たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

研究の適正について 阪大汚職・背任事件をひもといてみる

2016-12-07 | 企業・事業・研究などの不正

161207 研究の適正について 阪大汚職・背任事件をひもといてみる

 

今朝はかなり冷え込んでいます。紀ノ川の川面からは燃え上がるような朝靄が朝日に照らされて美しいです。

 

しかしニュースはあまり芳しくないものが多いですね。大阪地検が取り扱っている松山市にある黄檗宗・安城寺住職の背任事件と大阪大学大学院教授の贈収賄・背任事件がこのところ気になっていました。いずれも公益性が求められながら組織上のコンプライアンスが問題にされてきた点で共通しており、どのように取り上げるか少し考えてみましたが、今回は後者だけにしておきます。

 

阪大事件の全貌はまだ明らかとはいえませんが、毎日新聞の一連の報道を基に、とりあえず事実の概要を整理すると、以下のような事ではないかと思います。

 

被疑者の倉本洋氏は、阪大の研究者情報によれば、建築耐震工学、鉄筋コンクリート構造、鋼コンクリート合成構造を専門分野としています。で、贈賄側の東亜建設工業と飛島建設とは11年度と12年度に大学の承認を得て共同研究を行い、成果も発表しています。ところが、13年度以降も大学の承認を得ずに両社との共同研究を継続して、139月から169月まで両社から合計約2180万円の資金を受け取りながら、実際にかかった研究費計約1000万円を大学側に支出させて損害を与えたとされています。

 

大阪地検は、この金銭の流れのうち、妻が代表者となっている「CES構造研究所」の口座に東亜建設工業から計約430万円、個人口座に飛島建設から計約350万円、それぞれ振り込まれている分について、計約780万円を賄賂と認定しています。他方、大学側に支出させた計約1000万円について背任罪として再逮捕したようです。実は新聞報道からは背任罪とした被疑事実がはっきりしないのです。

 

ここであまり刑法上の議論をするつもりはありませんが、報道記事にある大阪地検の認定には若干ひっかかるところがあります。賄賂と認定した金額ですが、先物取引やゴルフなどに使ったという使途を根拠にしたかのような記事となっていますが、他方で先物取引による損失が約3000万円に上るともいわれているわけですから、その説明では不明確です。振込先もCES口座と個人口座で、振込先では識別できません。振込年月日と金額で具体的な贈収賄の合意が裏付けられていればわかりますが、どうもはっきりしません。お金に識別マークをつけることができませんので、賄賂金額の認定は結構大変かもしれません。そういえば昔贈賄事件の弁護を担当したことがありますが、捜査側の認定が確固としたものでなかったことを記憶しています。

 

もう一つ背任についての疑問も触れておきます。背任事件の被害者側の立場で仕事をしたことがありますが、会計の不正処理に関わることが少なくありません。本件では研究費は実際に約1000万円かかったとされていて、大学側が奨学寄付金として被疑者にその支払をしていたが、それが両社との共同研究に使われることを知らなかったことが指摘されていることから、研究費の不正使用という認定になったのかと思われます。しかし、この間の成果品としての学術論文には両社の社員の名前は含まれておらず、あくまで被疑者を含む大学内の研究者だけによる成果品(知的財産権は大学に帰属?)ですので、はたして大学に損害を与えたといえるかは気になります。とはいえ、両社の多額の研究費の名目で支出しているわけですから、なんらかの形でその成果を入手したのかもしれません。今後の捜査の行方を見てみたいと思います。

 

で、前置き的な話しが長くなりましたが、いま一番疑問を感じているのは、大学側と企業側の対応です。これまでそれぞれのコンプライアンスを含む監督・管理責任といった点で、記者会見があったのでしょうか。仮になされていたのだとしたら、きちんと報道すべきでしょう(見逃していたら申し訳ないですが、大学や企業のウェブサイトではきちんと対応したものが見つかりませんでした)。むろん贈収賄の当事者が一番の問題で背任まで行った倉本教授の責任こそ強く非難されなければなりません。

 

さて、このような研究不正は、STAP細胞事件などで提起されたねつ造、改ざんなどの研究そのものの不正だけでなく、研究費の不正処理も当然に含まれます。

 

ところで、安倍政権に限らず、イノベーションは今後の日本経済にとって必須の課題でしょうし、その一翼を担うのは産学連携による研究システムではないかと思うのです。その推進とともに適切な運営管理のシステムも、ほとんどの大学で方針・ルールを確立しているかと思います。ただ、制度という器を作っても、それを担うのは人であり、その意識および実際の運用が重要です。

 

制度的なものを確認しようと、大阪大学のウェブサイトをのぞいたのですが、産学連携本部というウェブサイトにある程度情報が掲載されているものの、整備された内容のものを見つけることができませんでした。たとえば東京大学では産学協創本部という組織を中心にした整備した規定や契約書などを含む一連のものがウェブ上で公開されています。これらが整っているから大丈夫というわけではないので、その実施状況をも検証できるようにアップすることも必要かと思われます。

 

一応、東大の上記サイトの情報を参考に、今回の事件について検討してみたいと思います。11年度と12年度は、企業との共同研究は、大学の承認を得て共同研究契約を取り交わして行われ、研究論文にも企業社員の名前も出ていたとされています。そうだとすれば、社員は研究員として大学に派遣されたものとして、研究料といった名目で企業がその分を負担するでしょうし、その他企業側が支出した費用はすべて大学の会計に入り、研究費として適切に管理されたものと思われます。研究成果を含む知的財産権等の取扱も企業側と明確な取り決めにより、それぞれの権利関係も明確にされていたと思われます。

 

さて、13年度以降は、企業側の共同研究は大学に無断で行われていたにもかかわらず、大学からはその研究費が支出されていました。これ自体大学の管理がどうなっていたのか疑わざるを得ません。

 

というのは、これまでの産学連携による研究について、経産省が本年9月、秘密情報の管理強化に向けた指針を発表し、大学にその体制整備を求めていました。本件では、企業側が多額の研究費として拠出する以上、社員を大学の研究室に出入りして共同研究を進めていたと考えるのが自然です。そのような企業社員の出入りについて大学側がまったく関知していなかったことを今回の事件は示しています。秘密保持契約はそのような体制があって初めて実効性があり、信頼もされますが、これでは産学連携の研究に水をさしかねません。

 

そもそも大学側は、11年度と12年度の研究では企業側の協力が必要だったと思われるのに、13年度以降の研究では一切その協力を得ずに行うことが可能であったのか、そのような検討がなされたのかですら、疑いを抱かざるを得ません。研究費を出す以上、大学側として大学の研究員だけで成果があがるのか、チェックする必要があると考えますが、そのようなチェック機能が働いていない、審査能力がないと言われても仕方がないかもしれません。

 

他方で、企業側も当然問題です。東亜建設工業は海洋土木大手で歴史のある名門企業の一つで、堅実な社風という評判を聞いたことがあります。ところが、本年に入り、羽田空港など複数の空港等での地盤改良工事の虚偽報告と施工不良により、1028日には国土交通省から最大6カ月の指名停止処分を受けています。

 

本件は建築部門ですが、産学連携の共同研究について、一体どのような管理体制であったのか、第三者委員会などにより検証が必要ではないかと思うのです。大学と共同研究する場合、大学の承認を得ることや、研究料を支払うこと、共同研究契約書を取り交わすことなど、最も基本的なことが行われないまま、多額の支出がなされています。ましてや贈賄金まで支払われていたわけです。会計監査だけでなく業務監査も機能していなかったように感じられます。贈賄被疑者の社員だけの問題ではないと思います。

 

ところが、同社のホームページを見ても、簡単な謝罪文をアップしているだけで、本件について、コンプライアンスの検証・見直しに向けた姿勢が見受けられません。それは上記の指名停止処分の事件の方が大きい影響があり、その対応に追われているのかもしれませんが、根っこは同じだと思います。重大な虚偽報告や施工不良は信頼が基本の企業にとって取り返しがつかない問題であり、それは本件の秘密裏に共同研究を行い、贈賄金まで交付したことと同種の病因を抱えていると思われます。早期迅速に対応して、名門復活を期待したいところです。

 

飛島建設も同様です。少々疲れてきたので、同じような問題なので割愛させていただきます。

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