環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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格差社会が広がる日本、効率性と公平性を達している北欧

2007-03-22 11:24:39 | 社会/合意形成/アクター


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3月19日のブログ「経済成長は最も重要な目標か」 で、京都大学大学院経済研究科教授の橘木俊詔さん(近代経済学者)が著書「家計からみる日本経済」(岩波新書 2004年1月20日発行)で、経済成長は最も重要な目標か」という「日本の近未来」にとって、そして、「世界の環境問題」の回復にとって、経済学者として、大変貴重な発言をされておられることを紹介しました。

「ここでの私の主張は、わが国ではもう経済成長だけを求める時代は終焉したというものである。経済への見方を変えれば、経済成長率はたとえ最悪ゼロであったとしても、豊かでかつ人間らしい生活がおくれるのではないか。そう主張する根拠をいくつか述べておこう」とおっしゃって、「経済成長」を第一の目標にする必要のない5つの理由を挙げておられました。

橘木さんは、昨年9月に「格差社会」(岩波新書 2006年9月20日)を著しました。この本には、日本の格差社会の議論の中にしばしば登場する「所得分配不平等度(ジニ係数)」、「貧困率」、「教育における公的支出」の国際比較の図が掲載されています。ここでも、北欧と日本が対照的な位置づけになっていることが見て取れます。



この本の「効率性と公平性を達成している北欧」(p160~161)項で、橘木さんはつぎのように解説しています。

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実際に、経済の効率性と公平性を達成している国があります。それは、現在の北欧です。すでに見たように北欧は福祉が充実し、分配の平等性も高いので、公平性が高いと言えます。なおかつ経済の好調も続いています。すなわち、効率性と公平性の双方を達しているのです。

フィンランドのノキア、スウェーデンのエリクソン、ボルボなど、世界的にも有名な企業が活躍し、経済効率性は非常に高いと言えます。と同時に、国民の教育水準も非常に高く、勤労意欲も高い。皆で協力して経済効率を高くしようという意欲が感じられます。

確かに、北欧は1980年代に、経済が悪化し、福祉政策を見直した時期もありました。すなわち行き過ぎた高福祉が批判を受けたのです。しかし、その後、再度、政策を転換し、現在の福祉国家を存続させています。このように、現在の北欧では、効率性と公平性の両方を達成していると考えられます。

高い税負担や社会保障負担が、高い福祉を保障することによって、国民への安心感を与えることに寄与していることも強調しておきましょう。したがって、高い勤労意欲も保持させることができるのです。このように、高福祉・高負担というあり方は、日本の将来を考える上で大きな参考になるでしょう。

先述したように、日本国民は、少なくとも税が高いからといって勤労意欲や貯蓄意欲を失うことはないのです。したがって、北欧のような生活を、日本は実現できる可能性があると、私は考えています。

北欧的な高福祉・高負担に対する日本での反対意見には、これらの国は小国だから国民の間の連帯感も強いので、政策が機能しやすいのであって、日本のような大国では無理だとするものがあります。その側面があることを否定しませんが、政策のやり方によっては北欧型は可能であるし、努力して国民のコンセンサスを得るようにすることは可能でしょう。
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私の認識では、「福祉」よりももっと本質的なものは「環境問題」です。これは「人類を含めた生態系全体の安全」を保障する「環境の持続性」にかかわる大問題だからです。環境問題の根本には、橘木さんもご指摘のとおり、人間の経済活動が原因として横たわっているわけですから、この問題を解決するための具体的な行動は、経済的に見れば「経済規模の拡大から適正化」への大転換です。

社会的に見れば20世紀の「持続不可能な社会(大量生産・大量消費・大量廃棄の社会)」から21世紀の「持続可能な社会(資源・エネルギーの量をできるだけ抑えた社会)」への大転換を意味します。にもかかわらず、3月17日のブログ「日本はほんとうに省エネ国家なのか?」に示したように、世界第2位の経済大国を自認する安倍首相の著書「美しい国へ」にも、中川自民党幹事長の著書「上げ潮の時代」にもそのような認識はまったくないようです。

日本の21世紀前半社会を明るく展望するために、3月16日のブログ「ドイツの環境政策を支えるエコロジー的近代化論」 の項に掲げた「環境問題の社会的な位置づけの相違」の図をじっくりと見てください。スウェーデンと日本の社会問題に対するさまざまな相違の源は、この図に示したような社会的な認識の相違に由来するというのが私の考えです。


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