「パーティーは自分の価値を確認するところだ(people's way of seeking widespread validation)」と言った」などと自分の知識を披瀝したり、結晶体のある穴を探検するときには“You ever heard of Plato's allegory of the cave?” と言ったりします。
 あるいは、制作者側にそうした傾向を持った人が入っているのかもしれません。

(注4)尤も、マットやその彼女のケイシーもビデオカメラを持って撮影することを趣味にしていて、本作は彼らの映像も使われているように構成されています。

(注5)さらにラストでは、マットはチベット・ラサのポラタ宮が背景に見えるところに立って、今は亡きアンドリューに「チベットに来たよ」と言います〔図書館でどこに飛んでいきたいかを語り合った時、マットはマウイがいいと言ったのに対し、アンドリューはチベットに行きたいと言っていました(スティーヴは、「チベットにはビキニの女がいない」と混ぜっ返します)〕。こんなところから、本作の制作者には東洋に対する憧れが強いように思われます(上記「注3」で触れるショーペンハウアーもインド思想とのつながりが強いようですし!)。

(注6)アンドリューは、消防士でありながら事故に遭遇して家でぶらぶらして酒浸りの父親からガミガミ言われるのに業を煮やして、超能力を使って父親を傷めつけてしまいますが、次第に、自分のような力を持った者は「頂点捕食者」(食物連鎖の頂点に位置する者)だと考えるようになり、自分の行動を規制しようとする者を排除しようとします(心配したスティーヴの話を聞こうともしませんし、アンドリューが放り投げた父親を救助したマットに怒りをぶつけ、ついには警官隊と対決します)。



★★★★☆



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2 コメント

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Unknown (ふじき78)
2013-10-19 00:44:57
POVで撮ると、必要以上に映画手法に乗っ取った撮影をしなくてもよくて、アクションシーンとかでも激しいカット割やアップなどに頼らずロング一発で撮ってたのが潔いですね。それが異常にリアルだったりするし。何より経済的に美味しかった事でしょう。
Unknown (クマネズミ)
2013-10-19 05:43:03
「ふじき78」さん、TB&コメントをありがとうございます。
確かに、POVで撮ると「経済的に美味し」い事になるものと思います。
ただ、客観的なアングルからの映像が欲しいとなると、本作のように「念動力」に頼らざるを得なくなるところ、いつもそんな設定にするわけにもいかないでしょうから難しいところではないかと思います。

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