よもやま話

思いついたまま書いてゆく

<三角形の垂心Hの三角関数による重心座標表現  「↑PH=cotBcotC(↑PA)+cotCcotA(↑PB)+cotAcotB(↑PC)」>

2022-11-30 20:00:17 | Weblog

<三角形の垂心Hの三角関数による重心座標表現
 「↑PH=cotBcotC(↑PA)+cotCcotA(↑PB)+cotAcotB(↑PC)」> 2022.11.30(水)

 表題の結果についてはもう何十年も前の1980年6月頃に得て、数学セミナーのNOTE欄に投稿し
1981年の1月号に掲載された。[但しネットで検索すると、数学セミナー1981年の1月号には、
[重心のベクトル表示]と間違って表記されているので訂正をお願いしたいところである。
この結果については、このブログでも何回も書いてきた。2008.08.31のblogへのLinkは次の通り。

2008.08.31のblog を見てください。

内積による表示が本質的である。
最近、知恵袋に次のような質問があったので詳しく回答したが、回答受付終了となり、勿体ないので
このブログに書きます。

点Hを三角形ABCの垂心とします。

2021/12/09(木)に以下の質問が知恵袋にありました。その回答を12/13(月)にしましたが、
回答受付終了となりました。
URLがやっと、みつかりました。リンクを貼っておきます。

知恵袋

質問:
至急回答お願いします!!
数学の幾何学の問題です!!
この問題で、AH↑を以下の形にしたいです。

どなたか解説よろしくお願いします。

私の注意:以下の形、とは、下の(#)のことです。

私の回答:

BC=a, CA=b, AB=cのとき、
AH↑=(cosC/sinC)・(cosA/sinA)AB↑+(cosA/sinA)・(cosB/sinB)AC↑…(#)を示せ。

:
AB↑=b↑,AC↑=c↑とおくとき、
AH↑=xb↑+yc↑…①と一意的に書ける。
Hが垂心⇔AH↑⊥BC↑かつ BH↑⊥CA↑かつCH↑⊥AB↑
⇒AH↑・BC↑=0かつBH↑・CA↑=0かつCH↑・AB↑=0となる。
[AH↑・BC↑は、ベクトルAH↑とBC↑との、「内積」を表す]
これらは、
AH↑・(c↑-b↑)=0…(ア)かつ(AH↑-AB↑)・(-AC↑)=0…(イ)かつ
(AH↑-AC↑)・AB↑=0…(ウ)となる。
ゆえに
(ア)⇔AH↑・b↑=AH↑・c↑…②かつ
(イ)⇔AH↑・c↑=b↑・c↑…③かつ
(ウ)⇔AH↑・b↑=b↑・c↑…④である。
[この事より、貴方の質問が正しいことが分かります。]
②③④⇔AH↑・b↑=b↑・c↑…④かつAH↑・c↑=b↑・c↑…③. であるから、

①をこれらに代入して、
(xb↑+yc↑)・b↑=b↑・c↑…⑤かつ(xb↑+yc↑)・c↑=b↑・c↑…⑥
⑤⇔|b↑|²x+(b↑・c↑)y=(b↑・c↑)つまり⑤はc²x+(cbcosA)y=cbcosAとなる。
[∵b↑とc↑とのなす角はA,|b↑|=c,|c↑|=b]
c>0だから、これは
cx+(bcosA)y=bcosA…⑦となる。同様にして⑥は
(ccosA)x+by=ccosA…⑧となる。⑦⑧をx,yの連立方程式として解く。
⑧-⑦×cosAとして
b(1-cos²A)y=cosA(c-bcosA)⇔(bsin²A)y=cosA(c-bcosA)…⑨。
⑦-⑧×cosAとして
c(1-cos²A)x=cosA(b-ccosA)⇔(csin²A)x=cosA(b-ccosA)…⑩

ここで
[第1余弦定理]の
b=ccosA+acosC…(1)
c=bcosA+acosB…(2)
a=bcosC+ccosB
の(1)(2)を用いて、
⑩⇔(csin²A)x=cosA(acosC)…(3)
⑨⇔(bsin²A)y=cosA(acosB)…(4)
さらに、正弦定理からのa=2RsinA,c=2RsinCを使用し

(3)⇒(2RsinC)(sin²A)x=cosA(2RsinA)cosC。
sinA>0だから、(sinC)(sinA)x=cosAcosC。
sinC>0,sinA>0だから、

x=(cosAcosC)/(sinAsinC)=(cosC/sinC)・(cosA/sinA)…(5)
となる。
同様にして、
(4)⇒(2RsinB)(sin²A)y=cosA(2RsinA)cosB。

sinA>0,sinB>0だから、(sinB)(sinA)y=cosAcosB。

y=(cosAcosB)/(sinB)(sinA)=
=(cosA/sinA)・(cosB/sinB)…(6)となる。(5)(6)を①に代入して、

AH↑=(cosC/sinC)・(cosA/sinA)AB↑+(cosA/sinA)・(cosB/sinB)AC↑…(#)
となる。

なおこの(#)は、
AH↑=xAB↑+yAC↑…($)であったから($)は任意の点Pに対し、
PH↑-PA↑=x(PB↑-PA↑)+y(PC↑-PA↑)となり、
PH↑=(1-x-y)PA↑+xPB↑+yPC↑…(7)となる。そこでz=1-x-yとおくと
z+x+y=1…(%)かつPH↑=zPA↑+xPB↑+yPC↑…(8)となる。
(5)(6)から
z=1-x-y=1-(cosA/sinA)[cosC/sinC+cosB/sinB]
=1-(cosA/sinA)[sinBcosC+cosBsinC]/[sinBsinC]
=1-(cosA/sinA)[sin(B+C)]/[sinBsinC]
=1-(cosA/sinA)[sinA]/[sinBsinC]
=[sinBsinC-cosA] /[sinBsinC]
=[sinBsinC+cos(B+C)]/[sinBsinC]
=[sinBsinC+cosBcosC-sinBsinC]/[sinBsinC]
=[cosBcosC]/[sinBsinC]
=(cosB/sinB)・(cosC/sinC)
即ち、
z=1-x-y=(cosB/sinB)・(cosC/sinC)となる。
ゆえに任意の点Pに対し、
(8)は、
PH↑=(cosB/sinB)・(cosC/sinC)PA↑+(cosC/sinC)・(cosA)/(sinA)PB↑
+(cosA/sinA)・(cosB/sinB)PC↑
…(9)となる。
そこで、正接tanθ=sinθ/cosθに対し
余接[コタンジェントθ,co-tangent θ]を

cotθ=cosθ/sinθと定義すれば△ABCでは
[0°<θ<180°に対し、sinθ>0だから]

cotA,cotB,cotCはどんな三角形でも、定義され計算できる。

[例えばA=90°の直角三角形でも、cotA=cot90°=0。一方tanA= tan90°=±∞、Aが鈍角のときはcotA<0]
tanAはA=90°のとき定義できない。(9)は、
PH↑=(cotBcotC)PA↑+(cotCcotA)PB↑+(cotAcotB)PC↑
となりz=cotBcotC,x=cotCcotA,y=cotAcotB,
であって、(%)から
z+x+y=1となる。即ち
cotBcotC+cotCcotA+cotAcotB=1ということが分かる。

なお、第1余弦定理は普通の余弦定理から、
cosA=[b²+c²-a²]/(2bc)となどとして右辺に代入すれば、証明できるし、
図を描けば明らかです。

なお、tan90°=±∞なので、このように、h↑=[(tanA)a↑+(tanB)b↑+(tanC)c↑]/[tanA+tanB+tanC]
には、[キズ]がある。

tanA+tanB+tanC=tanAtanBtanC としても、[キズ]は残ったままで、解決にはならない。

PH↑=(cotBcotC)PA↑+(cotCcotA)PB↑+(cotAcotB)PC↑…(10)
が、どんな三角形[直角三角形でも、鈍角三角形でも]

成り立つ万能完璧な式です。ここにPは任意の点。

例えば、A=90°のとき、垂心Hは明らかに、頂点Aである。A=90°のとき、B,Cは鋭角となり、cosB>0で
B+C=90°↔C=90°-B→cotB×cotC= cosB/sinB)×{cos(90°-B)/sin(90°-B)}

=[cosB/sinB]×[sinB/cosB]=1。即ちcotB×cotC=1,
cotCcotA=0,cotAcotB=0となるから、(10)→PH↑=PA↑となる。Pは任意の点だからP=Hととれば、0↑=HA↑となり、H=Aと求まる。
(cotBcotC,cotCcotA,cotAcotB)を垂心Hの真の[重心座標]という。なお、
(10)⇔
(cotBcotC)HA↑+(cotCcotA)HB↑+(cotAcotB)HC↑=0↑ である。

なお△ABCの外心をOとすれば、OH↑=OA↑+OB↑+OC↑…(11)が知られているから、

外心Oのベクトルによる重心座標表現は、

PH↑=[sin2A(PA↑)+sin2B(PB↑)+(sin2C)(PC↑)]/[4sinAsinBsinC]…(12)と簡単に求まる。これも1980年6月に発見したことを
述べておきます。[分母の sinA>0,sinB>0,sinC>0 なので、(12)の分母はいつでも正で、計算できる]


「cotθの一般加法定理およびn倍角の公式について 2022.07.31(日)」

2022-07-31 14:22:46 | Weblog

「cotθの一般加法定理およびn倍角の公式について 2022.07.31(日)」

☆ 以下に述べるのは、約21年も昔の2001.09.08(土)に完成していたことである。さて、

Σが和の記号であるように、Πの方は「積」の記号であるとする。

cotθの加法定理を導くためには、少し準備がいる。まず、
sinθ+icosθ=i{cosθ-isinθ}=i{cos(-θ)+isin(-θ)}であるから、

sinθ+icosθ=i{cos(-θ)+isin(-θ)} ゆえにDe Moivre(ドゥ・モアブル)の公式 

を用いて 角,θ1,θ2,・・・,θnに対して
 
Π[k=1,n]{sin(θk)+icos(θk)}=(i^n){cos(-Σ[k=1,n]θk)+isin(-Σ[k=1,n]θk)}
={i^(n-1)}[sin(Σ[k=1,n]θk)+icos(Σ[k=1,n]θk)]   

そこで、i^(4n)=1を用いて
sin(Σ[k=1,n]θk)+icos(Σ[k=1,n]θk)={i^(3n+1)}Π[k=1,n]{sin(θk)+icos(θk)} ・・・(1.1)

となる。つまり、

sin(Σ[k=1,n]θk)+icos(Σ[k=1,n]θk)={i^(3n+1)}Π[k=1,n]{sin(θk)+icos(θk)}

={(-1)^n}{i^(n+1)}Π[k=1,n]{sin(θk)+icos(θk)} ・・・(1.2)

 [∵ i^(2n)=(i^2)^n=(-1)^n ]
 
こうして、

[命題1.3]

sin(Σ[k=1,n]θk)+icos(Σ[k=1,n]θk)={(-1)^n}{i^(n+1)}Π[k=1,n]{sin(θk)+icos(θk)} ・・・(1.3) 

を得た。

さて、[tanθの一般加法定理とn倍角の公式]のところで述べたことを一般化すれば、

次の命題が成り立つことが分かる。、

[命題1.4]
nを自然数、z1,z2,・・・,znを複素数とし、σ0,σ1,・・・,σnをz1,z2,・・・,zn
のそれぞれ0次,1次,・・・n次の基本対称式とする。

例えば、σ0=1,σ1=z1+z2+・・・+zn,σ2=z1・z2+z1・z3+・・・+z(n-1)・zn,・・・,
σn=z1×z2×・・・・×znとする。すると i^2=ー1から

{1+i(z1)}{1+i(z2)}・・・{1+i(zn)}
=σ0+i(σ1)+(i^2)(σ2)+(i^3)(σ3)+・・・+(i^n)(σn)
=σ0+i(σ1)ー(σ2)ーi(σ3)+σ4・・・+(i^n)(σn)

このことを正確に表現すると

[命題1.5] 

(ア)ではmを1以上の整数、(イ)ではmを0以上の整数とする。

1=σ0に注意して、
(ア) n=2mのときは、
 {1+i(z1)}{1+i(z2)}・・・{1+i(zn)}
={σ0ーσ2+σ4ー・・・+(-1)^m・(σ(2m))}+i{σ1ーσ3+σ5ー・・・+(-1)^(m-1)・(σ(2m-1))}
(イ)n=2m+1のときは、
 {1+i(z1)}{1+i(z2)}・・・{1+i(zn)}
={σ0ーσ2+σ4ー・・・+(-1)^m・(σ(2m))}+i{σ1ーσ3+σ5ー・・・+(-1)^m・(σ(2m+1))}
が成り立つことがわかる。

☆ この式は ガウス記号[ ]を用いればみやすくなる。
n=2m  ⇒[n/2]=[2m/2]=m,また n-1=2m-1 ⇒[(n-1)/2]=[(2m-1)/2]=[m-1/2]=m-1
n=2m+1 ⇒[n/2]=[(2m+1)/2]=[m+1/2]=m,また[(n-1)/2]=[(2m)/2]=[m]=m

つまり、
[補題1.6]
(ア)n=2mのとき、m=[n/2],m-1=[(n-1)/2],(イ)n=2m+1のとき、m=[n/2]=[(n-1)/2]
よって[命題1.5] は次のようになる。

[命題1.7]
nを自然数とすれば、
{1+i(z1)}{1+i(z2)}・・・{1+i(zn)}
=Σ[h=0,[n/2]](ー1)^h・σ(2h)+iΣ[h=0,[(n-1)/2]](ー1)^h・σ(2h+1) ・・・(1.4)
よって(1.3)の右辺は次のようになる。

[命題1.8]
{(-1)^n}{i^(n+1)}Π[k=1,n]{sin(θk)+icos(θk)}

={(-1)^n}{i^(n+1)}sin(θ1)sin(θ2)・・・sin(θn)×Π[k=1,n]{1+i(cot(θk))} 

={(-1)^n}{i^(n+1)}sin(θ1)sin(θ2)・・・sin(θn)×
[Σ[h=0,[n/2]](ー1)^h・τ(2h)+iΣ[h=0,[(n-1)/2]](ー1)^h・τ(2h+1)]・・・(1.5)

 ここにτ0,τ1,τ2,・・・,τnは cot(θ1),cot(θ2),・・・,cot(θn)の
それぞれ、0次,1次,2次、・・・,n次の基本対称式とする。
つまり、τ0=1,τ1=cot(θ1)+cot(θ2)+・・・+cot(θn),
τ2=cot(θ1)・cot(θ2)+cot(θ1)・cot(θ3)+・・・+cot(θ(n-1))・cot(θn)
,・・・,τn=cot(θ1)×cot(θ2)×・・・×cot(θn)である。
また[n/2]などはn/2のガウス記号を表す。

よってこの式が最初に述べた(1.3)の左辺であることに注意して(1.3)は、

[主公式1.9]

sin(Σ[k=1,n]θk)+icos(Σ[k=1,n]θk)

={(-1)^n}{i^(n+1)}sin(θ1)sin(θ2)・・・sin(θn)×
[Σ[h=0,[n/2]](ー1)^h・τ(2h)+iΣ[h=0,[(n-1)/2]](ー1)^h・τ(2h+1)]・・・(1.9.1)となる。

そこで
(ア)n=2mのとき、i^(n+1)=i^(2m)×i=(-1)^m×iだから

  (1.9.1)の右辺
={(-1)^n}{i^(n+1)}sin(θ1)sin(θ2)・・・sin(θn)×
  [Σ[h=0,[n/2]](ー1)^h・τ(2h)+iΣ[h=0,[(n-1)/2]](ー1)^h・τ(2h+1)]
={(-1)^n}(-1)^m×sin(θ1)sin(θ2)・・・sin(θn)× 
 [-Σ[h=0,[(n-1)/2]](ー1)^h・τ(2h+1)+iΣ[h=0,[n/2]](ー1)^h・τ(2h)]

={(-1)^n}(-1)^(m+1)sin(θ1)・・・sin(θn)×[Σ[h=0,[(n-1)/2]](ー1)^h・τ(2h+1)]
+i{(-1)^n}(-1)^(m)sin(θ1)・・・sin(θn)×[Σ[h=0,[n/2]](ー1)^h・τ(2h)]

(イ)n=2m+1のとき、i^(n+1)=i^(2m+2)=(-1)^(m+1)だから
 
 (1.9.1)の右辺
={(-1)^n}{i^(n+1)}sin(θ1)sin(θ2)・・・sin(θn)×
  [Σ[h=0,[n/2]](ー1)^h・τ(2h)+iΣ[h=0,[(n-1)/2]](ー1)^h・τ(2h+1)]
={(-1)^n}(-1)^(m+1)sin(θ1)・・・sin(θn)×
 [Σ[h=0,[n/2]](ー1)^h・τ(2h)+iΣ[h=0,[(n-1)/2]](ー1)^h・τ(2h+1)]

これより式(1.9.1)の実部・虚部を比較して、次の公式[公式2.0]を得る。

[公式2.0]
nを自然数とする。(ア)では、mは1以上の自然数とし、(イ)では,mは0以上の整数とする。

(ア) n=2mのとき、

cos(Σ[k=1,n]θk)={(-1)^n}(-1)^m×sin(θ1)・・・sin(θn)[Σ[h=0,[n/2]](ー1)^h・τ(2h)]
sin(Σ[k=1,n]θk)={(-1)^n}(-1)^(m+1)sin(θ1)・・・sin(θn)[Σ[h=0,[(n-1)/2]](ー1)^h・τ(2h+1)]

(イ) n=2m+1のとき、

cos(Σ[k=1,n]θk)={(-1)^n}(-1)^(m+1)sin(θ1)・・・sin(θn)[Σ[h=0,[(n-1)/2]](ー1)^h・τ(2h+1)]
sin(Σ[k=1,n]θk)={(-1)^n}(-1)^(m+1)sin(θ1)・・・sin(θn)[Σ[h=0,[n/2]](ー1)^h・τ(2h)]
 
したがって

[主定理2.1] < cotθの一般加法公式>

nを自然数とする。

(ア) nが偶数のとき

  cot(Σ[k=1,n]θk)
=-{Σ[h=0,[n/2]](ー1)^h・τ(2h)}/{Σ[h=0,[(n-1)/2](ー1)^h・σ(2h+1)}
=-{1ーτ2+τ4ー・・・+(ー1)^[n/2]・τ(2[n/2])}
 /{τ1ーτ3+τ5ー・・・+(ー1)^[(n-1)/2]・τ(2[(n-1)/2]+1)}
=-{1ーΣcot(θ1)cot(θ2)+・・・+(ー1)^[n/2]・Σcot(θ1)cot(θ2)・・・cotθ_(2[n/2])}
  /{Σcot(θ1)ーΣcot(θ1)cot(θ2)cot(θ3)+・・・+
  +(-1)^[(n-1)/2]Σcot(θ1)cot(θ2)・・・cotθ_(2[(n-1)/2]+1)} ・・・(2.0.1)
(イ) nが奇数のとき

  cot(Σ[k=1,n]θk)
={Σcot(θ1)ーΣcot(θ1)cot(θ2)cot(θ3)++・・・+(ー1)^[(n-1)/2]Σcot(θ1)・・cot(θ(2[(n-1)/2]+1))}
 /{1ーΣcot(θ1)cot(θ2)+Σcot(θ1)cot(θ2)cot(θ3)cot(θ4)ー・・・
 +(ー1)^[n/2]・Σcot(θ1)cot(θ2)・・・cot(θ(2[n/2]))}         ・・・(2.0.2)

ここで [n/2],[(n-1)/2]はそれぞれ n/2,(n-1)/2のガウス記号を表す。

また 記号Σの意味は「代数学の慣用法」にしたがっている。

[命題2.2]

<cotθのn倍角の公式 > nを自然数とする。

(ア) nが偶数のとき

  cot(nθ)
=-[1ーnC2・cot^2(θ)+nC4・cot^4(θ)-・・・+(ー1)^[n/2]・nC(2[n/2])・cot^(2([n/2])(θ)}
  /[nC1cotθーnC3・cot^3(θ)+・・・+(ー1)^[(n-1)/2]・nC(2([(n-1)/2)]+1)・cot^(2[(n-1)/2)]+1)(θ)]


(イ) nが奇数のとき

  cot(nθ)
=[nC1cotθーnC3・cot^3(θ)+・・・+(ー1)^[(n-1)/2]・nC(2([(n-1)/2)]+1)・cot^(2[(n-1)/2)]+1)(θ)]
 /[1ーnC2・cot^2(θ)+nC4・cot^4(θ)・・・+(ー1)^[n/2]・nC(2[n/2])・cot^(2([n/2])(θ)}


「証明」
(2.0.1),(2.0.2)でθ1=θ2=・・・=θn=θとおけば、あとは基本対称式の定義から分かる。
(証明終わり)

「例1」
n=4のとき [n/2]=[4/2]=2 ,2[n/2]=4,[(nー1)/2]=[3/2]=1,2[(n-1)/2]+1=3 だから

cot(θ1+θ2+θ3+θ4)
=-[1ーcot(θ1)cot(θ2)-cot(θ1)cot(θ3)-cot(θ1)cot(θ4)-cot(θ2)cot(θ3)-cot(θ2)cot(θ4)
    -cot(θ3)cot(θ4)+cot(θ1)cot(θ2)cot(θ3)cot(θ4)]
  /[cot(θ1)+cot(θ2)+cot(θ3)+cotθ4ーcot(θ1)cot(θ2)cot(θ3)-cot(θ1)cot(θ2)cot(θ4)
  -cot(θ1)cot(θ3)cot(θ4)-cot(θ2)cot(θ3)cot(θ4)]

「例2」
n=7のとき [(nー1)/2]=[6/2]=3,2[(n-1)/2]+1=7 ,[n/2]=[7/2]=3 ,2[n/2]=2[7/2]=6だから

cot7θ= [7C1cotθー7C3・cot^3(θ)+7C5・cot^5(θ)-7C7・cot^7(θ)]
    /[1ー7C2・cot^2(θ)+7C4・cot^4(θ)-7C6・cot^6(θ)]

となる。これらは21年も前の2001.09.08(土)に完成していたことだった。

タイピングするのが面倒だった。pdfファイルを改めて見たら、sinθ,cosθのn倍角の公式も
tanθの一般加法定理から、証明していたことを発見した。これについては、
atwikiのホームページからダウンロードしてください。

 

 


tan1°の最小多項式は次のxの24次多項式である。=0の解はtan1°,-tan7°,・・・,tan89°の24個である。

2021-05-21 21:32:43 | Weblog


 tan1°の最小多項式は次の24次多項式である。=0の解はtan1°,-tan7°,・・・,tan89°の24個である。2021.05.21(金)

 
[少しづつ編集していきます。いろいろあって今は体調が良くないので 体調が良くなったら、
 
 また少しずつ書き足して行きたいと思います。]


 x^24-48x^23-564x^22+1456x^21+21186x^20-12432x^19-269412x^18+17424x^17+1470447x^16

 +45344x^15-3923304x^14-51744x^13+5407388x^12-51744x^11-3923304x^10+45344x^9+

 1470447x^8+17424x^7 -269412x^6-12432x^5+21186x^4+1456x^3-564x^2-48x+1 ---(1) であって、


 (1)=0の24次の方程式の24個の解は全て実数で、みな異なる。実際、解全体Sは

 S=

{tan1°,-tan7°,-tan11°,tan13°,tan17°,-tan19°,-tan23°,tan29°,-tan31°,tan37°,tan41°,

  -tan43°,-tan47°,tan49°,tan53°,-tan59°,tan61°,-tan67°,-tan71°,tan73°,tan77°,-tan79°,

  -tan83°,tan89° }                                       
 
 であり、異なる24個からなる。…① 

  そして、(1)の解と係数の関係から次の等式などが成立する。


 tan1°-tan7°-tan11°+tan13°+tan17°-tan19°-tan23°+tan29°-tan31°+tan37°+tan41°

 -tan43°-tan47°+tan49°+tan53°-tan59°+tan61°-tan67°-tan71°+tan73°+tan77°-tan79°

 -tan83°+tan89°=48 …② そして、


 -tan3°×tan21°-tan3°×tan33°+tan3°×tan39°+tan3°×tan51°-tan3°×tan57°-tan3°×tan69°
 
 +tan21°×tan33°-tan21°×tan39°-tan21°×tan51°+tan21°×tan57°-tan21°×tan87°-tan33°×tan39°

 -tan33°×tan51°+tan33°×tan69°-tan33°×tan87°-tan39°×tan57°-tan39°×tan69°+tan39°×tan87°
 
 -tan51°×tan57°-tan51°×tan69°+tan51°×tan87°+tan57°×tan69°-tan57°×tan87°-tan69°×tan87°
  
  =-64 …③ 
 
 などとなる。[これ以上は書くのが大変。]

 (1)の Galois群は、Z₄×Z₂×Z₃ と思われる。[Q上の円分体はQ上のAbel体による。]


3度の倍数の角の正弦・余弦・正接の真の値と一部のGalois群

2021-04-25 22:26:58 | Weblog

3度の倍数の角の正弦・余弦・正接の真の値と一部のGalois群   2021.04.25(日)

 これは at.wikiのホームページ 「もやもやどきどきはらはら」に以前2014年11月2日に掲載したものを

 編集したものです。[少しづつ編集していきます。いろいろあって今は体調が良くないので、

 体調が良くなったら、また少しずつ書き足して行きたいと思います。]

  3°の倍数の角度の正弦、余弦、正接の値は、定規とコンパスにてQ上作図可能ということが知られている。

 これは360°の120等分ができること、つまり正120角形が定規とコンパスで作図できることによる。
 それは120=2³×3×5 であって、3=1+2¹,5=1+2²の奇素数だからである。

 3°の倍数の角の正弦・余弦・正接の真の値のpdfを下のところに載せておきます。

 ここでは、下のpdfに
 sin3° =cos87°,cos3° =sin87°,sin6° =cos84°, cos6°=sin84°,sin9° =cos81°,
 cos9° =sin81°,sin12°=cos78°,cos12°=sin78°,sin15°=cos75°,cos15°=sin75°,
 sin18°=cos72°,cos18°=sin72°,sin21°=cos69°,cos21°=sin69°,
 sin24°=cos66°,cos24°=sin66°,sin27°=cos63°,cos27°=sin63°,sin30°=cos60°,
 cos30°=sin60°,sin33°=cos57°,cos33°=sin57°,sin36°=cos54°,cos36°=sin54°,
 sin39°=cos51°,cos39°=sin51°,sin42°=cos48°,cos42°=sin48°,sin45°=cos45°
 の真の値をまず記す。
 また
 tan(90°-θ)=cotθより、cot(90°-θ) =tanθも出るが、これを使って

 tan3° =cot87°,tan6° =cot84°,tan9° =cot81°,tan12°=cot78°,tan15°=cot75°,
 tan18°=cot72°,tan21°=cot69°,tan24°=cot66°,tan27°=cot63°,tan30°=cot60°,¹
 tan33°=cot57°,tan36°=cot54°,tan39°=cot51°,tan42°=cot48°,tan45°=cot45°,
 tan48°=cot42°,tan51°=cot39°,tan54°=cot36°,tan57°=cot33°,tan60°=cot30°,
 tan63°=cot27°,tan66°=cot24°,tan69°=cot21°,tan72°=cot18°,tan75°=cot15°,
 tan78°=cot12°,tan81°=cot9° ,tan84°=cot6° ,tan87°=cot3°  の
 
 真の値も出てくる。これらの値も下のpdfに書いておいた。計算は2006年までに終了した。

 関数電卓でこれらの値を検算してあるので間違いはないと思う。皆さんも試してください。例えば

 sin6° =[-(√5+1)+√3{√(10-2√5)}]/8 ,

 cos27°=√2{(√5ー1)+√(10+2√5)}/8,

 sin33°=√2{(√3+1)(√5-1)+(√3-1)√(10+2√5)}/16 などと、

 tan9° =(√5+1)-√(5+2√5)…①,   tan27°=(√5-1)-√(5-2√5)…②,

 tan63°=(√5-1)+√(5-2√5)…③,  tan81°=(√5+1) +√(5+2√5)…④   である。このように、

 2重根号の組み合わせ、つまり2重根号による逐次拡大の元として表せる。

 これらの形から、ただ、単に計算しただけでなく、Galois群(ガロア群)とその同型対応も、

 考えてみた。

 ただ断っておくが、そのことは一部について計算したのみでその後計算しなかった。

 一例として、xの4次の相反方程式

  x⁴-4x³-14x²-4x+1=0 ・・・(1) の左辺は有理数体Q上既約で、(1) の

 4つのQ上の共役解は、

  T={tan81°,-tan27°,tan9°,-tan63°}であり、QにTを添加したQの正規拡大体

 L=Q(tan81°,-tan27°,tan9°,-tan63°)はQ上単純拡大体でガロア拡大となり、

 L=Q(tan81°)=Q(√(5+2√5))となる。また、そのGalois群はZ₄(位数4の巡回群)である。

 そして

 tan27°=-(1/2)tan²81°+3tan81°+3/2

 tan63°=-tan³81°+(9/2)tan²81°+12tan81°-3/2

 tan9° =-tan³81°+4tan²81°+14tan81°+4

また、方程式(1)の解と係数の関係から、次の一連の等式が成り立つ。

 tan81°-tan27°+tan9°-tan63°=4…⑤,

 すなわち、tan9°-tan27°-tan63°+tan81°=4…⑥


  tan81°×(-tan27°)+tan81°×tan9°+tan81°×(-tan63°)

 +(-tan27°)×tan9°+(-tan27°)×(-tan63°)+tan9°×(-tan63°)

 =-14…⑦ 

 つまり、
 
  tan9°×tan27°+tan9°×tan63°+tan27°×tan81°+tan63°×tan81°

 =16…⑧ [ tan81°tan9°=1,tan27°tan63°=1 ] 

 等が出てくる。

[ あと2つの解と係数の関係式は方程式の相反性などから、⑤と自明なものしか出てこない。]

 また、①~④により、
 
 tan81°+tan9°=2(√5+1)…⑨ ,tan27°+tan63°=2(√5-1)…⑩

  ゆえに、tan9°+tan27°+tan63°+tan81°=2√5 …⑪ ,
 
 tan81°-tan9°= 2√(5+2√5)…⑫,tan63°-tan27°=2√(5-2√5)…⑬
 
 よって、
 
 tan81°-tan9°+tan63°-tan27°=2√(5+2√5)+2√(5-2√5)=2√(10+2√5)

 すなわち、tan81°-tan9°+tan63°-tan27°=2√(10+2√5)…⑭
 
 (∵ pdfの(2.15)式による) も出てくる。


 
 ★ これらについては関数電卓などで検算していただきたい。代数拡大体の理論によれば、

 tan27°,tan63°,tan9°をtan81°の3次以下の多項式として表すときの有理数体Q上の係数は一意的で

 これ以外にはない。これらは大分前に計算したので思い出しながら発表して行きたいと思う。
 
  ☆) pdfの場所→ 3°の倍数の角の正弦・余弦・正接の真の値のpdf はここからダウンロードしてください。。


Q(√5,i)のガロア群

2020-08-12 21:56:16 | Weblog

ℚ(√5,i)のガロア群  2020.08.12 (水)

 
[Ⅰ] 体 ℚ(√5,i)の体ℚ上のガロア群(Galois群)を基底に着目して求める。
 
  ここに ℚは有理数体とする。

 
 [命題1]

  ℚ(√5,i )=ℚ[√5,i] 

「証明」

 (√5)²=5,i²=-1 だから (√5i)²=-5 ゆえに 多項式環 ℚ[√5,i]の要素は、
  a+b√5+ci+d√5i と書ける。ここにa,b,c,d∈ℚ とする。 
 そこでこの逆数を考えて、「分母の実数化と有理化」をしてみると
 
  a+b√5+ci+d√5i≠0のとき
  
 1/[a+b√5+ci+d√5i]
 =1/[(a+b√5)+(c+d√5)i] 
 =[(a+b√5)-(c+d√5)i]/[{(a+b√5)+(c+d√5)i}{(a+b√5)-(c+d√5)i}]  
 =[(a+b√5)-(c+d√5)i]/[(a+b√5)²+(c+d√5)²]
 =[(a+b√5)-(c+d√5)i]/[(a²+5b²+c²+5d²)+2(ab+cd)√5]
 =[(a+b√5)-(c+d√5)i][(a²+5b²+c²+5d²)-2(ab+cd)√5]  
  /[(a²+5b²+c²+5d²)+2(ab+cd)√5][(a²+5b²+c²+5d²)-2(ab+cd)√5] 
 =[(a+b√5)-(c+d√5)i][(a²+5b²+c²+5d²)-2(ab+cd)√5]
  /[(a²+5b²+c²+5d²)²-20(ab+cd)²] 

 この右辺の 分子∈ℚ[√5,i] (∵ ℚ[√5,i]は環)分母∈ℚだから、
 1/[a+b√5+ci+d√5i]∈Q[√5,i]
 
 であることが分かる。
 ゆえに ℚ(√5,i )⊂ℚ[√5,i] 逆の「⊃」は明らかだからℚ(√5,i )=ℚ[√5,i] となる。 
(証明終わり)


 [命題1] から ℚ(√5,i )の要素もa+b√5+ci+d√5i と書ける。ここにa,b,c,d∈ℚ とする。 

 なお、{1,√5,i,√5i}はℚ上1次独立である。証明は容易である。証明しておこう。
 [命題1.5]
 {1,√5,i,√5i}はℚ上1次独立である。
「証明」
 a,b,c,d∈ℚ とし。 a+b√5+ci+d√5i=0とする。⇒ (a+b√5)=-(c+d√5)i。⋯(#)
 もし仮に c+d√5≠0 とすれば、i=-(a+b√5)/(c+d√5) ここで 右辺∈ℝ (実数全体)
 一方 左辺の i∉ℝ これは矛盾。よって c+d√5=0 でなければならない。
 √5∉ℚ だから、⇒c=d=0 ⇒(#)からa+b√5=0・ よって、また a=b=0 
 こうして a=b=c=d=0 ゆえに{1,√5,i,√5i}はℚ上1次独立である。
 (「証明」終わり)
   
 ☆  [命題1][命題1.5]により、体の拡大次数は [ℚ(√5,i):ℚ]=4


 さて、ガロア群 Gal([ℚ(√5,i)/ℚ)の元 μ:ℚ(√5,i)→ℚ(√5,i)はℚ準同型で
  5∈ℚ だから、μ(5)=5。(√5)²=5であるから、μ((√5)²)=5。
 μは体の準同型だから、これは
 μ(√5×√5)=μ(√5)×μ(√5)=5 ⇔(μ(√5))²=5。⇒μ(√5)=±√5…①となる。
 また、i²=-1より、μ(i²)=μ(-1)=-1。つまり、μ(i²)=-1。
 μは体の準同型だから、μ(i²)=μ(i×i)=μ(i)×μ(i)=(μ(i))²=-1 
 ⇒μ(i)=±i…②となる。
 よってガロア群 Gal([ℚ(√5,i)/ℚ)の元μはℚ準同型だから、
 μ(a√5+bi+c√5i+d)=aμ(√5)+bμ(i)+cμ(√5)×μ(i)+d…③である。
 
 故に  μはμ(√5)とμ(i)の値によって決まる。
 ところで、①②から、μ(√5)=√5 またはμ(√5)=-√5…④の2通りあり、
 μ(i)=i,μ(i)=-i…⑤の2通りあるから、 
 全部で2×2=4通りある。
 
 そこで

 (ア) σ(√5)=√5,かつσ(i)=-iのときはσ(√5i)=-√5i。
 故に、 σ²(√5)=√5,σ(-i)=-σ(i)=i
 より、σ²(i)=σ(σ(i))=σ(-i)=iとなる。よって
 σ²(√5i)=σ²(√5)×σ²(i)=√5iとなる。
 即ち③から、
 σ²=idとなる。σは位数2の元と言う事である。同様に、

(イ)τ(√5)=-√5かつ  τ(i)=i…⑤と定義すれば、τ(√5i)=-√5i
 となり、τ²=idとなる。
  また、
(ウ) τσ(√5)=τ(√5)=-√5, στ(√5)=σ(-√5)=-√5。
 即ち、 τσ(√5)=στ(√5)=-√5。
 同様に τσ(i)=στ(i)=-i, よってτσ(√5i)=στ(√5i)=√5iとなる。

 故にσとτは可換で、στはσ,τとは異なる。

 στ(√5)=-√5。στ(i)=-i,στ(√5i)=√5i である。

 以上により、ガロア群は Gal(ℚ(√5,i)/ℚ)={id,σ,τ,στ}となり、

 σ,τ,στは位数2の元で、στ=τσだから、 Gal(ℚ(√5,i)/ℚ) は

 {id,σ}と{id,τ}との直積であり、Z/2Z×Z/2Zに同型 つまり、  
 いわゆるクライン(Klein)の4元群と同型である。 
 
 ゆえに ガロア群 Gal(ℚ(√5,i)/ℚ)≅Z/2Z×Z/2Z≅V₄


☆ さて、ℚ(√5,i)を単純拡大にしてみよう。例えば次のようにできる。

 [命題2]
 ℚ(√5,i)=ℚ(√5+i) …⑥ である。

「証明」
 ℚ(√5,i)は、√5,iを含むℚ上の拡大体だから、ℚ(√5,i)∋√5+i
 よってまた、ℚ(√5,i) ⊃ℚ(√5+i)  [∵ ℚ(√5+i)は、√5+iを含むℚ上の 
 「最小」の拡大体だから] が成り立つ。逆の包含関係 ℚ(√5,i)⊂ℚ(√5+i) …⑦を
 示そう。

 a=√5+i とおく。⑦は ℚ(√5,i)⊂ℚ(a) … ⑧となる。 
 a=√5+i ⇔ a-i=√5 …⑨ ⇒ (a-i)²=(√5)²  ⇔ a²-2ai-1=5
 ⇔ a²-6=2ai …⑩ a=√5+i≠0 だから、⑩から i=(a²-6)/(2a) …⑪
 ここでℚ(a)は体で、 
 a∈ ℚ(a) だから i=(a²-6)/(2a)∈ ℚ(a) ゆえに i∈ ℚ(a)  …⑫ 

 また a∈ ℚ(a) 、ℚ(a)は体 だから「差」について閉じていて a-i∈ ℚ(a)
 即ち ⑨ から  a-i∈ ℚ(a)⇔ √5∈ ℚ(a) …⑬。明らかに示したいときは 
  √5=a-(a²-6)/(2a)=(a²+6)/(2a)∈ ℚ(a) つまり
  √5=(a²+6)/(2a)∈ ℚ(a)。 ⑫,⑬から i,√5∈ ℚ(a) ゆえに  ℚ(√5,i)⊂ℚ(a) …⑧
 となり ⑧ 即ち ⑦が示された。以上により ℚ(√5,i)=ℚ(√5+i) となる。
 (証明終わり)

☆ 次に a=√5+iの最小多項式を求めてみよう。

[命題3]
 
 a=√5+iの最小多項式は、f(x)=x⁴-8x²+36 であり、f(x)=0 の 4つの解は

 √5+i,-√5+i,√5-i,-√5-iである。
「証明」 
 [命題2]の⑪ ,i=(a²-6)/(2a) の両辺を平方して、-1=(a²-6)²/(4a²)
 ⇔-4a²=(a²-6)²⇔-4a²=a⁴-12a²+36 ⇔ a⁴-8a²+36=0 …⑭
 つまり、a=√5+i ⇒ a⁴-8a²+36=0 よって aの最小多項式は、
   f(x)=x⁴-8x²+36 …⑮ となる。ここで ⑨の式の右辺の√5を-√5に替えた,
  a=-√5+i …⑯ を平方しても、(a-i)²=(-√5)²  ⇔ a²-2ai-1=5 即ち
  ⇔ a²-6=2ai …⑩ となるから、i=(a²-6)/(2a) となり、やはり  
 a⁴-8a²+36=0 …⑬ となる。ゆえに -√5+i も x⁴-8x²+36=0の解になる。
 
 同様に ⑪のiを-iに替えた a=√5-iについても、 
  a=√5-i ⇔a+i=√5 …⑨ ⇒ (a+i)²=(√5)²  ⇔ a²+2ai-1=5 
 ⇔ a²-6=-2ai …⑯ a=√5+i≠0 だから、⑯から -i=(a²-6)/(2a) …⑰
 両辺平方すれば、やはり -1=(a²-6)²/(4a²) となり
 ⇔-4a²=(a²-6)²⇔-4a²=a⁴-12a²+36 ⇔ a⁴-8a²+36=0 …⑬ が出てくる。
 こうして f(x)=x⁴-8x²+36=0  の4つの解は √5+i,-√5+i,√5-i,-√5-i
  であると分かった。
([命題3]の証明終わり)


[Ⅱ]
 
 f(x)=x⁴-8x²+36の ℚ上の ガロア群を求める。[Ⅰ]から、f(x)=x⁴-8x²+36=0  
 
 の4つの解は √5+i,-√5+i,√5-i,-√5-i…(2.1) だった。よって f(x)はℚ上既約

 と思われる。(実際には証明が必要→また考えることにする。)

 Lをf(x)の最小分解体とすると、(2.1)から、 L=ℚ(√5+i,-√5+i,√5-i,-√5-i)…(2.2)

 -√5+i=-(√5-i),-√5-i=-(√5+i) だから 

 L=ℚ(√5+i,-√5+i,√5-i,-√5-i)=ℚ(√5+i,√5-i) は明らか。ここで

 [命題4]
 
 ℚ(√5+i,√5-i)=ℚ(√5+i)…(2.3) が成り立つ。すなわち単純拡大になる。
 
 [証明]
  
 ℚ(√5+i,√5-i)⊇ℚ(√5+i) は明らかであるから、逆の 
 ℚ(√5+i,√5-i)⊆ℚ(√5+i) …(2.4)を示そう。√5-i∈ℚ(√5+i) を示せば良い。
 ここで、1/(√5+i)∈ℚ(√5+i) …(2.5) (∵ℚ(√5+i)は体。 )
 そして 1/(√5+i)=(√5-i)/[(√5+i)(√5-i)]=(√5-i)/{(√5)²-i²] 
  =(√5-i)/6 であるから、(2.5)から (√5-i)/6∈ℚ(√5+i) ゆえに   
  √5-i=6×[(√5-i)/6]∈ℚ(√5+i)  (∵ 6∈ℚ⊂ℚ(√5+i),ℚ(√5+i)は体 ) 
 よってℚ(√5+i)は ℚと √5+iと √5-iを含む 。ℚ(√5+i,√5-i)は、
  √5+i,√5-iを含む ℚ上の最小の拡大体であるから、
  ℚ(√5+i,√5-i)⊆ℚ(√5+i)  …(2.4) となる。 
 ゆえに ℚ(√5+i,√5-i)=ℚ(√5+i) となって題意は示された。
 ([命題4]の証明終わり)

 [命題4]により、f(x)=x⁴-8x²+36 の最小分解体Lは、
 L=ℚ(√5+i,-√5+i,√5-i,-√5-i)=ℚ(√5+i,√5-i)=ℚ(√5+i) となる。

 それでは  ℚ(√5+i)のℚ上のガロア群を求める。[Ⅰ]から
 ℚ(√5,i)のℚ上のガロア群 Gal(ℚ(√5,i)/ℚ)=<σ,τ|σ²=id,τ²=id、στ=τσ>は、
 σとτによって生成されていた。ポイントは、μ(5)=5,μ(-1)=-1 であった。 
 これより μ(√5)=±√5…①となる。
 また、i²=-1より、μ(i²)=μ(-1)=-1。つまり、μ(i²)=-1。
 μは体の準同型だから、μ(i²)=μ(i×i)=μ(i)×μ(i)=(μ(i))²=-1 
  ⇒μ(i)=±i…② となる。 
  σ(√5)=√5,かつσ(i)=-i …(2.6) で τ(√5)=-√5かつ  τ(i)=i …(2.7)であった。
 この σによりσ(√5+i)=σ(√5) +σ(i)=√5-i, 即ち σ(√5+i)=√5-i …(2.8) 
 よって  
 σ²(√5+i)=σ(σ(√5+i))=σ(√5-i)=σ(√5)-σ(i) 
   =√5-(-i)=√5+i ⇔σ²(√5+i)=√5+i ゆえに σ²=id on ℚ(√5+i)   
 また τ(√5+i)=τ(√5)+τ(i)=-√5+i 即ち τ(√5+i)=-√5+i …(2.9)
 よって τ²(√5+i)=τ(τ(√5+i))=τ(-√5+i)=-τ(√5)+τ(i) 
  =-(-(√5)+i=√5+i ゆえに σ²=id on ℚ(√5+i)  
 στ(√5+i)=σ(-√5+i)=-σ(√5)+σ(i)=-√5-i  
 即ち στ(√5+i)=-√5-i …(2.10)  
  また 、στ=τσ だから、στ(√5+i)=τσ(√5+i)=-√5-i よって 

 (2.8)(2.9)(2.10)から、id,σ,τ,στは f(x)=x⁴-8x²+36=0の 
 4つの解の置換を起こす。ガロア群 Gal(ℚ(√5+i)/ℚ)はS₄の部分群である。

  ガロア群 Gal(ℚ(√5+i)/ℚ)≅Z/2Z×Z/2Z≅V₄ 

[Ⅲ]
 
 ℚ(√5+i)/ℚの拡大次数 [ℚ(√5+i):ℚ]=4について-------

 J.ロットマン著・関口次郎訳 [改訂新版 ガロア理論] Springer フェアラーク東京 
 をみる。P71の[定理45]  によると
 
 [定理45]
  Fを体とし、p(x)∈F[x]をd次既約多項式とする。このとき
 
 E=F[x]/(p(x))は、d次のFの拡大体になる。

 実際 Eは p(x)の根αを含み、F上のEの基底は、 {1,α,α².…,α^(d-1)}である。 
 
 また、P73の[定理47]によると

 [定理47]
 E/Fは体拡大で、α∈Eは F上代数的とする。

 (ⅰ) αを根にもつ既約なモニック多項式 p(x)∈F[x]が存在する。

  (ⅱ) F[x]/(p(x))≅F(α)が成り立つ。 実際,同型 Φ:F[x]/(p(x))→F(α)

   でFを点ごとに固定し、Φ(x+(p))=αとなるものが存在する。

  (ⅲ) p(x)はαを根にもつF[x]の最低次数のモニック多項式である。しかも

   αを根にもつ最低次数のモニック多項式はp(x)以外にない。

 (ⅳ) [F(α):F]=p(x)の多項式としての次数。

 この  (ⅱ)と(ⅳ)から ℚ(√5+i)≅ℚ[x]/(x⁴-8x²+36)かつ
  
 [ℚ(√5+i):ℚ]=4 となることが分かり、私が計算した結果とあっている。

  [定理45]により、その基底の1つは、{1,√5+i,(√5+i)²,(√5+i)³} となる。
  A,B、C,D∈ℚ とするとき、
  
 A×1+B(√5+i)+C(√5+i)²+D(√5+i)³に対して、
 A×1+B(√5+i)+C(√5+i)²+D(√5+i)³= H×1+I×√5+J ×i+K×√5i となる
 ような H,I,J,K∈ℚの存在が一意的に示され、逆も言える。 …(3.1)
 [今は逆が大事であることになる]  これを示しておこう。

 まず、(√5+i)²=4+2√5i,
 (√5+i)³=(4+2√5i)(√5+i)=4√5+10i+4i-2√5=2√5+14i。

そこで
 A×1+B(√5+i)+C(√5+i)²+D(√5+i)³を計算すると、
 A+B√5+Bi+C(4+2√5i)+D(2√5+14i)=(A+4C)+(B+2D)√5+(B+14D)i+2C√5i …(*)

 これが H×1+I×√5+J ×i+K×√5iに等しいとして [命題1.5]を使うと
  A+4C=H …(1), B+2D=I …(2), B+14D=J …(3) ,2C=K …(4) これを A,B,C,Dの
 連立方程式として解く。(1)(4)から A=H-2K …(5) ,C=K/2 …(6) ,(3)-(2)として
 14D=J-I⇒ D=(J-I)/12 …(7) ,B=I-2D=(7I-J)/6 …(8) と求まった。
 これより

 逆に 
 (5)~(8)のとき 
    A×1+B(√5+i)+C(√5+i)²+D(√5+i)³
 =(H-2K)+(7I-J)/6(√5+i)+(K/2)(√5+i)²+[(J-I)/12](√5+i)³ 
 =(H-2K)+[(7I-J)/6](√5+i)+(K/2)(4+2√5i)+[(J-I)/12](2√5+14i)
 =[(H-2K)+(K/2)×4]+[(7I-J)/6+(J-I)/6]√5
 +[(7I-J)/6+7(J-I)/6]i+K√5i
 =H+I√5+Ji+K√5i となって合っている。つまり、
 A×1+B(√5+i)+C(√5+i)²+D(√5+i)³=(A+4C)+(B+2D)√5+(B+14D)i+2C√5i …(*)
  H×1+I×√5+J ×i+K×√5i =
 (H-2K)+[(7I-J)/6](√5+i)+(K/2)(√5+i)²+[(J-I)/12](√5+i)³ …(**) 
 これから 
 
 {1,√5+i,(√5+i)²,(√5+i)³}がQ上一次独立が次のように示される。

 [命題5]
 {1,√5+i,(√5+i)²,(√5+i)³}はQ上一次独立
「証明」
 A,B,C,D∈ℚ で
 A×1+B(√5+i)+C(√5+i)²+D(√5+i)³=0 としよう。すると(*)が成立。
  [命題1.5]により {1,√5,i,√5i}はℚ上1次独立であるから、
 A+4C=0,B+2D=0,B+14D=0,2C=0 …(9) そこで、A+4C=H …(1),
 B+2D=I …(2), B+14D=J …(3) ,2C=K …(4) と置けば(9)はH=I=J=K=0…(10) 
 となる。
 ところが、上に説明したように、A=H-2K …(5) ,B=(7I-J)/6 …(8),
 C=K/2 …(6),D=(J-I)/12 …(7)  となる。そして H=I=J=K=0 …(10) だから 
 (5)~(8)から A=B=C=D=0。 よって {1,√5+i,(√5+i)²,(√5+i)³}はQ上一次独立

 


曲率テンソルについて

2020-03-31 22:59:30 | Weblog

 曲率テンソルについて_2020.03.31(火)

新型コロナウイルスが猛威をふるっていますが、皆様には
  いかがお暮しでしょうか?お互い、しっかりと注意しながら
 罹患しないよう、過ごして行きましょう。

 さて、このblogの内容ですが、暫くの間は,
  Yahoo知恵袋!で回答したけれども削除されたものなどを編集して、
 まとめて行きたいと思います。
  まず最初は [曲率テンソル]の質問に答えます。
 
 [質問]

 MをC^∞多様体、C^∞(M)をM上のC^∞関数の全体、

 Χ(M)[Χはギリシャ文字χ(カイ)の大文字]を M上の C^∞ベクトル場の全体とする。
 
 今  写像 R:Χ(M)×Χ(M)×Χ(M)→Χ(M) を任意のX,Y,Z∊Χ(M)に 対して、
 
 
  R(X,Y,Z)=(▽_X)(▽_Y)(Z)-(▽_Y)(▽_X)(Z)-(▽_[X,Y])(Z) ・・・(☆)
 
 と定義するとき、任意のf,g,h∊X(M)に対して、

  R(fX,gY,hZ)=(fgh)R(X,Y,Z)が成り立つことを示してください。
 
  ここに、▽_XはXによる共変微分を表し、[X,Y]はベクトル場のリー括弧積
 
 を表す。
 
 (注意:このRを「曲率テンソル」という: [(1,3)型のテンソルです ]

   普通は R(X,Y)Z=(▽_X)(▽_Y)(Z)-(▽_Y)(▽_X)(Z)-(▽_[X,Y])(Z) 
  
  とすることが多い。)

 ◎以下が[回答」です。

 [回答」

 [注意1]
 (ア)
 ∀X∈Χ(M)と∀h∈C^∞(M)に対し、Xh∈C^∞(M)である。

 [∀p∈Mにおける関数Xhの値は(Xh)(p)=(X_p)hと定義する。
  ここに、X_pは接ベクトル]

 (イ)
 f∈C^∞(M),X∈Χ(M)に対して、fX∈Χ(M)。
 [fXのh∈C^∞(M)への作用は (fX)(h)=f・(Xh)である。(ア)のXh∈C^∞(M)に注意。

 ここに、[・]は関数同士の積を表す。以後[・]は省略する。]

 (ウ)
 
 ベクトル場はある種の微分であるから、関数への作用について積の微分法が
  成り立つ。

  即ちg,h∈C^∞(M)とX∈Χ(M)に対して、X(gh)=(Xg)h+g(Xh)…(#)が成り立つ。

 また以後、C^∞(M)=Fと略記する。
 
 [注意2]

 (ア)
   ベクトル場X,Yに対して

 「X=Y⇔∀h∈Fに対しXh=Yh 」 よってX=Yを示すには、
 
  ∀h∈Fに対しXh=Yhを示せばよい…①。この①はよく用いる。

 (イ)
   リー括弧積について[Y,X]=-[X,Y]が成り立つ。

 [証明]

 ∀h∈Fをとる。定義は [X,Y]h=X(Yh)ーY(Xh)…②である。ゆえに
     
 [Y,X]h

 =Y(Xh)-X(Yh)

 =-{X(Yh)-Y(Xh)}

 =-[X,Y]h
 即ち [Y,X]=-[X,Y]  [∵①]

 [命題1]

f∈Fとベクトル場X,Yに対して[fX,Y]=f[X,Y]ー(Yf)X …③

 [証明]

 ∀h∈Fに対し②から、

 [fX,Y]h

 =(fX)(Yh)-Y((fX)h)
           
 =f(X(Yh))-Y(f(Xh))

 =f(X(Yh))-{(Yf)(Xh)+f(Y(Xh))} [∵(♯)より]

 =f{X(Yh)-Y(Xh)}-(Yf)(Xh)

 =f([X,Y]h)-((Yf)X)h

 =(f[X,Y])(h)-((Yf)X)(h)

 =(f[X,Y]-(Yf)X)(h)
 即ち、

   [fX,Y]=f[X,Y]-(Yf)X

 (証明終わり)

 [注意3]

 ベクトル場 X,Wとh∈Fに対し共変微分▽_Xを考えると
 (1)
 h∈F ⇒(▽_X)h∈F 。つまり、hが関数 ⇒(▽_X )hも関数。
 Z∈Χ(M) ⇒(▽_X)Z∈Χ(M)。
 つまり、Zがベクトル場 ⇒(▽_X)Zもベクトル場

 (2)
    (▽_X)h=Xh …④
 (3)
   共変微分は一種の微分だから、積の微分法が成立する。

    (▽_X)(hW)=((▽_X)(h))W+h((▽_X)(W)) …⑤

   (2)により、これは

   (▽_X)(hW)=(Xh)W+h((▽_X)(W)) …⑥ となる。

 (4)
  (▽_fX)(h)=f((▽_X)(h))と(▽_(X+Y))(Z)=(▽_X)(Z)+(▽_Y)(Z)

    が成り立つ。
 ☆
  曲率テンソルRの質問については、

 その定義から、R(X,Y,Z)∈Χ(M) つまり、R(X,Y,Z)はベクトル場である。
 また、次の[命題2]が成り立つ。
 
 [命題2]

 R(fX,Y,Z)=fR(X,Y,Z) かつ、R(X,gY,Z)=gR(X,Y,Z) かつ
 
 R(X,Y,hZ)=hR(X,Y,Z) が成り立つ

 ⇒ R(fX,gY,hZ)=fghR(X,Y,Z)が成り立つ。

 [証明]

 R(fX,gY,hZ)

 =fR(X,gY,hZ)

 =f{gR(X,Y,hZ)}=(fg)R(X,Y,hZ)={(fg)h}R(X,Y,Z)

 =fghR(X,Y,Z)

 (証明終わり)

 [命題3]

 R(Y,X,Z)=-R(X,Y,Z)

 [証明]
  [Y,X]=ー[X,Y]と、

  (▽_(fX))(Z)=f((▽_X)(Z))を使う。

 Rの定義(☆)から、

 R(Y,X,Z)

 =(▽_Y)((▽_X)(Z))ー(▽_X)((▽_Y)(Z))-(▽_[Y,X])(Z)

 =-{(▽_X)((▽_Y)(Z))-(▽_Y)((▽_X)(Z))}-(▽_(-1)[X,Y])(Z)

 =-{(▽_X)((▽_Y)(Z))-(▽_Y)((▽_X)(Z))}+(▽_[X,Y])(Z) [[注意3]の④]

 =-{(▽_X)((▽_Y)(Z))-(▽_Y)((▽_X)(Z))-(▽_[X,Y])(Z)}

 =-R(X,Y,Z)
 即ち

   R(Y,X,Z)=-R(X,Y,Z)

 (証明終わり)

 ☆☆

 それでは、質問に答えよう。

 まず、
  R(fX,Y,Z)=fR(X,Y,Z)を示す。]

  [注意3]の(4)より

 (▽_(fX))((▽_Y)(Z))=f(▽_X)((▽_Y)(Z))…⑦ また

 (▽_Y)(▽_(fX))(Z)

 =(▽_Y)(f(▽_X(Z)))

 =(Yf)((▽_X)(Z))+f(▽_Y)((▽_X(Z)) [∵[注意3]の⑥]…⑧

 そして、[命題1]と[注意3]の(4)より

  (▽_[fX,Y])(Z)
                
 =(▽_(f[X,Y]-(Yf)X))(Z)

 =(▽_(f[X,Y]))(Z))-(▽_(Yf)X)(Z)

 =(f(▽_([X,Y])))(Z)-(Yf)(▽_X)(Z)…⑨

  ⑦⑧⑨から、

  R(fX,Y,Z)

  =(▽_(fX))((▽_Y)(Z))-(▽_Y)((▽_(fX))(Z))-(▽_[fX,Y])(Z)

  =f(▽_X)((▽_Y)(Z))

  -{(Yf)((▽_X)(Z))+f(▽_Y)((▽_X))(Z))}

  -{f(▽_[X,Y](Z)ー(Yf)((▽_X)(Z))}

  =f{(▽_X)((▽_Y)(Z))-(▽_Y)((▽_X)(Z))-(▽_[X,Y])(Z)}

  -(Yf)((▽_X)(Z)) +(Yf)((▽_X)(Z))

  =f{(▽_X)((▽_Y)(Z))-(▽_Y)((▽_X)(Z))-(▽_[X,Y])(Z)}

  =fR(X,Y,Z)

 つまり

   R(fX,Y,Z)=fR(X,Y,Z)…⑩が示された。

 次に

  R(Y,X,Z)=-R(X,Y,Z)

  により、⑩を用いて

  R(X,gY,Z)=-R(gY,X,Z)=-gR(Y,X,Z)=-g{ーR(X,Y,Z)}=gR(X,Y,Z)

 つまり R(X,gY,Z)=gR(X,Y,Z)が示された。

 最後に、

  R(X,Y,hZ)=hR(X,Y,Z)を示そう。まず、

  (▽_X)((▽_Y)(hZ))

  =(▽_X){(Yh)Z+h((▽_Y)(Z))} [∵ [注意3]の⑥]

  =(X(Yh))Z+(Yh)(▽_X)(Z)+(Xh)((▽_Y)(Z))+h(▽_X)((▽_Y)(Z))
                …(11) [再び [注意3]の⑥]
 同様にして、
  (▽_Y)((▽_X)(hZ))

  =(Y(Xh))Z+(Xh)(▽_Y)(Z)+(Yh)((▽_X)(Z))+h((▽_Y)((▽_X)(Z))
          
               …(12)
 また、
 (▽_[X,Y])(hZ)

 =([X,Y]h)Z+h((▽_[X,Y])(Z))  …(13) [∵ [注意3]の⑥]

 ゆえに(11)(12)(13)から、

 R(X,Y,hZ)
 
 =(X(Yh))Z+(Yh)((▽_X)(Z))+(Xh)((▽_Y)(Z))+h(▽_X)(((▽_Y)(Z))

 -{(Y(Xh))Z+(Xh)(▽_Y)(Z)+(Yh)((▽_X)(Z))+h((▽_Y)((▽_X)(Z))}

 -([X,Y]h)Z-h((▽_[X,Y])(Z))

 =(X(Yh))Z-(Y(Xh))Z-([X,Y]h)Z

 +(Xh)((▽_Y)(Z))+(Yh)((▽_X)(Z))   
       
 -(Xh)((▽_Y)(Z))-(Yh)((▽_X)(Z))

 +h{(▽_X)((▽_Y)(Z))-(▽_Y)((▽_X)(Z))-(▽_[X,Y])(Z)}

 ={X(Yh)ーY(Xh)-[X,Y]h}Z+hR(X,Y,Z)

 =hR(X,Y,Z)  [∵[X,Y]h=X(Yh)-Y(Xh)]

 即ち

    R(X,Y,hZ)=hR(X,Y,Z)…(14)。

  ゆえに[命題2]から、

    R(fX,gY,hZ)=(fgh)R(X,Y,Z)が成り立つ。以上です。
  [回答」終わり
 
 ◎ 曲率テンソルの「テンソル解析」との関係をみておこう。
 
  X=∂/∂x^i,Y=∂/∂x^j,Z=∂/∂x^k,∂/∂x^mに対して
 
  R(X,Y)Z=(▽_X)(▽_Y)(Z)-(▽_Y)(▽_X)(Z)-(▽_[X,Y])(Z)は局所表示では、

  R(∂/∂x^i,∂/∂x^j)(∂/∂x^k)=∑^(m)[Rijk^(m)](∂/∂x^m)

 と書かれる。 但し、mは上付きの文字、i,j,kは下付きの文字とする。

  Rijk^(m)は[線形接続]の曲率テンソルの成分である。

  Rijk^(m)をR^(m)kij とする流儀もあるので注意したい。したがって
 
 回答で述べた、R(Y,X,Z)=-R(X,Y,Z)は、Rjik^(m)=-Rijk^(m) …(b)

 と同値である。またBianchi(ビアンキ)の第1恒等式は、以下の捩率 T=0のとき
 
 R(X,Y)Z+R(Y,Z)X+R(Z,X)Y=0 ⇔ Rijk^(m)+Rjki^(m)+Rkij^(m)=0 …(♯1)

  となる。[野水克己 現代微分幾何入門 P80の[定理1] 参照]

☆ さらに、線形接続がMのRiemann(リーマン)計量gから決まるリーマン接続

  [即ち 捩率(れいりつ) T について、T(X,Y)=(▽_X)Y-(▽_Y)X-[X,Y] が  
  T=0 ⇔ [Γj^(i)k=Γk^(i)j] を満たし、 かつ (▽_X)g=0 for ∀X∈X(M)] 

  であるならば、(ここにΓはギリシャ文字の大文字ガンマです)

   g(R(X,Y)Z,W)+g(Z,R(X,Y)W)=0 かつ g(R(X,Y)Z,W)-g(R(Z,W)X,Y)=0…(♯2) 

  が成り立つそうだ。[村上信吾著 多様体第2版 P176演習問題4の2番] 

  (♯2)は私にはわからない。

 (♯1)の右側の式は、例えば「立花俊一 リーマン幾何学」PP77~79に載っている。

  但しリーマン接続のときである。

 


単行本「重心座標による幾何学」第2部・畔柳和生担当分の 校正ミスの訂正箇所:2019.11.02(土)

2019-11-02 20:39:23 | Weblog

 単行本「重心座標による幾何学」第2部・畔柳和生担当分の校正ミスの訂正箇所について

:2019.11.02(土)

今年の10月は台風・大雨の猛威が凄まじく大変でしたが、
皆さんのところは如何でしたか。私のところは幸いなことに無事でした。
被害に遭われたかたが一刻も早く日常生活が取り戻せるよう祈っております。

 さてこのブログも途中、中断がありましたが、お陰様で何とか10年ほど
続けることができました。それで、四面体やn次元単体については、
あと2回ほど書くことはありますが、一旦やめて他の数学的話題について、
書いてゆきます。

 その前に、一松信先生と共著の上記単行本の第2部-畔柳和生-担当分の
校正ミスや誤りなどを遅くなりましたが、記しておきたいと思います。
本を購入して下さったかたには、訂正が遅くなって申しわけありませんが、
宜しくお願いします。

   (誤)
   (正)

の順に記してゆきます。

 (1)  P169の下から4行目の所

   (誤) (→PT)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD) ・・・(3)
  
  (正) (→PI)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD) ・・・(3)

 Tを Iに直す。

 (2) P170の下から5行目の所

  (誤) 球面」とは四面体ABCDの対面の△BCD

    (正) 球面」とは四面体ABCDの頂点Aの対面△BCD

 (3)  P171の「証明」のところの5行目の所

   (誤) (→PT)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD) ・・・(3)

  (正) (→PE_A)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD) ・・・(3)
  
 (4)  P174の「命題11.1」「証明」のところの8行目

  (誤) DH_A⊥AB

    (正)  DH_A⊥BC

 (5)  P217の「命題12.25」の「証明」下から10~8・9行目

  (誤) 二面角の定義より、θ(D,A)=∠DLH_D である。

    この場合 sinθ(D,A)=sin∠DLH_D=DH_D/DL ・・・(1)

  (正)  二面角の定義より、θ(D,A)=180°-∠DLH_D (θ(D,A))が鈍角のとき)
 
     または θ(D,A)=∠DLH_D (θ(D,A)がそれ以外のとき)
     
     いずれの場合も sinθ(D,A)=sin∠DLH_D=DH_D/DL ・・・(1)

     (図 12.6、12.7 参照)

 (6) [命題12.31] P225の「証明」の上から11行目の所

  (誤) この右辺に今得られた(11)(12)を代入し

  (正) この右辺に今得られた(19)(20)を代入し

 
 (7) P242の[定理13.11]の「証明」の2行目の所

  (誤) (→PO_3)=(detJ_3-2yzw)(→PA)+・・・/(2detJ_3)

  (正) (→PO)=(detJ_3-2yzw)(→PA)+・・・/(2detJ_3)
 
  
 と後もう1箇所、「日本語の文章でひらがなが一文字抜けている所が」あったが、
 
 見つからない。また探しておきます。


 
 特に、上の「訂正」の(6)については、(正) のようにしないと、折角の
    「証明」が分からなくなっていたので、申し訳ありませんでした。
    ここにお詫び申しあげます。
   
 次回からは「グレゴリオ暦」について、書こうと思っています。


四面体の実例で内接球面Iとの接点I^Dの重心座標の公式の確認(その2)

2019-05-26 23:00:12 | Weblog

四面体ABCDの実例で内接球面Iと側面の接点I^Dの重心座標の公式の確認(その2) 2019.05.26(日)

ーーー四面体ABCDの実例で内接球面Iとの接点I^Dの重心座標の公式の確認(その1)からの続きーーー

(Ⅴ)
    それでは、いよいよ本題に入る。

 四面体ABCDを上の通りとする。このとき、内接球面Iと△ABCとの接点I^Dに対して、
(1) (→II^D)⊥△ABC かつ (2)  |(→II^D)|=r [ここにrは内接球面Iの半径]
  ・・・(5.1.0) となっていることを実際に計算して示そう。

 それには、内心Iの重心座標と、I^Dの重心座標を必要とする。
前に示したように、I(S_A/2F,S_B/2F,S_C/2F,S_D/2F)
だった。ここに 2F=S_A+S_B+S_C+S_D である。また I^Dは、
(S_A(1+cosθ(A,D))/2F,S_B(1+cosθ(B,D))/2F,S_C(1+cosθ(C,D))/2F,0)である。
 ・・・(#)

(1)
  よって、
(→II^D)=[S_A(1+cosθ(A,D))/2F-S_A/2F](→PA)+[S_B(1+cosθ(B,D))/2F-S_B/2F](→PB)
    +[S_C(1+cosθ(C,D))/2F-S_C/2F](→PC)+[0-S_D/2F](→PD)
即ち、(→II^D)=1/2F[(S_A)cosθ(A,D))(→PA)+(S_B)cosθ(B,D))(→PB)]
              +1/2F[(S_C)cosθ(C,D))(→PC)-(S_D)(→PD)]   ・・・(5.1.1)
(5.1.1)において、P ⇒ Aとして
    (→II^D)=(1/2F)[(S_B)cosθ(B,D))(→AB)]
              +(1/2F)[(S_C)cosθ(C,D))(→AC)-(S_D)(→AD)]   ・・・(5.1.2)
(5.1.2)で内積 ((→II^D),(→AB))及び((→II^D),(→AB)) を計算して0となることを
 示したい。そのため次の[補題]を準備する。
[補題5.1]
 |(→AB)|^2=c^2=3^2=9,((→AC),(→AB))=6,((→AD),(→AB))=19/2,
 |(→AC)|^2=b^2=(√7)^2=7,((→AD),(→AC))=15/2
(証明)
 (4.1)を使う。
 AB=c=3,AC=b=√7より第1,4式は明らか。また第2式は、
 ((→AC),(→AB))=[AC^2+AB^2-BC^2]/2=[(√7)^2+3^2-2^2]/2=[7+9-4]/2=6
 第3式は、((→AD),(→AB))=[AD^2+AB^2-BD^2]/2=[4^2+3^2-(√6)^2]/2
         =[16+9-6]/2=19/2 ,第5式は,((→AD),(→AC))=[AD^2+AC^2-CD^2]/2
         =[4^2+(√7)^2-(2√2)^2]/2=[16+7-8]/2=15/2 による。
(証明終わり)

 内積 ((→II^D),(→AB))の計算。(5.1.2)と[補題5.1]と(4.1),(4.2.1)(4.3.1)より
 ((→II^D),(→AB))=(1/8F)[4(S_B)cosθ(B,D))|(→AB)|^2]
           +(1/8F)[4(S_C)cosθ(C,D))((→AC),(→AB))-4(S_D)((→AD),(→AB))]
 =(1/8F)[√223×{43/(√223√27)}×9]+(1/8F)[√215×{21/(√215√27)}×6]
  -(1/8F)[2√27×19/2]
  =(1/8F)[(43×9)/√27+(21×6)/√27-√27×19] この右辺の
 [ ]=(1/√27)×[43×9+21×6-27×19]=(9/√27)×[43+7×2-3×19]
      =(9/√27)×[43+14-57]=0 
 即ち、((→II^D),(→AB))=0    ・・・(5.1.3)が示された。

次に、
 内積 ((→II^D),(→AC))の計算。(5.1.2)と[補題5.1]と(4.1),(4.2.1)(4.3.1)より
 ((→II^D),(→AC))=(1/8F)[4(S_B)cosθ(B,D))((→AB),(→AC))]
           +(1/8F)[4(S_C)cosθ(C,D))|(→AC)|^2-4(S_D)((→AD),(→AC))]
 =(1/8F)[√223×{43/(√223√27)}×6]+(1/8F)[√215×{21/(√215√27)}×7]
  -(1/8F)[2√27×15/2]  
  =(1/8F)[(43×6)/√27+(21×7)/√27-√27×15] この右辺の
 [ ]=(1/√27)×[43×6+21×7-27×15]=(3/√27)×[43×2+7×7-9×15]
      =(3/√27)×[86+49-135]=(3/√27)×[135-135]=0 
 即ち、((→II^D),(→AC))=0    ・・・(5.1.4)が示された。
 
 (5.1.3)(5.1.4)と(→II^D)≠(→0) により、(5.1.0)の(1)の(→II^D)⊥△ABCが
 計算で証明された。

(2)
そこで、(5.1.0)の(2)の|(→II^D)|=r [ここにrは内接球面Iの半径]を示すため、
 |(→II^D)|^2=r^2=[3V/2F]^2=(6V/4F)^2=[√(detJ(3))/4F]^2=[detJ(3)/16F^2]を
 示したい。(5.1.2)より、
 (→II^D)=1/2F[(S_B)cosθ(B,D))(→AB)+(S_C)cosθ(C,D))(→AC)-(S_D)(→AD)]

よって、
16(2F)^2|(→II^D)|^2
=[{(4S_B)cosθ(B,D)}^2|(→AB)|^2+{(4S_C)cosθ(C,D)}^2|(→AC)|^2+(4S_D)^2|(→AD)|^2]
+2(4S_B)(4S_C)cosθ(B,D)cosθ(C,D))((→AB),(→AC))
-2(4S_B)(4S_D)cosθ(B,D)((→AB),(→AD))-2(4S_C)(4S_D)cosθ(C,D)((→AC),(→AD))
  ・・・(5.2.1)となる。
ここで、(Ⅳ)[と(4.1)などと二面角の余弦など]の結果より、
(4S_B)cosθ(B,D)=√223×43/[√223√27]=43/√27 ・・・(5.2.2)
(4S_C)cosθ(C,D)=√215×21/[√215√27]=21/√27 ・・・(5.2.3)
(4S_B)(4S_C)cosθ(B,D)cosθ(C,D))=√223√215×43/[√223√27]×21/[√215√27]
=(43×21)/27  ・・・(5.2.4)
(4S_B)(4S_D)cosθ(B,D)=√223(2√27)×43/[√223√27]=2×43 ・・・(5.2.5)
(4S_C)(4S_D)cosθ(C,D)=√215(2√27)×21/[√215√27]=2×21 ・・・(5.2.6)
これと[補題5.1]から、(5.2.1)は
16(2F)^2|(→II^D)|^2
=[43/√27]^2×9+[21/√27]^2×7+(2√27)^2×16+2×(43×21)/27×6
-2×2×43×(19/2)-2×(2×21)×(15/2)
=(43^2)/3+(7^2×7)/3+4×27×16+2×(43×7×2)/3
-2×43×19-2×21×15
=1/3[43^2+7^3+2^2×43×7]+2×[27×2×16-43×19-21×15]
=1132+2×(-268)
=4×283-4×134
=4×149
となる。
即ち 16×(4F^2)×|(→II^D)|^2=4×149 ⇔ 16(F^2)×|(→II^D)|^2=149
 ⇔ |(→II^D)|^2=149/(4F)^2 ⇔ |(→II^D)|=√149/(4F)=√[detJ(3)]/(4F)[∵(4.1)]
 ⇔ |(→II^D)|=(6V)/2[S_A+S_B+S_C+S_D]=(3V)/[S_A+S_B+S_C+S_D]=r
 ここにrは内接球面Iの半径である。
 よって |(→II^D)|=r が示された。これは(5.1.0)の(2)の示したかったことであった。
 ☆☆☆
以上計算が大変であったが、内接球面Iと△ABCとの接点I^Dの重心座標に間違いが
ないことが具体例で示された。なお、
 I^Dの真の重心座標は、
([2√23√27-10]/[{2√23+√223+√215+2√27}√27],
 [√223√27+43]/[{2√23+√223+√215+2√27}√27] ,
 [√215√27+21]/[{2√23+√223+√215+2√27}√27] , 0 )
  となる。興味のある方は計算してみて下さい。[(Ⅴ)の(1)の前の(#)の式]
 その際  (5.2.2)(5.2.3) などを使用するとよいだろう。


四面体の実例で内接球面Iとの接点I^Dの重心座標の公式の確認(その1)

2019-05-26 22:42:07 | Weblog

四面体の実例で内接球面Iと側面の接点I^Dの重心座標の公式の確認(その1) 2019.05.26(日)


以前、2016.04.25(月)に、blog「物言はぬは腹ふくるる業」で、以下の話題
を扱った。

「四面体の6辺の長さで、二面角の大きさの余弦を表す公式 2016.04.25(月)」

『一般的な四面体の例を挙げ、「重心座標による幾何学」PP225~226の公式を
用いて具体的に、二面角の大きさθ(A,D)を求めよう。なお二面角は内部から測る。
(Ⅰ) 四面体ABCDの6辺を以前のように、BC=a,CA=b,AB=c,AD=d,BD=e,CD=f・・・(1.1)と
おく。[図1参照] また、
△BCD,△ACD,△ABD,△ABCの面積をそれぞれS_A,S_B,S_C,S_D で表す。・・・(1.2)
また便宜上、△BCD,△ACD,△ABD,△ABCそのものも、それぞれS_A,S_B,S_C,S_D で表す。
頂点Aの対面△BCDが S_Aという具合である。二面S_AとS_Dのなす二面角の大きさを
内部から測り、θ(A,D)で表すことにする。内部から測っているから、
0°<θ(A,D)<180°である。もちろん、θ(A,D)=θ(D,A)。そして

四面体ABCDの実例として、
四面体ABCDの6辺を、BC=a=2,CA=b=√7,AB=c=3,AD=d=4,BD=e=√6,CD=f=2√2 ・・・(1.1)
とおく。[図2参照] 』

---という具合だった。

(Ⅱ)このとき、
計算したように、
detJ(3)=149 >0・・・(2.1)。
 4S_A=2√23⇔ 2S_A=√23,4S_D=2√27⇔ 2S_D=√27,
 4S_C=√5√43=√215 ,    4S_B=√223            ・・・(2.2)
 また、
 cosθ(A,D)=-5/[√23√27]=-0.200643088 位 
 sinθ(A,D)=2√149/[√23√27]  (以前のblog「四面体の正弦定理と応用」より)
 θ(A,D)  =101.5745676°位 (鈍角!)            ・・・(2.3)
また、
 cosθ(B,C)=198/[2√223√215]=99/[√223√215]
 (blog「物言はぬは腹ふくるる業」による)                
 sinθ(B,C)=16√149/[√223√215] 
 θ(B,C)  =56.64751355°位 (これらは後の(Ⅲ)の(ア)でも求める)・・・(2.4)である。               

次に
(Ⅲ)
 cosθ(B,D)を求めよう。「本」のP226の「ややこしい公式(5)」より、
 16(S_B)(S_D)cosθ(B,D)
 =b^2(f^2+d^2-b^2)+a^2(d^2+b^2-f^2)+c^2(b^2+f^2-d^2)-2b^2e^2 ・・・(3.1)
 =f^2(b^2+c^2-a^2)+b^2(c^2+a^2-b^2)+d^2(a^2+b^2-c^2)-2b^2e^2 ・・・(3.2)
(3.1)の右辺は、(1.1)より
 =b^2(f^2+d^2-b^2)+a^2(d^2+b^2-f^2)+c^2(b^2+f^2-d^2)-2b^2e^2
 =(√7)^2[(2√2)^2+4^2-(√7)^2]+2^2[4^2+(√7)^2-(2√2)^2]+3^2[(√7)^2+(2√2)^2-4^2]
 -2×(√7)^2×(√6)^2
 =7×(8+16-7)+4×(16+7-8)+9×(7+8-16)-2×7×6
 =7×17+4×15+9×(-1)-7×12=119+60-9-84
 =86
よって(2.2)を代入して、
  cosθ(B,D)=86/[4(S_B)4(S_D)]=86/[√223×2√27]=43/[√223√27] ・・・(3.3)となる。
 ついでに sinθ(B,D)を求めよう。「本」のP217の[命題12.25]と同様にして、
 sinθ(B,D)=AC√[detJ(3)]/[4(S_B)(S_D)]であるから、
 (2.1)(2.2)から、
  sinθ(B,D)=AC√[detJ(3)]/[4(S_B)(S_D)]=(√7×√149×2)/[4(S_B)2(S_D)]
      =(2√7√149)/[√223×√27] ・・・(3.4)
 これらより、θ(B,D)=56.34721356° 位

さて、cosθ(A,D),cosθ(B,D)が求まったので、四面体の第1余弦定理
 S_D=(S_A)cosθ(A,D)+(S_B)cosθ(B,D)+(S_C)cosθ(C,D) ・・・(3.5)から、cosθ(C,D)を
 求めることが できる。(2.2)及び(2.3)と(3.3)を、(3.5)を4倍したものに代入すれば、
 2√(27)=2√23×{-5/[√23√27]}+√223×{43/[√223√27]}
        +√215×cosθ(C,D)
 √215×cosθ(C,D)=2√27-2×{-5/[√27]}-{43/√27}
         =2√27-33/[√27]
この両辺を√27倍して、√27√215×cosθ(C,D)=2×27-33
 ⇔  cosθ(C,D)=21/[√27√215] ・・・(3.6) となる。こうして、
 二面角 、θ(A,D),θ(B,D),θ(C,D)の余弦が求まった。[ Dがみな付いている事に注意]

☆  すると3つの四面体の第3余弦定理から、
 cosθ(B,C),cosθ(A,C),cosθ(A,B)が求まるのである。こうして
 6つの二面角の余弦 cosθ(A,D),cosθ(B,D),cosθ(C,D),cosθ(B,C),cosθ(A,C),cosθ(A,B)
  が全て求まる。これを実行しよう。
(ア) まず第3余弦定理  (S_A)^2+(S_D)^2-2(S_A)(S_D)cosθ(A,D)
            =(S_B)^2+(S_C)^2-2(S_B)(S_C)cosθ(B,C)
  により、cosθ(A,D)からcosθ(B,C)を求める。

    上の式を16倍すると、
             (4S_A)^2+(4S_D)^2-2(4S_A)(4S_D)cosθ(A,D)
            =(4S_B)^2+(4S_C)^2-2(4S_B)(4S_C)cosθ(B,C)  
  これに、(2.2)(2.3)を代入して
   (2√23)^2+(2√27)^2-2(2√23)(2√27){-5/[√(23)√(27)]}
 =(√223)^2+(√215)^2-2(√223)(√215)cosθ(B,C)
 ⇔ 2(√223)(√215)cosθ(B,C)=223+215-(4×23+4×27+8×5)
                =223+215-(92+108+40)
                             =223+215-200-40=23+175
               =198
 よって cosθ(B,C)=99/[√223√215] ・・・(3.7)
 
(イ)  
      次に第3余弦定理  (S_B)^2+(S_D)^2-2(S_B)(S_D)cosθ(B,D)
            =(S_A)^2+(S_C)^2-2(S_A)(S_C)cosθ(A,C)
  により、cosθ(B,D)からcosθ(A,C)を求める。これは16倍した
             (4S_B)^2+(4S_D)^2-2(4S_B)(4S_D)cosθ(B,D)
            =(4S_A)^2+(4S_C)^2-2(4S_A)(4S_C)cosθ(A,C) と同値。
   これに、(2.2)(3.3)を代入して
   (√223)^2+(2√27)^2-2(√223)(2√27)×{43/[√223√27]}
 =(2√23)^2+(√215)^2-2(2√23)(√215)cosθ(A,C)
 ⇔ 2(2√23)(√215)cosθ(A,C)=4×23+215-(223+4×27-4×43)
               =92+215-(223+108-172)
                              =92+215-223-108+172
               =(92-108)+(215-223)+172
               =-16-8+172
               =-24+172=148
  よって cosθ(A,C)=37/[√23√215]  ・・・(3.8)
 (ウ)
 最後に 第3余弦定理  (S_C)^2+(S_D)^2-2(S_C)(S_D)cosθ(C,D)
          =(S_A)^2+(S_B)^2-2(S_A)(S_B)cosθ(A,B)
  により cosθ(C,D)からcosθ(A,B)を求める。これは16倍した
             (4S_C)^2+(4S_D)^2-2(4S_C)(4S_D)cosθ(C,D)
            =(4S_A)^2+(4S_B)^2-2(4S_A)(4S_B)cosθ(A,B) と同値。      
   これに、(2.2)(3.6)を代入して
   (√215)^2+(2√27)^2-2(√215)(2√27)×{21/[√215√27]}
 =(2√23)^2+(√223)^2-2(2√23)(√223)cosθ(A,B)    
 ⇔ 2(2√23)(√223)cosθ(A,B)=(4×23+223)-(215+4×27-4×21)
               =92+223-(215+108-84)
               =223-215-108+84+92
               =8-108+176=76
  よって cosθ(A,B)=19/[√23√223] ・・・(3.8)
以上(ア)(イ)(ウ)により、四面体ABCDの6つの二面角の余弦が全て求まった。
 二面角は全て、0°より大きく180°より小さいので、二面角の余弦から、全て
 求まるわけである。以上を含めて、二面角の正弦も全て求めて一覧にしてまとめておく。

(Ⅳ)
  BC=a=2,CA=b=√7,AB=c=3,AD=d=4,BD=e=√6,CD=f=2√2 のとき、四面体ABCDが
 できる。
 detJ(3)=149, 4S_A=2√23,4S_B=√223,4S_C=√215,4S_D=2√27
 そして四面体ABCDの体積をVとするとき、6V=√detJ(3)=√149  ・・・(4.1)となる。
 
 (1) cosθ(A,D)=-5/[√23√27]=-0.200643088 位 ・・・(4.1.1)
     sinθ(A,D)=2√149/[√23√27]           ・・・(4.1.2)
     θ(A,D)  =101.5745676°位 (鈍角!)       ・・・(4.1.3)

 (2) cosθ(B,D)=43/[√223√27]               ・・・(4.2.1)      
   sinθ(B,D)=2√7√149/[√223×√27]     ・・・(4.2.2)
   θ(B,D)  =56.34721355°位               ・・・(4.2.3)

 (3) cosθ(C,D)=21/[√27√215]    =          ・・・(4.3.1)
   sinθ(C,D)=6√149/[√27√215]            ・・・(4.3.2)
     θ(C,D)   =74.00075251° 位             ・・・(4.3.3)

 (4) cosθ(B,C)=99/[√223√215]               ・・・(4.4.1)
     sinθ(B,C)=16√149/[√223√215]          ・・・(4.4.2)
     θ(B,C)   =63.11956117° 位             ・・・(4.4.3)

 (5) cosθ(A,C)=37/[√23√215]                ・・・(4.5.1)
   sinθ(A,C)=2√6√149/[√23√215]         ・・・(4.5.2)
     θ(A,C)   =58.25357225° 位             ・・・(4.5.3)
 
 (6) cosθ(A,B)=19/[√23√223]                ・・・(4.6.1)
   sinθ(A,B)=4√2√149/[√23√223]         ・・・(4.6.2)
     θ(A,B)   =74.61522034° 位             ・・・(4.6.3)
 
 ☆☆
 ここで 求め方の注意。

 まず、二面角 θ(A,D),θ(B,D),θ(C,D),θ(B,C),θ(A,C),θ(A,B)の中で、
 二面角の2つの添え字の内、1つずつ共通な文字の「余弦」を「本」P225からP226
 の「ややこしい」公式で、2つ求める。[先ほどの例では,θ(A,D)とθ(B,D)のDが共通]
 そのあとは覚えやすい四面体の第1余弦定理で、共通な文字を添え字にもつ
 残りの二面角の余弦をまず求める。[先ほどの例では、θ(C,D)の余弦を求める。]
 次に、四面体の第3余弦定理を3回使用して、2つの添え字に共通な文字がない
 二面角の余弦を3つ求めると良い。[先ほどの例ではcosθ(A,D)→cosθ(B,C)。
  cosθ(B,D)→cosθ(A,C)。cosθ(C,D)→cosθ(A,B)。のように求めるということ。]
 二面角の正弦については、detJ(3)、言い換えれば四面体ABCDの体積Vが求まって
 いれば、「本」の「四面体ABCDの二面角の正弦の公式」P217の[命題12.25]の
 sinθ(A,D)=BC√detJ(3)/[4(S_A)(S_D)] などで、求めるのが簡単である。
 [なお、四面体の第2余弦定理を使って、θ(A,D),θ(D,B)から、θ(B,A)を求めても
 よいが、計算が大変である。ただし、この場合の第2余弦定理とは、
 (S_C)^2=(S_A)^2+(S_D)^2+(S_B)^2
 -2(S_A)(S_D)cosθ(A,D)-2(S_D)(S_B)cosθ(D,B)-2(S_B)(S_A)cosθ(B,A)
 をさす。添え字A,D,Bが巡回的]
☆☆
 求め方の注意終わり。
ーーーー四面体の実例で内接球面Iとの接点I^Dの重心座標の公式の確認(その2) に続くーーー


四面体の正弦定理と応用,特に四面体の6つの二面角が全て等しい⇒正四面体である

2018-12-18 13:28:05 | Weblog

四面体ABCDの正弦定理と応用,特に四面体の6つの二面角が全て等しい

⇒正四面体である _2018.12.18(火)

1.
まず、△ABCの正弦定理を振り返ってみよう。△ABCの正弦定理は、角A,B,Cと辺a=BC,b=CA,c=AB
と外接円の半径 R_2に対し、
 a/sinA=b/sinB=c/sinC=2(R_2) ・・・(1.1.1) と表現される。ここで大事なことは、
 a:b:c=sinA:sinB:sinC ・・・(1.1.2)であり、その一定の連比が2(R_2)ということであるが、
ここでは三角関数に注目して、sinA:sinB:sinC=a:b:c ・・・(1.1.3) その連比が、
 1/[2(R_2)]・・・(1.1.4)と考えることにする。さて(1.1.3)の証明であるが、普通は△ABC
の外接円を描き、円周角の定理を用いておこなう。しかしここでは、面積の公式
S=(1/2)bcsinAを使って証明してみるのである。これから sinA=(2S)/(bc) つまり
 sinA=a(2S)/(abc)・・・(1.1.5) 同様に S=(1/2)casinB=(1/2)absinC から、
 sinB=b(2S)/(abc)・・・(1.1.6), sinC=c(2S)/(abc)・・・(1.1.7)
 ゆえに  sinA/a=sinB/b=sinC/c=(2S)/(abc)・・・(1.1.8)
 よって sinA:sinB:sinC=a(2S)/(abc):b(2S)/(abc):c(2S)/(abc)=a:b:c・・・(1.1.3) 
 が導かれた。次に一定の連比については、(1.1.8)から、(2S)/(abc)であることが分かるが、
 ここで、よく知られた、
 R_2=(abc)/[4S_2] ・・・(1.1.9) となることから、一定の連比 (2S)/(abc)は
 (2S)/(abc)=1/[2(R_2)]・・・(1.1.4)であることが分かる。これで(1.1.1)が示された。

[(1.1.9)はよく知られたことであるが、(1.1.9)の証明の為に正弦定理(1.1.1)を
使うと循環論法になる」そこで、(1.1.9)を正弦定理(1.1.1)を用いずに証明してみる。

2.
(1.1.9)の「証明」

 本「重心座標による幾何学」の「n次元単体の外心(但しn≧2)」についてのP128~129の
 [定理8.8]における、(R_n)^2=-[detΘ_n]/[2detΞ_n]を見てみる。ここにおいて、n=2
 として (R_2)^2=-[detΘ_2]/[2detΞ_2]・・・(2.1.1)となる。本のP131とP132のように、

 Θ_2=
( d00^2  d01^2  d02^2 )
( d10^2  d11^2  d12^2 )
( d20^2  d21^2  d22^2 )
=
(      0           A0A1^2     A0A2^2 )
( A1A0^2     0            A1A2^2 )
( A2A0^2     A2A1^2            0    )
=
(    0        AB^2      AC^2   )
( BA^2        0         BC^2   )
( CA^2      CB^2          0    )
=
(   0      c^2      b^2    )
(  c^2       0          a^2    )
(  b^2      a^2         0      )
即ち、
 Θ_2=
(   0       c^2     b^2    )
(  c^2       0          a^2    )
(  b^2      a^2         0      ) ・・・(2.1.2)
ゆえに detΘ_2=a^2b^2c^2+a^2b^2c^2=2a^2b^2c^2 ・・・(2.1.3)
また、
 Ξ_2=
(   0       c^2      b^2       1   )
(  c^2       0           a^2       1   )
(  b^2      a^2          0         1   )
(   1            1            1         0   ) ・・・(2.1.4)
detΞ_2を計算するにはまともにやらずに、本の分解定理[命題8.6](P126)を使う。
つまり、
detΞ_2=-detΘ_2^0-detΘ_2^1-detΘ_2^2 ・・・(2.1.5)として、

detΘ_2^0=
|  1      c^2     b^2  |
|   1       0           a^2  |
|   1      a^2           0   |    
=a^2(b^2+c^2-a^2) ・・・(2.1.6)

detΘ_2^1=
|   0         1        b^2  |
|  c^2        1         a^2   |
|  b^2        1           0     |
=b^2(c^2+a^2-b^2) ・・・(2.1.7)

detΘ_2^2=
|   0      c^2      1    |
|  c^2       0          1    |
|  b^2      a^2      1    |
=c^2(a^2+ b^2-c^2) ・・・(2.1.8)

(2.1.6)~(2.1.8)を(2.1.5)に代入して、
 detΞ_2=-a^2(b^2+c^2-a^2)-b^2(c^2+a^2-b^2)-c^2(a^2+ b^2-c^2)
        =a^4+b^4+c^4-2(b^2)(c^2)-2(c^2)(a^2)-2(a^2)(b^2)
        =-[-a^4-b^4-c^4+2(b^2)(c^2)+2(c^2)(a^2)+2(a^2)(b^2)]
        =-(a+b+c)(b+c-a)(c+a-b)(a+b-c) ・・・(2.1.9)
 (2.1.3)と(2.1.9)を(2.1.1)に代入して、
  (R_2)^2=-[detΘ_2]/[2detΞ_2]
     =-[2a^2b^2c^2]/[-2(a+b+c)(b+c-a)(c+a-b)(a+b-c)]
     =[a^2b^2c^2]/[(a+b+c)(b+c-a)(c+a-b)(a+b-c)]
     =[a^2b^2c^2]/[16(S_2)^2] (∵ ヘロンの公式)
 ⇔ R_2=[abc]/[4(S_2)}

これで (1.1.9)が証明された。なおヘロンの公式はS=(1/2)bcsinAを平方し、
第二余弦定理 cosA=[b^2+c^2-a^2]/[2bc]を使うが、第二余弦定理は
三平方の定理から図形的に導かれるので、以上の議論は外接円には関係なく
循環論法ではない。しかし、これでは正弦定理を導く為に余弦定理も用いたことに
なってしまう。これを避けるには、detΞ_n=-(-2)^n×detJ_n ・・・(2.1.10)
[本のP123の(1)式]とdetJ_n=(n!V_n)^2[本のP122の(2)式]を使い、
n=2とすれば、detΞ_2=-(-2)^2×detJ_2=-4×4(V_2)^2=-16(S_2)^2
 [∵ V_2=S_2]を使えばよい。 何れにしろ大分面倒だった。
((1.1.9)の「証明」終わり)

3.四面体ABCDの正弦定理について

△ABCの正弦定理では、面積公式 S_2=(1/2)bcsinAを基本にし、
 sinA/a=(2S_2)/(abc)・・・(1.1.8)  において、 R_2=[abc]/[4(S_2)]
 即ち、(2S_2)=(abc)/[2R_2]・・・(1.1.10) を更に用いて、(1.1.8)の右辺のabcが
 相殺されて、
一定の連比が、R_2「だけ」の式になったがこれはたまたまのことである。
(図形的な証明ではexplicitに関係してくるが)

これから述べる「四面体ABCDの正弦定理」と私がよぶものにおいては、
一定の連比がR_3だけの式にはならない。まず、「本」「重心座標による幾何学」
 のP217の[命題12.25]の式
 sinθ(A,D)=BC√[detJ(3)]/[4(S_A)(S_D)] ・・・(3.1.1)を変形して
 [ここにBCは辺BCの長さ]
 
 sinθ(A,D)/[(BC)/{(S_A)(S_D)}] =√[detJ(3)]/4 となる。detJ(3)=(3!V_3)^2より、
 √[detJ(3)]=6V_3 
 ゆえに  sinθ(A,D)/[(BC)/{(S_A)(S_D)}] =√[detJ(3)]/4=6(V_3)/4・・・(3.1.2) 
 となる。
 これらより、
 sinθ(A,B):sinθ(A,C):sinθ(A,D):sinθ(B,C):sinθ(B,D):sinθ(C,D)
 =[(CD)/{(S_A)(S_B)}]:[(BD)/{(S_A)(S_C)}]:[(BC)/{(S_A)(S_D)}]
 :[(AD)/{(S_B)(S_C)}]:[(AC)/{(S_B)(S_D)}]:[(AB)/{(S_C)(S_D)}] ・・・(3.1.3)
 となる。V_3を単にVで表し、[定理3.1]として述べると、

[定理3.1] 「四面体ABCDの正弦定理]

sinθ(A,B):sinθ(A,C):sinθ(A,D):sinθ(B,C):sinθ(B,D):sinθ(C,D)

 =[(CD)/{(S_A)(S_B)}]:[(BD)/{(S_A)(S_C)}]:[(BC)/{(S_A)(S_D)}]

 :[(AD)/{(S_B)(S_C)}]:[(AC)/{(S_B)(S_D)}]:[(AB)/{(S_C)(S_D)}] ・・・(3.1.3)
 となる。その一定の連比=√[detJ(3)]/4=6V/4 ・・・(3.1.4)
 また、この一定の連比=√[-detΘ(3)]/[16R_3]・・・(3.1.5)とも書ける。

 ここにR_3は四面体ABCDの外接球面の半径、detΘ(3)は本のP125の[定義8.5]
 (3)のものである。 [detΘ(3)<0 であり、detΘ(2)>0 (∵(2.1.3)) である。] 
「証明」
 (3.1.4)は(3.1.2)よりいえる。
 (3.1.5)は「本」のP135の (R_3)^2=-[detΘ(3)]/[2detΞ(3)] と
  detΞ(3)=-[(-2)^3]detJ(3)=8detJ(3) より
    (R_3)^2=-[detΘ(3)]/[16detJ(3)] ・・・(3.1.6) detΘ(3)<0により、
 ⇔ (R_3)^2=[-detΘ(3)]/[16detJ(3)]⇔ R_3=√[-detΘ(3)]/[4√detJ(3)]
 ⇔ √detJ(3)= √[-detΘ(3)]/[4R_3] ⇔√[detJ(3)]/4=√[-detΘ(3)]/[16R_3]
 と(3.1.4)による。
(「証明」終わり)                            

[定理3.1]の系1
 θ(A,B),θ(A,C),θ(A,D)などのように共通の添え字[ここではA]を1つずつもつ
  3つの二面角については、

 sinθ(A,B):sinθ(A,C):sinθ(A,D)=[(CD)/(S_B)]:[(BD)/(S_C)]:[(BC)/(S_D)]・・・(3.1.7)
 などが成り立つ。

[定理3.1]の系2:[等面四面体ABCDの正弦定理]
 
  sinθ(A,B):sinθ(A,C):sinθ(A,D):sinθ(B,C):sinθ(B,D):sinθ(C,D)

 =CD:BD:BC:AD:AC:AB ・・・(3.1.8)
「証明」
 四面体ABCDが等面四面体 ⇔ S_A=S_B=S_C=S_D 「バンの定理] であるから、[定理3.1]の
 の(3.1.3)の右辺の比の分母を払った式を考えればよい。
(「証明」終わり)

なお (3.1.1)自体は detJ(3)=(3!V)^2 ⇔ √[detJ(3)]=6V により、
sinθ(A,D)=BC√[detJ(3)]/[4(S_A)(S_D)]⇔sinθ(A,D)=(BC)6V/[4(S_A)(S_D)]
⇔ sinθ(A,D)=(BC)3V/[2(S_A)(S_D)] ・・・(3.1.9)
⇔ V=(1/3)[2(S_A)(S_D)]sinθ(A,D)/BC・・・(3.1.10) と同値。これは四面体ABCDの体積を
求めようとして自然に出てくる。BCはS_AとS_Dとの共通辺である。

 ☆
  また(3.1.1)にて、sinθ(A,D)を求めたいとき、BCの長さだけでなく S_A,S_Dと
 体積Vも必要ということである。

 この実例については、2016.04の兄弟 blog「物言はぬは腹ふくるる業」
 に挙げた実例:
 BC=a=2,CA=b=√7,AB=c=3,AD=d=4, BD=e=√6,CD=f=2√2とすると、
 4S_A=2√23,4S_D=2√27,detJ(3)=149 なので、
 sinθ(A,D)=BC√[detJ(3)]/[4(S_A)(S_D)]=4BC√[detJ(3)]/[(4S_A)(4S_D)]
           =[4×2√149]/[(2√23)(2√27)]=2√149/[√23√27] つまり、

  sinθ(A,D)=2√149/[√23√27]・・・(3.1.11)となる。
 一方、そこのblogの結果より、
 cosθ(A,D)=-5/[√23√27]・・・(3.1.12)だったので、

  sin^2θ(A,D)+cos^2θ(A,D)を計算してみると、

  sin^2θ(A,D)+cos^2θ(A,D)=[(2√149)^2+(-5)^2]/[23×27]
     =[596+25]/[23×27]=621/[23×27]=[23×27]/[23×27]
     =1 であって、
 目出度く  「sin^2θ(A,D)+cos^2θ(A,D)=1」 
 となって計算に間違いはない。

 しかし、 sinθ(A,D)が判ったといって、
 θ(A,D)=sin^(-1)(2√149/[√23√27])=(78.42543239)°とすると、間違いである。
 それは、(3.1.12)にあるように、cosθ(A,D)<0 よりθ(A,D)は鈍角で、blogに
 あったようにθ(A,D)=(101.5745676)°が正しい値。
 θ(A,D)=180-sin^(-1)(2√149/[√23√27])=180°-(78.42543239)°
 =(101.5745676)°としなければならない。[関数電卓のsin^(-1)(x)の定義域は、
 -1≦x≦1、値域は -90°≦y≦90°]
 図を正確に描いて二面角θ(A,D)が 鋭角か、鈍角かが 判れば、
 sinθ(A,D)の方が、detJ(3)の計算が要るが、 計算は楽である。
 しかし、一般には公式が複雑ではあるが、detJ(3)の計算
 [即ち体積の計算]が要らないcosθ(A,D)の方がきちんと求まる。
 ・・・という状況である。

4.

最後に、[等面四面体ABCDの正弦定理]の応用として、既に以前のblogで
与えた「二面角が全て等しい四面体は正四面体に限る」ことを、
証明してみよう。

[定理4.1.1] 「二面角が全て等しい四面体は正四面体に限る」

 四面体ABCDにおいて、その二面角
 θ(A,B)=θ(A,C)=θ(A,D)=θ(B,C)=θ(B,D)=θ(C,D)
 ⇒ この四面体は正四面体
「証明」
 四面体の第一余弦定理をまず使用する。
 S_D=(S_A)cosθ(A,D)+(S_B)cosθ(B,D)+(S_C)cosθ(C,D)・・・(4.1.2)
 において、θ(A,D)=θ(B,D)=θ(C,D)だから、(4.1.2)に代入して、
 S_D=[(S_A)+(S_B)+(S_C)]cosθ(C,D) ・・・(4.1.3)となる。
 (S_A)+(S_B)+(S_C)=2F-S_D>0 より cosθ(C,D) =S_D/[2F-S_D]・・・(4.1.4)
 同様に
 S_A=(S_B)cosθ(B,A)+(S_C)cosθ(C,A)+(S_D)cosθ(D,A)・・・(4.1.5)
 よって cosθ(D,A) =S_A/[2F-S_A]・・・(4.1.6)
 同様に
 S_B=(S_A)cosθ(A,B)+(S_C)cosθ(C,B)+(S_D)cosθ(D,B)・・・(4.1.7)
 よって cosθ(D,B) =S_B/[2F-S_B]・・・(4.1.8)
 同様に
 S_C=(S_A)cosθ(A,C)+(S_B)cosθ(B,C)+(S_D)cosθ(D,C)・・・(4.1.9)
 よって cosθ(D,C) =S_C/[2F-S_C]・・・(4.1.10)
 (4.1.4),(4.1.6),(4.1.8),(4.1.10)と、θ(C,D)=θ(D,A)=θ(D,B)=θ(D,C)
 により、
 S_D/[2F-S_D]=S_A/[2F-S_A]=S_B/[2F-S_B]=S_C/[2F-S_C] ・・・(4.1.11)
 となる。ここで、
 写像 g:(0,2F) → (0,∞) ,g(t)=t/[2F-t] は単射だから、(4.1.11)から
 S_A=S_B=S_C=S_D となり、この四面体ABCDは等積四面体、つまり等面四面体
 となる。そこで、θ(A,B)=θ(A,C)=θ(A,D)=θ(B,C)=θ(B,D)=θ(C,D)と
 (3.1.8)の[等面四面体ABCDの正弦定理]を用いて、
   CD=BD=BC=AD=AC=AB ・・・(4.1.12)が示され四面体ABCDの6辺が
 全て等しくなり、この四面体ABCDは正四面体であることが分かった。
(「証明」終わり)