孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

サウジアラビア  イスラムの戒律に厳しい国における女性の状況など

2010-10-11 12:37:32 | 世相

(サウジアラビアの市場(スーク)でのショピング風景 “flickr”より By retlaw snellac http://www.flickr.com/photos/waltercallens/385830547/ )

【女性による車の運転や近親者による付き添いなしでの外出は禁止】
イスラム教ワッハーブ派を国教とするサウジアラビアは、女性の人権はイスラム諸国の中でも(欧米的価値観からすれば)最低レベルであると言われています。

イスラムに関する知識は持ち合わせていませんので、以下の記述は相当に不正確・大雑把なものになることをご容赦ください。
ワッハーブ派は大きくはスンニ派の一派ですが、イスラム教の中でも最も厳格な宗派として知られており、一般には、イスラム原理主義と呼ばれて知られている復古主義・純化主義的イスラム改革運動の先駆的な運動であると見なされています。

例えば、アフガニスタンのタリバンがイスラムについて学んだパキスタンの神学校マドラサにおいても、サウジアラビアから輸出されたワッハーブ派の影響が大きかったと言われています。また、オサマ・ビン・ラディン等のアルカイダやアラブ系イスラム義勇兵も、ワッハーブ派の宗教的土壌から、更に過激化する形で生まれているとも言われています。

サウジアラビアにおける女性の置かれている状況については、【ウィキペディア】では以下のように記されています。
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サウディアラビアはイスラーム教の中でももっとも厳格なワッハーブ派のシャリーアを国法としている。そのため女性は公的な場面から完全に排除されている。女性による車の運転や近親者による付き添いなしでの外出は禁止されている。また外出時には必ずヒジャーブを身に着けねばならない。遺産相続も男性の半分であり、公的な権限を行使するためには父親、夫、兄弟などの男性の代理人を介さねばならない。一夫多妻制が認められており、安易な離婚や家庭内暴力も問題となっている。
女性の性的自由はきわめて制限されており、婚外交渉(ジナの罪)が発覚した場合銃殺刑、斬首刑、絞首刑のどれかで死刑になることが多い。男性の場合は鞭打ちですむことが多く、きわめて不公平であると国際社会の非難を浴びている。
ここまで女性の権利制限が強くなったのは1950年代以降、油田開発が活発化してからであり、サウジアラビア王国が成立した当時は女性の就労も普通に認められていた。【ウィキペディア】
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【変革を求める動き】
今回、サウジアラビア、特に女性の権利を話題にしたのは、次の記事を見たからです。
****「好きな相手と結婚できない」サウジ女性たちの闘い*****
父親と男の親族だけが女性の結婚相手に関する決定権を持つサウジアラビアで今、女性たちが、この部族古来の伝統に立ち向かわんとしている。
自分で選んだ結婚相手を父親に却下され、一生独身を余儀なくされる可能性に直面した女性たちが、父親の判断を不服として裁判所に訴え出るケースがこのところ増えているのだ。そうした女性の多くは大卒で、収入のある職業婦人だ。
人権団体の調べによれば、過去6年間で訴えを起こした女性は86人に上る。うち13件は、ことしに入ってからのものだ。

■イスラムの教えと部族の伝統との相克
今年7月、メディナの裁判所は、同僚の外科医との結婚を「違う部族の出身者」との理由で父親が認めなかったことを不服とした女性医師(42)の訴えを却下した。裁判所は父親の言い分を正当と見なし、「違う部族の者と結婚して父親に逆らおうとしている」と女性を非難した。
「不幸なことにサウジアラビア社会には奇妙なパラドックスが存在します。わずか10歳の少女を結婚させることが可能な一方で、大人の女性たちが筋の通らない理由で結婚を妨害されているのです」と、人権団体「National Society for Human Rights」のスタッフはAFPの取材に話した。

イスラム教の教えでは、父親は、娘の結婚相手が高潔で敬虔なイスラム教徒である限りにおいては、その結婚に同意しなければならないとされている。また、前年亡くなった同国の高名なシャイフ(イスラム教の導師)であるアブドゥラ・ビン・ジブラーンは、「父親は娘の結婚を妨害してはならない」とのファトワ(宗教令)を出していた。
だが、シャリーア(イスラム法)とともに極めて保守的な部族の伝統も重んじるサウジでは、娘が結婚するまでの間、父親が娘に対し絶対的な支配権を握ることが容認されている。そのため、政府や裁判所でさえ、女性が父親(父親が死去した場合は兄弟かおじ)の許可なく結婚することを認めていないのが実情だ。

■父親が結婚を認めない理由
希望の相手との結婚が却下される理由で最も多いのは、「同じ部族の出身者ではない」というもの。サウジアラビア王国の中核は部族社会であり、国を左右する政治権力や経済力も部族が基本となっているという背景がある。反面、これを理由に娘の結婚を反対する父親自身は、違う部族の女性と結婚している、という例もある。
幼くして既にいいなづけ(大抵はいとこ)が決められていたり、姉がまだ未婚だとか、娘の社会福祉給付金を父親があてにしているなどの理由で、結婚を許されない場合もある。(後略)【10月6日 AFP】
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女性の就労状況については、“サウジアラビアは自国民の女性の就労を厳しく制限している反面、外国人女性の労働者は非常に多く、メイドや女性向けのサービス業などは外国人女性が就労している。 しかし、2002年以降は労働人口の半数が外国人であることが問題視され労働者の自国民化政策を進めるようになり、家事労働やサービス業への女性の就労も法的に認められるようになってきている。”【ウィキペディア】とのことです。

****サウジアラビア:スーパーのレジ係に女性 国内で大議論****
男女が同じ職場で働くことが「イスラムに反する」とされてきた保守的な社会のサウジアラビアで、地元資本の大手スーパーマーケットが、タブーを破って試験的にレジ係の女性店員を配置、同国内で大きな議論となっている。
イスラム保守派勢力は「女性店員が男性から嫌がらせを受けかねない」と反対、同スーパーのボイコットを呼び掛けている。だが、女性採用の動きが広がれば、女性の雇用機会が極めて限られているサウジに変化をもたらす可能性もある。同スーパーはサウジ全土に100店舗以上展開する「パンダ」。西部の商都ジッダの特定の店舗にサウジ女性16人を採用した。

女性レジ係は「女性や家族専用」の列に配置され、男性だけと対面しないよう配慮。男性店員と同じような制服ではなく、全身を黒い布で覆うサウジ女性の一般的な服装「アバヤ」を着ているという。
同社の広報担当者によると、採用したのは離婚や夫との死別などで収入が少なく職を求めている女性。担当者はフランス公共ラジオに「女性は男性に比べてよく働く。うまくいけば他店舗にも広げたい」と話している。【8月26日 毎日】
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****サウジアラビア、司法改革で女性弁護士の出廷が可能に*****
サウジアラビアの司法改革の一環で、これまで禁じられていた女性弁護士の出廷が一部、許可される見通しとなった。
現地紙が21日に報じたモハメド・イッサ法相の発表によると、現在策定中の新法の草案では、離婚や親権などを扱う家庭裁判に限り、法廷内での女性弁護士の弁論が許される内容となっている。新法はまもなく議会を通過する見込みだ。
厳格なイスラム法(シャリーア)とイスラム教の慣習に基づくサウジアラビアでは、男女の分離が定められており、司法機関内や政府庁舎でもこれまで女性の弁護士は、女性専用と限定された区画でしか活動が認められなかった。また判事は全員、男性のイスラム聖職者となっている。
今回の司法改革では、「個人の問題」を扱う家庭裁判所など特定の種類の訴訟に特化する裁判所の拡充が試みられている。【2月22日 AFP】
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【保守派の反発も】
サウジアラビアでも変革の流れが生まれているようにも見えますが、一方で、そうした動きに反発する流れもあります。

****サウジで13歳少女にむち打ち刑 「教師に反抗」と判決****
AP通信や国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、サウジアラビア東部ジュベイルの裁判所は24日までに、校則違反をした上に教師に反抗したとされる13歳の少女に、同級生の前でのむち打ち90回と禁固2カ月の判決を言い渡した。具体的な罪名は不明。アムネスティは、子供をむち打ち刑に処するのは「残虐で非人間的、不名誉だ」と指摘。判決撤回を求めた。【1月25日 共同】
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*****サウジ:宗教警察が赤い色の商品摘発 バレンタイン前に*****
キリスト教に起源を持つバレンタインデーは「ご法度」−−。イスラム教聖地を抱えるサウジアラビアで宗教警察(勧善懲悪委員会)が11日、14日のバレンタインデーを連想させる「赤いバラ」などの赤い色の商品の摘発を全国一斉に始めた。AP通信などが報じた。
サウジは、女性の車の運転が禁止されているなど、イスラム諸国でも最も保守的な国。首都リヤドのほとんどの店は、棚から赤い色の商品を撤去したという。
サウジ当局者によると、宗教警察が巡回を強化。赤いバラやハート形のグッズ、贈り物の赤い包み紙などを店頭から撤去するよう指導、ホテルやレストランに特別の飾り付けをしないよう命じている。
宗教警察は「従わない者は処罰する」と警告。玩具店が自主的に赤いクマの縫いぐるみを客の目につかない所に隠すなどしている。ただ、こうした商品はバレンタインデー以外の時期には販売が許されているという。【2月13日 毎日】
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【宗教的見解と民衆の生活の乖離】
こうした状況については“近年では宗教指導者たちが示す宗教的見解と民衆の生活の乖離が進み、国民が宗教的な指導に従わなくなってきており、宗教指導者がハラーム(禁忌)であるとファトワー(宗教見解)を出した物の多くを民衆が利用していることが珍しくなくなった。代表的な物としてポケモン、バレンタインデー、クリスマスなどがある。
民衆が宗教指導者の言うことを聞かなくなった結果、宗教指導者が今まで以上に原理主義的で過激な発言を繰り返したり、宗教警察である勧善懲悪委員会による取り締まりを過激化させる傾向にある。これによってとんでもない理由での刑罰や死刑が科されることがある。 このような過激な発言がニュースで配信されたりしてネット上で話題になることがあるが、発言と実情がかけ離れていることが多い。
2008年には過激派宗教指導者二人が国王によって解任されるなど、過激派宗教指導者はサウジアラビアでも排除され始めている”【ウィキペディア】とも。

【テロ温床への政府の危機感】
また、政府当局もテロの温床となるような状況に危機感を持っており、“現代では法的権利擁護委員会などワッハーブ派がサウジアラビア政府から弾圧を受けていると主張する団体もある。 現在ではモスクで行われるウラマーの説法でもファトワーでも他国への侵略やテロを正当化するような発言をすれば公職追放などの厳しい処罰を受けるようになり、ワッハーブ派の唱えるジハードを主張すればサウジアラビア政府から弾圧されるという状況に追い込まれている。 また、西洋的人権擁護や女性の権利擁護など本来のワッハーブ派の主張と相容れない法制度が次々と施行され、反対すれば弾圧されるという状況になっている。” 【ウィキペディア】とも。

なにせ、遠い国の話でよくわかりませんが、イスラム世界への影響力の強いサウジアラビアの社会動向は注目されるところでもあります。

ジャンル:
中東
キーワード
ワッハーブ派 イスラム教 宗教指導者 バレンタイン 女性の権利 シャリーア サービス業 イスラム諸国 アムネスティ イスラム法
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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2014-02-05 09:11:13
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