NHK大河ドラマ「真田丸」を全て見終わって、少し落ち着いてきたので、このドラマを1年見続けた感想を書いておきたい。
結論から先に書くと、私がこれまで見てきた大河ドラマの中でも、ベスト3に入るくらい、私にとってお気に入りの作品になった。
まあ、題材が元々私の好きな題材だし、日本史の人物の中でも歴史ファンから昔から人気の高い真田信繫(幸村)が主役だった・・というのは大きかった。だが、もちろんそれだけでドラマがベスト3に入るとは限らない。
実際に見て、いや見続けて面白かったからだ。
毎週、続きが楽しみであった。
人の感性や趣味は十人十色なので、この作品に批判的な人もいる。
だがそれは、おそらくどんな作品にも言えるだろう。
私にとっては、十分良かったのは確かだ。
役者さんたちの力量や、演出、台本の力などで、魅力的なキャラや、印象的なキャラは多かった。
まず信繫。最初、信繫役が堺さんだと発表された時、少しイメージが違うかなとも思ったが、なんのなんの。これまでと違った信繫像を作りあげたと思う。若い頃の表情と、幸村になってからの表情の変化は見事だった。
信之。他の作品ではコミカルな役が多い大泉さんだが、真田丸ではシリアスに演じており、いつもの大泉さんとはまた違った演じっぷり。とはいえシリアスに演じているのに、そのかもしだす雰囲気に、自然に笑いをとる箇所もあり、シリアスなのに面白い・・そんな難しい役回りを演じていた。
真田昌幸。草刈さん自身、相当入れ込んでいたようで、ご自身の代表作とまで言ってのけた。「大ばくちの始まりじゃあ」「各々、ぬかりなく」など、決め台詞も印象的。ボソボソとしたしゃべり方もよかった。
真田信尹。「俺のようにはなるな」というセリフが、その後のストーリー展開のうえで、じわじわと染みるようになった。
とり。あの動じない、毅然とした婆様ぶり、粋だった。信繫たちのその後の運命や生き方を予感させるようなセリフを吐いていたのが印象的。
薫。なんともユーモラスで憎めない母上様ぶりだった。序盤のお荷物(?)ぶりも、いい味。
出浦昌相。どこか「必殺シリーズ」を彷彿とさせる仕事人ぶり。かっこよかった。最後までくずれることのない、ハードボイルドな仕事人っぷりだった。
佐助。来たり去ったりするたびに、風の音が入る、漫画チックな演出ぶりの遊び心が面白かった。真田十勇士がこの人物ひとりに集約されていた活躍ぶり。ドラマ内でも、いざという時のスーパーマンっぷりが楽しかった。猿飛は名乗らなかったけど、しっかり猿飛していた。
松。その少女時代のエピソードを家族が思いだして羅列したシーンは、抱腹絶倒だった。いったい、どういうおなごじゃ(笑)。
小山田茂誠。あの暖かい笑顔が、ドラマをなごませていたと思う。その存在はドラマのアクセントになっていた。時には「救い」にもなった。
きり。序盤では視聴者から「うざい」とか言われていたが、物語が終盤になるにつれ、どんどん好感が上がっていったキャラ。そのへん、三谷さんの狙い通り?
ちなみに私は「きり」という名前は、霧隠才蔵をもじった名前かと思っていた。「なんとか勘兵衛」というセリフには笑った。
堀田作兵衛。夏の陣での彼は、不死身としか思えなかった。あれだけやられて、無事に城に帰れたとは・・。
高梨内記。後半になればなるほど、どんどん味わい深いキャラになっていった。いいおじいちゃんぶり。
矢沢三十郎。全体的にさわやかで好感のもてるキャラクターだったが、最終回での幸村との決別シーンでの号泣は、万感が胸に迫る思いで、切なかった。あのシーン、また見たい。
稲姫。吉田羊さんの凛とした表情がハマっていた。見おろす表情がサマになる女優さんだね、ホントに。
おこう。序盤の病弱なキャラだった時期・・信繫の結婚式での宴会で舞った時の表情が、もうおかしくて、面白くて。どうにも強烈だった。
武田勝頼。出番は少なかったが、ドラマの「つかみ」の局面での勝頼は哀感漂っており、序盤で消えるのがもったいないぐらい切なかった。
室賀正武。西村さんが演じたこのおいしいキャラ!何と言っても決め台詞「黙れ!小童」は、最高だった。このドラマのおかげで、一気に知名度があがった人物の1人であろう。大好きなキャラだった。その終焉の回は忘れられない。真田丸のハイライトシーンの一つであったろう。草刈さんも、大好きなシーンだったらしい。
上杉景勝。直江と共に「天地人」でたっぷり描かれたので、馴染み感の強いキャラだった。上杉が義の家風であるのはおなじみだが、それを守るために苦労している点が描かれていたのが、新しかった。上杉家ってのは、悪役にはしにくい家風だね。
直江兼続。その声のイケメンぶりは、ファンは多かったはずだ。クールな演じっぷりが印象的。
徳川家康。作品によっては、あまり良くない描かれ方をすることもあれば、また別の作品によっては主役にもなる人物。真田丸では幸村の最終大ボスになる人物だったが、終わってみれば敵役ではあっても、決して悪いイメージはなかった。序盤など、むしろキュートなキャラにも思えた。内野さんの演じ方のうまさを堪能。さすがの役者。
阿茶。家康を手の内で転がしているような、食わせ物ぶり。真田丸で本当に怖かったのは、この人だったのかもしれない。
秀忠。徳川の歴史において、最近この人物が再評価されてきているのは、ご存知の通り。真田丸では、最終回で父(家康)を救ったことで面目回復か。家康に負けないぐらい「真田め!」のセリフがよく似合っていた人物。
本多忠勝。強そうながらも、どこか独特のユーモラスさがあり、愛すべきキャラだった。信之がらみでは、実に良い描かれ方。信之が親兄弟よりも、信之に嫁がせた自分の娘のほうを選んでくれたことで、婿である信之を心から大事にしていたくだりなど、泣かせる描かれ方。仮面ライダー本郷猛の先祖は、きっとこんな人だったのかな(笑)。
本多正信。近藤正臣さんの演じ方のうまさが、絶妙だった。飄々としながら、食えない切れ者。つくづく、いい役者だなあ。
北条氏政。怪演ぶりだったが、それゆえに最後の方は悲しかった。あの目つきはドラマに独特の側面を与えていたと思う。
板部岡江雪斎。信繫とは対立で始まったが、その後の奇妙な友情(?)が忘れられない。個人的に室賀と並んで好きな人物になった。
豊臣秀吉。かなり時間を割いて描かれていた。それゆえ、相当「濃い」存在感があった。
終わってみれば、晩年の「要介護」ぶりの姿が強烈に印象に残っている。
ねね。名古屋弁が板についていたなあ。秀次が死んだ時の秀吉に対する言葉が心に残ったなあ。「あの子はもう死んだんですよ」というセリフだった。
豊臣秀次。個人的には、真田信之との交流が特に好きだった。史実でも末路が悲しい人物だったが、真田丸での独自の描かれ方でも、その悲しさが際立っていたと思う。
千利休。出番は思ったほど多くはなかったが、ダークな部分の描かれ方が印象的。
石田三成。山本さんは、こういうキャラを演じさせると、やはりぴったりはまる。ここまでくると、その安定感ゆえ、見ていて安堵感すら覚えた。
大谷吉継。元々私が好感持っていた人物だったのだが、片岡さんのおかげで、なおさら好感度の高い人物になった。
加藤清正。三成とはつい反目しあう描かれ方をされがちだったが、真田丸では単に反目しあっているだけではない存在として描かれていた。信繫を井戸に投げようとしたシーンが面白かった。
淀殿。これまでの戦国モノでの淀殿とは一味違った描かれ方だった。幸村との関係をああいう風に描くとはね。
豊臣秀頼。これまた、これまでの秀頼像とは少し違う描かれ方で、魅力のある人物像ではあったが、最終的にはやはり母にかなわなかったか・・。
大蔵卿。なんか憎まれ役を一身に引き受けていたような、覚悟のある演じっぷり。役者としての男気・・ならぬ女気か。
片桐且元。板挟みの辛さ・・・身につまされた人は、私だけではなかったはず。あの、人の良さそうな表情が、忘れられない。
大野冶長。だんだんイメージが良くなっていったキャラだったが、ストーリー上での最後のポカは悲しかった。
後藤又兵衛。尺的に仕方なかったのだろうが、その最後の奮戦をもっと描いてほしかった。哀川さんは生き生きと演じていたと思う。
毛利勝永。大阪の夏の陣での大活躍は、超人的なはず。そのへん、もっと描いてほしかった。いや、むしろ・・勝永を主役に描いた作品が見たくなった。私はこの人物に関してあまり詳しくなかったので、このドラマのおかげで私の中で赤丸急上昇。
明石全登。九度山に信繫を迎えに来た人物なので、もっと細かく描かれるかと思ったが、案外地味な扱われ方だったかな。信長の時代が長続きしていれば、もっと幸せな人生を送れたかもしれない人物に思えた。
長宗我部盛親。夏の陣で、最後に部下を気遣いながら散っていったのが、切なかった。
伊達政宗。幸村の娘を、密かに伊達が保護したという逸話は、私自身大好きな逸話。その逸話だけで1本の作品を作ってもらいたい気がするほど。なので、ドラマ内での「ようわしを頼ってきた」というセリフも大好き。
もちろん、登場人物は他にも多数。もっとあげたいが、きりがなくなるのでこのへんにする。触れられなかったキャラの皆さん、ごめんなさい。触れられなかったけど、どれも良い味を出していました。
ともかく、魅力のあるキャラが多かったこと、多かったこと。
ほんと、各キャラが「立ち」まくっていたと思う。
キャラの魅力だけでも、このドラマが私にとっては「ごちそう」であり、成功作であり、傑作だったと思う。
歴史モノである以上、どんな魅力的なキャラであっても、主役じゃない場合、途中退場してしまうことは多い。
中には、どんな魅力的でも、物語の全体の流れの中では出番は少なかったキャラも多かった。
活躍期間は短くても、一瞬のきらめきを放ったキャラが多数いる中で、特に私がお気に入りだったのは、室賀正武、板部岡江雪斎、毛利勝永あたり。このへんの名前を挙げたのは、それまで私があまりよく知らなかった人物だからだ。
あまりよく知らなかったからこそ、そのぶんだけ新鮮で、印象に残った気がする。
それと。
真田丸はキャラの魅力もさることながら、ところどころで入るコメディ的な要素もまた絶妙で面白かった。そのへんは、脚本の三谷さんならではの強みだったことだろう。
キャラが言う「決め台詞」も楽しかった。「黙れ小童!」「各々、ぬかりなく」「大ばくちの始まりじゃ」などなど。
演出上の味付けも飽きさせない作りになっていた。
時には推理モノっぽかったり、時には法廷モノにもなったり。
あの手この手で、視聴者を楽しませてくれたと思う。
ほんと、私が見てきた大河ドラマの中でも、エンタテインメント性でピカイチだったと思う。
とりあえず、私が見てきた大河ドラマの中では、お気に入り度では「龍馬伝」と「真田丸」が双璧かもしれない。それぐらい、良かった。
三谷さん、役者の皆さん、スタッフの皆さん、そしてこの作品に関わった全ての方々、お疲れ様でした。
毎週楽しみな、幸せな一年でありました。
大変面白かったです。傑作をありがとう。お見事でした。
パチパチパチパチ!
また、こんな作品を作ってほしいです。
番組が終わった時、どうにも寂しかったです。
ところで・・
こうなったらいつか・・・真田丸ではチラッとしか出て来なかった、服部半蔵を主人公にした大河を作ってくれないかなあ。
知名度が高い割には、大河ではあまり描かれない人物だ。漫画や忍者ドラマ(映画含む)では、忍者として描かれる人物だが、実際には忍者というより徳川の武将として生きた人物。
とはいえ、家柄的には忍者との関わりもあった人物であったわけだし(服部家は、伊賀の上忍3家のひとつだった)、大河の主人公にしたら、忍者がらみの面で、これまでの大河とは一味違ったドラマになるのでは?
コミックで「半蔵の門」という、かっこうの「ベース候補」もあることだし。
もしくは、真田とはあまり関係ないけど、前田慶次が主人公の大河とか。
ぼそっ。
すると真田昌幸が「阿呆。我々が織田と戦う必要はない。」
武士としての誇りなんぞよりも真田家の事を考える。それが伝わってきました。
それでいいのです・・・
したたかでしたよね。
あれから40年ぐらい過ぎて大河ドラマ「真田丸」が放映されました。まずはテーマ曲からして「血沸き肉躍る」という感じでした そして、三谷脚本が面白かったです
>豊臣秀頼。最終的にはやはり母にかなわなかったか・・。
秀頼(中川大志)が何かを言って行動しようとする度に淀殿(竹内結子)が厳しい表情で「なりませぬ」
真田十勇士は私は好きで小説などは読みましたし、映画も見たりしました。
舞台となった上田の街にもいき、町で十勇士の面影を探したものでした。
あと、佐助が修行したと言われる山、才蔵が修行したと言われる滝などにも実際に行ったものでした。
物語は架空でも、楽しかったです。
漫画家志望だった子供の頃に、自分で真田十勇士のキャラを作って遊んでました。
良い遊びですね~
柴田錬三郎氏が書く前は海野六郎、根津甚八、望月六郎がいました。その頃のキャラでしょうか?
>佐助が修行したと言われる山、才蔵が修行したと言われる滝
戸隠山と、どの滝ですか?
>戦争
人類からなくなる事はなさそうです ロシアがウクライナを攻撃
要するに、おいしいとこどりでした。
それが私のオリジナル真田12勇士でした。
私が上田旅行で行った佐助の修業場所は角間渓谷で、才蔵の修業した滝は千古の滝でした。
まあ、どちらもフィクションの世界ですけどね(笑)。
確か、その旅行記をこのブログで書いた覚えがあります。
ウクライナへの侵攻は、推移が気になりますね。