Il Balletto di Bronzo - Japan Official Info

G.レオーネ、バレットの公式情報です。
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Ys (イース)海底に消えた島 Andrea Parentin著書から

2012年11月26日 | Balletto di  Bronzo
Ys (イース)海底に消えた島 Andrea Parentin著書から

イタリアン・ロックのライターの第一人者のAndrea Parentin氏が本日公開したばかりの記事をご紹介します。
Ys(イース)の歌詞まで触れたレビューは希少です。

何度も言っていますがParentin氏も、Ysはイースであり、イプシロン・エッセにあらずと言っています。バレットのメンバーも全員イースと発音しています。(ipsylonはアルファベットの名前なので、滅多に文字の名前は発音しません。


From the book Rock Progressivo Italiano: An introduction to Italian Progressive Rock
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Il Balletto di Bronzoは60年代後半にナポリでI Battitori Selvaggiという名前でスタートしました。1970年にはデビュー・アルバムをサイケデリックな音で“Sirio 2222”として発表しました。そして1972年には、ベストとも称されるYsをメンバー・チェンジ後に発表しました。オリジナル・メンバーのLino Ajello (guitar)、Gianchi Stinga (drums)、Vito Manzari (bass)そしてGianni Leon (vocals, organ, piano, mellotron, moog, spinetta and celesta)を迎えました。

Ysはブルターニュの海底に消えた伝説の島に基づくコンセプト・アルバムです。まあ、歌詞は伝説をかなり自由に解釈していますが。私が思うに、歌詞はこの作品の中心ではありません。ここではヴォーカルはむしろ感情を掻き立てるための楽器のように扱われています。変拍子を多用し、すばらしいキーボードやギターソロがあふれています。ベースラインはパワフルで、ドラムもすばらしいです。それぞれのアバンギャルド、ロック、ジャズからクラシックから受けた影響が見事に融合しているのがわかります。
実際Ysを最初に聞くと、少しつまらないと感じるかもしれません。ぼわっとした歌詞が恐怖のイメージを喚起し、憂鬱なヴォーカル、戦慄と恐怖が入れ替わり出現します。決定的にアルバム全体にのろわれた、暗い雰囲気が立ち込めています。リラックスしたいときは、聞かないほうがいいでしょう。でも、辛抱強いなら、いい音楽だとわかると思います。

オープニングの“Introduzione” (Introduction) でアルバムの雰囲気が決まります。ヴォーカルは沈黙から湧き上がってくるようです。暗いオルガンのコードが続きます。超自然的な声が最後の生存者に真実を語ります。そして、聞いたことをすべて話す旅に出るように薦めます。演奏が始まります。声は胸を締め付けるように強くなり、最後の生存者は理解したことに痛みを感じ始めます。

風吹く日の詩
枯れゆく木の最後の一葉
四月の最初の陽だまりに満ちた日
暖かい身体、彼に近い手

“Primo incontro” (First meeting) は旅の前半と奇妙な出会いを歌います。主役は歩き続けます。
平野を横切り、山を越え、振り返ることなく、進みます。やっと、別の男性とすれ違いました。

顔をそむけずに男がいた
彼の体はすでに蔦の葉で覆われていた
裂かれた耳から滴る血はもう黒ずんでいた
この時点で、謎めいた声は生存者に、自己の中で死んでいくものすべてをはき捨てるようにせめたてます。しかし、風は言葉を吹き飛ばし、主人公は耳が聞こえなくなります。

“Secondo incontro” (Second meeting) はアカペラのヴォーカルで始まります。もはや耳が聞こえなくなった主人公は晴天の下では見ることができます。暗闇に女性が見えます。女性は裏切りをしようとしています。善良な男性は死に掛けています。そして、悪と権力は謳歌しています。
生存者は立ち止まることができません。ひたすら進んで、また男性に遭遇します。その男性は腕を十字架にくくりつけられています。近づいてみると、十字架にはりつけになった男性の目に光はありませんでした。

その傷の痛みを感じた
その瞬間に暗闇が訪れた

今や、主人公は耳が聞こえないばかりか、盲目になったのです。

“Terzo incontro” (Third meeting) と“Epilogo” (Epilogue) でアルバムは終わります。
“Terzo incontro” はパワフルでドラマティックなインストで始まります。主人公は腕を広げたまま、耳が聞こえず、盲目になりました。それでも、進み、何かにぶつかるまで歩き続きます。何かが指に触れました。
雰囲気はより暗黒になります。

自身の手で感じるのはもはや死の冷たさだけ
胸から再び真実の言葉を発する
しかし、疲れ果てた口は動かせない
叫び声は主人公を押しつぶす
引き裂いた
取り巻いていた暗闇は、今彼の中にはいった

バレットは1973年にシングルをYsのボーナストラックとして発表した“La tua casa comoda” (Your comfortable home)を最後に解散しました。90年代終わりにジャンニは一新したラインアップでバレットを再結成し、私は最近外国でバレットのコンサートを見てきました。
ショウの間、ジャンニ(唯一のオリジナル・メンバー)は、最近プログレに飽きてきて、おそらくもうYsのようなアルバムを作ることはないだろうと語りました。しかし、そのときはYsを全曲を演奏していました。
演奏は完璧に納得するものではなかったです。ギターが足りないのです。今のバレットはトリオ編成で、ギターがいません。それでも、Ysはバンドの最高傑作であり、その夜の観客をひたすらYsを聞きにきたのだと思いました。
2012年11月26日
Andrea Parentin
Translated by Yoshiko KP

なお、絵は海底に沈む都市Ys、Ysの美しい姫であるダヌートのものです。イース伝説だけを書くとそれだけで本一冊くらいになりますので、ケルト神話などをご参照ください。


Andrea Parentin氏著書リンク
http://www.amazon.co.jp/Rock-Progressivo-Italiano-introduction-ebook/dp/B006HKI6DA/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1353942841&sr=8-2


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1 コメント

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イース伝説と歌詞 (raba)
2012-11-27 22:10:40
非常に難解な歌詞です。イース伝説を下敷きにしているということであれば、破壊と滅亡をテーマとしている点からでしょうか。
戦争のあと、最後に生き残った男が聴覚と視覚を失うと言うあらすじであるのは、解説なしでは判りませんでした。
初来日時にイースと読むことやあらすじが、ジャンニ本人から語られました。評伝本を読むと歌詞の作成についても複雑な経緯があるようです。いつの日か全てを教えて頂きたいものです。