孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  トランプ大統領の差別主義的な言動で拡大する宗教・民族間の憎悪 ユダヤ人社会でも「自分たちが次の標的」

2017-02-28 22:46:30 | アメリカ

(約100の墓石が倒されているのが見つかった米フィラデルフィアのユダヤ教徒の墓地 【2月27日 ロイター】)

極右政党が「トランプ万歳」 米国内ではヘイトクライム 「俺の国から出て行け!」】
トランプ米大統領は、イスラム諸国7カ国からの入国を禁止する大統領令やメキシコ・中南米不法移民に対する厳しい措置などで、宗教・民族による社会の分断を深めかねない言動を続けています。

もちろん、表立っては、イスラム教徒を敵視しているのではなくテロリストを排除しようとしているだけだ・・・といったロジックに立ってはいますが、彼が“アメリカ的”と信じるもの以外への嫌悪感・敵意みたいなものが見え隠れします。

少なくとも(トランプ氏の意図とは異なったとしても)、社会の差別的・排外的な動きを助長する方向に強く作用しています。

差別的・排外極右的な人々は、トランプ氏が自分たちと同じ考えを持っている、そうした人物がアメリカ大統領になった・・・として、勢いづいています。

****極右政党が行進「トランプ万歳」 クロアチア、米は反発****
旧ユーゴスラビア・クロアチアの首都ザグレブで、第2次大戦中の親ナチス政権をたたえる極右政党が星条旗を掲げて行進し、米国大使館が27日に抗議声明を出す騒ぎがあった。

極右政党はトランプ米大統領支持を表明するが、米大使館は「ナチス・ドイツと戦い、欧州で死んだ18万6千人の米兵と、数百万の罪のない犠牲者に対する侮辱だ」と反発している。

現地からの報道によると、極右政党「右派原住クロアチア人党」(A―HSP)のメンバー数十人が26日、星条旗やクロアチア国旗、ドイツのネオ・ナチ組織の旗を先頭に、全員黒ずくめの服装でブラスバンドとともにザグレブ中心部の広場を行進した。
 
メンバーは、第2次大戦中のクロアチアでユダヤ系やセルビア系など少数派住民らを大量虐殺した民族主義組織「ウスタシャ」のスローガンを繰り返し、「トランプ万歳」と唱えたという。米大使館は声明で、「米国と憎しみのイデオロギーを結びつけるいかなる試みも批判する」とした。
 
A―HSP党首はこれまで、トランプ大統領の排外主義的な移民政策を称賛してきた。また、隣国セルビアでも親ロシアの極右政党「急進党」が昨年の米大統領選以来、トランプ氏に強い支持を表明している。

1990年代の旧ユーゴスラビア紛争など、激しい民族対立を繰り広げてきた両国の極右勢力が、同じ外国人政治家を称賛するのは極めてめずらしい。【2月28日 朝日】
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「トランプ万歳」・・・・日本でも、右翼的な者が運営する幼稚園で、園児が「安倍首相がんばれ」という選手宣誓をする・・・・といった話が報じられていますが・・・・

アメリカ国内では、ヘイトクライムの増加も懸念されています。

****米国でインド系男性2人に発砲、1人死亡 ヘイトクライムか****
米中西部カンザス州カンザスシティーで22日夜、ヘイトクライム(憎悪犯罪)とみられる発砲事件が発生し、インド系の男性1人が死亡、もう1人が負傷した。
地元紙カンザスシティー・スターによれば、男性らが撃たれたのは同市郊外のバー。1人は米国在住歴10年以上と報じられている。

殺害されたのはスリニバス・クチボトラん(32)。他にアロック・マダサーニさん(32)が負傷した。2人は全地球測位システム(GPS)メーカー、ガーミンに航空システムエンジニアとして勤務していた。
 
同紙によれば、当局が逮捕したアダム・プリントン容疑者(51)は、クチボトラさんらに対して「俺の国から出て行け」と言った後、銃を発砲。同容疑者は22日夜、別のレストランで身柄を取り押さえられたが、その前に中東出身者を2人殺したと主張していたという。
 
米連邦捜査局(FBI)はこの事件がヘイトクライムかどうか捜査を進めている。
 
ドナルド・トランプ米大統領の移民政策がこうした襲撃事件の下地となっているのではないかとの懸念が広がる中、今回の発砲事件はインドのメディアでも大きく報じられている。【2月25日 AFP】
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入国禁止措置は一時停止されていますが、空港ではイスラム・アラビア風の名前だというだけで、厳しい尋問が行わるようです。

****モハメド・アリ氏の息子拘束=アラビア語風の名前理由-米****
米ケンタッキー州のクーリエ・ジャーナル紙は24日、プロボクシングのヘビー級元世界王者、故モハメド・アリ氏の息子モハメド・アリ・ジュニア氏(44)が、アラビア語風の名前を理由にフロリダ州の空港で一時拘束され、尋問を受けたと報じた。

ジュニア氏の友人は「トランプ大統領によるイスラム教徒入国禁止の試みに直接関係しているのは明白だ」と非難している。

ジュニア氏は米国生まれで、米旅券を所持している。同紙によると、今月7日に母親とジャマイカから帰国した際、空港で拘束された。

母親は故アリ氏との写真を見せて解放されたが、ジュニア氏は2時間にわたり「名前の由来は」「イスラム教徒か」などと尋問された。イスラム教徒だと答えるとさらに詰問されたという。友人によると、2人は連邦裁判所への提訴を検討している。 
 
アリ氏は1964年にイスラム教に改宗し、出生時の名前を改名。リングの外でも人種差別と闘った。【2月25日 時事】
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政権内部に異論も】
政権内からも、イスラムへの敵意を助長する大統領の言動への懸念が出されています。

*****新安保担当補佐官、トランプ氏のイスラム教敵視に異議****
トランプ米政権で国家安全保障担当の大統領補佐官に就任したH・R・マクマスター陸軍中将が、イスラム教への敵視は対テロ政策に役立たないとの見解を示していたことが分かった。トランプ大統領や側近のイスラム教敵視に異議を唱えた格好で、政権内でしこりとなる可能性がある。
 
米メディアによれば、マクマスター氏は23日、国家安全保障会議(NSC)のスタッフを前に、テロリストとイスラム教を区別すべきだとし、「『過激なイスラム教テロリズム』との呼び方は、テロ対策の役には立たない」と語った。
 
過激派組織「イスラム国」(IS)などに対し、オバマ前大統領もイスラム教とテロリストは区別すべきだとして「過激派組織」と強調していたが、トランプ氏は選挙中から「なぜ『過激なイスラム教テロリズム』と呼ばないのか」と主張。

25日の演説でも「過激なイスラム教テロリストを米国から追い出す」とイスラム教への敵視をむき出しにしていた。【2月26日 朝日】
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もっとも、政権内の異論ということについては、トランプ大統領は支持者が喜ぶ過激な発言を行い、その後に側近が若干の軌道修正を行い、大統領はそれを黙認する、結果として大統領が意図した方向に少しづつ動いていく・・・といったチームプレーのようにも思えることもあります。

広がる反ユダヤ的な行動
宗教・民族による敵意がむき出しになったとき、標的とされやすいのはイスラム教徒だけでなく、キリスト教社会において歴史的に差別の被害を受けてきたユダヤ人も同様です。

****米フィラデルフィアのユダヤ教徒墓地 約100墓石倒される****
米フィラデルフィアのユダヤ教徒の墓地で、約100の墓石が倒されているのが見つかった。警察が26日、明らかにした。

26日朝に墓地を訪れた人が、親族3人の墓石が倒されていると警察に通報。その後、警察が約100の墓石が倒されていることを発見した。事件は、25日の夜以降に起こったとみられるという。

ヘイト(憎悪)を監視するユダヤ系団体「反中傷連盟(ADL)」は、1万ドルの懸賞金を用意し、情報提供を呼び掛けた。

イスラエルの外務省報道官は、「フィラデルフィアのユダヤ教徒墓地への冒涜(ぼうとく)は、衝撃的で心配の種」とツイッターに投稿し、犯人を捕まえて罰するよう米当局に求めた。

米国では先週、ミズーリ州セントルイスのユダヤ教徒の墓地で約170の墓石が荒らされたばかり。各地のユダヤ人コミュニティーセンターへの爆弾予告も相次いでいるが、すべていたずらと判明している。【2月27日 ロイター】
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****21のユダヤ人施設や学校に爆弾予告、墓石倒しに続く****
米国の少なくとも13州で27日、計21のユダヤ人コミュニティーセンター(JCC)や学校に爆弾を仕掛けたとする脅迫電話があった。いずれもいたずらとみられる。こうした爆弾騒ぎが相次いで発生していることを受け、ユダヤ人差別に関する懸念が高まっている。

北米JCC連盟によると、脅迫電話があったのは、アラバマやフロリダ、ミシガン、ニューヨーク、ノースカロライナ、バージニアなど各州の施設。中には、今年に入り2─3回標的となっている施設もあるという。

「犯人や、心配や懸念をコミュニティーに植え付けようとする人物を特定し確保するために、連邦当局が連携して素早く行動」することを望むと、JCC連盟のデビッド・ポスナー氏は声明で述べた。

また、ヘイト(憎悪)を監視するユダヤ系団体「反中傷連盟(ADL)」のサンフランシスコ支部も、爆弾を仕掛けたとの脅迫電話があり、警察が調査している間、利用者らが一時退避したと声明で述べた。

ユダヤ系団体とトランプ米大統領、イスラエル当局は、爆弾予告やユダヤ教徒の墓地での破壊行為を非難した。

警察によると、フィラデルフィアのユダヤ教徒の墓地で約100の墓石が倒されたほか、1週間前にはミズーリ州セントルイスのユダヤ教徒の墓地で約170の墓石が荒らされている。【2月28日 ロイター】
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“ホワイトハウスのスパイサー報道官は27日、「大統領はこうした憎悪に満ちた行為を最も強い言葉で非難し続ける」と述べましたが、トランプ政権発足後、アメリカではユダヤ系やイスラム教徒など、少数派の間で差別や嫌がらせに対する不安が高まっています。”【2月28日 NHK】

米ユダヤ人社会でも、少数派のユダヤ人への攻撃も許されるという風潮が広がっているとの不安
トランプ大統領は、上述のようなイスラム教徒(の中のテロリスト)に対して厳しい対応をとるだけでなく、パレスチナ問題ではイスラエルを強く支持する姿勢を示しています。

そうした姿勢から、ユダヤ人社会ではトランプ支持者が多いのか・・・というようにも思えますが、実際のところは、トランプ氏の差別的言動の結果、自分たちユダヤ人への敵意が解放されることを恐れる人々の方が多いようです。

もともと、ユダヤ人社会はリベラルな民主党支持が多いということもありますが、それも、共和党保守派の孤立主義的・排外的移民規制が反ユダヤに結びつくことを恐れたユダヤ人社会の選択と見られています。

****分断される米ユダヤ人社会 正統派「対イスラエル関係ようやく正常化」、リベラル層「私たちが次の標的となる懸念****
トランプ大統領の誕生で、米国のユダヤ人社会に分断が広がっている。

世俗的でリベラルな思想を持つ改革派はトランプ氏の排斥的な移民政策などに強く反発、一方で、正統派ユダヤ教徒の多くは、イスラエルとの関係改善などを訴える同氏の政策を支持する。米国最大のユダヤ人社会を誇るニューヨークでも、両者の隔たりは顕著となっている。
 
ニューヨーク・マンハッタン中心部から地下鉄で約30分のブルックリンのクラウンハイツ地区。黒い帽子と黒い洋服を身にまとう正統ユダヤ教徒の居住区として知られ、ユダヤ教の戒律に従い特別な方法で調理された「コッシャー」の料理店などが立ち並ぶ。正統派はイスラエルへの思いが強い傾向があり、トランプ氏支持者が多いという。
 
正統派で同地区に住む医師のメアー・スピナーさん(62)は中東政策の重要性を強調する。「友人もみんなトランプ氏に投票した。一番の理由は親イスラエルだからだ。オバマ政権で冷え込んだ関係がようやく正常化する」。

トランプ氏の娘のイバンカさんの夫で、大統領上級顧問を務めるジャレッド・クシュナー氏が正統派ユダヤ教徒であることも、「トランプ氏の信用につながる」と話す。
 
正統派で経営コンサルタントのクッション・トホスさん(35)は、トランプ氏支持の理由を「米国の伝統的な価値観を取り戻そうとしている。聖書の教えに従えば、人工妊娠中絶は容認できない」と語る。
 
だが、600万人以上と推定される在米ユダヤ人のうち、正統派は1割程度だ。全体からすればトランプ氏支持者も少数派だ。

調査会社ピュー・リサーチ・センターによると、昨年の大統領選では、ユダヤ教徒の71%が民主党のクリントン元国務長官に投票、トランプ氏は24%だった。宗教の戒律に縛られず生活する改革派と呼ばれるユダヤ教徒が大半で、リベラルな思想を持つ民主党支持者が圧倒する。

こうしたリベラル層がとりわけ憂慮するのは、トランプ氏の大統領就任以降、各地で拡大している反ユダヤ感情だ。在米ユダヤコミュニティーへの脅迫が急増し、今月中旬には中西部ミズーリ州のユダヤ人墓地で約200墓の墓石が破壊される事件も起きた。
 
マンハッタンに住むユダヤ人音楽家のサンドラ・カプランさん(60)は「米国での反ユダヤ主義は目新しい話ではない」と前置きしつつ、「トランプ氏の差別主義的な発言で、少数派のユダヤ人への攻撃も許されるという風潮が広がっているのは確かだ。われわれは皆ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)のトラウマがあり、次に何が起こるか不安は消えない」と話す。
 
トランプ氏のおひざ元のニューヨークだが、同氏のユダヤ人に対する姿勢には懐疑的な見方も漂う。アッパーイースト地区に住むユダヤ人のデニス・パジェットさんはトランプ氏と同世代。叔父が父親のフレッド・トランプさん所有のマンションに入居するなど、長年「不動産王」としてのトランプ一家の軌跡を見てきた。
 
パジェットさんは「トランプ氏はきょう発言したことが、明日には変わることが多い。現時点ではユダヤ教徒への理解を示しているが、仮にイバンカさんが離婚したらどうなるのか。『イスラム教徒、メキシコ人と続いて次の標的はわれわれか』という懸念はある」と吐露。トランプ氏の親イスラエルの姿勢にも「最大の理由は、大口献金を行うユダヤ人社会の存在が欠かせないためだ。トランプ氏の人生で重要なのはカネだ」と切り捨てた。【2月27日 産経】
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反イスラム・親イスラエルのトランプ大統領への批判がユダヤ人社会で強いというのは、やや意外な感もありますが、上述のような反ユダヤ的行為を見ると、「トランプ氏の差別主義的な発言で、少数派のユダヤ人への攻撃も許されるという風潮が広がっているのは確かだ。われわれは皆ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)のトラウマがあり、次に何が起こるか不安は消えない」という懸念・不安はもっともなことに思われます。

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