孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

日本・欧米社会を覆う悲観主義 「うつ病」?「老い」?

2014-12-26 22:17:07 | 国際情勢

http://pesie.jp/

中国:「社会主義の核心的価値観」を全市民が暗唱
中国・習近平政権指導部が進めてきた「反腐敗」の取り組みは、軍制服組の最高位に上り詰めた徐才厚・前党中央軍事委員会副主席や国有石油大手出身の周氏ら、江沢民元国家主席に近いとされる大物を摘発してきましたが、胡錦濤前国家主席が率いてきた共青団グループの大物幹部・令計画氏にも摘発の手が及び、波紋が広がっています。

今後の党の勢力バランスに影響を与える可能性があるとも指摘されています。

****令氏失脚、選別的な反腐敗闘争 習主席身内には甘く****
23日付の中国各紙は、中国の胡錦濤前国家主席の側近、令計画・人民政治協商会議副主席が重大な規律違反の疑いで党の取り調べを受けたことを大きく報じ、「反腐敗闘争の新たな成果」などと絶賛した。

しかし一方で、「このような恐怖政治がいつまで続くのか」と冷ややかな反応を示す党関係者もいる。

強引な形で“政敵”を次々と失脚させながらも身内に手を付けない習近平指導部の「選別的」な反腐敗キャンペーンに対し、党内の不満は高まりつつあるようだ。(後略)【12月24日 産経】
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山東省臨沂市の街頭には、「英明な領袖習主席執政2周年 夢の実現を天下の皆が祝福します」という意味のスローガンと併せて習近平国家主席の写真が大きく掲げられた大型の看板が掲げられたとかで、毛沢東時代の個人崇拝の復活を思わせるという議論がネット上で起きているそうです。【12月17日 Searchinaより】

腐敗一掃の粛清運動に併せて、社会主義イデオロギーを再確認する運動もあるようです。

****市民に「社会主義価値観」の暗唱を義務付け、中国・武漢市****
中国・湖北省の武漢市が、12項目からなる「社会主義の核心的価値観」の暗唱を全住民800万人に義務付けようとしていると、国営英字紙・環球時報が26日、報じた。

「社会主義の核心的価値観」は中国共産党が社会主義イデオロギー普及の一環として提唱している。市民全員の習得を徹底させるため、武漢市では「暗唱クラス」への出席を義務付け、「中央政府高官」による抜き打ち検査も行われているという。

地元の大学院生は環球時報に、勉強会を開いて核心的価値観を記憶しているか 確認しあったと語った。全員が完璧に覚えるまで、誰も帰れなかったという。また別の学生は、「もし暗唱できなかったら、来年の奨学金がもらえなくなるかもしれない」と語った。

習近平国家主席は昨年の就任以来、共産党への支持固めを狙って「社会主義価値観」の普及を積極的に押し進めている。

「社会主義の核心的価値観」が提唱する12の言葉は「富強」「愛国」「和諧」など。また「民主」や「法治」も含まれているが、西側諸国とは定義が異なる。
皮肉なことに、暗唱を強制された言葉には「自由」も含まれている。

環球時報によれば、武漢市が「社会主義の核心的価値観」暗唱運動を進める背景には、「国家文明都市」の称号を得たいとの市当局者らの思惑がある。【12月26日 AFP】
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社会主義イデオロギー暗唱の強制と「国家文明都市」がどうつながるのか?
まあ、中国では「文明」の定義も日本とは異なるのでしょう。

失脚した薄熙来重慶市党委員会書記は、重慶市において大衆を動員し毛沢東時代の革命歌を歌わせる政治キャンペーン「唱紅」を展開しましたが、似たり寄ったりの感も。

腐敗一掃の粛清運動にしても、社会主義イデオロギーによる締め付けにしても、腐敗が蔓延し、格差が拡大する社会を放置すれば、共産党政権が危うい・・・という危機感が背景にあると思われます。

いずれにしても、「自由」「民主」「法治」を一定に実現していると考えている日本社会から見ると、なかなか厄介で面倒な社会に思えます。

インド:血液サンプルの88%から高濃度のウランや鉛
一方、インドは中国以上に、「21世紀の出来事なのか?」と思わせるような問題が山積しています。

****武装集団が住民69人殺害、2000人超避難 インド****
インドのアッサム州で23日、インドからの分離独立を目指す武装集団が複数の村を襲撃し、18人の子どもを含む69人が死亡した。

州当局関係者によると、同州では25日までに、同様の襲撃が再び起きることを恐れた住民2000人以上が州政府が設営した仮設キャンプに避難した。

また、24日には一連の攻撃に対する適切な対応を求めて住民が警察に出向いたところ、警官がこれらの人たちに向かって発砲。3人が死亡した。

警察は23日の襲撃について、非合法とされている過激派組織「ボドランド国民民主戦線(National Democratic Front of Bodoland、NDFB)」による犯行との見方を示している。NDFBは、数十年にわたって独立闘争を続けている。

インド北東部にあり、茶葉の生産で知られる同州ではこれまでにも、以前からこの地に住むボド(Bodo)民族と、移住してきたイスラム教徒、対抗する別の部族との間で土地の所有権をめぐる紛争が起きていた。

一方、インド内務省は24日、村の住民たちがボド民族への報復攻撃を始めたことから、同州への軍部隊の派遣を命じた。【12月25日 AFP】
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環境汚染についても、よく話題となる中国以上に深刻です。

****失明や車椅子生活が「運命」、汚染されたインドの村****
登校前に大好きな漫画を読もうと頑張るローシャン・シンくん(10)の両目は、血走っていた。医師からは、もうすぐ失明するだろうと言われている。

「いつも最悪の場合を考えてる。怖いよ。お父さんもお母さんも、すごく心配してる」

インド北部パンジャブ州の辺境、パキスタンとの国境沿いにある寂れた村ドナ・ナンカ。落ち着かない様子で制服のシャツを引っ張りながらAFPの取材に答えるローシャン君は、毎日、村の共同井戸からくみ上げた地下水を飲んでいる。

だが、専門家の指摘によれば、この地下水は非常に有害で、多くの村民の健康を損なう原因となっている。

5月に就任したナレンドラ・モディ首相は、インドを象徴する聖なる川ガンジスの環境汚染を「国家の恥」と評し、浄化を誓った。

しかし、ドナ・ナンカ村のある北部でも、鉛やウランなどの有害金属に汚染された川が長年にわたり、住民に深刻な健康被害を及ぼしている。

「ここでは、車椅子での生活が当たり前になっている。これが私たちの運命なんだ」。農業を営むマウン・シンさん(65)は、失明した25歳と18歳の息子たちの傍らに座り、嘆いた。

村の近くを流れる川は、ヒマラヤ山脈にその源を発し、インドとパキスタンの国境沿いをうねるように流れるサトレジ川の支流だ。

専門家らは、インドの工場とパキスタンの皮革加工場がサトレジ川に垂れ流した未処理排水が、流れのゆるやかな村周辺で滞留し、土に染み込んでいるとみている。

この汚染の責任がインドにあるのか、パキスタンにあるのか、それとも双方とも非難されるべきなのかはまだ科学的に解明されていないが、被害は甚大だ。

近隣の村々では住民1200人の間に、失明や手足の変形、若年性の白髪、学習障害、皮膚病がまん延し、至るところで車椅子を見かける。

村の小学校のロブジート・シン校長は、「失明などで退学を余儀なくされる生徒がとても多い」と語り、生徒270人のうち108人が何らかの病気や障害に苦しんでいると話した。(後略)【12月26日 AFP】
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ドイツの研究所に送って血液検査をしたところ、「結果はショッキングなものだった。ある程度の水銀やヒ素への暴露は想定していたが、子どもたちの血液サンプルの88%から高濃度のウランや鉛が見つかった」とか。

【「要するに、我々は年を取りつつあるのだ」】
こうした中国社会、インド社会の現況を見ると、日本社会が実現しているものの価値も確認できますが、日本にしても欧米にしても、経済的にもパッとせず、社会に停滞感が広がっているのも事実です。

****西側諸国はうつ病なのか?はびこる悲観主義の背景にあるもの****
人生の最盛期はもう終わってしまった、あとはずっと下り坂だ――。そんな風に考える人は確かにいる。

しかし、そういう憂鬱な気分が西側世界の大半を同時に覆い尽くすことはめったにない。短い期間覆い尽くしたことは確かにあったが(例えば、1970年代のスタグフレーションの時)、やがて危機とともに消えていった。

今日の悲観主義は、過去のそれよりも2つの面で厄介だ。

今日の悲観主義がとりわけ厄介な理由
第1に、経済学で説明しきれない。米国では景気回復が5年目に突入しているが、子供たちの暮らし向きは自分のそれよりも悪くなると考える人の割合が、景気の低迷に苦しむイタリアのそれと同水準にとどまっている。
しかも、この傾向は2008年に世界金融危機が勃発する前から始まっている。

第2に、西側の悲観主義は情報技術革命と同時期に広がりを見せている。西側の信条である個人の自由がこれほど制約されない時代は過去にほとんどなかったにもかかわらず、憂鬱な気分はさらに強まっているように見えるのだ。

西側の人々は現実が分からなくなりつつあるのだろうか。

その通りだ、と頷きたい気もする。西側の普通の人は以前よりも長生きしているし、戦争の影響を受けることもかなり減っているうえに、人類史上のどの人物よりも多様な選択肢を手にしている。元気に、自由に生きられること自体、大変な恩恵であるはずだ。

ひょっとしたら、我々は昔からこれを当たり前だと思って過ごしてきたために、いま手にしているものの有り難みが分かっていないのかもしれない。

何かとても重大なこと――情報技術に気を取られて物事に集中できない状態が続いていることだろうか――によって神経回路の配線が大きく変わってしまい、すぐ近くにあるものの真価が分からなくなってきているのかもしれない。

あるいは、今日の公の生活の質に納得できないために、自己認識からしか生じ得ない惨めさに苦しんでいるのかもしれない。これらはすべて、うつ病に当てはまる。

タイプの違いはあれども、これらは西側に広がる憂鬱さの説明として示されている。ただ、筆者にはどれもピンとこない。

他者の台頭に不安?
実は、もっと妥当に思える説がある。我々は他者の台頭に不安を抱いている、という説がそれだ。(中略)

しかし、西側諸国の悲観主義の原因をここに求めることには無理がある。経済のグローバル化は、誰にとっても(差し引きで)利益になるはずである。また、グローバル化の進んだ経済は喜ばしいものでもあるはずだ。

今日の世界は、西側の思い描いた通りの姿で発展しつつある。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領や中国共産党はともかく、民主的な資本主義に対抗するイデオロギー上のライバルは存在しない。キューバでさえ、遅まきながら、孤立状態から足を踏み出しつつある。

では、西側のどこに問題があるのだろうか。その答えは、本当だろうかと笑ってしまうぐらい単純である。要するに、我々は年を取りつつあるのだ。

年を取りつつある世界
経済学的には、これは「長期的停滞」を意味する。日本はほかのどの国よりも速いペースで高齢化している。そして経済成長も、ほかのどの富裕国よりも長期にわたって、より鈍い状況が続いている。

しかし、これは程度の問題だ。人は年齢を重ねれば重ねるほど貯蓄をしなくなる。貯蓄をしなくなるほど投資もしなくなる。そして、投資をしなくなるほど経済成長も鈍化するのだ。

これに対しては新しい技術が答えを出してくれるはずであるし、寿命も延びている我々はこれまでよりも長期間働くべきなのだろう。しかし、そこに立ちはだかるものがある。政治である。

経済成長が鈍化すればするほど、予算を巡る争いも増える。スペインからカナダに至るまで、高齢者は財政戦争で勝利を収め続けている。(中略)

「ジェロントクラシー(老人支配)」の代償
「グレイ・ロビー」が優勢になればなるほど、将来の世代が割を食う。すると、既存の政治への反発が生じる。実際には、悪いのは移民だという主張が生じることになる。

米国のティーパーティー(茶会党)、フランスの国民戦線(FN)、そして英国独立党(UKIP)を躍進させた大きな原動力の1つは、これらの政党がしばしばスケープゴートを探すことに求められる。

彼らは、直接政権を担う公算こそ小さいものの、年金世代に対する現役世代の人口比の低下という問題に取り組むことができる人々の障害になっている。この問題の解決策の重要な要素は移民の受け入れの増加だが、既存の政治に反発する人々は、移民の阻止を中核的な目標の1つに掲げているからだ。

これもまた、西側世界の「ジェロントクラシー(老人支配)」の代償だと言えよう。

高齢者支配のコストは財政面だけにとどまらない。「第三世界」という用語を生み出したフランスの思想家、アルフレッド・ソヴィーは、西側世界が「古い家に住み、古い思考を繰り返す高齢者の社会」になってしまうことを恐れていた。これには一理あるかもしれない。(後略)【12月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙】
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“いま手にしているものの有り難みが分かっていない”“他者の台頭に不安”(日本の場合は、台頭する中国への不安でしょう)“人口構成の高齢化に伴う社会全体の「老い」あるいは「ジェロントクラシー(老人支配)」”・・・・いずれの要素も思い当たるところはあります。

ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は、「欧州は疲れて老い、世界の主役ではなくなったと感じられている」と、社会の精神的「老い」を指摘しています。

****地球24時)ローマ法王「欧州は老いた****
ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は25日、仏ストラスブールを訪れ、欧州議会で演説した。法王の欧州議会での演説は、ヨハネ・パウロ2世以来26年ぶり。

欧州統合の現状を「老いて輝きを失っている」と厳しく指摘し、「人権と民主主義」「平和と団結」の原点に立ち戻るよう求めた。

法王は「欧州は疲れて老い、世界の主役ではなくなったと感じられている。偉大な構想は魅力を失い、官僚的な組織に取って代わられたようだ」と指摘。

その上で「欧州の民主主義を生かすことが、世界に広がる独裁制や原理主義を押しとどめるために必要だ」と訴えた。【11月26日 朝日】
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「人権と民主主義」「平和と団結」という社会の価値観の原点に立ち戻ることは妥当な療法と思えますが、ローマ法王ならぬ凡夫としては、どのようにまとめていいかわかりませんので、今日はここでおしまい。

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