「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

86歳の学友の講演会

2006-06-11 05:50:09 | Weblog
僕が大學予科に入学したのは昭和23年4月、まだ都内には焼跡が
あちこちに残っていた。教室に入ると驚いた。級友の中には階級章を
とっただけの将校服を着た、復員帰りの”おじさん”が数人もいた。
まだ食糧難で、入学してまもない6月から学校は夏休みに入った。
そんな時代であった。

きのう都内の学会で特別講演したYさんも復員帰り。大正9年生まれ、
誕生日がくれば86歳、僕より約ひとまわり違う。講演内容は学会の
研究発表とは異なる彼の戦争体験である。Yさんは九州出身で、苦学
して昭和16年3月、旧制の夜間中学校を卒業、そのまま郷里の歩兵
連隊に入隊。戦争開始とともにフィリピン、ジャワの上陸作戦に参加、
さらに南冥の東ティモールの地に3年いて、昭和22年に復員という
”歴戦の勇士”である。


Yさんは実に6年余、貴重な青春を戦争のために費やした。6年と
いえば子供が小学校に入学して卒業する時期とおなじである。Yさんは
自分の息子や孫の年代の研究者に対して講演の最後にいった。
「皆さんは最高の幸せ者です、徴兵制度のない国で研究に没頭できる
のですから」86歳の老研究者の言葉には実感があった。