孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエルに「2国家共存」以外の道があるのか? トランプ大統領の「こだわらない」発言の背景

2017-02-23 23:04:34 | パレスチナ

(米ホワイトハウスの共同会見で15日、握手を交わすトランプ米大統領(右)とイスラエルのネタニヤフ首相【2月16日 朝日】)

【“無抵抗容疑者を射殺して禁錮1年6月”は軽いか?重いか?】
以前ブログでも取り上げたことがある、昨年3月にイスラエル軍兵士が無抵抗のパレスチナ人容疑者を射殺した事件について、21日、軍事裁判所から量刑が言い渡されました。

****無抵抗のパレスチナ人射殺、イスラエル兵に禁錮1年6月****
イスラエルの軍事裁判所は21日、負傷し地面に横たわっていたパレスチナ人容疑者を射殺した兵士に、禁錮1年6月の量刑を言い渡した。人権団体などからはこの量刑を批判する声が上がっている。
 
被告弁護団は上訴を発表。右派閣僚らからも、赦免を求める声が直ちに上がった。一方パレスチナ自治政府と遺族らは、量刑が軽過ぎると非難している。
 
事件は昨年3月、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸南部ヘブロンで発生。射殺の瞬間を人権団体が撮影しており、動画がインターネット上に広まった。
 
イスラエル軍によると、射殺されたアブドル・ファタハ・シャリフ容疑者は、イスラエル人兵士1人を刃物で刺した後、別のパレスチナ人と共に撃たれて負傷し、地面に倒れていた。エロル・アザリア被告(21)は、抵抗する様子を見せていなかったシャリフ容疑者の頭部を撃ち殺害した。
 
アザリア被告は1か月前、シャリフ容疑者を射殺した罪で有罪判決を受けていた。

今回量刑を言い渡した判事は、求刑より減刑された理由について、3人から成る判事団が「被告の家族が受けた被害」と、被告が容疑者を射殺した際、被告が「敵対地域」にいた事実を考慮したと説明した。【2月22日 AFP】
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この事件に関しては動画がネット上で広がったため大きな問題となりましたが、そういう事情がなければ・・・・、、似たようなケースは他にも・・・という感も。

イスラエル国内では被告を擁護する保守派の世論もあって、大きな話題ともなっていました。

“地元メディアなどによると、裁判官は「被告の行為は社会的価値を大きく損失させた」と指摘。一方、被告の家族が負った苦悩などを考慮し、求刑より減刑したと述べた。”【2月21日 時事】

どんな犯罪にも“家族が負った苦悩”はありますが、それとどう違うのか?

「敵対地域」において無抵抗容疑者を射殺して禁錮1年6月・・・これを厳しすぎると感じるのか、軽すぎると感じるのか・・・・そこがパレスチナ問題に対する見方の分かれ目でしょう。

被告側は上訴するとみられています。

親イスラエルのトランプ大統領だが、慎重な発言も】
アメリカ・トランプ大統領が、国連安保理でユダヤ人入植地の違法性を非難する昨年12月の決議採択に際して、これまでの反対ではなく棄権という立場をとったオバマ大統領とは異なり、親イスラエル姿勢を明らかにしていることは周知のところです。

トランプ氏自身の考えもあるでしょうし、オバマ政権との違いをアピールするという狙いもあるでしょうが、長女イバンカ氏の夫でホワイトハウス上級顧問のジャレッド・クシュナー氏(36)の存在も指摘されています。

クシュナー氏は「正統派」に属するユダヤ教徒で、父親がネタニヤフ首相と懇意にしていた関係で、子供の頃からネタニヤフ氏と親交があるとのこと。

クシュナー氏はイスラエルとパレスチナの「2国家共存」に懐疑的との報道もあり、今後の中東政策にどれだけ関与していくのかが注目されています。【2月16日 朝日】

トランプ大統領は、アメリカ大使館をエルサレムへと移転させると主張するなど、従来の対イスラエル・パレスチナ政策を大きく転換させることを公言してきました。

こうしたトランプ大統領の“親イスラエル”姿勢に呼応したように、イスラエルではユダヤ人入植活動が活発化しています。

ただ、イスラエル・ネタニヤフ首相の会談を前にしたインタビューでは、いつになく慎重な姿勢も見せています。(ことの重要性を考えれば、慎重になるのは当然のことですが)

****トランプ大統領、イスラエルの入植地拡大は「和平にとって良いことではない****
ドナルド・トランプ米大統領は10日、ヘブライ語日刊紙イスラエル・ハヨムのインタビューで、パレスチナ自治区でのイスラエルの入植地拡大は「和平にとって良いことではない」との認識を示した。
 
これまでイスラエルの政策を強硬に支持してきたトランプ大統領だが、パレスチナ人が猛反対している在イスラエル米大使館のテルアビブからエルサレムへの移転については「容易に下せる決断ではない」と述べた。
 
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の今月15日の米首都ワシントン訪問を前に行われたインタビューの中で、トランプ大統領はイスラエルとパレスチナの両者に穏当な対応を求めた。
 
ネタニヤフ首相が右派から入植地拡大の加速に加え、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」による解決さえ放棄するよう圧力を掛けられている中、トランプ大統領の発言はほとんど自制を促しているとも言える内容で、米大統領選で掲げていた大胆な公約とはかなり違っている。【2月11日 AFP】
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トランプ大統領は「分別をもってほしい」とイスラエルに注文し、入植地について「イスラエルが土地を取るたびに、(パレスチナ人に)残された土地は減っていく」と懸念も示しています。

一方で、「私はイスラエルの批判はしたくない」と親イスラエルの姿勢を強調し、同様に入植活動自制を求めた2日の声明では、入植地は「和平への障害だとは思わない」とも言い置きしています。

オバマ大統領との立場の違いを示しつつも、ひとまずは態度保留というところでしょうか。

繰り返される「2国家共存」の議論
そうした状況でむかえた15日のネタニヤフ首相との会談は、険悪な関係だったオバマ大統領時代とはうって変わって、蜜月ぶりをアピールするものでした。

内容的には、会談前の共同記者会見でトランプ氏が、イスラエルと将来のパレスチナ国家の「2国家共存」には必ずしもこだわらず、両当事者が交渉で解決すべきだとの考えを示したことが、これまでのアメリカを含めた国際社会のパレスチナ問題に関する基本方針の転換となるのか注目されています。

****2国家共存****
パレスチナ国家を樹立し、イスラエルと平和的に共存する考え方。1993年、当時のクリントン米大統領が関わったオスロ合意でパレスチナの暫定自治が決まった。ブッシュ米政権の03年には、米国や欧州連合(EU)、ロシア、国連がパレスチナ国家の樹立を後押しするロードマップ(行程表)を提案したが、実現の道筋は見えていない。【2月16日 朝日】
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****トランプ氏、2国家共存こだわらず 中東和平で方針転換****
トランプ米大統領は15日、ホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ首相と会談した。会談前の共同記者会見でトランプ氏は、イスラエルと将来のパレスチナ国家の「2国家共存」には必ずしもこだわらず、両当事者が交渉で解決すべきだとの考えを示した。

トランプ氏は和平交渉の仲介に意欲を示しつつ、具体的な方法について「私は2国家共存と1国家を検討している。双方が望む方でいい」と述べた。歴代米政権は、パレスチナ国家樹立による「2国家共存」が唯一の解決策としてきただけに、この方針を転換する発言に、パレスチナ側の反発は必至だ。
 
パレスチナをめぐっては、1993年のオスロ合意で2国家共存をめざす和平交渉への道が開かれたが、イスラエルによる占領地への入植活動などが壁となり、オバマ前政権が仲介した和平交渉も2014年4月に頓挫。ネタニヤフ氏はこの日、2国家共存について明確に賛否を示さなかった。
 
トランプ氏は会見で、国際社会がイスラエルの首都と認めていないエルサレムへの米大使館移転について「見てみたい。細心の注意を払って検討している」と意欲を示した。

その一方、イスラエルがトランプ政権発足後に加速させた入植活動については「少し自制してほしい」と慎重な対応を求めた。ネタニヤフ氏は「入植地の問題は争いの核心ではない」とした。
 
両首脳はほかに、敵対するイランへの圧力を強化することで一致。米政府は1月のイランの弾道ミサイル発射実験を受けて追加経済制裁を発表しており、トランプ氏は「イランの核開発を妨げるためにさらに取り組む」と表明。

ネタニヤフ氏は米国のほか、アラブ諸国などとも連携してイランと対抗する考えを示した。【2月16日 朝日】
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“双方が望む方でいい”というのも、なんだか無責任な感もしますが、“ネタニヤフ氏はこの日、2国家共存について明確に賛否を示さなかった”というところがイスラエルの苦悩を示しています。

イスラエルに敵対的なパレスチナ国家など認めない・・・・というのはイスラエル国内保守派の望むところでしょうし、ネタニヤフ首相自身、選挙運動中に「2国家共存」を否定するような発言をしたこともあります。

しかし、「2国家共存」を否定しては、イスラエルにとって展望が開けないというのも昔からイスラエルの内外で指摘されてきたところです。

ヨルダン川西岸地区をイスラエルに取り込んだ「1国家」建設は、イスラエルの軍事力をすれば容易でしょうが、それでは国内に多数のパレスチナ人を抱え込むことになって、「ユダヤ人国家」というイスラエルの目指すところに反してしまいます。

“(パレスチナ人をユダヤ人と同等に扱うことで)パレスチナ人にイスラエルを乗っ取られる”ことをふせぐために、取り込んだパレスチナ人には選挙権を与えないなどの差別的政策をとれば、それは国際社会から厳しい批判にさらされることになります。

今でも孤立気味(アメリカだけが支援)の国際関係は、一気に悪化します。現実的要請から落ち着いているアラブ諸国との関係もご破算でしょう。

今は「中東唯一の民主主義国家」を自負していますが、差別主義政策をとれば、「世界最悪のアパルトヘイト国家」への道を歩むことにもなります。当然、国内ではテロが頻発するでしょう。

このあたりの話は、2014年5月21日ブログ“イスラエル 和平交渉頓挫で、「2国家共存」でも「単一国家」でもない「他の選択肢」?”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140521でも取り上げたところですので、詳細については省きます。

「2国家共存」はイスラエル側の必要性もあって、でてきた枠組みです。
しかし、イスラエル国内にはパレスチナ国家への反発も根強くあります。

ネタニヤフ首相が「2国家共存」に関してコメントしていないのは、そういう否定も肯定もしづらい事情があっての話でしょう。

トランプ発言は、イスラエル国内事情に配慮したパフォーマンス?】
パレスチナ国家受け入れをイスラエルに迫らないというトランプ大統領の発言は“方針転換”ではなく、ネタニヤフ首相の抱えるイスラエル国内事情に配慮した発言・・・との指摘もあります。

****それでも2国家共存しかあり得ない****
イスラエル・パレスチナの共存案にこだわらないとのトランプ発言で中東和平問題は再びスタート地点に後退か
ダン・シャピロ(前駐イスラエル米大使)

中東和平を目指すのは、決して降りられないジェットコースターに乗るようなものだ。一度乗ったら、山あり谷ありのコースを何度も進んだり戻ったり。時には一周して最初からやり直しになることもある。
そして今、ジェットコースターは再び後戻りしているようだ。しかも何年も前に通り過ぎたはずの地点に・・・・。
 
トランプ米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は先週、ホワイトハウスで会談。共同記者会見で、トランプはイスラエルとパレスチナとの2国家共存案にこだわらないとの考えを表明した。「2国家でもI国家でも、両者が望むほうを私も望む。イスラエルとパレスチナが一番いいと思うもので結構だ」
 
またそこか? 中東和平交渉のプロセスを追い続けてきた者なら、そう聞きたくなる。今更、2国家共存を目標にすべきかとの問いに戻るのか、と。(中略)
 
(オバマ大統領が2国家共存を支持すると明言した2009年)その年の6月、ネタニヤフは演説を行い、パレスチナ国家樹立を認めると初めて発言。「非武装のパレスチナ国家」が「ユダヤ人国家」のイスラエルと共存する未来を語った。

それ以来、アメリカとイスラエルは双方の国益にかなう唯一の解決策として、(失敗続きとはいえ)2国家共存案の実現に努力を重ねてきた。
 
それから8年近くがたつ今、すべてはスタート地点へ戻っているらしい。問題の共同記者会見での発言は、2国家共存案が今や1つの選択肢にすぎなくなったことを示している。

トランプの本音はどこに
なぜ何年も前に中東和平交渉の原則になったはずの案を、今になって疑問視するのか。トランプの言葉は、アメリカの政策転換の兆しなのか。
 
そうではないだろう。トランプの発言は、連立政権内の極右政党「ユダヤの家」からパレスチナ問題で突き上げを受けるネタニヤフに配慮したパフォーマンスだったのではないか。
 
ネタニヤフが首脳会談に向けてイスラエルをたつ前、ユダヤの家のベネット党首は、パレスチナ国家について述べることがあれば「地殻変動が起きる」と警告した。トランプの発言のおかげで、ネタニヤフは連立崩壊の危機を回避できたわけだ。
 
中東和平問題は、お騒がせ続きのトランプが慎重かつ責任感ある態度を示す数少ない分野の1つだった。
政権発足から約1ヵ月問に、トランプは数回にわたって和平実現への意欲を語り、イスラエルがヨルダン川西岸などで加速させる入植活動が、和平交渉の成功をより困難にしていると指摘してきた。
 
さらに、大統領選中に繰り返し主張した在イスラエル米大使館のエルサレム移転方針に関して、先を急がない姿勢を見せている。これらの事実が強く示唆するのは、トランプが中東和平問題に関心を寄せていること、和平実現の可能性を台無しにしかねない行動は避けるべきだと理解していることだ。
 
つまりトランプは中東和平問題に関して、アメリカの政策の主流に属している。イスラエルの入植地建設にも自制を促しており、将来的にネタニヤフとの対立を招く可能性もある。
 
トランプの本音は遠からずはっきりするのではないか。「2国家共存にこだわらない」発言は、短期的にネタニヤフを助けただろうが、どっちつかずの態度を長期的に続けるのは難しい。
 
トランプ自身の言葉が示すように、どの道を取るにしても、当事者双方の合意が必要だ。1国家案を、パレスチナは拒否するに違いない。万が一にも受け入れたら、イスラエルの側か及び腰になるだろう。パレスチナと統合すればアラブ人人目が急増し、ユダヤ人国家という国是と民主主義国としての立場が脅かされるからだ。

1国家案という袋小路
加えて、トランプとネタニヤフは、イスラエルと主要なアラブ諸国の関係改善を方針とすることで合意している。イラン、およびテロ組織ISIS(自称イスラム国)を共通の「敵」とするアラブ諸国とイスラエルが関係を強化できれば、パレスチナとの和平交渉再開に向けて弾みがっくだろう。
 
しかしアメリカが2国家共存案に背を向けたら、すべては水泡に帰す。アラブ諸国にとって2国家共存案は譲れない一線だ。アラブ諸国がもはやパレスチナ問題を最優先課題とせず、イスラエルを戦略的パートナーとして捉えているとしても、パレスチナ国家樹立への支持を取りドげる政治的余裕がアラブ諸国にあると考えるのは問違いだ。
 
最後に、2国家共存にこだわらない路線を進めるなら、トランプとネタニヤフはほかにどんな選択肢があるかを明確にしなければならない。

1国家案を掲げればイスラエルの連立政権の一角は小躍りするだろう。ただ、ネタニヤフがよりよい選択肢はほかにないとの認識の上で約8年にわたり2国家共存案を支持してきた事実は動かせない。
 
1国家に統合し、大勢のパレスチナ人に市民権や投票権を付与すれば、イスラエルではユダヤ人が過半数を占めることが不可能になる。だが、それを恐れてパレスチナ出身者に権利を認めなければ、イスラエルは民主主義国家と見なされなくなる。
 
何もしなければ、問題だらけの現状がこれからも続くだけだ。
 
アメリカとイスラエル双方の国益を現実的に考えれば、2国家共存案に戻ち戻り、イスラエルの安全保障を確保しつつパレスチナ国家の樹立を実現する道を探るしかない。

ネタニヤフはパレスチナが許容可能な提案をし、パレスチナ側はイスラエルをユダヤ人国家として承認した上で、安全保障体制に関してより柔軟になる必要があるだろう。
 
ジェットコースターに乗り続け、2国家共存というゴールにたどり着くべく、私たちは覚悟を決めるべきだ。【2月28日号 Newsweek】
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イスラエルが入植地建設を進めれば進めるほど、イスラエルにとっての唯一の道である「2国家共存」の基盤が蚕食され、実現が難しくなります。
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