孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  京都でタリバンとカルザイ政権代表者が会議に同席

2012-06-28 22:50:41 | アフガン・パキスタン

(珍しく和やかな表情のタリバン兵士だと思ったのですが、投降セレモニーに参加した様子のようです。“flickr”より By isafmedia http://www.flickr.com/photos/isafmedia/7293432504/)

14年末のISAF撤退を前に頻発するテロ
アフガニスタンでは、北大西洋条約機構(NATO)主導の国際治安支援部隊(ISAF)が2014年末に撤退するスケジュールとなっていますが、その存在をアピールするかのように、タリバンやハッカニ・ネットワークなどイスラム武装勢力によるテロ事件が頻発しています。

6月6日には、南部カンダハルにある空港と隣接するISAF基地近くで自爆テロが2件相次ぎ、地元当局者によると、市民ら少なくとも22人が死亡、約50人がけがをしています。この事件については、タリバンの報道官が犯行を認めています。

6月9日には、東部カピサ州で駐留仏軍部隊を狙った自爆テロがあり、仏軍兵士4人が死亡、5人が負傷しました。これについてもタリバンの報道官が犯行を認めています。なお、オランド仏大統領は、戦闘部隊を年内に撤退させる方針を明らかにしています。

6月21日には、首都カブールでホテル襲撃事件が起きています。

****ホテル襲撃制圧、死者18人に=「ハッカニ派関与」と米司令官―アフガン****
アフガニスタンの首都カブール西方の景勝地カルガ湖周辺で21日深夜に発生した武装勢力によるホテル襲撃事件で、内務省報道官は22日、最後まで立てこもっていた武装グループをアフガン治安部隊と駐留国際部隊が制圧したことを明らかにした。AFP通信が報じた。同報道官によれば、死者は少なくとも18人に達した。

今回のテロでは反政府勢力タリバンが犯行声明を出したが、アフガン駐留米軍のアレン司令官は、パキスタン北西部に拠点を置くタリバンの同盟勢力ハッカニ・ネットワークの攻撃の特徴があると指摘した。米国は4月のカブールの外国公館襲撃事件など最近アフガンで相次いだ大型テロをハッカニ派の仕業とみなしている。【6月22日 時事】 
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“事件が起きたのは、カブールから約10キロ・メートル離れたクアガ湖畔にあるホテルで、数人の武装勢力がロケット砲などで襲撃した。多数の利用客は湖に飛び込み、難を逃れたが、市民12人とホテルの警備員や警察官が殺害された。武装勢力はホテルに立てこもり、約40人の利用客が人質となったが、約12時間後に治安部隊が突入、武装勢力を射殺して人質を救出した”【6月22日 読売】とのことです。

タリバンの犯行声明では、「外交官やNATO軍関係者たちがドンチャン騒ぎをしていたので狙った」とされています。実際のところはわかりませんが、駐留軍関係者のはめをはずした行為は、テロならずとも、住民の眉をひそめさせることにもなります。

アメリカ側はハッカニ・ネットワークの名を挙げていますが、批判の本当の対象は、彼らを野放しに(あるいは支援)しているパキスタン当局ではないでしょうか。
タリバンとパキスタン北西部に拠点を置くハッカニ・ネットワークの関係は微妙で、最近では“対抗意識”的なものが強く、従来ハッカニ・ネットワークが得意とした首都カブールでの大型テロについても、タリバン側が自分たちでもできる力を誇示したがっている・・・といった話もあります。困った競い合いです。

公の場で前例のない接触
上記のようにアフガニスタンで激しい軍事行動を行っているタリバンと、宿敵のカルザイ政権関係者が、日本で行われた国際会議に一緒に参加し、その主張を展開した・・・とのことで、驚きました。
会議は同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科が主催したものです。
タリバンが2001年の政権崩壊後に国際会議へ代表を派遣するのは初めてで、またカルザイ政権側とタリバンが公の場で同席するのも過去に例がないとのことです。

****アフガン当事者ら京都で対面 和平協議への糸口となるか****
アフガニスタンのカルザイ政権と反政府武装勢力タリバーンの代表が27日、京都市で開かれた国際会議で顔を合わせた。今なお戦闘状態にある両者の主張は平行線をたどったが、公の場で前例のない接触が実現したことで、対話へ向けた機運が高まる可能性がある。

両者が参加したのは、同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科主催の「アフガンの和解と平和構築の国際会議」。

タリバーン側から参加したディン・ムハマド氏は、2001年に崩壊したタリバーン政権の閣僚経験者で、現在は最高指導者オマール師直属で外交部門を統括する「政治評議会」(約10人)のメンバーの一人。

政権側の代表は、スタネクザイ大統領顧問。タリバーンとの和解策を担う高等和平評議会の事務局長を兼務する。昨年9月、同評議会議長のラバニ元大統領がタリバーンの使者を装った男の自爆テロで暗殺された際、自身も同席していて重傷を負った。その後、大統領はタリバーンとの和平協議断念を表明していた。

治安維持権限が国際部隊からアフガン側へ完全移譲される14年末以降も米軍の駐留に道を開く米アフガン戦略的パートナーシップ協定について、ムハマド氏は「協定の名の下に占領を引き延ばすのならば、問題解決にはならない」と指摘。駐留軍の早期撤退を繰り返し要求した。
一方、スタネクザイ氏は権限移譲の意義を強調しつつ、「国際部隊が完全撤退すれば再び内戦に陥る」と懸念を表明。両者の主張は真っ向から対立した。

中東カタールで米国と接触してきたタリバーンだが、カルザイ政権との協議は拒否してきた。スタネクザイ氏が「和解へ向け、すべての立場の人に参加を求めたい」としたのに対し、ムハマド氏は、あくまで外国部隊の撤退が条件とする姿勢を崩さなかった。

ただ、ムハマド氏は「政権側の主張には受け入れられないものがあった」としつつ、「我々の意見を主張できて良かった」と評価。7月に東京で開かれる復興支援会議など公式協議の場にも「招待されれば参加したい」と述べ、これまでの武装闘争一辺倒から、転換する姿勢を印象付けた。

両氏は対面した際に抱擁を交わし、「あいさつ以外の話も少しした」(スタネクザイ氏)という。
会議には、タリバーン政権の駐パキスタン大使で、後に離脱したザイーフ氏や、別の反政府勢力ヘクマチアル元首相派のバヒール政治局長も出席した。

同志社大学大学院の内藤正典教授(現代イスラム地域研究)は「タリバーンが体系的に主張を説明したことは画期的だった。今後の和平協議につながる機会になったと思う」と話した。(中野渉)【6月28日 朝日】
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【「外国軍の撤退後は、すべてのアフガン人のために、経済や政治に参加する」】
会議に先立ち、タリバン側のムハマド氏は、今年3月に打ち切りを宣言したアメリカとのカタールでの交渉やテロ攻撃に伴う民間人犠牲者について、以下のように語っています。

****外国軍去れば政権と交渉」 タリバーン幹部が会見****
・・・・(アメリカとの交渉打ち切りについて)ムハマド氏は事実関係を認めた上で「米国が捕虜交換などの条件を受け入れなかったからだ。米国が条件をのめば協議再開の可能性はある」と指摘した。

カルザイ政権との直接交渉は、これまで実現していないが、「同じアフガン人としてカルザイ氏との交渉は可能だ」と言明。ただし、「アフガンに米国人が一人でも残るならばだめだ」と条件をつけ、14年末以降もアフガン治安部隊の訓練や支援名目で米軍部隊の一部を残す方針の米国やカルザイ政権を牽制(けんせい)した。
27日の会議にはカルザイ政権側の代表も出席する。そこで初めて双方が接触するかどうかについては明言を避けた。

将来の政治参加については「外国軍の撤退後は、すべてのアフガン人のために、経済や政治に参加する。人々が大統領を選び、大臣を決める」と話した。

長引く戦闘で多くの犠牲が出ている点を尋ねると、ムハマド氏は「戦争は望まないが、米国によって戦うことを余儀なくされている」と強調した。
タリバーンによる自爆テロで多くの市民が巻き添えになっていることには「戦争に犠牲はつきものだ。戦争とはそういうものだ」と主張。「ただし、犠牲のすべてがタリバーンによるものではない」とし、調査の必要性を訴えた。(後略)【6月27日 朝日】
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また“タリバーンの幹部が今回のような外国の会議に参加するのは前例がない。ムハマド氏は自身の役割について、「現在、アフガンにいて安全だ」とする最高指導者オマール師の指示で派遣された公式な代表だと説明。「我々はどんな会議にも参加し、意見を述べる用意がある」と強調した”【同上】とのことです。
全く消息が不明な“最高指導者オマール師”は生きているのでしょうか?タリバンの抱える最大の問題です。

ISAFが撤退する14年末までに軍事的決着はつきそうにありませんので、何らかの形でタリバンとの交渉が必要になります。
今回の国際会議参加も、今後の交渉に向けた一歩として有意義なことと思われます。

なお、今回会議に出席された同志社大学神学部教授で、一神教学際研究センター長でもある小原克博氏のブログ(http://www.kohara.ac/blog/2012/06/post-906.html)に会議の様子などが紹介されています。
アフガニスタンの方は鍋料理がお好きだとかで、会議の後の夕食会も鍋だったそうです。
タリバンとカルザイ政権関係者が、一緒に鍋をつついたのでしょうか?
もし、そんな場があれば、表向きの会議での発言とは異なるコミュニケーションも可能になるでしょう。
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