八卦掌 練功日記

梁派八卦掌の紹介と備忘録的練功日記

空胸緊背

2017-07-16 18:42:24 | 武術あれこれ
八卦掌では身体運用の規矩として様々な口訣がありますが、その中に「空胸緊背」というものがあります。内家拳に共通の身体の使い方で、「含胸抜背」ともいわれます。

馬傳旭老師は、中国武術雑誌「武術(うーしゅう)」1995年春号のインタビュー記事の中で、背中の意識の持ち方について問われて「空胸緊背」について以下のように語られています。

“ 背中は、内家拳である八卦掌を練るには、「虎背熊腰」を重視する。背中は虎や熊のように丸くしなくてはならない。練るときにはいつも「三頂三円」「空胸抜背」「緊背含胸」にするが、こうすれば背中は丸くなる(実際に見本を示す)。こうすれば気血は通じ、気血が通じれば背中が丸くなる。力強くあるためにはどうしても背中を丸くしなければならない。

緊背含胸にし、背中を丸く張り、肩を縮めてはならない。頭は上から縄で髪を引っ張られているように上へ持ち上げるが、肩や体全体は下へ自然に落とし、肩は両側に張る。”


お腹を引き上げて胸を張るような姿勢、つまりボディビルダーが大胸筋を誇示する際のポージングのような姿勢は、気が閊えて丹田に落ちないため、八卦掌の避けるべき「三害」の一つにもあげられています。
「空胸緊背」、「含胸抜背」は、気血を巡らし内功を高める上で必須の姿勢上の要訣なのです。

さてしかし、日本の中国武術愛好家の中には、「含胸抜背」を意識しすぎて肩を前に巻き込み胸を潰してしまう人が多いようです。実はかつての私も同様で、八卦掌を習い始めてすぐに賀川先生から注意を受けました。
「含胸」の「含」は文字通り「含む」ですが、私は以前に習った武術の影響もあって、まるで陥没させるかのように胸を凹ませていたのでした。今思えば「含胸」ではなく、まるで「陥胸」でした。

賀川先生は、私の猫背で極端に肩を前に巻き込んだ姿勢をみて、「それでは『空』じゃなくて、『縮』だよ」と指摘して下さり、正しい姿勢を示して下さいました。下踏掌や転掌の姿勢で、「背中は丸めず(猫背にならず)、腕をこう使えば自然に背中が丸くなるでしょ」と・・・。

賀川先生のお話では、中国の一流の武術家は皆総じて胸を豊かに開いているそうです。「空胸」、「含胸」は気の通る体の状態を保つためであって、その目的からしたら胸を凹ませて縮めていたのは全く反対のことをしていたことになります。つまり私は、胸を空にしなければいけないのに、逆に塞いでしまっていたのでした。

その後も、肩を弛めて肘を落とすこと、顎を引くこと、お尻を収めることなどなど、八卦掌を学ぶ上で必要な体の使い方を学びましたが、どれも知識としては知っていたものですが、実際に指導を受けると「全く勘違いしていた」ということが多々ありました。顎の引き方一つとっても、武術的に意味のある顎の引き方というのは、身につけるのはそう簡単なことではありません。
私に限って言うならば、本で読んだ知識など、変な思い込みや悪い癖がついただけでかえって上達の妨げにしかなりませんでした。

武術に限った話ではないのでしょうが、良師について正しく学ぶことの大切さを改めて感じたものでした。




※ このブログは一八卦掌練習者の個人的な理解と感想に基づいて書かれています。文中の内容は日本八卦掌研究会の公式見解ではなく、全ての文責はブログ著者にあります。

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