孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  結果を出せないスー・チー政権 言論の自由にも影 “笑顔が消えた”スー・チー氏

2017-01-16 21:25:56 | ミャンマー

(ミャンマーの村で展開された警察による掃討作戦で、地面に座らされたロヒンギャ人の村人を蹴る警官(写真後方左)。写真左に写った警察官のゾー・ミョー・タイ氏が撮影し、ユーチューブに投稿された映像の一場面から(2016年11月5日撮影)【1月4日 AFP】 それでも、政府の調査委員会は「虐殺や迫害はなかった」との中間報告)

政府の調査委員会「(ロヒンギャ)虐殺や迫害はなかった」】
民主化が期待されているミャンマーのスー・チー政権ですが、昨年末12月31日ブログ「ミャンマー・ロヒンギャ問題 “ノーベル平和賞受賞者”スー・チー氏へ強まる批判・圧力」でも取り上げたように、“民族浄化”の批判も国連等から出ているロヒンギャ問題に関し、有効な打開策を打ち出せずにいます。

****ロヒンギャへ「迫害ない」 ミャンマー政府調査、批判も****
仏教徒が大半のミャンマーでイスラム教徒ロヒンギャへの人権侵害が報告されている問題で、政府の調査委員会が「虐殺や迫害はなかった」とする中間報告書を出し、人権団体から批判が出ている。ロヒンギャへの暴行容疑で警官が拘束されたばかりで、委員会の中立性に疑問の声も上がる。
 
同国西部ラカイン州では昨年10月に武装集団が警察を襲撃。治安部隊が掃討作戦を進める中で州北部に数多く暮らすロヒンギャ住民に対し性的暴行や殺人、住居への放火などを行ったとの証言が報じられている。
 
政府はこうした疑惑を否定してきたが、3日付で公表された調査委の中間報告書は、ロヒンギャの人口やモスク(イスラム礼拝所)の増加が「虐殺や宗教的迫害がない証拠」と言及。性的暴行については「十分な証拠がない」とし、放火や不当逮捕、拷問については「調査を続ける」とした。

昨年末に武装警官がロヒンギャ住民を暴行する様子を写した動画がネットに流出。当局は2日に警官4人を拘束したが、報告書はこれには触れなかった。
 
中間報告書について、人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理フィル・ロバートソン氏は「モスクがあるから宗教的迫害がないという驚くべき結論は、方法論的に不備がある」と指摘。「性的暴行以外の人権侵害は調査中としており、何も明らかにしていない」と批判する。
 
昨年12月にティンチョー大統領によって設置された調査委のトップが、元軍幹部のミンスエ副大統領であることを問題視する声もある。調査委は1月末までに最終報告書をまとめる。
 
一方、国連は6日、ミャンマーの人権状況に関する国連特別報告者の李亮喜(イヤンヒ)氏が今月中旬に同国を訪れ、ロヒンギャ問題についても調査すると発表した。【1月7日 朝日】
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国軍の強硬措置を支持する仏教徒・国民世論の圧倒的なロヒンギャ嫌悪、元軍幹部のミンスエ副大統領をトップに据えた政府の調査委員会ということで、国軍の意向に対しスー・チー国家顧問も異を唱えることができないのか、それとも、スー・チー氏自身に問題意識がないのか(そういう訳ではないでしょうが・・・)。

12月19日のASEAN非公式外相会議で、スー・チー氏は問題解決に向けて「時間と裁量の余地」を与えてほしいと各国外相に訴えていますが・・・。

悪化する少数民族との衝突 「政権は軍の攻撃を端で見ているだけ。軍への影響力もほとんどない」】
ミャンマー北部の少数民族問題も悪化しています。

****ミャンマー北部、軍と武装勢力の戦闘で数千人が避****
軍と少数民族の武装勢力による衝突が激しさを増すミャンマー北部で、戦闘から逃れるために数千人が避難した。現地の活動家らが11日、明らかにした。
 
ミャンマー北部ではここ数か月で軍と少数民族の武装勢力「カチン独立軍(KIA)」などの間の衝突が激しさを増し、昨年3月から同国の政権を率いる国民民主連盟(NLD)のアウン・サン・スー・チー氏が主張する和平実現への道筋に打撃を与えている。昨年11月に新たな戦闘が発生して以降、すでに数十人が死亡、数千人が避難を余儀なくされたという。

カチンネットワーク開発基金の関係者によると、国境近くの町ライザ(Laiza)で10日、ミャンマー軍は空爆を行い、戦闘は悪化していく一方だという
 
また地元の活動家によると、およそ3600人が戦闘から逃れるために2か所の国内避難民キャンプを脱出したという。【1月11日 AFP】
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衝突が起きているのは中国との国境も近いエリアですが、中国に向かった避難民が中国から追い返されるという事態にも。

****ミャンマー北部で戦闘激化、避難民4千人行き場失う****
ミャンマー北部カチン州で、政府軍が少数民族武装組織のカチン独立機構(KIO)への攻勢を強め、約4千人の避難民が行き場を失っている。国境の川を越えて中国側に逃れようとしたところ、中国当局に押し返されたといい、国境近くの道端などにとどまらざるを得ない状況だ。
 
避難民を支援する地元NGOのグループが13日にヤンゴンで各国外交団に説明したところでは、政府軍が戦闘機による爆撃も加えて国境地帯のKIO軍事拠点を10日に制圧すると、付近の避難民キャンプに暮らす約4千人が11日未明、中国側に逃れ始めた。だが、中国当局は同日中にミャンマー側に追い返した。
 
13日朝には、政府軍が放ったとみられる砲弾5発が近くの中国側に落ちた。現場の気温は5度程度まで下がり、身の安全に加えて健康状態も懸念される状況だという。
 
事実上の政権トップであるアウンサンスーチー国家顧問は国内和平を掲げているが、停戦に応じていないKIOなどへの政府軍の攻撃は昨年以降、むしろ激化している。

NGOグループのグンシャアウン氏は「政権は軍の攻撃を端で見ているだけ。軍への影響力もほとんどない」と批判した。【1月13日朝日】
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「政権は軍の攻撃を端で見ているだけ。軍への影響力もほとんどない」・・・厳しい評価ですが、結果を出せていませんので、批判もやむを得ないところです。

スー・チー氏としては、父アウンサン将軍の遺志を継ぐ形で少数民族との国民和解を実現し、政権の成果としたいところですが、事態は逆行しているようにも。

脅かされる言論の自由 鈍い政権側対応
上記のようなロヒンギャ問題や少数民族問題に関しては、スー・チー国家顧問としても国軍との関係で、現実問題としては手が出せないというところもありますので、斟酌すべき余地はあるかも(現実政治家としては、結果で評価せざるを得ませんが)。

ただ、少なくとも「スー・チー政権に代って、自由にものが言えるようになった」という変化は実現してほしいのですが、そこも怪しいようです。

****ミャンマー、言論の自由に影 スーチー氏与党批判で逮捕****
民主化勢力が政権を握ったミャンマーで、言論の自由が脅かされる懸念が出ている。アウンサンスーチー国家顧問率いる与党の政治家や軍首脳をネットで批判しただけで、逮捕されるケースが相次ぐ。国内外から出ている批判に対して、政権側の動きは鈍い。
 
ヤンゴン郊外のタクシー運転手の男性(37)が昨年11月、電気通信法違反(名誉毀損(きそん))の疑いで逮捕された。フェイスブックの投稿が、与党・国民民主連盟(NLD)の地元下院議員らの名誉を傷つけたとの容疑だった。
 
警察に告発したのは、NLD地区組織幹部のチョーミョースエ氏(44)。男性の「私たちの議員は能力がなく、誠実さにも欠ける」との投稿が名誉毀損だとする。議員らに告げず、自分の判断で告発したという。
 
男性の妻(29)によると、男性はフェイスブックに政治や社会問題に関する批判をよく書き込んでいた。「民主化したので何を書いても大丈夫」と話していた。男性は保釈が認められず、勾留されたままだ。
 
告発には、NLD内部からも「投稿は単なる批判。司法手続きは中止されるべきだ」(別の地区組織幹部のアウンミン氏)との声が上がる。だが、チョーミョースエ氏は「目上の人に敬意を払わず、根拠もなく自由に批判できるのはおかしい」と訴える。
 
適用された電気通信法は、旧軍政の流れをくんだテインセイン前政権下で2013年に制定された。ネットを使った恐喝や名誉毀損、脅迫などは懲役3年以下に処するとの条項がある。
 
この条項は言論弾圧の道具と批判されてきた。名誉毀損の定義が曖昧(あいまい)で被害者以外が告発でき、保釈が認められにくい点が問題とされる。刑法にも名誉毀損罪があるが、量刑は禁錮2年で、保釈も可能だ。
 
電気通信法改正を訴える組織を立ち上げた詩人でNLD党員のサウンカさん(23)によると、NLDが政権交代を決めた15年の総選挙の運動期間中に前大統領や国軍最高司令官を揶揄(やゆ)した活動家らが、この条項で逮捕された。サウンカさんも逮捕された一人で、懲役6カ月の判決を受けた。
 
逮捕は昨年3月末に発足したNLD政権下でも続き、前政権下の2倍超となる少なくとも16人。最高司令官を「恥知らず」と書いたNLD党員のほか、スーチー氏を「侮辱」したものも4件あるが、訴えたのは「被害者」の本人以外。サウンカさんは「スーチー氏や議員を告発で守り、英雄になろうとの風潮がある」と話す。

■民主化前の法、改正後回し
同法を使った告発は市民同士のネットでの言い争いにまで広がり、事件数は捜査中も含め40件を数える。国際人権団体や国内からの批判を受け、条文改正への動きも出始めた。関係者によると、国会有識者らによる諮問委員会で先月、改正が議論された。

だが、政権側の優先順位は低い。NLD幹部のニャンウィン氏は「改正すべきだと思うが、国内和平といった、より重要な問題も山積みだ」と話す。スーチー氏も昨年11月の来日時の会見で「自由には責任が伴わねばならない。ソーシャルメディアは必ずしも責任が明確でない」と述べた。
 
政権側が後ろ向きともとれる事件も起きている。NLD幹部でヤンゴン管区首席大臣のピョーミンテイン氏が昨年11月、自身を批判した地元紙大手の「イレブン・メディア」の社長と編集長を、この条項を使って管区政府として告訴。2人は逮捕され、1月6日まで約2カ月間勾留された。
 
社長はピョーミンテイン氏が高級腕時計を賄賂としてもらったと推察できる論説を執筆し、ネットに載った。ピョーミンテイン氏は記者会見を開いて事実を否定し、法的手段に訴えた。
 
同法に詳しい弁護士のロバート・サンアウン氏は保釈も容易な刑法の名誉毀損罪でなく、量刑がより重い電気通信法を使ったことを批判。「この件でNLDも法改正がしばらく難しくなるだろう」と心配する。【1月16日 朝日】
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政権・議員批判が保釈が認められにくい電気通信法違反で拘束されるというのでは、軍事政権時代と大差ありません。

ロヒンギャ問題で周辺国から向けられる批判、激化する少数民族との衝突・・・といった事態で、国内の言論問題どころではないということかも知れませんが、スー・チー氏が指導力を発揮できる分野だけに残念な現状です。

https://www.youtube.com/watch?v=EJ_PZ62XAHQのYou Tube動画で佐藤優氏が、スー・チー氏から笑顔が消えたということを話題にしています。

自宅軟禁状態にあったときも、支持者に笑顔を見せていたスー・チー氏ですが、今はもっと厳しい状況に置かれているということでしょうか。


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