孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フランス  23日の大統領選挙直前のテロ事件 ルペン候補のソフト化路線は信用できるのか?

2017-04-21 20:21:19 | 欧州情勢


(接戦の上位を走る中道系独立候補のマクロン前経済相(上)と極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首(下)
【4月21日 ロイター】)

【“異例の展開”で“異例の接戦”】
極右・ルペン候補の高い支持率もあって、今後の欧州・EU、ひいては世界情勢に大きく影響するフランス大統領選挙(あさって23日)が、二大政党候補がいずれも低迷する“異例の展開”、最終盤にきても主要候補が激しくせりあう“異例の接戦”になっていることは、連日の報道のとおりです。

****4候補、異例の接戦=23日第1回投票―仏大統領選****
フランス大統領選の第1回投票が23日、実施される。中道系独立候補のマクロン前経済相(39)と極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首(48)がややリードし、右派野党・共和党のフィヨン元首相(63)と急進左派・左翼党のメランション元共同党首(65)が僅差で追う展開。主要4候補が最終盤まで「異例の接戦」(仏メディア)を続けている。
 
大統領選には計11候補が出馬した。まだ投票先を決めていない有権者は4分の1程度に上るとされ、結果は予断を許さない。第1回投票ではいずれの候補も過半の票を得られない見込みで、上位2人による決選投票が5月7日に実施される公算が大きい。
 
仏BFMテレビが主要6社の世論調査を独自に総合した結果によると、20日時点でマクロン氏が25%の支持を得て首位に立ち、ルペン氏が22%、フィヨン、メランション両氏がいずれも19%となった。別の調査では各候補の差がさらに狭まっているケースもある。【4月21日 時事】 
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独走していたマリーヌ・ルペン氏を、左右の混乱・不振を背景に中道支持を集める形でマクロン前経済相が追い上げ、しばらくはこの“2強”状態でしたが、終盤にきて両者ともやや失速、右派のフィヨン元首相、急進左派のメランション氏がその差をつめる展開となっています。

ただ、あと2,3日を残すだけという段階で、上記のような支持率ということは、ルペン、マクロン両候補がなんとか逃げ切るのでは・・・とも思われますが、選挙はふたを開けてみないと・・・という話もあります。

市場が懸念する“悪魔のシナリオ”「ボルケーノ(火山)リスク」】
極右ルペン候補が決選投票に進むであろうことは、以前から想定されていましたが、だれが決選投票で相手になるのか・・・が注目されてきました。

父親時代の文字通りの反ユダヤ極右から脱皮したソフトなイメージとともに、反移民・反EUの姿勢をアピールすることで高い支持率を得ているルペン候補ではありますが、やはり排他的“極右”イメージはぬぐい切れず、またEUやユーロからの離脱への不安もありますので、決選投票での勝利は難しい・・・というのが、従前からの一般的見方です。

ただ、そうは言っても、ひょっとするとトランプ現象のようなことがフランスでも起こるかも・・・という懸念(あるいは期待)も、ここ数か月囁かれているところです。

現段階で一番確率が高いのは、“ルペン対マクロン”の決選投票でマクロン氏が圧勝して、39歳の若い大統領誕生・・・というシナリオで、二大政党の基盤をもたないマクロン氏への不安はありますが、そういう結果になれば、ドイツなどの欧州諸国や市場関係者は、「まあこれなら・・・」と安堵するでしょう。

逆に、ドイツや市場関係者が恐れるのは、接戦状態の第1回投票の結果、決選投票でルペン氏とメランション氏が相対するという「悪夢」のシナリオで、市場には「ボルケーノ(火山)リスク」が広がっているとも言われています。

最上位層の所得税率を90%に引き上げることを掲げ、EU離脱にも前向きな考えを示す急進左派メランション氏ですが、市場関係者やエコノミストの間では、「EUやユーロ圏離脱はメランション氏にとって『プランB』だが、ルペン氏には事実上『プランA』だ」とし、やはりルペン氏のリスクが依然最も高いとも見られているようです。【4月21日 ロイター“仏大統領選、市場は極左候補より「ルペンリスク」警戒”より】

もっとも、極右ルペン対極左メランションの決選投票となると、保守層はむしろルペン氏へ親近感を感じるのでは・・・とも思え、“ルペン大統領”誕生の可能性も高まります。

気が気ではないドイツも異例の干渉
本来は他国の選挙へは干渉しないのがルールですが、ひとり矢面に立ち形でEUを牽引してきたドイツは、フランスの選挙動向が気が気ではないようです。

****仏大統領選】「ポピュリスト阻止を」 独で“介入”相次ぐ****
フランス大統領選第1回投票が23日に迫り、ドイツでは極右政党、国民戦線(FN)のルペン党首ら、反欧州連合(EU)を掲げる大衆迎合主義(ポピュリズム)的な候補の当選阻止を訴える要人の発言が目立ってきた。

大統領選は欧州の将来を左右するだけに、上位4候補の混戦が深まる中、募る危機感が異例の“介入”に走らせている。
 
シュタインマイヤー独大統領は14日、仏独メディアで「偉大なフランスの将来を約束する誘惑に耳を貸すな」と仏国民に訴え、「国家主義的ポピュリスト」の勝利に懸念を表明した。念頭にあるのはルペン氏だ。
 
ショイブレ独財務相はさらに険しい。12日のイベントでは急進左派系候補のメランション氏の支持率急上昇を受け、同氏とルペン氏による決選投票となれば、「フランス共和国の理性はなくなる」と言い切った。(中略)

ショイブレ氏は「私ならマクロン氏に投じる」とも踏み込んだ。身内の架空雇用疑惑を抱えるフィヨン氏が民主主義の根幹であるメディアや司法を批判する姿勢に疑問を持つためだ。メルケル首相の態度は不明だが、フィヨン氏だけでなく3月にはマクロン氏とも会談し、地ならしを始めた。
 
独側としてはこれまで相対的に影響力が突出し、批判の矢面になってきたとの思いも強く、仏側が改革などで国力を回復し、再びEU推進の両輪となることを望む。

ただ、政治経験が日浅いマクロン氏にも「フランスの国内問題を解決できるのか確証が持てない」(独専門家)と不安は根強い。【4月18日 産経】
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討論番組の生放送中のテロ 影響は?】
そうした選挙戦最終盤にきて発生したパリ・シャンゼリゼでの発砲テロは、大統領選の全11候補が順にインタビューに応じる討論番組の生放送中に発生、各候補の治安対策に改めて注目が集まっており、今後の選挙戦への影響も指摘されています。

****<パリ警官銃撃>仏大統領選にも波紋 2陣営、運動中止****
パリで20日に起きた警察官の射殺事件は、目前に迫るフランス大統領選に備えて敷かれた厳戒態勢下で起きた。事件を受け、21日の選挙運動の中止を決めた候補者もおり、大統領選に影響を与えている。
 
大統領選は23日に第1回投票が行われる。事件を受けて、大統領選に出馬する極右政党・国民戦線のルペン党首と中道・右派候補の共和党のフィヨン元首相は21日に予定していた選挙運動を中止すると発表した。
 
各候補者が掲げる治安対策などに注目が集まり、投票行動に影響する可能性もある。(後略)【4月21日 毎日】
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“各候補はこれまでも、警官の増員や情報当局の再編・強化といった対策を掲げていた。だが首都パリでも随一の繁華街で起きた事件が、より強い対策、より強い大統領を求める動きにつながる可能性がある。”【4月21日 朝日】

テロ発生で一番支持率が高まるのは、反移民を主張してきたルペン候補でしょう。(その主張が正しいというわけではありませんが、テロへの不安感を高める国民感情にアピールしやすい面があります)

****ルペン氏が最後の大規模集会、他候補を強く非難 仏大統領選****
大統領選挙の第1回投票を週末に控えたフランスで19日、極右政党「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ルペン党首が選挙戦最後の大規模な集会を行い、イスラム過激思想に影響されたテロから目を背けているなどとして他候補を強く非難した。
 
集会は、前日に襲撃を計画した疑いで男2人が逮捕されたマルセイユで開かれた。支持者およそ5000人を前に演説したルペン氏は、「選挙活動開始以降、一貫してイスラム過激思想に触発された恐ろしいテロリズムを非難してきた」と訴え、「対立候補は誰もこの話題を論じようとしない」と批判した。
 
ルペン氏は、他候補らが「この問題についてだんまりを決め込み、もみ消し、ごみを掃いてカーペットの下に隠すかのように遠ざけようとした」と指摘。

さらに、「他候補らが沈黙するのは恥を感じているからだ。脅威を減らすための措置を講じず、このような災いを悪化させる状況すら生み出した政府の一員もしくは指導者だったことの恥だ」と非難した。(後略)【4月20日 AFP】
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ただ、事件が比較的小規模に終わったことで、選挙情勢をひっくり返すようなところまでは至らないのでは・・・とも思われます。

ルペン候補の「父も切り捨てた」ソフト化路線 しかし、党指導部には依然として・・・・
ルペン氏はEU資金の不正流用疑惑の渦中にあって、欧州議員としての免責特権停止を巡る聴聞会が大統領選決選投票の直前に実施される可能性があるとも言われています。

ただ、やはり資金スキャンダルで大きく勢いをそがれたフィヨン前元首相などと違って、アメリカのトランプ大統領同様に、この種のスキャンダルでが支持者にほとんど影響しないという特徴があります。

マリーヌ・ルペン氏がは12011年、父の後継者として2代目党首となって以降、「脱・悪魔化」と呼ばれるイメージ戦略で、“父親をも切り捨てる”形で「異端」政党から大衆政党への脱皮を図るソフト化路線をとってきました。
現在の彼女の高支持率は、そうした路線の成功の証です。

“モヒカン頭でこわもてのネオナチを集会から締め出し、側近に元高級官僚を起用。地方選で候補の半数を女性にした。ユダヤ人団体に「私たちを恐れないで」と訴え、父親を党指導部から追放した。「われわれは右でも左でもない」と訴え、保革二大政党制を打ち破る新勢力だとアピールした。”【4月20日 産経 “国民戦線党首マリーヌ・ルペン 大衆政党へ「父も切り捨てた」”】

しかし、その“体質”というか、彼女を支える党指導部には旧来の“極右”的傾向が残っているとも指摘されています。

****極右ルペンの脱悪魔化は本物か****
<ファシズムとの決別を訴えて支持を拡大してきたルペンの国民戦線だが、党指導部には今も危険な面々が巣くう>

フランスの極右政党・国民戦線の党首で、大統領選候補のマリーヌ・ルペン(48)党首と、同党創設者である父親のジャンマリ。2人は今や言葉も交わさない険悪な仲のはずだった。

だが今年1月、非公開で行われた脱税疑惑をめぐる調停の場に、父娘は一緒に現れた。税務当局は、パリ西郊の高級住宅地モントルトゥーなどに一家が所有する不動産について、資産評価額を過少申告したと主張。これが事実なら、ルペンは巨額の税金の支払いを迫られ、金銭スキャンダルに見舞われるだけでなく、懲役刑を科されることにもなりかねない。

危機に陥ったルペンを擁護したのは、ほかでもないジャンマリだ。2人はモントルトゥーの地所と邸宅を共同で所有。ジャンマリは自身と娘の側の証人として、資産価値は当局の主張よりはるかに低いと述べた。その日、父娘は「礼儀正しく抱擁し合った」という。

国民戦線についてルペンが口にする主張と、激しく食い違う出来事だ。11年に自身が父親から党首の座を引き継いだのを機に、国民戦線は「脱悪魔化」を始めたと、ルペンは好んで語る。世代交代によって、反ユダヤ主義的で親ファシストの政党から生まれ変わった、と。

ところが4月上旬、そのルペンが問題発言をした。第二次大戦中、ナチス占領下のフランスで起きた仏警察によるユダヤ人一斉検挙事件について、「フランスに責任はない」と語ったのだ。つまり、国民戦線は何も変わっていないのではないか?

国民戦線は72年に、ジャンマリと極右ナショナリスト組織「新秩序」のメンバーによって結成された。支持者となったのは旧体制を懐かしむ人々やカトリック原理主義者、白人労働者層やスキンヘッドの人々だ。90年代に入る頃には、極左の反ユダヤ主義者も支持層に加わった。

ジャンマリはホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を否定する発言を繰り返し、人種差別的主張を激化させていったが、当時の支持者にとってはそれも許容範囲内だった。その一方でルペンは側近として、父親の扇動的な言動が支持層の拡大を妨げるさまを目の当たりにしていた。

顧問はヒトラーに心酔
ジャンマリは02年の大統領選第1回投票で予想外の2位につけ、フランス社会に衝撃を与えた。だが決選投票では、得票率82%のジャック・シラクに大差で敗れてしまう。

父親の失敗に学んだルペンは党首就任以来、反ユダヤ主義やネオナチとの決別路線を歩んできた。ユダヤ人差別的な発言をした党関係者を解雇してみせることもあり、15年には問題発言を繰り返した父親の党員資格を停止する大胆な行動に出た。

父親時代の自由市場寄りで小さな政府志向の政策も、10年ほど前からは保護主義的かつポピュリスト的な「経済ナショナリズム」路線に転換させている。イスラム教徒や移民に対しては強硬だが、反ユダヤ的発言はこれまで口にしたことがなく、同性愛者を嫌悪したジャンマリに倣うこともなかった。

こうした努力は実を結んでいるようだ。大統領選では、中道派無所属のエマニュエル・マクロン前経済相と支持率首位を争い、決選投票へ勝ち進むのはほぼ確実とみられている。

しかし4月23日に大統領選第1回投票が迫るなか、国民戦線のもう1つの顔が浮かび上がってきた。党指導部には、ヒトラー崇拝者や極右ナショナリストがひしめき、ルペンが大統領に選ばれた暁には政権幹部となるはずの側近にもそうした面々がいるという。

「ルペンに投票するつもりの有権者は、彼女が『自由の身』でないことを知るべきだ」と語るのは国民戦線の元幹部エメリック・ショプラード。彼は、ジャーナリストのマリーヌ・テュルシとマティアス・デスタルがルペンと国民戦線の内幕を調査した著書『マリーヌは何もかも承知だ』の取材にも応じている。

3月に刊行された同書や最近のメディア報道が注視しているのは、ルペンの古参の顧問フレデリック・シャティヨンだ。

週刊紙カナール・アンシェネの記事によれば、ルペンの大学時代からの友人であるシャティヨンはヒトラーに心酔。アルジェリア戦争記念式典でナチス式の敬礼をしたとして情報当局に目を付けられたことがあり、ヒトラーの誕生日を祝う仮装パーティーも主催している。

シリアのバシャル・アサド大統領周辺と商取引をしていることでも知られる。昨年流出したパナマ文書では、総額31万8000ドル以上のマネーロンダリング(資金洗浄)疑惑に関連する人物として名前が挙がった。

シャティヨンは12年の選挙の際、国民戦線のために不正な資金集めをした容疑で訴追され、党の活動に携わることを禁じられている。だが3月に報じられたところによれば、今もルペンの選挙対策チームの一員として報酬を受け取っているという。

国民戦線の元幹部らによると、シャティヨンはルペンに財務やコミュニケーション、外交政策に関する助言も行っている。シリア問題をめぐって、介入に反対するロシアや中国をルペンが称賛したのは、シャティヨンの見方に従った結果とされる。

シャティヨンは、国民戦線の資金調達の牽引役も担ってきた。とはいえその手法は問題含みで、複数の不正行為の容疑で捜査の対象になっている。

党内の派閥争いの行方は
注目の人物はほかにもいる。国民戦線の外郭団体ジャンヌの財務責任者で、イル・ド・フランス地方議会議員のアクセル・ルストー(彼も不正資金疑惑で起訴された)と、ルペンの最高顧問フィリップ・ペナンクだ。

2人はシャティヨンと同じく、過激な反イスラエル的主張のせいで解散を命じられた極右ナショナリスト団体の出身。ベルギーのファシスト政治家でナチス武装親衛隊員だった故レオン・ドグレルを崇拝し、生前に彼の元を訪れたこともある。

国民戦線内部で力を増す極右主義者の派閥は、比較的穏健派のフロリアン・フィリポ副党首が率いるグループや、ルペンの姪で保守派カトリックのマリオン・マレシャルルペンの一派と勢力争いを繰り広げている。

ショプラードによれば、シャティヨンらが影響力を持つのは「財務を牛耳っているから」。ルペンは彼らをかばい、その言動が党を再び「悪魔化」しているにもかかわらず、手を切ることを拒んでいるという。

ルペンの手腕で国民戦線のイメージは変化してきたかもしれない。だが、実態はどうか。有権者の多くは懐疑的な見方を拭えないと、国民戦線やその支持層の構図に詳しい歴史学者バレリー・イグネは指摘する。

フランス国外のメディアは、グローバリゼーションや主流政党に怒る左派や、就職難にあえぐ若年層が国民戦線支持に転じている点に目を取られがち。だが同党の支持者の大半を占めるのは今も、ジャンマリ時代の主張に共感する人々だ。

有権者の過半数は国民戦線を過激な極右と見なしているためルペンは大統領選で敗北すると、イグネは予測する。「フランス国民は愚かではない」

実際、世論調査によれば、ルペンは決選投票でマクロンに敗れる見込みだ。ただし得票率の差は、父親とシラクが対決したときよりもずっと縮まるだろう。

ルペンに必ず投票すると回答する有権者は、マクロンの場合よりも多い。愚かでないフランス国民の間にも、国民戦線が脱悪魔化したと信じる人はいる。【4月25日号 Newsweek日本語版】
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一方のマクロン候補に関しては、話が長くなるので、もし決選投票進むことになったら、その時点でまた。
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