「1971年、文革の嵐が吹き荒れる中国。青年マーとルオは共に医者を親に持つことから
反革命分子の子として再教育のために奥深い山村へ送り込まれた。
彼らはそこで過酷な肉体労働を強いられる。
ある日二人は美しい少女、お針子に出会う。ルオはお針子に一目惚れした。
彼らは、同じ再教育で来ている若者が禁書である西洋の本を大量に隠し持っていることを知り、
それを盗み出し、文盲のお針子に毎夜西洋の文学を読み聞かせるのであった。
許されない秘密を共有することで結びつきを深める三人。
お針子を巡る微妙な三角関係。そしていつしかお針子は、西洋文学が語る自由の世界に次第に目覚めていく・・・。」
1971年 文化大革命の時代のお話です 舞台は湖南省あたりらしき山奥の山村
深い山奥に住む文盲の村人と上海あたりの都会から下放された二人
まったく違った環境でただ肉体労働で思想教育を受けさせられます
禁書とはスタンダールやバルザックやトルストイなどの西欧の小説です
2002年公開の香港とフランスの合作映画 原題は「バルザックと小さな中国のお針子」
同じように下放教育を受けたダイ・シージエ監督の自伝的作品
この映画は文化大革命に対する批判の映画ではありません
文学が人を目覚めさせることの方が主題
短く髪を切り お針子は凛として村を出ていくのです
文革から27年たってマーは高名な医師になり
ルオはパリでバイオリニストとして活躍している
二人が再教育を受けた村が揚子江に作られるダムによって水没すると知り
もう一度ルオはそこを訪れる お針子の消息を聞くがもちろんわからない
かつて自分たちが生活した家は廃屋となっている
渡すことはかなわないと思っても持参したフランスの香水をそこに置く
ラストシーンはきらめく光をあびつつ
ゆっくりと水没する家と共に沈んでいく香水瓶のスローモーション
過ぎ去った全てのものに対する郷愁の漂うラストシーンは
失った若い日々と会えないお針子への思いの切なさに
どこか胸が熱くなるような佳品といえる映画でした
小さなお針子と仕立て屋の祖父 下放され再教育受けている二人
ろうそくなどの僅かな灯の中で禁じられた書物を貪るように読み
お針子に聞かせるシーンは文革当時の過酷な時代の物語というより
若物たち三人の「貧しくも輝いていた美しい青春の物語」をみているようでした
なんとか壊されないで残してもらえたバイオリンで
村人にモーツァルトを弾くルオ もちろん西欧の音楽とはいえない
「毛沢東をたたえる曲」と偽って演奏 彼はお針子を忘れられないのか独身のままでした