湯冷めのテンション二分咲き王国

映画や本の感想等々

総括! 電磁戦隊メガレンジャー! 

2016-12-31 22:44:09 | 日記
 こんにちは! 湯冷めと申します。
 2016年もあと1時間ほどで終わってしまいますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。今回は、なぜこのタイミング? という疑問は敢えて抜きにして「電磁戦隊メガレンジャー」の総括をしたいと思います。私自身、大好きな作品であり、ついこの間4度目の観賞を終え、まとめてみたいという思いが強くなり、年末年始のハッピーニューイヤー寸前に全く関係のない記事を上げることに驚いています。文章は固くなってしまいましたが、どうか最後までお読みいただければと思います。



 日本が誇る国民的特撮ヒーローシリーズの1つ、スーパー戦隊。その21作目に当たるのが「電磁戦隊メガレンジャー」である。電磁などと聞き慣れないタイトルを冠しているが、その実態は当時急速に発展したIT技術をモチーフとしており、そこに宇宙という舞台や学園物という設定を組み込んだ意欲作であった。メガという名前はおそらくメガバイトに由来するのだろうが、主人公の5人が高校生であるという設定を踏まえると、主題歌にもあるように「100万倍の好奇心」、つまりは若さゆえの無限に広がる可能性を示唆しているとも捉えられる。メガレンジャーが戦うのは邪電帝国ネジレジア。地球を混乱に陥れようと異次元からやってきた侵略者である。今回は、この作品が持つ魅力について語っていきたい。
 はじめに、メガレンジャーの基本設定や登場人物を抑えておこう。メガレンジャーの5人はそれぞれ、伊達健太がレッドに、遠藤耕一郎がブラックに、並木瞬がブルーに、城ケ崎千里がイエローに、今村みくがピンクに変身する。当初はINETが試験的に設置したゲーム筐体で優秀な成績を修めていた健太のみがメガレンジャーの候補であったが、INETがネジレジアに襲撃された際、偶然その場にいた他の4人も成り行き上メガレンジャーとなった。5人の正体はネジレジアは勿論、親しい人物にも基本的には秘密であり、変身後は本名でなくメガレッド、メガブラック、というように、変身後の姿で呼び合うことを徹底している。また、上記の理由から、人前で変身することが極端に少ないのもこの作品の特徴である。5人がピンチに陥った際に現れた6人目のメガレンジャーが、早川裕作が変身するメガシルバーである。元々は実験用のプロトタイプであったメガスーツを自ら改良し、ネジレジアの怪人を1人で撃破するほどの能力を持っている。裕作はINETの職員であるが、どこか目立ちたがり屋なため、初回の変身の時点でネジレジアに正体がばれている。そのため、ネジレジアに狙われたこともあった。この6人を統率しているのがINETの久保田である。過去に親友の鮫島を失った過去を持ち、ネジレジアを撃破するという確固たる信念を持つ。以上が、メガレンジャー側の主要登場人物である。次に、ネジレジアサイドの登場人物。指揮官のDr.ヒネラーを筆頭に、彼が作ったアンドロイドである人間の女性の姿をしたシボレナ、同じくアンドロイドのユガンデ、ある意味マスコット的存在であり怪人の巨大化に欠かせないビビデビ、ネジレジアのトップに君臨するジャビウス1世、地球侵略が遅々として進まないことに腹を立てたジャビウスがヒネラーの元へ寄越した卑劣な部下、ギレール。以上がネジレジア側の主な構成員である。
メガレンジャーの物語はINETとネジレジアの攻防戦を軸に進んでいくが、その芯には久保田と鮫島、二人の科学者の意見の相違がある。

 
もともと、久保田と鮫島は宇宙開発技術を導く科学者で、親友同士であった。しかし、鮫島がネジレジアに魅せられる以前から、二人の間には決定的な溝が存在した。人間に特殊スーツを着用させて強化することで宇宙開発を進めようとした久保田に対し、鮫島は人間自身をパワーアップしようと研究を進めていたのである。この溝は決して埋まることがなかったが、鮫島の娘が実験中に事故死するという悲劇的な結末で二人の友情は幕を下ろす。結果、鮫島は世界中からマッドサイエンティストと糾弾され、正式に採用されたのは久保田の開発した強化スーツ(これがメガスーツの原型となる)であった。そのことで、久保田だけでなく世間への復讐心に火が付いた鮫島は、ネジレジアの存在を知り、彼らの仲間入りを果たす。そして、久保田はそれを強く後悔する。
 ここからは本編では特に語られていないが、鮫島のその後、ヒネラーが誕生する前のネジレジアについて考察していきたい。まず、Dr.ヒネラーがジャビウス1世から地球侵略という責任重大な任務の指揮官を任せられていたことから、ヒネラーの地位はネジレジアの中でもかなり高位に位置していたと考えられる。これはなぜなのか。私は、Dr.ヒネラーの頭脳や研究がネジレジアを大いに発展させたという説を提唱したい。そもそも奇妙なのが「ジャビウス1世」という呼称である。2世は登場どころか言及すらされていない。それに、ジャビウス1世の正体は単なるエネルギー体であり、子孫を残せるかどうかも不明である。また、ジャビウスはヒネラーの策略によって亡き者にされるが、王がそんな事態に陥ってもネジレジアの誰一人としてヒネラーに牙を向くことはなかった。これらより導き出される結論は、ジャビウス1世はただ世界征服を掲げて調子に乗っていただけの幼稚な存在だったのではないか、ということである。上記のように、彼の正体はエネルギー体である。つまり、何者かによって作られたという可能性も否定できない。その何者かとは、地球でもネジレ次元でもない別の次元に暮らす存在かもしれない。彼らが生み出し、何らかの理由で異なる次元へと放ったエネルギー体に、突如として自我が芽生えた、それこそがジャビウス1世の正体なのではないだろうか。ギレールはおそらく、鮫島より以前からネジレジアの存在を知り、ネジレ次元へと飛び込んできた存在であろう。卑劣な存在ではあるが、科学に対しては鮫島に劣るため、ヒネラーよりも下の地位に就けられたと考えられる。それほどまでに、ジャビウス1世にとって、ヒネラーは欠かせない存在なのだ。鮫島はネジレジアが掲げる世界侵略の野望に共感し、親友を捨て単身ネジレジアへと身をやつしたが、蓋を開けてみればガキがくだらない夢を見ていただけであった。失望した鮫島は、自らの手でネジレジアをより強力な、人々に畏怖される部隊へと導いていこうと画策する。そして、その目論見は見事に成功し、革新的な技術を用いてネジレジアの発展に貢献した鮫島は、Dr.ヒネラーとして地球侵略を任されるのである。ヒネラーにとってジャビウス1世なんぞに命令されるのはさぞ屈辱であっただろうが、彼の実力を認めていたのか、利用するつもりだっただけなのか、はたまた地球人に復讐できればなんでもよかったのかは分からないが、とにかくヒネラーは地球への侵攻を開始し、メガレンジャーと熾烈な争いを繰り広げることになる。


 最後に、メガレンジャーの魅力に言及したい。言うまでもなく、電磁戦隊メガレンジャーの物語的な魅力は、5人の”学生生活と戦いの両立”にある。彼らは戦士でないどころか、高校生としてのプライベートを持っているのである。夢に部活に恋に勉強に、青春と名の付く人生の大事な時期に周りに正体を隠しながら命懸けの戦いを強いられているという、スーパー戦隊の中でもかなり特異な5人なのである。そして、5人を支えるINETの職員たちも、5人をメガレンジャーに選んでしまったことに責任を感じており、彼らのために自らの人事を尽くそうと懸命に走る。そうした正義の姿に視聴者は自らを重ねたり、共感したりしながらメガレンジャーの物語は進んでいくのである。最終的に誰一人欠けることなく、クラスメイトからも祝われて無事に卒業証書を手にした彼らの姿には涙を禁じ得ない。確かに、青春の側面に焦点を当てたことで、メガレンジャーとネジレジアという対立の軸は影を潜めてしまったように感じる。しかし、この戦いはあくまで、鮫島と久保田という二人の科学者の対立に終始していたように思うのだ。そして、その個人的な対立に若き5人を巻き込んでしまったことを久保田は激しく後悔し、精一杯の援護を行っていこうと決意する。「こうありたかった」と思わせる青春の物語と、「こうありたい」と思わせる大人たちの生き様こそがメガレンジャーの魅力の正体なのではないだろうか。全51話、非常に密度の濃い作品であった。

「戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!」 ~Jホラーの革命児、第2の創世~

2015-06-12 02:24:06 | 日記
皆さんこんにちは。湯冷めという者です。全国的に梅雨に突入し、そろそろナメクジがコンクリートを跋扈する時期でしょうか。そして梅雨が明けると、我々を待ち受けているのは夏。温暖化の影響で30℃越えは当たり前となってしまい、氷や電化製品の力を借りてなんとかひんやりを味わおうと必死になる季節。しかし、ひんやりをくれるのはなにもアイスやエアコンだけではありません。大切なものを忘れていませんか?

そう!ホラー映画です!!

というわけで、私の記念すべきブログ初投稿にて、ここ数年ネット界隈を騒がせているホラーシリーズ、「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」について簡単に書かせていただきたいと思います。あくまで未見の方への布教用として書いているので、ネタバレは避けています。拙い文章力をどうか大目に見てください。そして「コワすぎ!」を観てください!


・そもそも「コワすぎ!」とは?

はじめに、「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」がどういった作品なのか。
簡単に言うと、とある撮影クルーが視聴者から送られてきた投稿映像を検証しようと現地に赴くと、何とも奇妙な怪奇現象に巻き込まれる、というものです。第一章から最終章までの計7作が発売され、現在は世界観を改変した(この改変というのも作品の中で重要な位置づけですのでぜひご覧になって確かめてください!)新シリーズ「戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!」の第一章が渋谷アップリンクで公開中です。来月には第二章が公開予定となっています。全作品がPOV方式(劇中の登場人物が持つカメラで撮影しているようにみせる撮影方式のこと。この作品ではカメラマンの田代の持つカメラの視点からのショットが主です)で撮影されていることも特徴です。

主要登場人物は映像クルーの3人。
ディレクターの工藤仁(通称工藤D)。演じるは大迫茂生さん。口は悪いわ平気で人を殴るわ蹴るわ、更には怪物まで殴るわ蹴るわ、かなり粗暴な人物。「コワすぎ!」を制作する理由も、『怪物をカメラで撮ってDVDにして売り捌けば俺の借金も返せるだろ! あわよくば大金持ちだ!』という非常に単純なもの。しかし、決して口だけの男ではなく、怪物を撮影するためには多少のリスクは厭わない、かなり屈強な精神の持ち主でもあるのです。私自身も当初は彼に嫌悪感を抱いていたものの、シリーズを観ていくうちにどんどん彼の魅力に惹かれていきました。

アシスタントの市川実穂。演じるは久保山智夏さん。工藤Dとは違い、非常にマトモで礼儀正しい女性。シリーズ初期は工藤Dにこき使われる彼女に同情するのも鑑賞法の1つでしたが、段々と荒々しさを身につけて、時にその凶暴性は工藤Dを上回ることも……。

カメラマンの田代正嗣。演じるはこのシリーズの監督・脚本も務める白石晃士さん。前述した通り、彼のカメラからの映像がこの作品の主ですので、彼の出演時間は基本的に短いのですが、シリーズが進むにつれて出番が増えていきます。というか、最終章はもはや彼が主役でした。


・ホラーを超越したストーリー

皆さんに1つ謝っておかなければならないことがあります。私、実は1つ嘘を書いていました。
このシリーズ、実はホラーではないのです。
どれか1つのカテゴリーに入れるのであればホラーということになるのでしょうが、このシリーズをホラーなんて一括りにしてしまうのは非常に惜しいと思うのです。そう、これはもはや「コワすぎ!」というジャンル! 他の作品には決して真似できない唯一無二の存在なのです!
一言で言えば、ホラーの基本文法をおさえながらもその枠を飛び越え、もはやベテラン芸人のコントなのではないかと疑うほど超一流のギャグも挟みつつ、視聴者を未知の世界に誘う、ある意味かなり恐ろしい作品です。
では、具体的にどういうストーリーなのか。1作ずつ簡単に紹介していこうと思います。

「FILE-01 口裂け女捕獲作戦」
これはもう、タイトルの通りです。住宅街に現れた口裂け女を捕獲しようというお話。もちろん工藤Dのやることですので、具体的な計画などあるわけがなく、とりあえず迎え撃って金属バットでボコボコにしてやらあ! というテキトー具合。観ていただければ分かるのですが、捕獲というのもちょっと語弊があります。タイトル詐欺ですねこれは(タイトル通りとか言っておきながら)。

「FILE-02 震える幽霊」
2作目。えっと、完全にタイトル詐欺です。廃墟に肝試しに行った4人組が撮影した映像に幽霊が映っていた……というくだりは冒頭で終わり、実はその投稿者の1人であった女性が最近ちょっとおかしくて……という話が展開し、想像を超えるラストへと向かいます。この作品から、「コワすぎ!」シリーズの特徴である、『異常なほど突飛な話運び』が顕著になります。毎回毎回怪奇現象に3人が足を踏み入れるような1話完結ものかと、1作目の時点ではそう思われてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、実は怪異の根っこはかなり深いということがこの回で仄めかされるわけです。
ちなみに、白石監督によると、奇数作品は純粋に怪異を追うホラー作品として制作し、偶数作品はクトゥルフ神話的なものを組み合わせて敵の根幹に迫っていくようなテイストにしているそうです。

「FILE-03 人喰い河童伝説」
3作目に登場するのは河童です。河童と聞くと些か安直な感も否めませんが、これがまたかなり怖い仕上がり。霊能力者と工藤Dがコンビを組んで河童と相撲(というかもはやただのケンカ)をとるシーンは私がシリーズで最も気に入っているシーン。ツッコミどころ満載でありながらちゃんと鳥肌を立てることも忘れておらず、ホラーとギャグのバランスが絶妙な1作です。

「FILE-04 真相!トイレの花子さん 」
またまたタイトル詐欺でございます。トイレの花子さんはあんまり関係ないのです。しかし、この作品には素晴らしい点があります。それは、ラスト36分のノーカット(という体の)映像! 4作目では廃校になった学校を舞台に、少女を死の運命から救うため、工藤Dたちが何度もタイムスリップをします。廊下を走っている途中、昼と夜が瞬時に切り替わるなどなど、ほぼ全編ワンカットの「バードマン」もびっくりの映像構成。この作品から、映像技術的にもシリーズが称賛されるようになった感があります。

「劇場版・序章 真説・四谷怪談 お岩の呪い」
劇場版の公開が決まり、その序章として発売されました。題材はお岩さん。劇中でも語られるのですが、お岩さんって創作上の人物なんですよね。要するに、お岩さんの呪いなんて存在するはずがないのです。とまあ、それはさておき。今作は市川がお岩さんに呪われてしまったので、それを助けようというお話。除霊シーンでは市川さんの演技力が光ります。単体としては盛り上がりに欠ける気もしますが、劇場版を100%楽しむためにはこちらを観ておく必要があるのです。

「史上最恐の劇場版」
「コワすぎ!」というタイトルだけでもかなりいかがわしいのに、史上最恐なんて更に安直なサブタイトルがつけられていてもう他人に勧めにくいったらありゃしない。しかし劇場版というだけありスケール増し増し&邦画ではなかなかお目にかかれないハリウッド並の胸アツ展開。傑作です。公開当時、劇場に行きましたけど、もう、ひたすら圧倒されました。タタリ村という村に一行が赴く話なのですが、シリーズの伏線もいくつか回収され、かなり綺麗な構造です。残念なのがこの作品、何を言ってもネタバレになっちゃうのです。もうね、5分ごとに目から鱗。それでいて遊び心も忘れていない。もう1度言いましょう。傑作です。

「最終章」
今から二ケ月くらい前ですかね。4月のことだったと思います。前作でかなりやらかした感じがあったけど、どうするんだろうなあと約1年モヤモヤしていたところに、突然舞い込んだ最終章上映の報。大好きなシリーズだし終わってほしくないという思い、あのシリーズがどう終わりを迎えるのかこの目で確かめなければという使命感。この2つをごちゃ混ぜにして観に行きました。先月のことです。ストーリーの話をしたいのですが、これまた少しでも話すと前作のネタバレになっちゃうんですね。ですので、工藤Dたちがどんな結末を迎えるのか、ぜひ皆さんの目でお確かめください。

といったところでしょうか。ストーリーを紹介とか言っておきながら、ネタバレを控えるとほぼ何も話せなくなってしまって申し訳ないです。反面、それだけ突飛なストーリー展開であることが伝われば幸いです。


・Jホラー界、いや、これは映画界の革命だ!

「恐怖と笑いは表裏一体」
皆さんもこの言葉を1度は聞いたことがあると思います。自分の予想をはるかに超えたものに触れた時のリアクションという意味ですね。ホラー映画を観ていて、もはやこれはギャグだろとツッコんでしまうような経験もあるかと思います。しかし、この「コワすぎ!」シリーズはこの2つを両立させ、更にはドラマ要素も加えて違和感なく仕上げ、成功している数少ない作品の1つなのです。怖いシーンはとことん怖く、笑えるセリフは極端なほど面白い。この振れ幅はニコニコ生放送と相性がよかったようで、度々ニコ生で一挙放送が行われ、好評を博しています。そこからハマっているファンも増えているようです。

邦画も洋画も、リメイクや実写化が蔓延る昨今。そうでなくとも、新作なのに昔どこかで観たような展開のものばかり。それを一概に悪いこととは言いません。しかし、映像作品に対して驚愕する、という経験が少なくなっているのもまた事実。そんな時代に、低予算のホラービデオからこんなにワクワクさせてくれる作品が現れるなど、誰が予想できたでしょう。
映画秘宝でも特集が組まれるなど、着実に知名度を上げている「コワすぎ!」シリーズ。前述しました通り、ちょうど現在、渋谷アップリンクにて新シリーズが公開されています。今からでも遅くはありません。あなたも、工藤Dたちと一緒に不思議な世界に足を踏み入れていませんか?