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新宿スワンⅡ

2017年02月07日 | 邦画(17年)
 『新宿スワンⅡ』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。

(1)前作の『新宿スワン』が大層面白かったので、続編もと思い映画館に行ってきました。

 本作(注1)の冒頭では、新宿の繁華街の夜景が映し出され、雑踏の中を人々が行き交い、救急車のサイレンが鳴ったりします。
 タイトルが流れた後、主人公の龍彦綾野剛)が、繁華街を歩きながら「俺はスカウトマン。今はスカウトマンのゴールデンタイムだ」などと呟いています。



 さらに、「メンバーも変わった」「秀吉が死んで1年」と龍彦が言うと、秀吉山田孝之)が銃で撃たれて階段を落下する映像が流れます。
 また、「仲が良かった洋介久保田悠来)も、いつの間にか消えた」と呟きます。

 若い女(広瀬アリス)が龍彦に近づいてきて、「あたし、マユミと言います」と名乗るので、龍彦が「で、どうした?」と水を向けると、彼女は「借金が200万あるの。気付いたら随分と増えてた」と言うので、龍彦は「ちゃんと返そうな」と応じます。
 そこへ「揉めている」と仲間(桐山漣)が告げに来たので、龍彦はマユミに、涼子山田優)の店・ムーランルージェの名刺を渡し、「ここに連絡して」と言ってその場所に急ぎます。

 揉めているのは、龍彦の所属するバーストが抑えている新宿歌舞伎町に、渋谷のスカウト会社のパラサイツのスカウトマンが現れたため。
 龍彦が現れると、パラサイツの幹部の森長上地雄輔)が「お前と勝負だ。お前には貸しがある」と言って、龍彦に飛びかかります。
 しかし勝負はつかず、森長が「最高だな」と言い、龍彦も「今度やる時は10発ぐらい増やしてやる」と相手を認めあっていると、警官がやってきて解散させられます。

 場面は変わって、バースト社。幹部が集まっています。
 社長の山城豊原功補)が「現場の揉め事が多いな」と言うと、深水元基)が「だから、ハーレムとの合併には反対だった」と呟き、さらに社長が「2割位スカウトが減ればいいのでは?」と言うと、葉山金子ノブアキ)が「旧ハーレムの連中を減らしますか?俺の裏切りがあったと言われてますし」と応じます。
 社長はそれには取り合わず、「方法は一つしかない、シマを広げるんだ」と言います。
それに対し、関が「どこへ向かって?」と訝しがると、真虎伊勢谷友介)が「横浜だよ」と答えます。



 関は「横浜は無理だ」と言うのですが、社長は「洋介が横浜にいるらしい。関、龍彦を連れて行け」と命じます。

 こうして、横浜進出を図るバーストと、それを迎え撃つウィザード〔社長は浅野忠信)〕との熾烈な戦いが始まりますが、さあ、どのような物語になるのでしょうか、………?

 本作は、新宿歌舞伎町を牛耳っているスカウト会社が、横浜に進出しようとして、横浜のスカウト会社と対立抗争することになるというお話。ただ、なんだか『土竜の唄 香港狂騒曲』と同じような雰囲気が漂っていて、主役の綾野剛が前作同様の熱演ですし、前作の沢尻エリカや山田孝之に代わる広瀬アリスや浅野忠信らもなかなかの演技を披露するとはいえ、総じて前作ほどのヴァイタリティーが感じられませんでした。

(2)本作では、逆に歌舞伎町に進出してきたウィザードのハネマン中野裕太)らと、それを撃退しようとするバーストの龍彦らとの激しいバトルが繰り広げられたり(注2)、深い因縁のある関と滝との殴り合いに龍彦が割って入って、龍彦が滝と向かい合って戦ったりするなど、次々に映し出されるアクションシーンは、谷垣健治をアクション監督として迎えたこともあり、大変見応えがあります。
 また、ウィザードを裏で支える暴力団・宝来会の会長・田坂とか県警の砂子を演じる中野英雄笹野高史などの凄みもなかなかのものです。
 勿論、横浜に進出しようとするバーストを迎え撃つウィザードの社長・滝を演じる浅野忠信の存在感もタダモノではありません(注3)。

 また、本作でも、前作において沢尻エリカが演じたアゲハと同じように、借金に苦しむマユミをヒロイン的な存在として描いています。

 とはいえ、前作は、とにかく龍彦に扮した綾野剛の瑞々しく溌剌とした演技に圧倒されましたが、本作での龍彦は、既にバーストの中間管理職になっているところから描かれていることもあるのでしょう、前作のような弾けっぷりが見られない感じがします。
 例えば、橋の上から川に飛び込んだマユミを龍彦が追いかけて飛び込むシーンは、アゲハが、龍彦と手をつないで歌舞伎町の街を薄いものを羽織って裸足で走る前作のシーンほど感銘を受けるものではありませんでした。

 それに、全日本主犯連合会の会長・住友椎名桔平)の提案で行われる「クイーンコンテスト」ですが、何を基準として勝者が選ばれるのかイマイチはっきりしていない上に(注4)、『土竜の唄 香港狂騒曲』で催される人身売買のパーティーとよく似た感じがしてしまいます。
 そう言えば、本作はスカウト会社の闘いが描かれているとはいえ、背後には、紋舞会〔会長は天野吉田鋼太郎)〕とか宝来会といった暴力団が控えているのであり、数寄矢会などの暴力団の抗争が描かれる『土竜の唄』と構造は類似している感じがします。

 総じて言えば、本作で中心的に描かれるのは浅野忠信が演じる滝であって、本来の主人公である龍彦は、むしろ狂言回し的な位置づけとなってしまっているように思えました(注5)。
 『新宿スワンⅢ』が作られるのであれば、再び、龍彦を巡る作品にしてもらいたい感じがします(注6)。

(3)渡まち子氏は、「何しろ、登場人物が多いので、133分という長尺の間、どうにもゴチャゴチャしてしまった感は否めない。内容も、いろいろと詰め込みすぎて、交通整理がうまくいってない印象だ」として55点を付けています。



(注1)監督は、前作同様、園子温
 脚本も、前作同様、水島力也
 原作は、和久井健著『新宿スワン』(講談社)。

 なお、出演者の内、最近では、綾野剛は『怒り』、浅野忠信は『沈黙-サイレンス-』、伊勢谷友介金子ノブアキ山田優豊原功補吉田鋼太郎は『新宿スワン』、椎名桔平は『秘密 THE TOP SECRET』、深水元基は『ラブ&ピース』、村上淳は『太陽』、久保田悠来は『SCOOP!』、上地雄輔は『土竜の唄 香港狂騒曲』、広瀬アリスは『銀の匙 Silver Spoon』、中野英雄は『Zアイランド』で、それぞれ見ました。

(注2)ホストの顔が写っている何枚ものパネルが貼られた巨大な看板が倒れてくる中を、龍彦が全力で駆け抜けたりします。



(注3)昨年の『淵に立つ』において浅野忠信が演じる八坂は、利雄古舘寛治)と一緒に罪を犯しながらも、一人でそれを背負って刑務所に入りました。それと同じように、本作の関も、滝を庇って自首して逮捕されます。八坂が出所した時に利雄は出迎えに行きませんでしたし、関が留置所を出た時に滝も出迎えませんでした。それぞれ事情があるとはいえ、関係はもとに戻らず、事態はむしろ悪い方向に進んでしまいます。
 『淵に立つ』と本作とで浅野忠信は180度異なる役柄を演じているものの、どちらも大層説得力ある演技を披露します。

(注4)舞台の前に審査員席があり、そこに全日本主犯連合会の会長・住友などが座っていて、コンテスト出場者にいろいろ質問などをしているにもかかわらず(ラストで、住友がマユミに「特技は?」と尋ねると、マユミはバニーステップを披露します)、最後に、涼子ママが配下のキャバクラ嬢を大量(54人)に連れてきてコンテストに参加すると、結局は、「98対92」でバーストがウィザードに勝ってしまうのです。これでは結局、コンテスト出場者の「質」ではなく、どちらのスカウト会社がキャバ嬢をより多く集めたのかの争いに過ぎなかったということになってしまいます。



(注5)龍彦が、親しかった洋介と絡んでくる場面がモット描かれれば違ってくるかもしれません。洋介は、滝の女のアリサ高橋メアリージュン)が洋介を薬漬けから救出しようとすることに絡んで描かれるに過ぎません。

(注6)ラストで、真虎が「これですべてが解決した。滝が死んで、関は横浜に残った。これで葉山は幹部だ」「洋介が秀吉を殺したという事実に乾杯だ」などと言い、これだと『新宿スワンⅢ』が作られる可能性はなくなるでしょう。
 ただ、龍彦は、「葉山さんへの疑いは晴れない」、「真相はなんだろう?」、「真相はどこかに隠れている」などと呟きます。ここからすれば、『新宿スワンⅢ』の余地は残っているのかもしれません。
 また、本作において真虎がほとんど活躍しなかったことも、『新宿スワンⅢ』を予想させる要因に数えられるのかもしれません。



★★★☆☆☆



象のロケット:新宿スワンⅡ

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Unknown (atts1964)
2017-02-07 14:04:16
前作のアゲハは破滅的でしたが、今作のマユミは基本は明るい女の子でしたね。もちろん悩みが深く自殺願望も強いんですが、ラストは対照的でした。
園監督らしくないスッキリした作り、面白いんですが、監督らしくないところが(^^)
こちらからもTBお願いします。
Unknown (クマネズミ)
2017-02-07 18:59:28
「atts1964」さん、TB&コメントをありがとうございます。
おっしゃるように、本作は、「園監督らしくないスッキリした作り」ですが、本作には大ヒットの原作があり、園監督も、脚本に沿って制作しようという姿勢で臨んでいますから、園監督の他の作品とは雰囲気が違っているのかもしれません。

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