映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

ラ・ラ・ランド

2017年03月12日 | 洋画(17年)
 『ラ・ラ・ランド』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。

(1)米国アカデミー賞の様々な部門でノミネートされている作品ということで、映画館に行きました(実際には、大本命視されていた作品賞からは外れてしまいましたが)。

 本作(注1)の冒頭では、ロサンゼルスのハイウェイの光景。ものすごい渋滞で、たくさんの車が停まっています。
 としたところ、車を運転していた人たちが次々と車から飛び出して、歌「Another Day of Sun」(注2)を歌い、踊りまくります。
 そしてタイトルが流れて、「冬」の字幕。

 車の中のミアエマ・ストーン)は、オーディションのためにセリフを覚えていて、前の車が動いたのに気が付かず、停車したままです。
 その後ろの車の中にいたセバスチャンライアン・ゴズリング)は、クラクションを鳴らして注意を喚起しますが、ミアの車が一向に動かないので、その車の脇に出て追い越します。
 その際2人は、チラッとながら顔を見合わせます。

 場面は変わって、映画スタジオ内のコーヒショップ。
 バリスタのミアが働いています。
 そこへ、オーディションが行われるとの知らせが携帯に入ります。
 ミアは「大変」と言って、上司に断りを入れ店を出ていこうとしますが、コーヒーを手にした男にぶつかって、服にコーヒーがかかってしまいます。

 ミアは、オーディションでは、電話がかかってきて「おめでとう!私も嬉しいわ」といったセリフを言うのですが、ほんのチョットやっただけで、審査員に「もう結構よ」と言われてしまいます。



 服が汚れてしまった挙句、オーディションもうまくいかないミアは、自分の部屋に戻ってベッドに倒れ込みます。
 ですが、同じアパートで同じ志を持ちながら一緒に暮らしている女3人に強く誘われ、ミアも仲間に加わって、パーティーに出向きます。ここらあたりでは、ミアを含めた4人が歌「Someone In The Crowd 」(注3)を歌い、そして踊ります。



 パーティーの帰り道でジャズバーにふらりと入り込んだミアは、ピアノを演奏するセバスチャンに遭遇しますが(注4)、さあこの後物語はどのように展開するのでしょうか、………?



 本作の舞台は、ロスアンジェルス。女優になる夢を持ってオーディションを次々と受ける女と、自分の店を持って好きなだけ演奏する夢を持っているジャズ・ピアニストの男が、ふとしたことから愛し合うようになって、それぞれの夢を追いかけるというお話。なんだか、最近見た『ブルーに生まれついて』と同じような設定ながら、そこはミュージカル・エンターテインメントの本作。スクリーンでは、次から次へと歌や踊りが披露され、楽しい気分になること請け合いです。

(2)本作はミュージカル作品ですから、上記(1)で触れた2曲の他にも、様々の楽しい曲が流れます。アカデミー賞の主題歌賞を獲得した「City of Stars」(注5)も、なかなか印象的な歌と言えます。



 そうした音楽を云々するには、クマネズミは、あまりにも貧弱な知識しか持ち合わせていないので専門家に任せることとし、ここでは、本作のストーリーに目を向けることにいたしましょう。

 本作のストーリーは、最近見た『ブルーに生まれついて』に随分と似ているように思いました(注6)。
 同作では、ジャズ・トランペットを演奏するチェット・ベイカーイーサン・ホーク)が主人公で、その恋人のジェーンカルメン・イジョゴ)とのラブストーリーが描かれています(注7)。
 確かに、同作で描かれているチェット・ベイカーは、本作のジャズ・ピアニストのセバスチャンとは違って、ジャズ・トランペット奏者であり、すでに一定の人気を得てもいます。
ですが、ドラッグをやり、なおかつそれが原因で前歯を折られて演奏ができなくなった窮地からなんとか這い上がろうとして色々努力をしています。そんなところは、自分の演奏したいジャズが弾ける場所を確保しようと努めているセバスチャンと似ているように思います。
 また、ジェーンは、本作のミア同様、女優の地位を確保しようと様々のオーディションに挑戦しています。
 そんな2人ですが、チェットが再起をかけてオクラホマからニューヨークに行こうとし、ジェーンに一緒に来るよう頼みますが、ジェーンの方は、自分にも重要なオーディションがあるからと言って拒みます(注8)。
 こんなところは、本作で、セバスチャンとミアが、互いに愛していると言いながらもそれぞれの道を歩むことにするのと軌を一にしているようです(注9)。

 とはいえ、違っている点も色々あるようです。
 例えば、本作のセバスチャンが夢として描いているのは、自分の好むスタイルのジャズ(注10)が演奏できる場所を確保することでしょう。
 それは、自己の表現として創造的にトランペットを演奏するチェットとは、姿勢が違っているように思えます。
 セバスチャンの思うところを達成するには、何も他人に聴かせずとも、趣味として、自分独りで好きなようにピアノを演奏しても、ある意味十分なのではないでしょうか?だからこそ、セバスチャンは、自分の好む音楽とは異なる楽曲を演奏するキースジョン・レジェンド)のバンドに入って、演奏もしてしまうのでは、と思えます。

 それはさておき、ミアとセバスチャンの2人は、はっきりと別れたわけではなく、互いに相手を愛している状態ながら(注11)、生活の場だけが離れてしまったわけで(注12)、にもかかわらず、ミアは、パリで撮影した映画が当たって人気女優になると、セバスチャンには何も連絡せずに、別の男と結婚してしまうのです。
 セバスチャンが、事業に失敗して行方不明にでもなったというのであればともかく、一応自分の店を持って、自分の好きなジャズ・ピアノの演奏もしているのですから、ミアの方でそうする意志があれば、すぐに連絡が取れたのではないでしょうか(注13)?
 でも、そうしなかったわけですから、別れる際にミアの言った「ずっと愛している」との言葉、そして本作のラブストーリーそのものは、酷く底が浅い、ということになるかもしれません。

 とはいえ、ミュージカルのストーリーにイチャモンを付けるなど、野暮の極みでしょう。
 それに、遠距離恋愛が成就することは、一般的にはなかなか難しいでしょうから(注14)、なにもミアとセバスチャンの2人に求めることもありますまい。
 加えて、ミアとセバスチャンは、遠くからですが、別れ際に目が合うと微笑みを交わし合うのですし(注15)。
 そうだとしたら、本作の終わり方は、むしろ大層オシャレなものといえるかもしれません。

 そんな埒もないことをアレコレ考えながら、クマネズミは、本作の歌と踊りの楽しさに身を委ねることができました。

(3)渡まち子氏は、「主演のエマ・ストーンとライアン・ゴズリングの見事な演技と、歌と踊りにも魅了される。懐かしいのに新しい、新たなミュージカル映画の傑作の誕生だ」として95点を付けています。
 前田有一氏は、「ミュージカルならなんでも大好き、な人でもなければ、おそらく冒頭の高速道路ダンスと、ラストのそれ以外は少々退屈な時間を過ごすことになるだろう」として55点を付けています。
 渡辺祥子氏は、「これはかなりの映画オタクに違いないチャゼル監督のミュージカル映画への愛着と、豊富な知識が懐かしさを呼ぶ斬新なミュージカル映画。そして最後の15分間で観る者に語る。どんなに現実は厳しくてもミュージカルの描く世界には夢がある、と。だからミュージカル映画は素晴らしい。愛さずにはいられないのだ」として★4つ(「見逃せない」)を付けています。
 藤原帰一氏は、「テレビをつければトランプ大統領が顔を出すというこの時代、人間らしい気持ちを保とうとすれば現実から目を背けるほかには方法がないじゃありませんか。「ラ・ラ・ランド」は、まさにトランプ時代を生きるために欠くことのできない、貴重な現実逃避。さあ、あなたも逃げてください」と述べています。
 立川志らく氏は、「薄っぺらな内容ではあるがこの2人があまりに魅力的だからこれだけでもラブストーリーとして成立している。そこにMGMミュージカルのオマージュが入り、ダンスは神業ではないが2人が往年のスターに見える演出だから文句なしの傑作と相成ったわけである。必見!」と述べています。



(注1)監督・脚本は、『セッション』のディミアン・チャゼル
 原題は「LA LA LAND」。
この記事によれば、「この映画のタイトルはロサンゼルスと「現実から遊離した精神状態」を意味する」とのこと。あるいは、この記事

 なお、出演者の内、最近では、ライアン・ゴズリングは『マネー・ショート 華麗なる大逆転』、エマ・ストーンは『教授のおかしな妄想殺人』、J.K.シモンズは『ザ・コンサルタント』で、それぞれ見ました。

(注2)歌詞とその日本語訳は、例えばこちら。歌が聴けるのはこちら

(注3)歌詞とその日本語訳は、例えばこちら。歌が聴けるのはこちら
 なお、女3人のうちケイトリンに扮しているのは、ソノヤ・ミズノ

(注4)ミアは、その店から流れてくるピアノの音色に誘われて中に入ります。ただ、ピアノを演奏しているセバスチャンは、指示されたとおりに演奏しないとして、その店の支配人・ビルJ.K.シモンズ)によって解雇されてしまいます。

(注5)歌詞とその日本語訳は、例えばこちら。歌が聴けるのはこちら

(注6)なお、ミアがアルバイトをする映画スタジオ内のコーヒーショップの前にある建物の窓は、映画『カサブランカ』で実際に使われた窓であることを、ミアがセバスチャンに説明しますが、クマネズミは、これもごく最近見た『マリアンヌ』を思い出しました(その映画の前半の舞台がカサブランカなのです)。

(注7)『ブルーに生まれついて』についての拙エントリの(2)でも申し上げましたが、主人公のチェット・ベイカーは実在の人物だとしても、同作に登場するジェーンは実在の女性ではなく、同作全体はむしろフィクションの劇映画と見た方が良いのではと、クマネズミは考えています。

(注8)『ブルーに生まれついて』では、実際にはジェーンは、チェットが演奏するニューヨークの会場に現れます。ですが、チェットが歌う歌を聴いて、ジェーンはチェットの気持ちを理解し、チェットからもらったネックレスをその場にいた友人に渡し、会場から立ち去ってしまいます(同作についての拙エントリの「注9」を御覧ください)。

(注9)本作のラストの方で、ミアは、パリで撮影が行われる映画のオーディションで好感触をつかみ、セバスチャンも「きっと(オーディションに)受かる。勘でわかる」と言います。そうなると、2人は別れ別れになってしまいますが、セバスチャンは「受かったら没頭しろ。俺も自分の道を進む」「後は様子を見よう」と言います。そして、ミアが「ずっと愛している」と、セバスチャンも「僕も愛している」と言うのですが、………。

(注10)セバスチャンは、モダン・ジャズの初期の頃のビ・バップを特に好んでいるようです。
 例えば、家でピアノを練習しているシーンがありますが、その際は、セロニアス・モンクの「荒城の月」(「Japanese Folk Song (Kojo No Tsuki)」:音はこちらで)の音楽を聴きながら、それを真似しようとしています。

(注11)セバスチャンが、キースのバンドに入って演奏しているのを見たミアが、「あの音楽が好きなの?」「自分の音楽を弾くために店を持つのじゃなかったの?」と詰って喧嘩になったり、自分の一人芝居が不評だったことに落胆してミアが実家に引っ込んでしまったりと、2人の仲は決して順調ではありませんでしたが。

(注12)と言っても、ミアは、映画撮影のためパリに行くとはいえ、1年も2年もかけて撮影するわけではなく、せいぜい2、3ヵ月でしょう。パリで撮影した映画が当たったと言うのですから、ミアは、すぐにハリウッドに戻ってきて、次の作品の撮影に入ったのではないでしょうか?
〔追記:この点については、下記コメント欄の「KGR」さんからのコメントをご覧ください〕

(注13)セバスチャンにしても、ロスに残っていて、ミアが人気女優になったことがわかったはずです。彼の方から、どうして連絡を取らなかったのでしょうか?
 あるいは、セバスチャンは、ミアの足を引っ張ることはしないように連絡を控えたのかもしれません。
 とはいえ、ミアはセバスチャンに連絡しても良いのではないでしょうか?

(注14)と言っても、上記「注12」で申し上げたように、「遠距離恋愛」とするのは大仰すぎますが。

(注15)実際には、自分の店でセバスチャンが「City of Star」を演奏し出すと、本作は突然ファンタジーの世界となります。セバスチャンは、ミアと一緒にパリに行き、そこでジャズ・ピアノを弾くだけでなく、ミアと結婚して子供まででき、幸せな生活を送るのです。
 これは、あるいは、「City of Star」の演奏中にセバスチャンが抱いた妄想なのかもしれません。
 そうではなくて、もしかしたら、ありえたかもしれない未来を、もう一つの宇宙として監督が描き出したのかもしれません。



★★★☆☆☆



象のロケット:ラ・ラ・ランド

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クマネズミさんブログ (iina)
2017-03-21 11:06:35
クマネズミさん宅は、いつもリンクがたくさん貼りつくし、注釈が15もつくくらい力作なのですが、コメントに訪れる方は
少なかったりすると もったいない気もおこるというものです。

日本では、季節を春夏秋冬と使いますが、「冬」から起草というか起歌したものの、高速ハイウェイは空が抜けるほど
青くて、すがすがして滑り出しました。

いずれにせよ、 ケッコウなミュージカル でした。

Unknown (クマネズミ)
2017-03-21 18:44:50
「iina」さん、TB&コメントをありがとうございます。
ロサンゼルスは、元々緯度が低いために冬でも暖かく、その上寒流のせいで、夏でも涼しいのだそうです。そんなところでは、日本とは季節感が異なるのかもしれませんね!
これからもよろしくお願いいたします。
パリでの期間 (KGR)
2017-03-25 01:03:07
まだ、自ブログに感想を上げていない段階ですが、オーディションの際にプロデューサーらしき男性が「リハ4カ月、撮影4カ月」と言ってました。
(撮影は6カ月だったかも)
撮影が終わってから公開まで1年程度かかることは珍しくないので、ミアが評価されるまでは2年程度かかったものと思われます。
Unknown (クマネズミ)
2017-03-25 06:56:44
「KGR」さん、とても貴重な情報をわざわざコメントでご教示いただき、誠にありがとうございます。
クマネズミは聞き逃してしまいました。
そうだとしたら、ミアはしばらくは雌伏していたことになります。
ただ、だからといって、人気の出たミアにセバスチャンが連絡を取らなかったり、逆に、ミアがセバスチャンを探さないで結婚のことを連絡しなかったというのは、理解できない感じもするのですが。

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