映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

SCOOP!

2016年10月14日 | 邦画(16年)
 『SCOOP!』をTOHOシネマズ渋谷で見てきました。

(1)大層面白かった『バクマン!』の大根仁監督の作品ということで映画館に行ってきました。

 本作(注1)の冒頭は、神宮球場前に駐車した車の中。時間は午後10時19分。
 張り込み中のカメラマン・都城静福山雅治)は、女を抱いています。
 ことが終わると、静は女に金を渡し、「たまにはホテルでしない?」と訊くと、女は「また連絡してね」と応じて車から出ていきます。
 次いで、狙っているプロ野球選手・須山鈴之助)の車が球場から出てくると、静はその車の後を追いかけます。

 タイトルが流れた後、場面は写真週刊誌『SCOOP!』の編集部。
 新人記者の行川野火二階堂ふみ)が、副編集長の横川定子吉田羊)のところに出向くと、定子から現場に出向くよう命じられます。
 「今からですか?」と野火は嫌な顔をしながらも、タクシーに乗って出かけます。

 他方、静は、ターゲットの選手・須山が入ったバーに入り、席に座って、騒いでいる須山を狙って密かにカメラを構えます。
 その時、野火がバーに現れ、「話を聞いてこいと言われたんですけど」と言いながら選手の近くに歩み寄ります。須山が「取材?」と訝しがると、野火は「コメントとか、好きな食べ物とか」と答えるものですから、彼は「どこのもんじゃ!」と怒り出し、野火は慌てて逃げ出します。

 バーの外に出た静は、ゴミ箱に隠れている野火を見つけ出し、編集部に連れていきます。
 定子を見つけると、静は「どういうつもりだ!こんなドシロートを現場によこして!現場やってるの分かってんだろ」「撮り損ねたんだ、5万よこせ」と大声で怒鳴り散らします。
 これに対し定子は、「あの子をあんたに付けるから。記者を育てなきゃいけない。このままじゃ、ウチはグラビア雑誌になってしまう」と言います。
 すると静は、「あんたのところが潰れても、他に持ち込むだけのこと」「あいつは処女だ」などと言います。
 ですが定子は、「しばらくウチの専属となってあの子と組んでもらいたい。スクープネタ1本につき30万払うから」と応じます。

 こうして、静と野火のコンビが誕生するのですが、さあ、物語はどのように展開するのでしょうか、………?

 本作では、ベテランの凄腕カメラマンと新人の女性記者のコンビが、スクープをものしようとして尽力する様子が描かれています。いわゆるパパラッチですが、彼らを演じる福山雅治と二階堂ふみの演技が素晴らしく、それに情報屋を演じるリリー・フランキーの怪演が加わって、なかなか面白い映画に仕上がっています。

(2)本作を見て、少し前にDVDで見た『ナイトクローラー』(2015年)を思い出しました。
 同作では、主人公のルイスジェイク・ギレンホール)が、事故現場をビデオカメラで撮った映像をテレビ局に売る商売をしていて、芸能人などの問題場面をカメラで撮影した画像を雑誌社に売り込む本作の静とはやや異なっています。
 でも、両作の主人公がパパラッチであることは変わりがなく、より高い値段で自分の撮影したものを買い取ってもらおうとし、買い取る側の方もより刺激的なものを求めます。
 さらに、両作の主人公は、必須の移動手段として車を縦横に使いこなし、また相棒を横に従えています。



 ただ、『ナイトクローラー』では、ルイスの助手・リックリズ・アーメッド)は、ルイスに反抗的な態度を取ったために死ぬ羽目になりますが、反対に、本作の野火は静とベッドを共にすることになります。
 『ナイトクローラー』でも、ルイスとテレビ局のディレクター・ニーナレネ・ルッソ)とが性的関係を結ぶとはいえ、どうも愛情関係にあるとは思えませんし、メインの話になってもいません。
 これに対し本作においては、静を巡る定子や野火の男女関係が、かなり中心的に描かれている感じがします。
 加えて、本作で焦点が当てられるのは、静と、情報屋のチャラ源リリー・フランキー)や雑誌社のもう一人の副編集長の馬場滝藤賢一)との友情でしょう(注2)。
 このように、本作と『ナイトクローラー』は、類似する点があるとは言え、かなり異なっているかもしれません。

 そして、本作には、もう一つ特色があるように思いました。
 登場人物が、何かと苛つき、怒っているシーンが多いのです。
 これは、最近『怒り』を見たせいかもしれません。ただ、同作では、タイトルで言うほどの“怒り”を感じることができませんでしたが(注3)、むしろ本作で、皆が何かと苛ついて“怒って”いるのが目につきました。
 例えば、静は、ロバート・キャパに憧れてカメラマンになったにもかかわらず、中年になってもパパラッチをやっていることに苛立っています(注4)。



 野火は、憧れの出版社に就職したにもかかわらず(注5)、写真週刊誌の編集部に回された挙句、静と一緒に車の中で張り込みをしなくてはならず、「マジ最低ですね、この仕事」「私の青春、返してください」などと悪態をついたりします(注6)。



 また、チャラ源も、離婚した妻の妨害で娘に会うことができない状況に怒っています(注7)。

 本作は、登場人物の間の男女関係が生み出すエネルギーに、こうした「怒り」のエネルギーとでもいえるものが絡み合って、全体として大層生きのいい作品に仕上がっているのでは、と思いました(注8)。

 ただ、クマネズミとしては、二階堂ふみの本作における演技は素晴らしいものがあるものの、もう一歩飛躍してほしいな、とも思ったところです(注9)。

(3)渡まち子氏は、「一番印象に残るのはチャラ源を演じるリリー・フランキーの怪演。チャラ源と静の、少しいびつな友情に哀愁が漂っていた」として60点を点けています。
 毎日新聞の鈴木隆氏は、「2人のかみ合わない会話のおかしさ、笑える取材方法、吉田羊やリリー・フランキーら周囲の濃厚なキャラクターでぐいぐい見せて、エンタメ度はラストまで途切れない」と述べています。
 安部偲氏は、「惜しむらくは本作が、前半がチャラめで、後半からクライマックスにかけてかなりシリアスな物語が展開していく構成になっているのだが、そのギャップが思いのほか大きく、ややまとまりに欠けてしまった印象を受けた点」と述べています。



(注1)監督‥脚本は、『バクマン。』の大根仁
 原作映画は、『盗写1/250秒』(1985年:監督・脚本は原田眞人)。

 なお、出演者の内、最近では、福山雅治は『るろうに剣心 伝説の最後編』、二階堂ふみは『ふきげんな過去』、吉田羊は『脳内ポイズンベリー』、滝藤賢一は『64 ロクヨン 後編』、リリー・フランキーは『秘密 THE TOP SECRET』、斎藤工は『団地』、塚本晋也は『シン・ゴジラ』で、それぞれ見ました。

(注2)こうした方面は『ナイトクローラー』では重視されず、むしろ、法律に違反したり、現場の状況を改変したりしてまで刺激的な映像を求めるルイスの姿が描かれています。

(注3)映画「怒り」についての拙エントリの(2)をご覧ください。

(注4)と言っても、文芸誌の編集長の多賀塚本晋也)に、「まだ、スクープやってんのか。作家の肖像画を掲載することになっているが、お前やらないか?」と求められて、持ち前のプライドからか、「やらない」と静は答えるのですが。

(注5)ファッション誌の編集を希望していました。

(注6)尤も、斎藤工の扮する国会議員・小田部新造の不倫写真を撮るべく、隣接のホテルの屋上で大々的に花火を打ち上げたりした際には、「最高ですね、この仕事」と言うようになるのですが。

(注7)定子は、担当している写真週刊誌『SCOOP!』の売上が伸びないのに相当頭にきています。また、もうひとりの副編集長の馬場は、定子に対する対抗意識丸出しで、定子の方針にいつも苛ついています。



(注8)もちろん、スクープ写真を撮る技法を静が野火に伝授するシーンもなかなか面白いのですが(例えば、上記「注6」で触れているシーンとか、凶悪な殺人犯の顔写真を撮るシーンなど)。

(注9)本作において静と野火のベッドシーンは重要なものと思いますが、野火が下着をつけたままなのには引いてしまいました。もちろん様々な考慮が働いているのでしょう。でも、写し方を工夫すればなんとかなると思われますし、『この国の空』ではもっと先をいっているのですから、二階堂ふみにも頑張ってもらいたかったと思います。尤も、本文の(1)でも記しましたように、野火が“処女”なのかどうか静が騒いでいますから、そういうところからあのような表現になったのかもしれませんが。



★★★☆☆☆



象のロケット:SCOOP!

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4 コメント

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Unknown (atts1964)
2016-10-16 19:58:36
私は福山君にあまり思いいれが無いので、こういう役をやるんだと思っちゃいましたが、大根監督にしては物足りないと言う人も多いみたいですね。
冒険ですが、福山君とリリー氏をさかさまにしたら、画期的だと思いましたが。
作品はそこそこ面白く、大根監督の手腕が見えました。
こちらからもTBお願いします。
Unknown (クマネズミ)
2016-10-16 20:37:06
「atts1964」さん、TB&コメントをありがとうございます。
そうですね、クマネズミも、福山雅治や二階堂ふみがもう少し突っ込んだ演技をしてくれたらな、という感じでした。それでも、おっしゃるように、「作品はそこそこ面白く、大根監督の手腕」がうかがえると思いました。
Unknown (ふじき78)
2016-11-05 00:38:04
ちなみに、ナイトクローラーのレネ・ルッソが処女かどうかなら賭けてもいいです。
Unknown (クマネズミ)
2016-11-05 05:29:17
「ふじき78」さん、TB&コメントをありがとうございます。
レネ・ルッソは、『ナイトクローラー』制作時には60歳くらいであり、なおかつその監督のダン・ギルロイと結婚して娘までもうけているのですから、“賭ける”までもありません!

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