孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  トランプ大統領の差別的・「悪性自己陶酔症」的な言動を是認している訳でもない白人層

2017-02-03 23:11:12 | アメリカ


【2月7日号 Newsweek日本語版】

【「軽い気持ち」で「軍を送るかもしれない」】
全世界が注目する中で型破りな言動を続けるアメリカ・トランプ大統領。先月27日に行われたメキシコのペニャニエト大統領との電話協議では、メキシコ側の薬物取締が不十分だとして、メキシコに米軍を派遣する可能性に言及していたそうです。

*****<トランプ大統領>メキシコに軍派遣示唆・・・薬物対応に不満*****
トランプ米大統領がメキシコのペニャニエト大統領との電話協議で、メキシコの薬物取り締まりが不十分であることに不満を示し、問題に対処するためメキシコに米軍を派遣する可能性に言及していたことが分かった。AP通信が報じた。(中略)
 
APが1日伝えた通話内容の記録によると、トランプ氏は「あなたの国には悪いやつらがいる。だが対応は十分でなく、あなたの軍は(犯罪者に)おびえているようだ」と指摘し、「我々はおびえない。問題を解決するために、軍を送るかもしれない」と述べたという。
 
米政府は2日、発言について「犯罪者に対応し、国境をより安全にするための議論の一環」であり、トランプ氏は「軽い気持ち」だったと主張。壁の建設問題で反米世論が高まり、弱腰批判を気にするメキシコ政府は問題発言を否定した。
 
メキシコは1846〜48年に米国と戦った米墨戦争で国土の約2分の1を失っており、トランプ氏の「派兵」発言はメキシコ国民の強い反発を招く可能性がある。
 
メキシコ軍は薬物を米国などに密輸する犯罪グループの取り締まりを図っているが、大きな効果は上がっていない。トランプ氏は大統領選の期間中も「メキシコ人は犯罪や薬物を米国に持ち込む」と強く批判していた。
 
トランプ氏は1月28日のターンブル・オーストラリア首相との電話協議でも、オバマ政権下で合意した難民申請者の米国移送について反発し、協議途中で電話を切ったことが明らかになっている。【2月3日 毎日】
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もちろん「本気」でも困りますが、こういうことを「軽い気持ち」で発言するというのも困ります。ヤクザか“rogue”(ならず者)の恫喝に近いものがあります。

メキシコの麻薬対策が成果をあげていないことは、このブログでも「麻薬戦争」という観点で再三取り上げていますが、アメリカ側の旺盛な消費があって生じている問題でもありますから、メキシコに軍を派遣する前にアメリカ国内でなすべきことが多々あるように思います。

また、メキシコは前政権時代、麻薬組織に対する軍を使った“トランプ好み”の強硬な対策をとった結果、多大な犠牲者・治安の不安定化を生み、国民のそのことへの嫌気が現政権誕生につながっていることにも留意する必要があります。

いずれにしても、一国の指導者が「軽い気持ち」で言うべきことではありません。
正直に言って、個人的にはトランプ大統領が嫌いです。単にポリティカルコレクトネスを無視した差別発言に見られるような問題だけでなく、上記のような粗野で、無神経で、攻撃的な言動、ウソをまき散らすことに躊躇しない感覚を生理的に受け入れられません。

4~5割近いアメリカ国民は大統領令を支持
そうした個人的好き嫌いもあって、連日メディアに溢れる各国首脳や国連の批判的反応に関する記事(もちろん、トランプ大統領に好感を示すイスラエル、ハンガリー、チェコ首脳などや、欧州極右勢力などはありますが)やアメリカ国内の反対運動に関する記事などを目にしていると、アメリカ国内でもトランプ批判が高まっているのでは・・・と感じてしまいますが、必ずしもそういう話でもないようです。

世論調査では大統領令に対するアメリカ国民の反応について、異なる二つの数字が示されています。

****トランプ大統領の入国規制、支持が上回る=調査****
ロイター/イプソスが31日公表した調査で、トランプ大統領が打ち出した難民・移民の入国制限について、より安全になったとの回答は約3割にとどまり、入国制限自体に対する評価は米国民の間でほぼ真っ二つに割れていることが分かった。(中略)

入国を制限する大統領令について「強く支持する」と「ある程度支持する」との回答は計49%で、「強く反対する」と「ある程度反対する」は計41%、「分からない」が10%だった。(中略)

入国制限で「安心感が増した」としたのは31%で、「安心感が低下した」との回答は26%。「米国はテロ対応で良い手本を示した」としたのは38%、「悪い手本になった」は41%だった。【2月1日 ロイター】
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****米大統領令、過半数が反対 別の調査では賛否が逆転****
米ギャラップ社は2日、難民、移民の入国規制やメキシコ国境の壁建設などトランプ米大統領が出した大統領令の賛否を問う世論調査結果をまとめた。いずれも過半数が反対した。(中略)

ギャラップ社調査では、トランプ氏の大統領令のうち「シリア難民の無期限受け入れ停止」は賛成が36%で、反対が58%。共和党支持層では71%が賛成、民主党支持層では賛成10%だった。
 
また、「中東・アフリカ7カ国からの一時入国禁止」には賛成が42%に対し、反対が55%に上った。共和党支持層では、83%が賛成する一方、民主党支持層では賛成が14%と差が顕著になった。

「メキシコ国境への壁建設」ではさらに反対が増え、反対60%に対して賛成は38%にとどまった。共和党支持層で80%の賛成に対し、民主党支持層では賛成8%だった。
 
トランプ氏が「急ぎすぎていると思う」人は47%で、2009年のオバマ前大統領時の22%を大きく上回った。大統領支持率の調査(29〜31日)は43%で、不支持率が52%だった。(後略)【2月3日 朝日】
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ロイター調査はインターネットを使った調査で、両調査とも千人規模の調査のようです。
世論調査に関しては最近とみに信頼性が低下していますが、どちらが実態に近いのか・・・

いずれにしても、4~5割近い人々は大統領令を支持しているようです。大統領選挙の結果を考えれば、当然と言えば当然でしょう。

白人層でも、トランプ氏の言動や選挙運動の醜悪さにはうんざり・・・それでも投票
ただ、もう一歩踏み込んで、そうしたトランプ氏を支持した人々が、移民やイスラム教徒への攻撃や女性蔑視といった彼の差別的な、“rogue”(ならず者)のような言動を認めているのか・・・というと、そうでもないようです。

トランプ氏支持の中核と見なされる白人についてみると、確かに選挙戦初期においてトランプ氏の差別的発言は一定に白人男性に支持されましたが、その後、現在に至るまでその支持の程度は減少している、彼らも決してトランプ氏の言動を是認している訳ではない・・・・ということのようです。

****トランプ支持」の複雑な真実****
・・・・人工妊娠中絶について「助言や情報」を提供する外国のNGO(非政府組織)に対する連邦政府の資金援助は停止。メキシコとの国境に壁の建設を指示。不法移民(の一部)は強制送還。シリアを含む一部中東諸国の国民の入国を一時停止。イスラム教徒とメキシコ人、移民、そして女性を狙い撃ちした格好だ。
 
こうした問題については、自分の主張を国民が支持しているとトランプは考えているらしい。しかし現実は違う。
アメリカ経済に関するトランプの見解共感を示した白人たちも、イスラム教徒や不法移民に関する見解は必ずしも支持していない。
妊娠中絶に対する賛否は別としても、男性たちはトランプの女性蔑視を容認していない。
 
選挙戦中も、トランプがこうした主張を力説すればするほど、反発する国民が増えていった。トランプが大統領選に勝利したのは事実だが、彼が就任直後から実行に移した一連の差別的な政策に対して白紙委任がなされたわけではない。自身の差別的な主張が広く共感を得ているとトランプが考えているとしたら、大きな間違いだ。
 
まず不法移民強制送還の問題を見てみよう。15年6月、トランプは大統領選への出馬表明演説の中で、メキシコからの不法移民をレイプ犯や麻薬の運び屋と呼んで厳しく非難。「メキシコとの国境に大きな壁」を築くと約束し、その後の演説では不法移民の「強制送還部隊」創設まで口にした。
 
こうした議論で彼は右派勢力の支持を得たが、白人有権者の過半数は彼の主張を拒絶していた。保守系のFOXニユースによる同年7月の調査でも、不法移民は送還すべきと答えた白人は34%にすぎず、61%は「合法的に滞在できる仕組み」の創設を求めていた。
 
その後もトランプは移民に対する猛攻撃を続けたが、強制送還に対する白人の支持率は減り続けた。ピユー・リサーチセンターが14年12月から16年10月にかけて実施した世論調査では、不法移民が国内にとどまることを許すべきではないと回答した白人は34%から21%に減少。クィニピアク大学の調査でも、不法移民は出ていくべきだとする白人は14年11月の39%から15年7月には34%、16年H月には28%に減った。
 
壁の建設案への支持も下落した。15年7月に英誌エコノミストと世論調査会社ユーガブが共同で実施した世論調査では、壁に賛成する白人が50%を占めていた。しかし16年8月段階では、反対派が逆転して多くなっていた。
 
FOXニュースの調査でも同じ現象が認められる。15年11月には12ポイントの差で賛成派の白人が反対派を上回ったが、昨年9月には僅差で反対派が上回り、大統領選後の12月には反対派のリードが12ポイントまで広がった。

当初の共感が薄れていった
では、イスラム教徒の扱いについてはどうか。15年12月、トランプが「イスラム教徒のアメリカ入国を全面禁止」と提案した際には、共和党支持者の大半がこれを支持した。

だが多くの白人はもっと冷めていた。演説の数日後にモンマス大学が実施した調査では、全面禁止に賛成した白人は30%のみ。しかも16年6月の調査では24%に、9月の調査では19%に減っていた。
 
そして人種的・宗教的偏見について。
一部の調査ではあえて「人種」や「宗教」という語を封印し、彼自身が差別的かどうかではなく、彼のメッセージに対する評価を聞いた。すると白人たちは明確な判定を下した。
 
クィニピアク大学が昨年8月と9月に行った調査では、「トランプの話し方は偏狭な考えを持つ人々の心に訴える」という見方に白人の55%が賛同(否定は41%)。同年9月のABCニュースとワシントンーポスト紙の共同調査でも、「トランプは異質な集団に対する人々の偏見に訴えて支持を獲得しようとしている」という見方に、白人の55%が賛同した(否定は38%)。
 
トランプはその過激な主張で、「ポリティカル・コレクトネス(政治的止しさ)」に反発する白人層を取り込もうとした。当初、この作戦は当たったが、時とともに彼らの共感は薄れていった。
 
クィニピアク大学は昨年6月の調査で、今のアメリカに多過ぎるのは「政治的正しさ」か、それとも「偏見」かを聞いた。すると白人では、「政治的正しさが多過ぎる」という回答が「偏見が多過ぎる」という回答を20ポイントも上回った。

しかしトランプ勝利の1週間後に実施した調査では、その差が12ポイントにまで縮まっていた。
 
最後は女性蔑視だ。トランプはヒラリー・クリントンの外見が「大統領らしくない」と言い、「ISIS(自称イスラム国)と戦うスタミナ」が足りないと決め付けていた。選挙戦終盤の10月には露骨な女性蔑視も暴露された。05年にトランプが内輪の会話で、自分なら「女性の性器をつかんでも許される」と自慢する映像が流出したのだ。
 
トランプに体を触られたと証言する女性も数人名乗り出た。トランプは、映像中の発言は「ロッカールームの冗談」にすぎないと弁明し、セクハラを訴えた女性たちは「セクハラするほど魅力的ではない」とうそぶいた。
 
世論調査でトランプの女性蔑視が問われたのは選挙戦の後半のみだったので、世論の推移は分からない。
だがトランプの人種差別発言が白人に受けなかったのと同じくらい、彼の性差別主義的な弁明と反論は男性にも受けなかった。

映像流出直後の10月10日の世論調査では男性の59%がトランプを性差別的と見なしていた。3週間後には62%にまで増えた。また男性の59%が、暴露映像のせいでトランプの好感度は下がったと答えていた。
 
要するにトランプの性差別は、男性に性差別への反感を抱かせた。彼の人種差別主義は、白人に人種差別主義に対する反感を抱かせた。移民やイスラム教徒に対する攻撃は、移民やイスラム教徒への同情を増やした。

だが、それでもトランプは選挙に勝った。白人の58%、男性の53%がトランプに投票した。
だから、こんな世論調査は無意昧なのか。あの選挙結果は「女性やマイノリティーはどうでもいい」という男性と白人の本音を反映していたのか。
 
いや、そうではない。
世論調査が差別主義者の勢力を見落としたわけではない。確かにクリントンの支持率を過大評価したが、誤差は2%だ。

トランプ支持層が調査対象から漏れていたとしても、それだけでは選挙戦を通じて、こうした問題に関する有権者の見解がトランプの主張から離れていった理由を説明できない。やはり有権者の態度が変わったのだ。
 
人間は複雑なものだ。トランプの言動や選挙運動の醜悪さにうんざりしつつ、それでも雇用に関する主張などでトランプを支持する人がいた。
 
あの選挙結果は、差別主義への信任を示すものではなかった。

世論で政策を阻止できるか
投票日の出目調査で「ドナルド・トランプの女性に対する態度が気になるか」と問われた有権者の29%は、大して気にならないと答えた。彼らのほぼ90%はトランプに投票した。一方、20%はトランプの女性への態度が「ある程度」不快だと答え、その4分の3がトランプに投票していた。
 
だがトランプ勝利の決め手は、女性への態度が「大いに」嫌いと答えた有権者(全体の50%)の11%がトランプに投票した点にあった。この11%の4分のIでも失っていたら、トランプはフロリダなどの接戦州を落とし、クリントンが一般投票だけでなく選挙人の獲得数でも勝っていただろう。

確かに、トランプの女性蔑視で彼らの投票行動は変わらなかった。だからといって、彼らを切り捨てるのは間違っている。彼らもトランプの行動を肯定しない多数派の一部だ。
 
選挙以来、偏狭な考えに対する懸念は衰える気配がない。昨年11月のトランプ勝利後の調査では、白人の37%が「マイノリティーヘの差別と暴力が前よりも気になる」と答えていた。1月には、その割合が43%に増えた。
 
11月には白人の36%が「アメリカの少数民族に対する偏見」は「非常に深刻な問題」だと答えていた。1月には、その割合が42%まで増えた。
 
世論がこのまま反トランプの方向に動き続け、その力が彼の政策を阻止する保証はない。全ては有権者次第だ。
 
トランプの勝利(得票率は46%にすぎないが)は、多くのアメリカ人がいまだに性別や人種、宗教に基づく差別を大統領の資質に関わるほど悪質と見なしていないことを示している。
 
彼らは差別の容認によって差別が持続するということを理解していないか、気にしていない。それこそが、私たち全員が問題にすべきことだ。
 
トランプが勝ったのは、彼の移民やイスラム教徒への攻撃を白人が支持したからではない。女性蔑視を男性たちが喜んだからでもない。トランプ流の差別や偏見には、白人男性も日々、嫌悪感を募らせている。【2月7日号 Newsweek日本語版】
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上記のような白人がトランプ氏の言動や選挙運動の醜悪さにうんざりしつつもトランプ氏に投票したのは、主には経済政策やオバマケアに対する評価でしょう。

移民についても、すべてを止めろという話ではなく、どの程度の規模で、どういう人が、どういう理由で胚いてくるのか、そのあたりをコントロールすべきだという考えでしょう。

「悪性自己陶酔症」(Malignant narcissism)・・・・ジョンズホプキンス大学医学部のジョン・ガートナー博士が「診断」したトランプの病状。反社会的行動、サディズム、攻撃的言動、パラノイア、誇大妄想がその特徴だそうです。

トランプ政治の今後については、大統領令の違憲訴訟が相次ぎ、弾劾の可能性とかまでも言及されれる状況で、“「今ワシントン政界で最も注目されているのがペンスだ。このままトランプが突き進めば完全に行き詰まる。そうなると、病気を理由に辞めるか、弾劾されるかだ」「その時とって代わるのは、継承順位第1位のペンスだ。就任時はペンスが大統領に昇格する確率は五分五分だったが、今や七分、三分になってきたぞ」(米有力紙のベテラン・ジャーナリスト)”【2月3日 高濱 賛氏「トランプを討つ明智光秀は誰だ!」 JB Press】といった話も。

(そうなれば、個人的には喜ばしいことですが)ただ、現実には難しいでしょう。

今日報じられたウクライナ、イスラエル、イランに対する対応は、思いのほか“まとも”というか抑制的でした。(そのあたりの話はまた明日以降に)

今後トランプ大統領が国民の信頼を得て、分断状態を克服できるかは、白人もうんざりし始めている「悪性自己陶酔症」的な言動をどれだけ抑制して、経済や保険制度改革において現実的な対応ができるかによります。

(個人的な思いとしては、「悪性自己陶酔症」的な言動をフルに発揮してもらって、国民から見限られる・・・という方向を期待しますが、それは、イスラム差別的施策をテロ誘発に利用できると歓迎するイスラム過激派と同じで、よくないことです。)
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