孤帆の遠影碧空に尽き

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フランス・マクロン大統領  対米・対ロで現実主義的な面も EU牽引へ“復帰” 内政改革へ強い意向

2017-07-17 22:11:56 | 欧州情勢

(独ハンブルクで開催のG20で、(左から)マクロン仏大統領、メルケル独首相、トランプ米大統領(7月7日撮影)。【7月17日 AFP】)

外交 “強い指導者”イメージに続き、現実主義的な面も
フランスの若き指導者マクロン大統領は、就任直後のアメリカ・トランプ大統領との「握手外交」やロシア・プーチン大統領との会談で“一歩も引かない強い姿勢”を示すなど、順調な滑り出しを見せていました。

その後も、単に強い姿勢をみせるだけでなく、西側世界で“厄介な存在”にもなっているトランプ大統領を敢えて自国に招き、両国関係の修復をアピールするなど、現実主義的側面を見せています。

****<仏大統領>米との友好関係修復を強調****
トランプ米大統領は14日、フランス革命記念日の軍事パレードにマクロン仏大統領と共に出席した。

マクロン氏は米仏関係について「何者にも分かたれない。トランプ夫妻の存在が友情の証しだ」と述べ、気候変動問題への対応などで亀裂が生じた米仏の友好関係の修復を強調した。
 
両首脳が見守るなか、パレードでは、第一次世界大戦への米国参戦から100年を記念し、約150人の米兵を含む約4000人の兵士らが行進した。
 
13日の首脳会談では、シリアの政情安定化に向けて協力することや、テロ根絶に向けた取り組みを進めることなどで一致した。
 
一方で、トランプ氏が離脱を表明した地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」についての溝は埋まらなかったものの、トランプ氏は今後も協議を継続していく姿勢をみせた。
 
トランプ氏は仏メディアのインタビューなどで、相次ぐテロを引き合いにフランスを「無法地帯」と表現してきたことなどからフランス側の反発を招いた経緯がある。

14日付の仏紙フィガロの世論調査によると、トランプ氏の招待を「支持する」との回答は61%に上り、米仏関係の修復を印象づけた。【7月14日 毎日】
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現職のアメリカ大統領のパレード出席は、フランス革命200年を記念した1989年のブッシュ(父)元大統領以来。

パレードには米兵約150人も加わり、「米兵が初めてフランス革命記念日パレードを先導した」(米軍情報紙スターズ・アンド・ストライプス電子版)とのこと。

更に“このほかにも、欧州に駐屯する米陸海空軍に海兵隊も参加。2機のF22戦闘機と、米アクロバット飛行チーム「サンダーバーズ」の6機のF16戦闘機がパリ上空を飛行した。”【7月14日 産経】とのことで、トランプ大統領も“ご満悦”だったようです。

(政治家はフランス語を話せることを有権者に隠したほうがいいなど、アメリカ社会は何かと独自性・伝統を主張して鼻につくフランスに反感を持っているようですが、アメリカのドラマ・映画などを観ていると、そうした反感と裏腹のフランス・パリに対する強い憧れ・コンプレックスみたいなものも感じます。)
マクロン大統領は対ロシア政策でも、プーチン大統領との会談で見せた“強硬”な姿勢から“現実主義的”な方向にやや姿勢制御しています。

****新しい対ロ政策はマクロン仏大統領が拓く****
<アメリカの対ロ政策に頼れなくなり独り立ちを迫られるヨーロッパで、大統領選をロシアに妨害されてその実像を肌身で感じた変革者マクロンが、外交の新機軸を打ち出した>

(中略)マクロンの対ロ政策は、フランソワ・オランド前仏大統領の流れをいくらか継承し、ドイツ政府とも見方を共有している。だがその後、ロシアに対するマクロンの現実主義がリアルポリティーク(現実政治)に変容する兆しが出てきた。大きな変化だ。

メルケルとも違う
(中略)マクロンはクリミア併合を断固非難したが、ロシアが支援しているウクライナ東部の分離独立派に話が及ぶともっと微妙な言い回しになった。マクロンはロシアを黒幕として名指しせず、紛争解決には両当事者の努力が必要だと言った。両者が情報を共有し、非難合戦を止めることから始めるべきだと言ったのだ。

ウクライナ紛争に関するマクロンの言葉は、その響きも中身もミンスク合意を主導したドイツのアンゲラ・メルケル首相の言葉とは異なる。メルケルもすべての関係国に和平を呼びかけたが、最初に行動すべきなのはロシアだと強調するのを忘れなかった。(中略)

メルケルとマクロンの微妙な姿勢の違いは、マクロンが今後の外交政策の大枠を示したときに表面化した。先月(6月)22〜23日のEU首脳会議の前、マクロンがヨーロッパを代表する新聞社8社の質問に答えたときだ。

第1に、マクロンはシリアの安定化にはバシャル・アサド政権の退陣を求めないと示唆。シリアが破綻国家に陥るのを防ぎ、テロ組織と戦うことを優先したいと付け加えた。

これには少なからぬ専門家が困惑した。人道的にも治安上も経済的にも、シリアはどう見ても、すでに破綻しているからだ。マクロンは、フランスにはシリアにおけるロシアの利益を尊重する意思がある、というサインをロシアに送ろうとしたのかもしれない。(後略)
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16日にはイスラエル・ネタニヤフ首相との会談で「二国家共存」に向けた対応を要請。イスラエルとパレスチナが「確固たる国境を定め、エルサレムを首都とする形で共に存続すべきだ」と強調しています。(ネタニヤフ首相の明確な反応はありませんでしたが)

メルケル独首相とともにEUを牽引していく姿勢
フランス・マクロン大統領の外交面での存在感アピールは、ここ数年EUを一人で背負ってきた感もあるドイツ・メルケル首相にとっても心強いところです。ただし、今後マクロン大統領の独自主張が強くなりすぎると、それはそれで・・・という話はありますが。

****マクロン仏大統領の見事な外交手腕、独仏の力関係に注目****
ドイツは長年、強いフランスのパートナーを待ち望んできた。しかし、自信に満ち、欧州で脚光を浴びるエマニュエル・マクロン仏大統領(39)は、ドイツが求めていた以上の存在かもしれない。(中略)
 
マクロン氏は先週、フランスを訪問していたドナルド・トランプ大統領夫妻を歓迎し、エッフェル塔でのディナーに招待した他、フランス革命記念日の14日には恒例の軍事パレードを共に参観した。

両大統領の間で交わされた笑顔や力強い握手は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相とトランプ氏との間のぎこちない関係とはまるで対照的だった。
 
マクロン氏は5月下旬、パリ郊外のベルサイユ宮殿でロシアのウラジーミル・プーチン大統領との初会談も果たしている。
 
欧州の研究機関、ロベール・シューマン財団のジャンドミニク・ジウリアーニ氏は、マクロン氏が「フランスの試合復帰」を示そうとしているようだと述べ、「そこには対独関係のリバランス(再均衡)がある。それは必要なことだ」と指摘した。
 
熱心な欧州連合(EU)擁護派であるマクロン氏の仏大統領就任は、欧州の統合をけん引し、世界最大の経済圏を築いた独仏協働への回帰を望む声を呼び覚ました。
 
両国の力関係がより均衡となることは、9月に連邦議会選挙を控えているドイツのメルケル首相にとっては安心材料の一つとなる。ナチスドイツの過去の過ちがあるため、メルケル首相は欧州単独のリーダーとなることには一貫して後ろ向きのスタンスを取っている。

■本当は「単独主導」を希望?
(中略)EUは今、内からナショナリズム、外からはブレグジット(Brexit、英国のEU離脱)やトランプ大統領による「米国第一主義」といった問題にさらされてはいるが、独仏両首脳は、EUをまとめるという共通のゴールの下で互いに協力しあっている。
 
しかし、9月の独議会選挙の後は、単一通貨ユーロの改革をめぐる協議が加速するとみられ、両国関係も大きな試練に直面することになる。
 
このスタンスの違いは、独仏両政府間の溝を深める要素となる可能性があり、これに対処するには、メディア映えするイメージや友好的な言い回し以上のものが必要不可欠となってくる。
 
一方で、マクロン氏の力強い人物像やフランスの存在感を際立たせるやり方に、実際は単独で主導することを望んでいるのではとの声も一部からは上がっている。ある外交筋はAFPに対し、「ドイツでは、トランプ氏のパリ訪問のニュースを驚きとともに受け止めた」と語っている。【7月17日 AFP】
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EUはイギリスの離脱によって、再構築が迫られています。

ドイツ・フランスが協調して主導する形で6月22、223両日に開かれたEU首脳会議では、加盟国の防衛協力強化の一環として、即応能力などが高い一部の加盟国が自発的に参加する常設の軍事協力の枠組みを設けることで一致しています。トゥスクEU大統領は共通防衛政策を巡る「歴史的な一歩」とも評しています。

また、武器の共同調達や研究開発資金をまかなうため欧州委員会が提案した「欧州防衛基金」の創設でも合意しています。【6月23日 毎日より】

****仏独首脳、異例の共同記者会見・・・・EU牽引役アピールの裏に「試練****
フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相は23日、ブリュッセルで2日間開かれた欧州連合(EU)首脳会議閉幕後、共同記者会見した。通常は個別に行うだけに異例。仏独協調ぶりをアピールした形だが、EU牽引役としては試練もありそうだ。
 
マクロン氏は冒頭、「仏独が1つの声で語ればEUは前進できる」とし、初出席の会議の成果を誇った。
 
会議では両国が対応を主導するウクライナ危機で対ロシア経済制裁の延長を決め、英国のEU離脱に伴い仏独が尽力してきた防衛協力拡大に合意した。メルケル氏も「独仏の準備が貢献した」と評した。
 
ただ、会議は必ずしも両首脳の思惑通りではなかった。仏独は中国を念頭に外国による欧州企業買収をEUが制限する制度の検討で合意を目指したが、オランダや北欧などが保護主義的と懸念。実現しなかった。
 
これらの国は市場主義重視などで考え方が近い英国を頼りにしてきた。事前に独自会合も開き、連携を模索。英離脱後の発言力維持を図る思惑もあるようだ。
 
マクロン氏は会議前、EUの難民受け入れ策に従わない東欧を「EUは(商品を選べる)スーパーマーケットでない」と批判。メルケル氏も同調したが、東欧は反発した。東欧には大国主導のEUに警戒もあり、東西対立は今後も懸案だ。
 
マクロン氏は仏独協調について「(EUの)十分条件ではない」と強調。メルケル氏も「他国を排除するのではない」とEU内の調整に努める考えを示した。【6月24日 産経】
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EU内部の対立、特に難民政策で対立する東欧諸国は“民主主義”という価値観の面でも仏独とは異なる様相を呈しており、今後の対応が注目されます。

ドイツ・フランスは戦闘機の共同開発に取り組むことでも合意しています。

****仏独の協力を強調、合同閣僚会議で戦闘機共同開発などに合意****
フランスのエマニュエル・マクロン大統領とドイツのアンゲラ・メルケル首相は13日に仏パリのエリゼ宮(大統領府)で両国の合同閣僚会議を開き、両国が戦闘機の共同開発に取り組むことで合意した。西側諸国間の関係が崩れつつあるなか、両国が協力していることを強調する狙いがある。
 
経済、文化および教育の担当閣僚間で合意された多くの措置のなかで共同戦闘機の提案は、欧州連合(EU)をけん引する中心的な国として新たな活力を生み出していこうという仏独の意図を浮き彫りにした。(後略)【7月14日 AFP】
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内政 改革に向けた強い意向 必要なら国民投票も

(ベルサイユ宮殿で開催された上下両院合同会議に出席するため、同宮殿内の回廊を歩くマクロン大統領(7月3日撮影)【7月4日 AFP】)

結果が分かりやすい外交に比べると、結果が出るまでに時間を要する内政は評価にも時間を要しますし、その長時間に多くの要因の影響をうけますので、成果に対し政策がどの程度影響したのかも判断が難しいところがあります。

閣僚人事面で当初トラブルを抱えたマクロン政権ですが、マクロン大統領の指導で改革に向けた取り組みを始めているようです。

****仏大統領、ベルサイユ宮殿で「変革」誓う 議員3分の1削減を提案****
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は3日、首都パリ郊外のベルサイユ宮殿で就任後初となる上下両院合同会議を招集し、演説を行った。
 
その中でマクロン大統領は、国政の「抜本的な変革」を誓い、国会議員数の3分の1削減を提案するとともに、議会で承認が得られなければ国民投票を実施してその是非を問うと言明した。(中略)
 
マクロン氏は選挙運動中に掲げていた議会改革計画を実行する意志を新たにし、下院577、上院348という議員定数を3分の1削減するとともに、選挙に一部比例代表制も導入する意向を示した。

大統領はこれらの改革実現のための法案が議会を1年以内に通過するよう望むと期待を示す一方で、「必要に応じて」国民投票を実施する権限も留保していると述べた。(中略)

野党は今回の会議を批判し、大統領がベルサイユ宮殿にこだわる姿勢は「君主制」をにおわせる動きを証明するものに他ならないと指摘している。【7月4日 AFP】
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フィリップ首相は4日、国民議会(下院)で施政方針演説を行い、向こう5年で法人税を33%から25%に引き下げるほか、今年の公的支出を5000億円余り減らす計画を打ち出しています。国内への投資を拡大し、借り入れ依存からの脱却を図る狙いとのこと。

また、フィリップ首相は11日、企業と個人に対する110億ユーロ(約1兆4400億円)規模の大型減税を当初の予定を前倒しして来年に実施することを明らかにしています。

****フランス、大型減税を来年に前倒し実施へ 1兆4400億円規模****
(中略)エマニュエル・マクロン大統領は、フランスの金融機関を整理し、5年間の任期中に計200億ユーロ(約2兆6100億円)規模の減税を行うと公約している。
 
今回の減税措置の主な例としては、全世帯の80%が対象となっている地方住民税の撤廃、富裕税の引き下げなどがあり、法人税も2022年までに25%に減税される。
 
フィリップ首相によると、政府は今年の経済成長率を1.6%と予測。こうした経済成長と歳出削減により大型減税の財政への影響を埋め合わせていくという。(後略)【7月12日 AFP】
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マクロン大統領の政治姿勢については、以下のようにも。

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マクロンは、小さな政府を実現して財政を再建するという理念の持ち主で、フランスの官公労からは「新自由主義者」だとの批判まであった。(中略)

要するに、教条的な社会主義とは一線を画す一方、EUの基本理念であるところの、国境なき国家連合を築くことでヨーロッパ大陸を戦争の恐怖から解き放ち、経済もよりダイナミックになることで、福祉や公教育の財源も確保できるというユーロ・リベラリズムを信奉する人物で、別の言い方をすれば「大企業や投資家からも信任され得る左派の経済官僚」なのである。(後略)【7月8日 林信吾氏 Japan In-depth】
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排他主義とも一線を画す
また、国民戦線・ルペン氏に代表されるような排他的風潮には一線を画する姿勢を明確にしています。

****仏マクロン大統領“負の歴史と向き合うべき” 排他的風潮と一線***
フランスのマクロン大統領は、第2次世界大戦中、ナチス・ドイツに融和的だった当時の政権のもとで1万人を超えるユダヤ人が強制収容所に送られた事件についてフランスの責任を認めるとともにヨーロッパで広がりを見せる排他的な風潮とは一線を画す姿勢を強調しました。

フランスでは第2次世界大戦中の1942年、当時のビシー政権がナチス・ドイツの要請を受けて1万3000人を超えるユダヤ人を拘束して強制収容所に送りました。(中略)

マクロン大統領は演説で、「真実を変えようという政治家もいるが、ユダヤ人の拘束と送還は確かにフランス政府が行った」と述べて当時の政権の責任は明確だと指摘し、自国の負の歴史と向き合うべきだと訴えました。

この事件をめぐっては、1995年に当時のシラク大統領が公式にフランスの責任を認めましたが、ことし5月の大統領選挙で有力候補だった極右政党のルペン党首は「フランスに責任はない」と述べ、波紋を呼んでいました。

マクロン大統領は、「憎しみや反ユダヤ主義には決して譲歩しない」とも述べ、極右政党の台頭とともにヨーロッパで広がりを見せる排他的な風潮とは一線を画す姿勢を強調しました。【7月17日 NHK】
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いささか好意的な評価を並べましたが、すべてはこれからの話です。ただ、オランド大統領のもとで混迷が続いたフランスに再生の兆しも・・・と期待させる滑り出しではあります。
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