映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

荒川アンダーザブリッジ

2012年03月01日 | 邦画(12年)
 『荒川アンダーザブリッジ The Movie』を渋谷のシネマライズで見てきました。

(1)この映画は、今週取り上げました『キツツキと雨』で好演した小栗旬が出演していると聞きつけて、原作のことは言うに及ばず、アニメやTVドラマについてもマッタク知らなかったものの、今週の“邦画連チャン”の一環として、映画館に出かけてきました。

 物語は、大手建設会社の御曹司の市ノ宮林遣都)は、父・市ノ宮上川隆也)から荒川河川敷の開発を任せられ、現地に赴きますが、とんでもない者たちがその地区を不法に占拠していました。
 そこでは、河童の格好をした“村長”(小栗旬)がいて、また星型のマスクを被った“”(山田孝之)、それに金星からきたという“ニノ”(桐谷美鈴)など、実に風変わりで興味津々たる連中が暮らしています。



 それも、ニノたちは、外見上普通の女の子といった風情ですが、“村長”は、河童のかぶりものをしているのが歴然としているにもかかわらず(注1)、絶対にそのことを認めようとはしません。また、“星”も、普通の若者が着るような衣装を着用しているものの、頭は星の格好をしたものを被っていて、「ROCKかROCKじゃないか」を行動原理にしていると言うのです!

 さて、主人公の行はリクという名を与えられて、そこで皆と一緒に暮らし始めますが、やがてリクの心は、父からの命令遂行よりも、ここでの皆の生活を守ろうとする方向に傾きます。

 それに、リクは、金星からの少女ニノに次第に惹かれるようになっていきます。
 切っ掛けは、川の中に誤って落ちてしまったリクを、ニノが飛び込んで救助してくれたこと。というのも、市ノ宮家の家訓では、「他人に借りをつくるべからず」とされていて、救助されたお礼に何をしてほしいかとリクがニノに尋ねたところ、彼女が「私に恋をさせてくれないか」と答えるものですから、「はい」と答えざるを得ず(なんといってもニノは、リクの命の恩人なのですから!)、その結果リクは、ニノから離れられなくなってしまうのです。

 マア、原作が“デンパな”漫画ですから、荒唐無稽と言えば荒唐無稽なお話ながら、最初からそういうものだと思って見れば割とスンナリ受け入れ可能であり、これだけの俳優をそろえてこんな面白いキャラクター設定をしているのだったら、逆にもっともっと想像力の羽を思い切り広げてもらったら、とも思いました。
 ただ、河川敷の開発阻止とニノの金星帰還という現実的な事柄を最後に持ってきて話をまとめようとしたら、こんなところになるのでしょうか。

 主演の林遣都は、『パレード』で見ただけですが、まだ21歳で、実に清々しく活気のある主人公・市ノ宮行を演じているなと思いました。



 ヒロインのニノに扮する桐谷美鈴は、『ジーン・ワルツ』でなかなか重要な役(青井ユミ)を演じていましたが、本作では、金星人というまた一風変わった役をうまくこなしています。なにしろ、他の住人とは違って殊更なかぶりものをしておらず、それでいて地球人とは異なる雰囲気を出さなくてはいけないのですから大変です(なお、桐谷美鈴は、行の母親役まで演じています)。



 小栗旬については、チラシなどから本作に出演していることは分かっていましたが、途中まではこの河童の姿をした“村長”が彼だとはわかりませんでした。相当厚くメイクをしているのでしょうし、それだけこの役に入れ込んでいるのでしょう!




(2)他の情報なしに映画を見ると、登場人物が皆酷く不思議な存在に思えて、いったい原作の中村光氏の漫画ではどうなっているのだろうか、と確かめてみたくなってしまいます。
 ただ、原作の漫画は2004年から雑誌に連載されていて、単行本も現在12巻まで刊行されています。そんなものをすぐに読めるはずもありませんから、ここではグッと範囲を絞って、その第1巻で描かれている世界と映画の世界との相違点につき、簡単に述べるだけにいたしましょう(ですから、漫画の後の巻で違ったことが描かれている可能性を排除しません)。

 まず、映画では、行の父親が、不法占拠者がいる地域の開発を息子に任せると言い、それで行が荒川にやってくることになるわけですが、漫画では、いきなり荒川の橋の上での行とニノとの出会いとなります。漫画の場合、行が荒川にきた理由は第1巻からはわかりませんが、映画においては、ラストとの関連もあって冒頭に状況説明がなされているのでしょう。

 また、リクと名付けられた行が河川敷で住む場所は、漫画の場合、リクがにのと出会った橋の橋脚の上です(それで、タイトルが「アンダーザブリッジ」となっているのでしょう)。他方映画の場合は、ニノが暮らす住まいからやや離れた場所にテントが設けられます。そうすることによって、二人の関係がそんなに急速には高まらないように、次第に恋愛関係に行きつくように考えられているのかもしれません。

 さらに、リクの年齢ですが、漫画によれば(第2話冒頭)20歳となっているところ(注2)、映画では明確になっていません。ただ、映画の場合、父親からきちんと一つの事業を任されたことや、経営のトップとなっている会社には2人もの秘書がいるところからすると、もしかしたら大学を卒業しているとも思われるところです(漫画のように、学生社長でもかまいませんが)。

 というように、映画は、映画なりの事情等から原作から離れて作られているようで、その最たるものは河川敷の開発阻止とニノの金星帰還といえます。原作はアンダーコンストラクションなのにもかかわらず(注3)、映画の方は2時間ほどで終えなくてはならないのですから、何らかのオチを持ってくる必要があるのでしょう。

 とはいえ、河川敷の開発阻止の話には、父親・積と息子・行の対立と和解という展開が重なって(注4)、“またもや”の感じになってしまいます(注5)。

 また、ニノが実際に金星に帰還してしまうとなると、人間かなんだかわけのわからない存在として興味深かった河川敷の不法占拠者たちが、全部ではないにせよ、少なくとも一人は、本物の異界から来たんだということになってしまい(注6)、折角の設定が曖昧なものになりかねません。
 なによりも、ニノは、物事を知っているようで実は知らないという中間的な地点に立って、リクの行動をあれこれ論評したりするところ、普通は常識にとらわれて疑問に思わない点を衝いている感じで、この映画の面白さの一つになっているからですが。

(3)渡まち子氏は、「小栗旬や山田孝之ら、豪華キャストがヘンテコな役を楽しそうに演じているのは愉快だが、漫画と違って、実写映画ではギャグ漫画的なキャラの面白さは限界があった。その意味でも、リクとニノのファンタジックな恋愛を主軸にしたのは正解だったかもしれない」として55点を付けています。




(注1)河童の“村長”は、身にまとっている緑色のウエットスーツのファスナーが背中にはっきりと見えていたり、背中の甲羅が取り外し可能なプラスチック製だったりするのです。ただ、顔面は緑色にたっぷり塗られていて、なかなか演じている俳優を特定することができません。

(注2)原作漫画に関するWikipediaの記事によれば、「22歳。172cm。56kg(264話では50kg)。乙女座。A型」とされていますが。
なお、行は、T大をストレートで合格し、在学中の模様〔でも、漫画では(映画でも)大学に通学しているようには、全くうかがわれません〕。

(注3)漫画の連載は、原作者の産休で半年ほど休止状態だったところ、この4月から雑誌掲載が再開されるとのこと。

(注4)母親を交通事故で失い〔高嶋政宏扮する国土交通大臣の話によれば、事故で意識不明となりながらも行を産み落としたとのこと〕、あとに残された息子は、親の愛情なしに大きくなったようです(父親は仕事に邁進)。
 母親がいない家庭という設定は、すぐ近くでは、『キツツキと雨』でも見受けたところです。

(注5)特に、父親の積が、息子の行の様子をビデオや盗聴で探っている光景とか、高嶋政宏の国土交通大臣の唐突な登場などは、“デンパ”なファンタジーに現実的要素を入れ込みすぎではと思いました。

(注6)スピルバーグ監督のETとか、『スーパーエイト』における異星人の帰還のような。




★★★☆☆





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3 コメント

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小栗君と山田君の。 (みぃみ)
2012-03-01 09:43:28
ドラマ版で初めて見たあのビジュアルには衝撃でしたが、だんだん独特の世界に嵌っていきました。
ニノとリクの恋物語は可愛らしかったですし、
住人達とリクの関係も上手くまとめたな~と思いました。

秘書にもらったあの飲み薬が…実は!にはびっくり!。親の愛だったとは~。。。
Unknown (KLY)
2012-03-04 20:49:58
基本的にはドラマDVDや原作の宣伝映画かなと思うんですよ。どのみち映画の尺ではこの面子を全員フィーチャーは出来ないですしね。
実際時間が許すなら私も原作やドラマを観てみたいなって思いましたから。
林くんは個人的には『風が強吹いている』が一番好みです。駅伝をテーマにしたいわゆるスポコンものですけども。
Unknown (クマネズミ)
2012-03-05 18:37:54
KLYさん、TB&コメントをありがとうございます。
本作について、「基本的にはドラマDVDや原作の宣伝映画」とありますが、確かにそういう面が大ありだと思いますが、それは前半部分があってコソの話で、後半部分だけだったらドラマDVDや原作に対する好奇心は、こんなにも湧いてこなかったものと思います。

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