たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

廃棄物とリサイクル <有害スラグ 業者不起訴>を読んで

2017-01-25 | 廃棄物の考え方

170125 廃棄物とリサイクル <有害スラグ 業者不起訴>を読んで

 

今朝も縛れるような寒さでしたが、道路はあまり凍ったところがなく、すんなり走ることができました。見上げると、和泉山系の山々は朝日に当たり、木々が白銀に煌めき美しい限りです。紀ノ川は一部薄く凍っているように見えましたが、普段のように流れています。

 

カナダに滞在している頃、ロッキー山脈の白銀の世界も魅了されますが、ロッキーの氷河から溶け出して流れ、大都会?カルガリーを縦断するボー川ではこの時期ほとんど凍結していて、もう少し経つと溶け出した水の流れと残る雪景色の美しいハーモニーがなんともいえない雰囲気だったのをつい思い出しました。

 

さて今朝の毎日・記者の目は、見出しのタイトルで、<大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」の渋川工場(群馬県渋川市)から出た鉄鋼スラグに環境基準を超える有害物質が含まれていた問題について>、廃棄物処理法違反をめぐって、告発した群馬県庁と、不起訴処分した群馬地検との見解の対立を取り上げ、地検の対応に批判の目を向けています。

 

記事によると、<鉄鋼スラグは製鉄の際に炉にたまる金属性の物質で、鉄鋼メーカーは高額な廃棄物処理費を抑えるため、破砕処理して道路に敷く砂利などに加工している。鉄の種類によっては、添加された化学物質がスラグに残留し環境汚染の要因になる。>と製造過程で排出されるスラグの問題を指摘しています。

 

この廃棄物か有価物かの問題は、廃棄物処理法が成立する以前から問題で、その後も何十年にわたって明確な基準を確立できないまま、各地で問題を繰り広げてきたと思います。

 

卑近な例では、私が担当した、東京の六価クロム鉱滓汚染問題は、長年にわたって問題になり、訴訟にもなり、今なお一定の浄化対策を講じられた広場等では住民の不安は残っています。N社は工場の製造過程ででてくるクロム鉱滓の処理として、それ自体は必ずしも有害ではないため、工場内に埋設したり、近隣住民に盛土や土壌改良目的で無料で配布して広範囲に分布されました。ところがその後有毒の六価クロムがあちこちで検出されるようになり、N社が安全な酸化クロムにする還元処理を行うなどにより、一定の対応をしました。しかし、実際は適切な還元処理が行われておらず、その後も六価クロムが検出され、近隣住民との間で訴訟となったのです。

 

そういえば、六価クロム汚染では、アメリカでも類似のケースが起こり、巨額の賠償責任を事業が負担し、その後映画『エリン・ブロコビッチ』で大変な評判になりました。子連れ主婦で弁護士助手役を好演したジュリア・ロバーツ(アカデミー主演女優賞を獲得)も素敵でしたが、弁護士役で人間味豊かでユーモアたっぷりの往年の名優アルバート・フィニー(67年の映画『いつも二人で』ではあのヘップバーンと見事なコメディタッチで珍道中を繰り広げています)も味わい深い演技を見せてくれています。

 

台詞の中で、戒厳令まで出したアメリカ史上最大?ともいうべき著名土壌汚染事件、ラブキャナルを持ち出し、事件後20年以上年経っても訴訟で解決していないことを比較にして、陪審判決によらない和解的処理に不安視する多数の住民に呼びかけ、説得する流れはなかなか圧巻です。

 

さて余談はさておき、そもそも廃棄物とは何かが不明瞭な定義となっていることが問題の発端だと思います。

 

 廃棄物の定義規定については、大阪府のウェブサイトを引用して、環境庁の解釈通知自体が曖昧で裁量性が高いことにより、問題が起こりやすい原因の一つとなっていることを確認しておきたいと思います。

 

<昭和46年の廃棄物処理法施行当時は、「客観的に汚物又は不要物として観念できる物であって占有者の意思の有無によって廃棄物となり又は有用物となるものではない」とする考え方が採用されていました。(昭和461025日環整45号通知)>

 

 この通知が包括的で占有者の意思に委ねていることから、<この考え方によると例えば貴金属を含む汚泥や金属くずのように高額で取り引きされているものであっても廃棄物としての規制を受けるという問題がありました。>と指摘しています。そのとおりかもしれませんが、現在もなお問題の建設汚泥や金属くず(これは窃盗品としてかなり出回っていると思われます)の業界からかなり強い反対があったことがうかがえます。

 

 <その後、昭和52年にはこの考え方が改められ、「占有者が自ら利用し又は他人に有償で売却することができないために不要になった物をいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断する」という考え方(いわゆる「総合判断説」)が採用されています。(昭和52326日環計37号通知)>

 

 この考え方は、「廃棄物は排出者にとって不要であるために占有者の自由な処分に任せるとぞんざいに扱われるおそれがあり、生活環境保全上の支障を生じる可能性を常に有していることから、法による適切な管理下に置き、不適正処理に対しては厳正に取り締まることが必要である。」との考え方に基づくものです。この場合、有価物として有償売却されていた物が、市況変動により料金を支払って委託処理することとなった場合、産業廃棄物に該当することとなって委託基準が適用されることに注意する必要があります。また、「占有者が自ら利用することができないために不要になった物」に該当するか否かも総合判断説によりますが、自ら利用すればどのような物でも廃棄物でなくなるものではなく、他人に有償で売却できるものを自ら利用することが必要な条件となります。 なお、総合判断説は、最高裁判例(H11.3.10最高裁第二小法廷決定。いわゆる「おから判決」)においても是認されています。>

 

 <「総合判断説」において国が示す5つの判断要素(1.その物の性状、2.排出の状況、3.通常の取扱形態、4.取引価値の有無、5.占有者の意思)は、総合的に判断するということであって、どれか一つの要素だけで決まるものではありませんが、実務的に最も重要視されることが多い「4.取引価値の有無」については、環境省から次のようにその考え方が示されています。(H17.8.12環境省通知「行政処分の指針について」)>

 

この総合判断説は、たしかに合理的な判断基準ともいえそうですが、規制当局にとっては、基準が複雑で、規制のメルクマールとしてはあまり漠然としているようにも思えます。なお環境省は輸送費の取扱等をめぐって具体例で通知しています(末尾の参考2)。

 

大阪府は、<「占有者と取引の相手方の間で有償譲渡がなされており、なおかつ客観的に見て当該取引に経済的合理性があること。実際の判断に当たっては、名目を問わず処理料金に相当する金品の受領がないこと、当該譲渡価格が競合する製品や運送費等の諸経費を勘案しても双方にとって営利活動として合理的な額であること、当該有償譲渡の相手方以外の者に対する有償譲渡の実績があること等の確認が必要であること。」としてできるだけ客観的な指標を示そうとしていると思いますが、毎日記事で取り上げられた群馬県と大きな差があるとは思えません。

 

そして大阪府は、<このように、有償譲渡がなされているかどうかの判断は、費用の名目を問わず排出事業者にとっての収支の実態で判断するものであり、大阪府はその目安を次のとおりとしております。>としていますが、廃棄物処理法の罰則規定との関係で、罪刑法定主義の観点から明確となっているかというと、目安という表現が気になります。群馬地検のように大阪地検でも躊躇するかもしれないおそれがあります。

 

このような廃棄物の定義規定自体、長年にわたって行政指導で行われてきた名残のようにも思えます。アメリカでは、ラブキャナル事件以後、スーパーファンド法をはじめ次々と規制法令が制定され、EPAと事業者との間で訴訟を含め長い闘いがあったと思いますが、わが国ではどちらかというと、あいまいな部分を残しつつ、行政指導で解決してきたのではないかと思っています。その点、誠実な事業者は規制を守り、そうでないところは抜き穴を見つけるといったことが繰り返されてきたのではないかと考えています。

 

とはいえ、大阪府の<排出事業者が運送費を負担する場合>の具体的な基準は、かなり明確ではないかと思いますが、これが法制度で明確に規定されていれば、群馬県での地検の扱いと異なったかもしれません。

 

記者の目では、<このスラグを有価物を装った廃棄物と認定した。環境基準を超える有害物質が含まれていることを知りながら出荷した上、「販売管理費」などの名目で販売額以上の金額を買い手に支払っていたことなどが理由だ。>としています。

 

しかも<大同はスラグに含まれる有害物質が検査で基準値を超えないよう天然砕石と混合していた。>とされています。

 

環境基準を超える有害物質を排出・移動させている、しかも中には検査で基準を超えないように天然採石と混合までしていたというのですから、確信犯的ともいえますね。これを見て、あの制度はどうなっているのかとPRTRのことを急に思い出しました。

 

90年代、事業者が営む工場等の近隣住民へのリスクアセスメントの一つとして、PRTRが欧米で普及しつつあった中、わが国も外圧を受けて、99年に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(PRTR法、化管法、化学物質排出把握管理促進法)として制定され、同時に安全データシート(Safety Data Sheet、略称 SDS)も導入されました。

 

当時は各地で説明会などがあり、私も参加したりした記憶があり、事業者の自主的な有害化学物質の開示制度としてより進展することを期待したものです。

 

しかし、PRTRSDSも事業者側の情報保護の壁が厚く、あまり普及しなかったように思うのです。このような制度が具体的な化学物質毎に、定期的に実効性のあるサイクルで排出量や移動量が適切に管理され、開示されていれば、大同特殊鋼のような問題を回避することができたかもしれません。

 

とはいえ、廃棄物の処理は、身近なゴミの分別ですら簡単でないのが現在の「豊かな文明」の結果です。しかし、住民に求められるゴミの分別と、事業者が専門的知見で行うべき廃棄物の分別・処理とは全く異なります。専門の管理スタッフが環境省や各自治体の基準を確実に履行することこそ、企業としてのコンプライアンス責任ではないかと思うのです。

 

大同特殊鋼としては、群馬地検の及び腰に満足することなく、より前向きに廃棄物処理の適正化に取り組むことこそ、企業としての社会的責任ではないかと思います。

 

たしかに148月のウェブ上の調査報告は一定の説明責任を果たしているとはいえます。しかし、その後165月に群馬県吉岡町が鉄鋼スラグを含む再生砕石を使用した町発注工事の調査を進めた結果、17工事に使用していることが公表したことについて、再発防止策との関係を含め適切な説明責任を欠いているように思います。また、記事で取り上げられている群馬地検の不起訴に対する群馬県側の指摘についても、的確な対応が求められるのではないかと考えます。

 

 

 

 

 

 

 

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