環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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読売が報じた、世界の最先端を行くフィンランドとスウェーデンの「核廃棄物最終処分場」建設現地からの報告

2011-01-26 10:48:13 | 原発/エネルギー/資源
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私は、1月9日のブログで、次のように書きました。

スウェーデンが80年6月に「脱原発」の方針を打ち出してから30年が経過しました。スウェーデンの「エネルギー体系修正のための計画」を構成する「原発の段階的廃止をめざす電力の供給体系の修正計画」は当初の予定通り進んできたとは言い難いものでしたが、「原発から排出される放射性廃棄物の処分計画」は着実に進んでおり、この分野でもスウェーデンは世界の最先端にあります。

まるで、このブログの記事と呼応するかのように、1月25日の讀賣新聞が、オバマ政権により米国がユッカ-マウンテン計画を撤回した現在、世界の最先端を行くフィンランドとスウェーデンの「高レベル核廃棄物処分場」の訪問記事を掲載しています。資料として保存しておきましょう。ぜひご覧下さい。

解説スペシャル環境先進地・北欧を歩く

核最終処分場 建設着々と
●対話重ね、情報公開徹底
●「地道な説明必要」 日本の現状、


日本の原発推進派も、原発反対あるいは脱原発派もスウェーデンの「原発の廃止の動向」には興味を示します。この観点から見れば、この30年間で稼働していた12基の原子炉のうち2基を廃棄したに過ぎないのですから、「2010年までに12基の原子炉すべてを廃棄する」という1980年の当初の目標からすれば大幅な後退であることは間違いないでしょう。

しかし、スウェーデンの「原発廃止の動向」に強い関心を持つ人々がおそらく気づいていないのは、 「脱原発」という政治決断により投じられた予算と企業の努力により、 「省エネルギー」や「熱利用の分野」では大きな成果があったことです。特に「熱利用の技術開発の分野」ではスウェーデンはまさに世界の最先端にあります。

このような努力の結果から次のような成果が生まれています。 

脱原発の方向性を定めた1980年3月のスウェーデンの「国民投票の結果」とその結果に基づく同年6月の「国会決議」以降の両国の原発の利用状況をまとめてみますと、次のようになります。


1980年から2008年の28年間に、スウェーデンが2基の原発を廃棄したのに対し、日本は33基の原発を増やしました。

この間、スウェーデン京都議定書の基準年である1990年以降漸次、温室効果ガス(このうちおよそ80%がCO2)を削減し、2007年の排出量は9%減でした。一方、日本では、1990年以降、温室効果ガス(このうち90%以上がCO2)の排出は増加傾向にあり、2007年には過去最悪(9%増)となりました。日本では京都議定の基準年である90年以降15基もの原発を運転開始したにもかかわらず、CO2の排出量が増加している事実に注目して下さい。



スウェーデンでは96年頃から「経済成長」と「温室効果ガス」(そのおよそ80%がCO2)排出量の推移が分かれ始めています。このことは、「経済成長」と「温室効果ガス排出量」のデカップリング(相関性の分離)が達成されたことを意味します。ここで重要なことは、温室効果ガスの削減が「原発や森林吸収や排出量取引のような日本が期待している手段ではない国内の努力によって(日本では“真水で”と表現します)達成されたもの」であることです。スウェーデンは今後も、独自の「気候変動防止戦略」を進めると共に、EUの一員としてEUの次の目標である2020年に向けてさらなる温室効果ガスの削減に努めることになります。

一方、日本は1986年頃から、「経済成長(GDP)」と「CO2の排出量」とが、これまた見事なまでの相関関係を示しています。さらに困ったことに、日本では今なお、二酸化炭素税の導入がままならないばかりでなく、すでに述べたように、2007年度の温室効果ガスの排出量が過去最悪(およそ9%増)となったことです。

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ここで注意すべきは、原発は正常に稼働している限りは実質的に温室効果ガス(具体的にはCO2)を排出しない発電装置ではありますが、原発はCO2削減装置ではないことです。しかも、原発利用のフロント・エンド(ウランの採掘から原発建設完成・運転開始まで)から、運転期間を経て、<バック・エンド(運転終了から原発廃棄処分まで)までの全過程をLCAという手法を用いて調べてみますと、原発はフロント・エンドとバック・エンドの作業工程で相当量のCO2を排出することがわかっています。

ですから、たとえ正常に稼働している原発が運転時に事実上CO2を排出しないと見なしても、「原発がクリーンな発電装置である」というのは誤りだと思います。

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