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映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

ロスト・バケーション

2016年08月12日 | 洋画(16年)
 『ロスト・バケーション』を渋谷シネパレスで見ました。

(1)予告編を見て面白そうに思い、映画館に行ってきました。

 本作(注1)の冒頭では、海岸でボールを蹴って遊んでいる男の子が、ウェアラブルカメラの装着されたヘルメットが流れ着いているのを目にします。
 男の子はそのカメラを手にして、保存されている映像を見ます。その映像には、サーフィンをしている男性が写っていますが、突然なにものかに襲われたようで、大声で叫んでいます。
 これを見た男の子は走り去りますが(注2)、海岸には壊れたサーフボードが打ち上げられています。

 ここでタイトルが入り、続いてメキシコの海岸に向う車が映し出されます(注3)。
 乗っている医学生のナンシーブレイク・ライブリー)が、運転している現地人のカルロスオスカル・ハエナダ)に写真を見せて、「以前、ママがここに来たことがある。これはその時の写真。妊娠していた。それで生まれたのが私」、「ママは癌で死んだばかり」などと話します。
 また、ナンシーは、「一緒に来た友達のアンナはホテルにいる。テキーラを飲み過ぎて悪酔いした」とか、「スペイン語は学校で教わっただけ。スペイン語よりも解剖のほうが得意」とも話します。

 目的地の海岸に着き、ナンシーは車から降ります。
 空中から俯瞰した映像が挿入され、そこが実に綺麗な入江であることがわかります。
 カルロスは「ここは楽園だよ」と言い、サーフボードを車から下ろします。



 ナンシーが謝礼金をカルロスに手渡そうとすると、彼は「うちはすぐそこだから」と言って受け取りません。別れ際にカルロスが、「ここからどうやってホテルに戻るの?」と尋ねると、ナンシーは「Uberよ」と答えますが、通じません(注4)。

 ナンシーは、日焼け止めオイルを塗ったり、ウェットスーツを着たりして、入念に準備をした上で海に入っていきます。



 既に、現地人のサーファーの男が2人海の中にいます。そのうちの一人が、ナンシーに「アメリカ人?」と尋ねるので、彼女は「そう、テキサスから来た」と答えます。

 こうしてナンシーは、とんでもない事態が待ち受けているとも知らずサーフィンを始めますが、さあいったいどうなるのでしょう、………?

 本作は、バケーションでメキシコのリゾート地にやってきた医学生が、凶暴なサメの襲撃から如何に独りで身を守るかというお話です。実に美しい海岸の風景の中に徐々に不気味なものが近づいてきて、彼女が独り狭い岩礁に取り残されてしまう上に、サメの襲撃が執拗を極めるものですから、見ている方のドキドキ感はこの上なく高まります。独り取り残された困難な状況からなんとか脱出するという映画はこれまでもいくつも作られているとはいえ、その中にあって本作はまずまずの出来栄えではないかと思いました。

(2)本作は、ある意味で、最近見たばかりの『シン・ゴジラ』と類似しているのかもしれません。何しろ、同作では、ゴジラという巨大生物(本作におけるサメに相当するかもしれません)に突然襲われた日本がいかにして単独で国土を守るのかが描かれているのですから。
でも、それでは話が大きくなりすぎてしまいます。

 むしろクマネズミは、本作のように動きのある作品とは対照的に動きの少ない作品ながら、『127時間』を思い出しました。
 同作では、米国ユタ州のブルー・ジョン・キャニオンに一人で自転車に乗って出かけた主人公のアーロンジェームズ・フランコ)が、誤って谷底に落下してしまいます。彼がどうやってそこから脱出するのか、というところが見どころの実話に基づいた作品です。

 両作とも、冒頭とかラストでは複数の登場人物が見られるとはいえ、大部分の時間は主人公一人の姿が映し出されます(注5)。

 そして本作では、サメに襲われたナンシーは、海岸から200mくらいのところにある岩場に逃げ場を見つけますが、そのまわりをサメがうろついているために動きが取れなくなってしまいます。



 加えて、その岩場は狭く、満潮になれば海面の下に隠れてしまうのです。そうなれば、サメの餌食になるのは必定でしょう。
 加えて、ナンシーは、サメに襲われた際に左足の大腿部に深い傷を負ってしまっていますし、また強い太陽光線にさらされてもいるのです。
 なんとか、早急にここを脱出して海岸にたどり着かないと、死ぬ他はありません。

 他方『127時間』では、本作のように凶暴な動物が襲ってくることはありませんが、ナンシーと同様にアーロンは隔絶した状況に置かれます。というのも、アーロンが谷底に落下した際、同時に落下してきた岩と石の壁との間に右手が挟まってしまい、身動きがほとんど取れない状態なのです。
 その上、アーロンが落ちたのは人が付近を通っても気が付かないほど入り組んだ谷底であり、なおかつ彼は携帯電話などの連絡手段も持ってはいません。
 なんとか自力でそこを脱出しなければ、死ぬほかないという状況です。

 こうした状況から脱出するために、本作では、ナンシーが、乾坤一擲、近くに浮かんでいる金属製の大きなブイのところまで泳いで行こうとします。
 また、『127時間』の方でも、のるかそるかの一大決心をします。

 その結果、ナンシーもアーロンもなんとか窮地を脱出することができるのですが、両作ともそこに至るプロセスが実に上手く描かれていて、単純極まるシチュエーションながら、見るものの関心を逸しません。

 更に言えば、両作においてはビデオカメラがかなりの役割を果たします。
 本作では、上記(1)のはじめの方に記したウェアラブルカメラの映像がナンシーの救出に繋がりますし(注6)、『127時間』では、谷間に落ちた自分の様子を持っていたビデオカメラに収め、救出後は、その映像を基に同作が制作されることになるのです。

(3)渡まち子氏は、「大ヒット作「ジョーズ」以来、サメ映画は常に作られているが、本作ではヒロインがたった一人で戦うこと、すぐそこに岸が見えているのにたどり着けないというもどかしい状況など、個性的な設定とサバイバルの方法に創意工夫があり、上映時間90分の間、緊張感が途切れることがまったくない」として70点をつけています。



(注1)監督は、ジャウマ・コレット=セラ
 原題は「The Shallows」(邦題はどのような意味なのでしょう?)。

 なお、ブレイク・ライブリーは、『ザ・タウン』で見ました。

(注2)これがラスト近くのシーンに繋がります。

(注3)本作の舞台はメキシコ海岸とされていますが、ロケ地は、劇場用パンフレット掲載の「Production Notes」によれば、「オーストラリア シドニーの約700キロほど北東に浮かぶ小さな島ロード・ハウ島」とのこと。

(注4)なお、ナンシーは、車の中で2度ほど目的地の海岸の名前をカルロスに尋ねるのですが、なぜか2度ともカルロスはまともには答えないのです〔1度目は無視しますし、2度目は「気をつけて」と言うだけです(まさか、“Cuidese”(?)という名称ではないでしょう!)〕。

(注5)本作では、ナンシーのそばに傷ついたカモメがいて、見ている方は心が和みます。他方、『127時間』でもワタリガラスの飛ぶ姿が映し出されるものの、アーロンとの交流はありません。

(注6)海岸で子供が見たのは、男のサーファーがサメに襲われる映像でしたが(その男のヘルメットにウェアラブルカメラが装着されていました)、ナンシーは、そのヘルメットを拾い上げて、自分の様子や家族へのメッセージなどを収録します。



★★★☆☆☆



象のロケット:ロスト・バケーション

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4 コメント

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Unknown (ふじき78)
2016-08-17 00:13:32
主人公の名前がせっかく「ナンシー」なのだから、ビーチの方に早見優さんに来てもらい、「鮫の気を引く」という大義名分で「夏色のナンシー」を歌ってもらいたい。
Unknown (クマネズミ)
2016-08-17 06:40:50
「ふじき78」さん、わざわざコメントをありがとうございます。
「ナンシー」からいきなり早見優の「夏色のナンシー」にジャンプするという「ふじき78」さんの早業に脱帽です!
何より、歌詞に「along the beach summer time」とあるのですから、本作にぴったりです。
クマネズミが「ナンシー」から思いつくのは、せいぜい「ナンシー関」ぐらいです!
Unknown (atts1964)
2016-08-17 08:29:36
これは少ない登場人物と、ほとんど同じロケーションという、動きの少ない環境を最大限生かしていた上手い作りでした。
殆どタイマン勝負で、あの決着の仕方と、かもめが可愛かったですね。
こちらからもTBお願いします。
Unknown (クマネズミ)
2016-08-17 19:58:08
「atts1964」さん、TB&コメントをありがとうございます。
おっしゃるように、本作は、「これは少ない登場人物と、ほとんど同じロケーションという、動きの少ない環境」によっていますが、拙エントリで申し上げましたように、『127時間』に比べれば、ずっと運動量の多い映画のように思えました。

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