孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スウェーデン  トランプ大統領の“早とちり発言”にも“一片の真実” 苦慮する移民・難民問題

2017-03-01 23:12:04 | 難民・移民

(スウェーデン南部マルメで、スウェーデン移民庁の難民申請施設の入り口前で眠る人たち(2015年11月20日撮影)【2月9日 AFP】)

トランプ政権の政治スタイル
注目されたトランプ米大統領の施政方針演説は比較的抑制されたものでした。
“トランプらしさ”を懸念していたアメリカ国内メディアは、そうした抑制された内容に概ね好意的なようです。それは裏返せばイギリスBBCが報じているように、トランプらしさのない“月並みな演説”だったという評価にもなります。

****主要メディア好意的、米紙「最高の演説だった****
トランプ米大統領の施政方針演説は、報道内容などを巡って対立が続く米国の主要メディアからも比較的好意的に受けとめられた。(中略)
 
米紙ワシントン・ポスト(電子版)は「トランプ氏が大統領として行った最高の演説だった。2015年6月に出馬表明して政治の世界に入ってからとしても、ベストかもしれない」と絶賛。

トランプ氏のメディア批判で真っ先に名指しされてきたニューヨーク・タイムズ(電子版)も「暗い内容だった就任演説とは対照的に、前向きだった。演説する姿勢は節度があり、真剣に見えた」と論評した。【3月1日 読売】
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****トランプ大統領演説】「驚くべきことに月並みの演説だった」 英BBC放送****
英BBC放送は1日、トランプ米大統領が上下両院合同会議で行った施政方針演説について、「驚くべきことに月並みな大統領の演説だった」と報じた。
 
同放送は、メキシコ国境の壁建設などの不法移民対策や米国第一など演説のほとんどが、これまでトランプ氏が主張してきたことを改めて述べたと伝え、とりわけ「時代遅れ」と評した。【3月1日】
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トランプ政権のこれまでの政治スタイルについては、昨日ブログで“トランプ大統領は支持者が喜ぶ過激な発言を行い、その後に側近が若干の軌道修正を行い、大統領はそれを黙認する、結果として大統領が意図した方向に少しづつ動いていく・・・といったチームプレーのようにも思えることもあります。”と書きましたが、下記記事も同様の指摘でしょう。

****あまりに型破りな大統領の意外に型通りな外交政策****
とっぴなパフォーマンスや公約とは裏腹に、トランプ米大統領の外交は今のところ常識的

「型通り」という言葉は、トランプ米大統領とはほぼ無縁だ。型破りな選挙運動で大統領の座に就き、従来の大統領の在り方に逆らい続け、気まぐれにメディアを攻撃し、ツイッターで他国を脅したり政敵を罵倒する。

(中略)しかしトランプの奔放な発言の裏で、彼の外交政策は「型通り」に見える。
 
対アジア政策を考えてみようトランプは訪米した安倍晋三首相に、日米同盟を強め、日本政府に協力して地域の安定に努めると約束した。実にまっとうだ。(中略)トランプは大統領選中には日本や韓国は自主防衛すべきだと主張していたのに、それとは懸け離れた「型通り」の姿勢だ。

「一つの中国」の見直しもあり得ると語ったのに、中国の習近平国家主席との電話会談では、台湾を中国の一部と位置付ける原則を支持している。(中略)
 
周りの大人が修正する
欧州の同盟国は米大統領選中からトランプを危惧していた。彼のNATO軽視の発言、ロシア批判を渋る姿勢、イギリスのEU離脱支持と他国も後に続くべきだという主張のせいだ。
 
ペンス副大統領は先頃、ミュンヘンで安全保障会議に出席し、ブリュッセルで欧州指導者と会談。アメリカとNATOの長年にわたる同盟を強調し、ロシアはヨーロッパの脅威だと宣言し、アメリカは欧州の結束に関与すると約束した。
 
ペンスは別の大統領の使者のようだった。例えばオバマのような。実はこれが新しいパターンになった。
トランプがとっぴな外交政策を思い付いても、その後に政府内の「大人」が修正したり、正反対のことを言ったりするというパターンだ。
 
いい例がイスラエルとパレスチナの問題だ。「1国家解決案」は、イスラエルのネタニヤフ首相も含め、和平プロセスに関与する者は誰も支持しない。だがトランプは「当事者が決めればいい」と言い放った。
ヘイリー米国連大使がアメリカは「2国家共存案」に従うと発言したのは、その翌日だ。
 
トランプはフリンの後任にH・R・マクマスター陸軍中将を指名した。マクマスターは対ロシア強硬派で、ムスリム全体とイスラム的信仰、そしてイスラム過激派を慎重に区別する。トランプとは相いれない考えだ。
彼は重責を担う。大統領の型破りな考えと、「型通り」な外交政策の祈り合いをつけなくてはいけない。

さらに、安全保障の顧問と意見が食い違った際、トランプはこれまでおとなしく過激なツイート内容を修正してきた。だが、一転して権力を盾に彼の異様な考えを閣僚らに押し付けようとしたら?。
 
マクマスターの経歴に興味深いものがある。彼はベトナム戦争に関する自著で、当時のジョンソン大統領とマクナマラ国防長官に異議を唱えなかった将軍たちを批判している。
 
シートベルトを締め直そう。もっとひどい乱気流が来るかもしれない。【3月7日号 Newsweek日本版】
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“トランプはこれまでおとなしく過激なツイート内容を修正してきた”ことは、半分は渋々でしょうし、半分は意図的なのかも。

もちろん、それでよしという話にはなりません。
トランプ大統領の言動には、昨日ブログでもとりあげた社会の分断を招く危険性や、メディアの批判を許さない姿勢など、問題は多々あります。

また、上記記事が指摘するように、今後も周囲の修正に従う保証はありません。

【“暴走の修正”は間に合わない“核のボタン”の問題
仮に、大統領の暴走を周囲が修正しながらやっていくというのが政治スタイルだとしても、ひとつ“後日の修正”が間に合わない問題があります。“核のボタン”の問題です。

アメリカ大統領は、核のボタンを押す立場にあり、その判断にはアメリカだけでなく、日本を含めた全世界の未来がかかっています。
  
本当に直情的で、思い込みが強いトランプ大統領が、“核のボタン”という究極の判断を要求される局面で、冷静で合理的な判断を下せるのだろうか?という疑問があります。

もちろん、どんな政治指導者にとっても極めて困難な判断ですが、明らかにそうした局面には向かないのではないかと思われる人物に“核のボタン”を委ねることの不安です。

そうした不安を感じたのは、今月20頃に話題になった“スウェーデンのテロ”発言でした。(まだ10日ほどしかたっていませんが、トランプ氏に関しては連日いろんなことが起きていますので、だいぶ以前の出来事のような気もします。)

****またお騒がせ発言「スウェーデンでテロあった」 テレビ番組見て早とちり****
トランプ米大統領が18日に南部フロリダ州で行った支持者集会で演説した際、北欧のスウェーデンで17日にイスラム教徒の難民によるテロ攻撃があったかのような発言をした。実際には同国で17日にテロ関連の出来事は起きておらず、在米スウェーデン大使館が19日、米国務省に事情を問い合わせるなど、波紋が広がっている。
 
トランプ氏の発言は、欧州諸国の難民・移民受け入れ政策を批判する中で飛び出した。「ドイツで起きていること、スウェーデンで昨晩起きたことを見た場合…、信じられるか、スウェーデンだぞ。(難民を)大勢受け入れて、彼らが考えもしなかったことが起きている」と述べたのに続き、パリやブリュッセルなど、大規模テロがあった都市名を列挙した。
 
これに対し、スウェーデンのビルト元首相はツイッターで「スウェーデン?テロ攻撃?何か(薬物でも)吸っているのか」とツイッターに書き込むなど、続々と疑問の声が上がった。
 
トランプ氏は19日、発言についてツイッターで「FOXニュースの番組の内容を引き合いに出した」と釈明。しかし、17日に放映された同局の番組は、スウェーデンで難民受け入れに伴い銃犯罪などが増加傾向にある、といった一般情勢を紹介したもので、テロへの言及はなかった。【2月20日 産経】
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この“早とちり”に関しては、“またトランプがやらかした・・・”“例によって・・・”というような捉え方で、話題にはなりましたが、それほど深刻なものとは捉えられていません。

ただ、個人的には、上記のような“核のボタン”を考えると、こうした人物に委ねて大丈夫なのか?という不安を強く感じました。
そんな事態はまず起こらないから・・・と言うのなら、安全保障の議論など必要ありませんし、日本も自衛隊強化など必要ありません。

移民・難民の統合に苦慮するスウェーデン社会
スウェーデンにおける難民・移民等の状況については“確かに、スウェーデンの移民増加率はヨーロッパ最大だ。国民に占める外国生まれの人口は最新の統計で18.3%に達した。だがそれも減少傾向にある。15年には16万人が難民申請したが、今年は多くて4万5000人程度と予想されている。難民受け入れが始まって以降、スウェーデンでテロは起こっておらず、テロ関連の犯罪で有罪になっだのもたった5人。トランプの頭の中では、「昨夜」何か起こっていたのか。”【3月7日号 Newsweek日本版】とのことです。

ただ、スウェーデンで難民・移民の問題がスムーズに進んでいるという訳でもありません。
スウェーデンもこの難民・移民の問題では苦慮しています。

****難民認定厳格化のスウェーデン、10代アフガン移民の自殺相次ぐ****
難民認定基準を厳格化したスウェーデンで、アフガニスタン移民の10代若者が相次いで自殺を試み、難民施設の職員や支援ボランティアから懸念の声が上がっている。 
 
スウェーデンではこの2週間に、保護者のいない未成年の難民認定申請者7人が各地の難民支援センターで次々と自殺を試みた。
 
未成年の難民申請者の支援を行っている非営利団体の関係者によると、このうち3人が死亡した。いずれもアフガニスタン出身で、18歳未満だという。この関係者はAFPの取材に、保護者を伴わない未成年の難民申請者たちは「国外退去処分になるのを恐れ、希望を失っている」と述べた。
 
スウェーデン移民庁は昨年12月の報告書でアフガニスタンの治安評価を見直し、国全体としては「暴力行為が増えている」としつつ、一部地域については「危険度は低い」との判断を示した。これにより、スウェーデン当局はアフガニスタン出身者の難民申請を却下し国外退去を命じやすくなった。
 
移民庁の報道官は、18歳未満の難民申請が却下された場合、アフガニスタンに家族や知人など保護者となる人物がいなければ強制送還はしないとAFPに語った。
 
しかし、難民支援ボランティアの教員によれば、保護者のいないアフガニスタン移民の間では難民申請が却下されるのではないかとの不安が膨らむ一方だという。

支援センターでの暮らしの中での孤独や愛情不足も、10代の若者を自殺に追いやるきっかけとなっている恐れがあるという。

この教員は、今後も自殺者が増える可能性があるとして「非常に懸念している。スウェーデン政府に何らかの対処を望む」と述べた。
 
スウェーデンは2015年に国民1人当たりで欧州最多となる16万人の難民を受け入れた。また、昨年には未成年のアフガニスタン難民2100人を受け入れた一方、600人の難民申請を却下している。【2月9日 AFP】
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上述トランプ発言の2日後には、移民が多く住むエリアで暴動が起き、警官が実弾を発射しています。

****トランプ効果? スウェーデンで移民統合政策の功罪を問う動き****
スウェーデンにおける移民の増加と犯罪の関連性を示唆して物議を醸したドナルド・トランプ米大統領の発言をきっかけに、リベラルな価値観を持つ理想国家とも目されるスウェーデンで、移民統合政策の成功点と失敗点について考えようという議論が巻き起こっている。
 
トランプ氏は今月18日に米フロリダ州で開かれた集会で前夜にスウェーデンで襲撃事件があったかのような発言をして当惑を招いたが、その2日後、同国の首都ストックホルム北郊の移民が多く住むリンケビーで暴動が起きた。

「やはりトランプ氏はスウェーデンについて正しかった! ストックホルム郊外で暴動が起きた」と、米保守派コメンテーターで共和党系のアン・コールター氏は21日、勝ち誇ったようにツイッターに投稿した。
 
リンケビーでは20日夜、警察が麻薬取引の容疑者1人を逮捕したのを機に数十人の若者が警察官らと衝突。暴徒は警察官に投石したり、車に放火したり、商店を略奪したりした。ストックホルム警察はAFPに対し、暴徒排除のため警察官1人が実弾を発射したと明らかにした。
 
暴動の映像は瞬く間に世界に拡散。トランプ氏の発言と、同氏が引き合いに出したスウェーデンの犯罪増加と移民を結び付けたFOXニュースの報道に対するスウェーデン当局の反応に泥を塗る格好となった。
 
スウェーデンの日刊紙スベンスカ・ダグブラデットの論説委員トーベ・リブンダル氏は22日、「トランプ氏が言ったことには一片の真実」が確かにあると認め、「それについてどう思うかはさておき、他者から見たわれわれのイメージ、そしてわれわれの自己イメージとが、現実とどこまで一致するのかを考え直す好機だ」と書いた。
 
ではその相反する2つの捉え方とは、それぞれどのようなものだろうか?

■相反する2つのスウェーデン観
トランプ氏を批判する人々は、スウェーデンでは2010年以降テロ攻撃が起きておらず、難民申請者を24万4000人受け入れてからも犯罪率は特に上がっていないと訴えている。
 
スウェーデンは、2014、15年の人口1人当たりの難民申請者受け入れ数が欧州で最も多かったにもかかわらず、依然として世界屈指の安全で豊かな国であることに変わりはない。移民を統合する上で困難がないわけではないが、深刻な人種対立や格差、貧困、暴力などが起きている米国とはまったく状況が異なるというのが反トランプ派の主張だ。
 
一方で、スウェーデンについて異なる見方をする人もいる。外国人は地元住民より犯罪関与率が2倍高く、失業率も高く、麻薬の闇取引に関与した件数も多い上、警察も立ち入らない区域が複数存在し、イラクやシリアのイスラム過激派に加わって戦うために出国した外国人戦闘員も約300人いると指摘している。
 
ステファン・ロベーン首相(社会民主労働党党首)は、犯罪と移民との相関性というトランプ氏の断定については受け入れなかったものの、移民政策で課題に直面していることは認めた。
 
ロベーン首相は20日、報道陣に「われわれには好機もあれば課題もあり、それらをめぐって日々努力しているが、われわれは皆責任を持って、事実を正しく用い、われわれが広めるあらゆる情報を検証していかなければならないとも思う」と述べた。(後略)【2月24日 AFP】
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移民排斥的な極右の台頭に、政府は移民抑制策強化で対応
移民・難民側の問題だけでなく、多くの国で見られるように、移民・難民らに反発し、これを排斥しようという社会的風潮も強まり、社会的な問題ともなっています。

それは今に始まった話ではなく、スウェーデンの推理小説作家ヘニング・マンケルによって90年代書かれたヴァランダー警部シリーズを読むと、難民らを敵視する風潮が強まる殺伐とした社会が背景となっており、登場人物がしばしばスウェーデンは変わってしまったと嘆くシーンが登場します。

当時ですらそういう状況ですから、現在はもっと社会的緊張が高まっていると思われます。
排外的極右政党であるスウェーデン民主党の支持率は2015年末頃は20%弱にまで高まりました。

そうした緊張を反映して、政府も移民抑制策を余儀なくされ、結果的に流入数は減少し、それに伴い与党支持率も回復しています。

スウェーデン政府は移民抑制策の更なる強化を打ち出しています。

****すでに国内にいる失業者優先」、スウェーデン首相が労働移民抑制打ち出す****
スウェーデンの少数左派政権を率いるステファン・ロベーン首相は24日、ここ数年受け入れてきた難民も含め現在国内にいる失業者にもっと雇用を提供するために、労働目的の移住を抑制する方針を打ち出した。
 
ロベーン首相は首都ストックホルムで記者団に対し「教育をほとんど、あるいは全く受けていなくてもできる仕事はまず、すでにわが国の中にいる失業者で補充するようになる」と述べた。
 
スウェーデンは昨年、欧州連合(EU)圏外から来た1万2000人以上に労働許可を与えた。この中には単純労働者約4000人が含まれる。

ロベーン首相は「難民として到着した人々の中に、皿洗いやレストラン従業員といった仕事をできる人々がいるのに、そうした仕事での労働移住を受け入れるのは状況にそぐわない。働ける者は誰でも働けるようにすることを第一に優先にしたい」と述べた。
 
ロベーン首相は自らが率いる社会民主労働党(SAP)の4月の党大会に向け、2018年9月の総選挙への足固めとなる綱領を発表した際にこの発言を行った。さらに同首相は、国内求人数10万件に対し失業者は約30万人おり、従って労働移住は技能労働者が不足している職業のみに限定すべきだと語った。
 
スウェーデン統計局の2016年のデータによれば、同国では15~29歳の約4%が失業しているか、学校に通っていない。
 
一方、SAPは緑の党と少数連立政権を組んでいるが、緑の党はこの綱領に難色を示しており、18年の総選挙前にスウェーデン政府が労働目的の移住を制限する可能性は低いと思われる。
 
SAPは伝統的に労働者階級による広範な支持基盤をもっており、ロベーン首相の発言は、移民排斥を打ち出している極右政党のスウェーデン民主党に有権者が流れるのをけん制する狙いがあるとみられている。【2月25日 AFP】
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「トランプ氏が言ったことには一片の真実が確かにある」ということで、排斥すればいいとは思いませんが、それだけに対応が難しい問題です。
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