「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

   消えた歴史 「敵前上陸」「不沈艦の最後」

2007-08-23 05:24:43 | Weblog
敗戦後、僕の学校(旧制私立中学)が再開したのは8月27日だった。敗戦に
よる混乱、占領軍を迎える治安上の問題、焼失した校舎の整備などいろいろ
あったのであろう。唯一つ焼け残ったコンクリートの校舎も窓ガラスは破れ、
床板も抜けていた。そんな中での授業だったが、一番の問題は教科書だった。
時代が一変したため、課目によっては先生が板書したのを写して授業が行わ
れた。

義務教育の小学校の現場はもっと大変だったと思う。文部省の通達で教科書
はそのままでの使用は禁じられ、不適当の個所は、先生の指示で墨で抹消さ
れた。僕の手元に、その墨で消された昭和18年度文部省国定国語教科書巻6
(国民学校6年生用)があり、この中の「敵前上陸」「不沈艦の最後」の部分が墨
で消されていた。

この部分を再現してみると「敵前上陸」は、昭和16年12月8日、大戦勃発時
マレー半島コタバル海岸に敵前上陸したさいの,皇軍の勇敢な戦闘ぶり、また
「不沈艦の最後}は、当時”不沈”といわれた英国東洋艦隊の旗艦プリンス・オブ
ウェルズと戦艦レパルズを航空隊が襲い掛かり撃沈させた話である。

この教科書を学んだ世代は昭和8年から10年にかけて生まれた人たちである。そ
の後の世代は勉強していないし知らない。教科書から抹殺されただけでなく、歴史
の表舞台からも消えかかっている。「不沈艦の最後」は世界海戦史上、はじめて航
空機だけで艦船を沈めた世界海戦史上まれにみる記録である。しかし日露戦争の
日本海海戦と同じように日本人の脳裏にはない。
きょうから安倍総理はマレーシアを訪問する。マレーシアはかって英国の植民地
であった。