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石ころ

ヒヨドリ


6月に、昨年に続いてヒヨドリの姿を玄関先の椿の木に見つけた。頻繁に何かをくわえて往復している。よく見ると、椿の枝に、枯れ木やナイロンのロープや枯れ葉などを組み合わせて、舟形の巣が出来ていた。数日後、ヒヨドリの姿は消えた。「あれ?止めたのかしら」と思っていると、大きな尻尾を巣からピンと出して、卵を抱いている姿を見つけた。

今年は、下水工事が椿の木の真下で行われている。ドリルの音と埃、工事屋さんが激しく動き回っていて環境は最悪。人がとても怖くて、私たちと目が会うと鋭く鳴きながら逃げるのに、なぜか工事屋さんには全く平気で無視している。工事屋さんも、鳥の巣を知らせてもチラッと見てうなずいたきり無視して仕事。ヒヨドリは、彼らが自分たちに関心がないことを知って居る「すごい」と思った。

ヒヨドリはどちらかと言えば嫌われもの。畑の作物を荒らす事も多い。我が家のえんどうの苗も、襲われて全滅したことがあった。主人が、「ヒヨめ、えんどう苗をちぎってバラバラにまき散らしやがった」と怒っていたことがあった。それでも「窮鳥懐に入らば、猟師もこれを打たず」とばかり、主人も追っ払うことも出来ずにいる。

数日して、親鳥が頻繁に往復するようになり、かすかな声が「ピピピ」と聞こえるようになった。我慢できなくて、ちょっと留守の間に巣の中を撮影。4羽ちゃんと孵っている。良かった!顔じゅう口にして鳴きながらヒナは身を寄せ合っていた。

親の警戒心はいよいよ過敏になり、私たちが出入りする度に、慌てふためいて巣から飛び立ったり、餌をくわえて来たのに、巣に入れないと近くの木の上で騒ぎ立てる。本当にこちらの方が参ってしまう。

お隣のご主人が「勝手に巣を作っておいて、困るなあ」と同情してくださった。立て簾を立てて目が合わないように、椿の木を見上げないように、玄関の出入りは最小限にした。それでも気になって、時々半身を隠してガラス越しにそっと見ていると、突然親鳥がガラスに羽を打ち付けんばかりの勢いで向かってきた。

「攻撃された」と胸がドキドキ足がガクガクした。親鳥は餌を落としていった。二度と拾いに戻らなかったので、よく見るとカタツムリの殻を外したものが這っていた。ヒナに与えたかったけれど、親に脅された後さすがに怖くて出来なかった。

大雨の夜、私は心配でなかなか寝付けなかったけれど、きっと親鳥は翼のしたに抱いて、雛を少しも濡らさなかったのだろう。雛は何も知らずに母鳥のふところに寝ていたのだろう。父鳥も近くの枝で気配に耳を澄ませて守っていたのだろう。翌朝何事もなかったかのように彼らは元気だった。

数日後の朝、椿の枝や巣の周りに、雛が巣から出て止まって居た。親鳥は電線や、高い木の枝からしきりに鳴いて誘っている。1羽が飛んだ、尾羽がまだ無いので、親に向かって真っ直ぐなんて飛び方じゃない、何処に飛んでゆくのか分からないと言うようなおぼつかない飛び方、少し飛んでは止まり、飛んでは落ち、よじ登ってはまた飛ぶ。しかし、決して親鳥は近づかず、高いところから呼び続けている。

3羽目が高く飛んだ時、「カーァ」鋭いカラスの声に「危ない!」と私が叫んだけれど、上空から突然現れたカラスが雛に向かっていった。空中で2羽の親鳥とカラスがもつれ合い、羽が飛び散った。すごい勢いでカラスは飛び去り、2羽の親鳥が追って行った。

今年のヒヨドリの巣立ちに、自然の厳しさを目の当たりに見せられた。ヒヨドリがなぜ玄関先に巣を作り、人に怯えながらも頑張ったのかを知った。彼らを見ていると何時も感動する。それは、神様のプログラムに真っ直に生きているからだろう。

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