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アサシン クリード

2017年03月20日 | 洋画(17年)
 『アサシン クリード』を吉祥寺オデヲンで見ました。

(1)このところあちこちで見かけるマリオン・コティヤールが出演しているというので、映画館に行きました。

 本作(注1)の冒頭では、「数世紀の間、テンプル騎士団(the Order of Knights Templar)は、神秘的なエデンの果実(Apple of Eden)を探し求めていた。彼らは、それが、人間の不服従の根源であり、自由意思の基になるものであると信じていた。その遺物を見つけ出し、秘密を解き明かせば、彼らは、思考の自由を支配できる力を持つことができるだろう。彼らの行く手を阻むものはアサシン教団(the Assassins)だけなのである」との字幕が映し出されます。

 次いで、「1492年 スペイン アンダルシア」の字幕。
 黄昏過ぎの暗闇の中、中世の城の中庭では、マントを深くかぶった人達がごそごそ蠢き、刀を研いだりしています(注2)。
 そして、アサシン教団の導師(mentor)が、「ついに異端審問が当地でも始まった。スルタンはグラナダで持ちこたえているが、その息子の王子が捕らえられれば、スルタンはエデンの果実を差し出すことだろう」「アギラールよ、テンプル騎士団の圧政から人類を守ることを誓うか?」と尋ねると、アギラールと呼ばれた男(マイケル・ファスベンダー)は「誓います」と答えます。
 さらに、導師が「エデンの果実が奴らの手に渡れば、彼らを妨げるものすべてを破壊することだろう」、「命を投げ出すことを誓え」と言うと、アギラールは「はい、我々の命など無であり、エデンの果実こそ全てです」と答えます。



 そばにいたマリアアリアーヌ・ラベド)も、誓いの言葉を述べます。

 ここで、本作のタイトルが流れます。

 大鷲が、雲の間を縫いながら、山の上を飛んでいきます。

 次いで、「1986年 メキシコ バハ・カリフォルニア」の字幕。
 フードをかぶった少年・カラムが自転車に乗っています。
 いるところは建物の屋上。スピードをつけて、隣の建物に自転車に乗ったまま飛び移ろうとして失敗し、地上に落下してしまいます。

 カラムが自転車で家に戻ると、母親・メアリーエッシー・デイヴィス)が椅子に座ったままですが、血を流して死んでいます。
 ソバにいた父親・ジョゼフブレンダン・グリーソン)が手に大きなナイフを持っています。
 父親は少年に、「大いなる目的のためだ」「奴らが来るから、早く行け。闇に生きろ」と命じます。少年は屋根伝いに逃げます。

 さあ、物語は、この後どのように展開するのでしょうか、………?

 本作は、「エデンの果実」を巡る「アサシン教団」と「テンプル騎士団」との戦いを背景に、DNAに保持されている先祖の記憶を主人公に辿らせることによって、テンプル騎士団の現代の末裔が「エデンの果実」を手に入れようとて、…、という「ゲーム」に基づく物語。 
 舞台が、科学の発達した現代と、15世紀のスペインとの間で目まぐるしく変わり、正義派のように思える教団に“暗殺者”というネガティブな名称がついていたりするなど、何も情報を持たない者にとっては、物語の大まかな展開についていくのがやっとという感じです。おまけに、続編がありそうな雰囲気で終わるので、消化不良状態にもなってしまいます。  
 これでは、続編を見る気にはとてもなりませんでした。

(2)なにしろ、よくわからないことばかりです。

 本作では、ごく大雑把に言ってしまえば、世界を力で支配しようとする集団とそれを阻止しようとする集団との戦いが描かれています。
 後者が正義派であり、悪の集団である前者を打ち破るという、映画等でこれまでよく取り扱われてきたストーリーが、本作でも綴られます。
 具体的には、主人公のカラムマイケル・ファスベンダー)は正義派である後者に属し、前者の悪の集団に属するアランジェレミー・アイアンズ)らと戦うことになります。

 ところが本作では、前者に対し歴史上実在した集団の名称が与えられる一方で(この記事を参照)、後者に対しては“アサシン(暗殺者)”という現代のテロリストまがいの名称が付けられているので(注3)、わけがわからなくなります。
 そればかりか、カラムの先祖であるアギラールらの装束も、正体を隠すために、深いフォードをかぶり、アサシンブレードと呼ばれる「小型の隠し剣」(注4)を隠し持っています。まさに、テロリストそのものの格好です(注5)。
 それに、アギラールの末裔とされるカラムは、殺人事件を犯して死刑に処せられようとする男として本作に初めて登場します。とても、正義派には見えません。
 更に言えば、上記(1)に記したように、少年のカラムは、自分の父親が母親を殺したと思える現場を目にするのです。
 本作の主人公は、とても正義派とは思えない描き方をされています。

 さらに、アサシン教団は、公式サイトの「用語集」によれば、「人間の自由な意志や活動を尊重」するとされています。
 ですが、自由を求める集団が「アサシンのⅢつの掟」(注6)という鉄の掟で縛られているのは、本来的に矛盾しているのではないでしょうか?

 また、アランとソフィアマリオン・コティヤール)の父娘は、「アブスターゴ財団」(注7)の「アムニス」という装置を使って、カラムを通じて、「エデンの果実」の在り処を突き止めようとします。



 この「アニムス」は、公式サイトの「用語集」によれば、「(被験者の)DNAに保存された遺伝子の記憶を呼び起こす」装置とされています。
 でも、記憶は脳に保存されているのであり、遺伝子にそのような記憶など保存されてはいないのではないでしょうか?仮に、遺伝子に保存されているとしたら、一体、どの遺伝子の何処に保存されているのでしょう?また、仮に、記憶が遺伝子に保存されているとしたら、時間が500年以上も経過すれば、その遺伝子にはとてつもない量の記憶が保存されていて、とても遺伝子の形態を保持できないのではないでしょうか?
 それに、元々、記憶のような個人が個々別々に獲得するものは、次の世代に継承されないのではないでしょうか(注8)?

 もっと言うと、上記(1)に記したように、スペインのシーンが始まる冒頭に「1492年 スペイン アンダルシア」の字幕が流れます(注9)。これは、「エデンの果実」がC.コロンブスに関係してくるところから、彼のアメリカ大陸到達の年と連動させようとしたのかもしれません。
 ですが、彼がアメリカ大陸から戻ってくるのは、この記事によれば1493年ですし、その年も第3回目の航海に出発しています。
 アギラールは、一体いつコロンブスに会えたのでしょう(注10)?

 まあ、こうしたイチャモンは、描き出される映像が目をみはるような凄いインパクトを持っているのであれば、どうでも良くなるでしょう。
 確かに、15世紀のスペインを描いている映像は、アギラールとマリアが屋根伝いに逃げるシーンとか、上空を飛ぶ大鷲の視点からのものがあったりして(注11)、興味は惹かれます。



 でも、全体として、薄暗い中での映像が多く、特にアサシン教団側の人物はなかなか判別がつきません。
 それに、現代の時点でのアクションシーンでも、カラムに扮したファスベンダーが熱演しているとはいえ、通常のアクションシーンの行きを出ていない感じがします。

 なお、コティヤールは、父親・アランの影に隠れてしまいがちなソフィアを演じているために、期待したほどではありませんでした(注12)。

(3)渡まち子氏は、「この穴だらけ、かつ不親切なストーリーは、どうやら三部作の第一章ということが原因らしい。ともあれ、ラストも含めて、もやもやとした印象だけが残ってしまった」として55点を付けています。



(注1)監督はジャスティン・カーゼル
 ストーリーは、ゲームの「アサシン クリードシリーズ」に基づいています。
 原題は「Assassin’s Creed」。

 なお、出演者の内、最近では、マイケル・ファスベンダーは『スティーブ・ジョブズ』、マリオン・コティヤールは『マリアンヌ』、ジェレミー・アイアンズシャーロット・ランプリングは『リスボンに誘われて』で、それぞれ見ています。

(注2)画面が酷く暗くてはっきりしないのですが、アギラールの指が切断されるシーンがあるように思われます(下記の「注4」からすると、左手薬指を切断していたようです)。

(注3)この記事によれば、「暗殺教団」は、「イスラム教・シーア派の分派イスマーイール派(特にその一派ニザール派のシリアでの活動)に対する幻想的イメージに彩られた中世ヨーロッパ史料および東洋学、文学での呼称」であり、一時は「史実」として扱われたものの、「20世紀半ば以降、実際のニザール派の活動とは著しく乖離した伝説であることが判明している」とされています。
 本作における「アサシン教団」は、こうした伝説を拠り所にしているのでしょうが、本作を見る限り、彼らはイスラム教とは無縁の存在と思われますから、むしろ本作のために新たに作り出された架空の集団と考えるべきではないか、と思います。

(注4)公式サイトの「用語集」によります。
 なお、この記事の「登場人物」の「アンタイル」の項では、「特殊な刺突用の小刀(左手首に鞘がついており、小指に付けられたリングを引っ張ることで刃が飛び出す仕組み。アサシン達はこれの飛び出しが妨げられないよう皆左手薬指を切り落としている)」と説明されています。

(注5)まして、ラストで、カラムがアランの首を切って殺すのはISそのものではないでしょうか?

(注6)公式サイトの「相関図」の末尾に「アサシンⅢつの掟」が掲載されています。
 そのⅡ番めが「身をさらすなかれ」とされているところから、アギラーらは、誰だか判別を難しくする深いフードをかぶった装束を身につけているように思われます(ちなみに、他の掟は、「Ⅰ罪なき者に刃を向けるなかれ」「Ⅲ決して仲間を裏切るなかれ」)。
 この掟(クリード)が本作のタイトルとされているわけですから、相当重視されているものと思われます。

(注7)公式サイトの「用語集」によれば、「20世気に入ってから、テンプル騎士団が設立した多国籍複合組織」。アランは、そのCEO。ただ、テンプル騎士団の長老会の有力者であるエレン(シャーロット・ランプリング)は、アランの娘・ソフィアの研究がうまく成果を出さないために、資金援助の打ち切りを通告しています。

(注8)尤も、この点については、福岡伸一氏によるこの記事が、とても興味深いこと(必ずしも、「学習による成果、つまり生まれたあと後天的に身につけた行動は、次の世代ではいったんオールクリアされたゼロにもどる」わけではない)を記載しています。

(注9)劇場用パンフレット掲載の「ストーリー」では「1491年」とされています。
 ただ、本作に関するIMDbの「Synopsis」でも「Spain 1492」とされています。

(注10)本作では、コロンブスがアギラールから「エデンの果実」を託されたことになっていますが、公式サイトの「用語集」の「エデンの果実」によれば、「(それを)手にした者は例外なく世界を変えてきた」とされているところ、それを受け取った野心家のコロンブスは、どうして「世界を変え」ようとせずに、墓の中に持ち込んだのでしょう?
 あるいは、アメリカ大陸到達が「世界を変え」たことになるのかもしれません。ですが、アギラールがコロンブスに会ったのは、そのことよりも後でしょうし、なにより、実際にアメリカ大陸を西欧人が発見したのは、ヴァイキングの方がずっと先のことだとされていますから、よくわかりません。

(注11)特に、大聖堂の上からアギラールらが「イーグルダイブ」する映像は(公式サイトの「用語集」によれば、「建物の屋根などから空中にジャンプし、縦方向に回転して、地上に着地する」)、なかなか良くできています。

(注12)想定される続編では、父親がいないために、コティヤール演じるソフィアの活躍が見られることでしょう。



★★☆☆☆☆



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2 コメント

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こんにちは (ここなつ)
2017-03-21 15:29:55
こんにちは。
>おまけに、続編がありそうな雰囲気で終わるので、消化不良状態にもなってしまいます。  
私も正にこのことを強く感じておりまして、
最初からそう言ってくれればそういうつもりで観たのに…と腑に落ちない感じでいっぱいでした。
世界観は好きなんですけど。
Unknown (クマネズミ)
2017-03-21 18:53:32
「ここなつ」さん、コメントをありがとうございます。
おっしゃるように、見終わると、「腑に落ちない感じ」になってしまいます。いくら続編があるからと言っても、本作はこれはこれで一つの作品なのですから、ある程度締まりを付けてほしかったと思いました。
まして、クマネズミの場合は、本作の「世界観」に、とてもじゃないですが、馴染めませんでした。

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