孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

世界に広がる自由貿易協定反対論 

2016-10-22 22:11:54 | 国際情勢

(EU・カナダの経済貿易協定「CETA」への反対運動 【http://www.topnews365.com/ceta-talks-last-ditch-bid-to-save-eu-canada-trade-deal/】)

ベルギー南部ワロン地域議会の反対でとん挫したEUとカナダとの包括的経済・貿易協定(CETA)】
日本でもTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に関する議論が、今国会における焦点のひとつとなっています。

“TPP協定の国会承認を求める議案などを審議している衆議院の特別委員会は、21日地方公聴会を来週26日に開くことで与野党が合意しました。民進党などは、地方公聴会後も審議時間を十分確保するよう求めており、与党側が目指す月内の衆議院通過は難しい情勢です。”【10月22日 NHK】

直接に関係する分野の携わる方々にとっては死活問題ですが、私を含め一般の国民にとっては正直なところ、そんなに関心が高い話でもありません。(自分を含めた生活・経済にいずれ大きく影響することは間違いない重要な問題ではあるのですが・・・)

普段、国際関係のニュースを見ていても、国際経済の問題というのはとっつきにくいと言うか、紛争や弾圧、人権侵害といった話題に比べて、生死に今すぐ直結する訳でもないという意味で地味なところもあって、つい読み飛ばしてしまいます。

ですから、TPPの中身に関して云々する知見も持ち合わせていませんので、今日はこうした問題に関する議論の在り方とか国民の反応といった側面の話です。

このところ欧州で問題になっているのが、TPP同様の包括的貿易協定でもある、EUとカナダとの包括的経済・貿易協定(CETA)です。EU側において非常に難航していることが報じられています。

****カナダとの経済貿易協定「CETA」に反対、EU各地で大規模デモ****
欧州連合(EU)とカナダが締結を目指す包括的経済貿易協定(CETA)をめぐり、フランス、スペイン、ポーランドで15日、協定の調印に反対する大規模な抗議デモが行われた。
 
今月27日に開催されるEU・カナダサミットでCETAの調印にこぎつけるには、18日のEU貿易相会合でEU加盟28か国すべての支持を得る必要がある。
 
しかしCETAの調印はベルギー南部ワロン地域の議会が14日、CETAの批准に反対する動議を可決したことで問題にぶつかった。
 
使用言語ごとにいくつかの地域に分かれているベルギーの複雑な政治制度の下で連邦政府が正式に承認するには、まず7つの地域議会が、協定に署名する権限を連邦政府に与えなければならないことになっている。
 
ポール・マニェット(Paul Magnette)ワロン地域政府首相は地域議会の緊急会議で「私は連邦政府に権限を与えない。ベルギーは10月18日にCETAに署名しない」と述べた。「私は(CETAを)葬り去るつもりはない。再交渉の要求だと思ってほしい」
 
ワロン地域議会での議決は、カナダのジャスティン・トルドー首相の出席の下、今月ブリュッセルで予定されているCETAの調印を頓挫させる恐れがある。
 
CETAは5年にわたる協議を経て2014年に交渉が妥結した。CETAは、デリケートな問題を抱えるいくつかの農産物を除き、EU・カナダ間の関税を事実上全廃する。カナダはEU側の要求を受け入れ、これまで基本的に自由貿易協定の対象外とされてきた自国の公共調達分野をEU各国の企業に開放することに同意した。
 
推進派はCETAによって欧州・カナダ間の財とサービス分野の貿易は20%以上、EUの国内総生産(GDP)も120億ユーロ(約1兆3700億円)増加すると見込んでいる。
 
その一方でCETAは、現在交渉中でCETAよりも異論が多いEU・米国間の自由貿易協定を推し進めるためのテストケースになる恐れがあるとして、さまざまな団体が反対している。【10月16日 AFP】
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****EU理事会、カナダとの貿易協定承認を見送り ベルギーなど不支持****
欧州連合(EU)は18日に開かれた通商担当理事会で、カナダとの包括的経済・貿易協定(CETA)の承認を見送った。ベルギーのフランス語共同体が反対する姿勢を崩しておらず、必要とされる全会一致の支持が得られなかった。

理事会後にドイツのガブリエル経済・エネルギー相は記者団に「ルーマニア、ブルガリア、ベルギーが引き続きためらっているため、正式な合意はできなかった」と説明。数日内に問題は解決する見通しだと続けた。

EUとカナダは27日の調印を目指している。

ルーマニアとブルガリアはそれぞれの国民に対して査証(ビザ)を免除するようカナダに求めている。
ベルギー連邦政府はCETAを支持しているが、地域・言語共同体すべての支持がなければ正式に賛成はできない。(後略)【10月19日 ロイター】
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上記のように、(利害が伴う話ですから、当然のごとく)各地での反対運動がありますが、喫緊の課題としては、ベルギー南部ワロン地域の議会をどう説得するかにかかっていましたが、失敗したようです。

EUとの長年の交渉がベルギーの一地方の反対でとん挫したことへのカナダ側の憤りは、はんぱないものがあります。

****CETA 「協定結ぶ能力なし」とEUを非難 カナダ貿易相****
欧州連合(EU)とカナダが締結を目指す包括的経済貿易協定(CETA)に署名する権限をベルギー連邦政府に与えるよう、ベルギー南部ワロン地域を説得する交渉が21日、失敗に終わった。これにより7年かけて交渉してきたCETAの調印が不可能となり、カナダはEUを激しく非難した。
 
仏語圏のワロン地域政府首相との交渉を終えて出てきたとき、カナダのクリスティア・フリーランド国際貿易相は今にも泣きだしそうだった。
 
フリーランド国際貿易相は「私の、そしてカナダの立場から見て、いまのEUには、カナダのように欧州的な価値観を有し、カナダのように親切で忍耐強い国との間でさえ国際的な協定を結ぶ能力がないのは明らかであるように思えます」とコメントした。
 
ワロン地域の首府ナミュールでの交渉を終えたフリーランド国際貿易相は、何度も言葉を切って心を落ち着けながら「カナダは失望しています。私自身について言えば非常に失望しています」と述べた。

「私は精一杯、懸命に取り組んできましたが、(ワロン地域の説得は)不可能だと思います。わたしたちは帰国すると決めました。とても、とても残念です。本心からそう思う。良いことといえば明日の朝になれば私の3人の子どもたちに会えることくらいです」 
 
カナダのジャスティン・トルドー首相は来週、CETAに調印するためベルギー・ブリュッセルを訪問する予定となっているが、この予定が中止になるのはほぼ確実とみられる。
 
ポール・マニェット・ワロン地域政府首相はAFPに対し、ワロン地域にはもっと時間が必要だが、協定締結の余地はまだ残っていると述べた。
 
ワロン地域政府は今週、CETAに署名する権限をベルギー連邦政府に与えないと決議していた。CETA調印にはEU加盟28か国すべての支持を得る必要があるが、使用言語ごとにいくつかの地域に分かれているベルギーの複雑な政治制度の下で連邦政府が正式に承認するには、まず7つの地域議会が、協定に署名する権限を連邦政府に与えなければならないことになっている。
 
グローバリズムに反対するグループが、CETAよりも異論が多く交渉が行き詰まっているEU・米国間の自由貿易協定TTIPを推し進めるためのテストケースになる恐れがあるとしてCETAに反対しており、複数の都市で両協定に対する抗議を行っている。
 
マニェット地域政府首相は21日、CETAとTTIPに含まれる投資保護スキームが特に物議を醸し、活動家らの怒りを呼んでいると指摘した。
 
このワロン危機はEUに多大な影響を及ぼす可能性があり、欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(EU大統領)は20日、カナダとの協定締結に失敗した場合、他の協定を締結することもできなくなる恐れがあると警鐘を鳴らした。【10月22日 AFP】
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EUの意思決定システムの問題
ベルギーにおける言語地域の対立は極めて根深いものがあり、2010年頃は南部フランス語圏と経済的に優位な北部オランダ語圏の政治対立によって1年半ほど新内閣が決まらない“政治空白”が続き、国家分裂の危機も言及されたほどです。(2011年12月6日ブログ“ベルギー 新政権発足で1年半の政治空白に終止符 今後は、言語圏対立に加え、原発閉鎖問題も”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20111206など)

部外者の目からすれば、そんなにいがみ合うのなら、いっそのこと国を分けてもいいのでは・・・、どうせ外交・防衛等については国家を超えた組織としてのEUに委ねるという方策もあるのだから・・・と思えるほどです。(このEUの存在が、スコットランドやカタルーニャの分離・独立運動を支える要素ともなっています。)

そうした筋金入りの頑なな地域対立を抱えるベルギーの地域議会を説得して、協定に署名する権限を連邦政府に与えるというのが非常に困難なことは部外者にも容易に想像できます。

一地域を説得できなければEU全体・28か国の行動が止まってしまうというのは、非常に“民主的”とも言えますが、現実問題としては著しくEUの行動を制約することにもなります。

日本でも、原発問題や基地問題などで、地方の考えと政府の考えが一致せず、取り組みが一向に進展しないといった問題は多々あります。

かつて革新勢力の顔でもあった美濃部東京都知事は「一人でも反対する限り、橋はつくらない」とも語っていましたが、微妙なバランス感覚が必要とされる問題でもあり、軽々にどうあるべき・・・と言うのも難しい問題ではあります。

日本という単一国家内でも難しい問題を、28か国全体の中でやっていこうというのは・・・・何かと批判が多いEUですが、EUの苦労も大変です。

ただ、地域、国家、EU全体の各段階における意思決定権限の在り方をどう調整するのか・・・という、EUのような共同体にとって根源的な問題の表れとも言えます。利害対立を調整する共同体として機能するためには、そこは避けて通れない問題でもあります。

現行基準の改悪、失業増大・・・「TTIPではなく民主主義を」】
EU・カナダのCETAの先には、“本丸”のEU・アメリカ間の自由貿易協定TTIPが控えています。
CETAがダメなら、ましてやTTIPはもっと難しいものがあります。

****EUはTTIPのために米国の前にひざまずことはしない-欧州委員会委員長****
EUは大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)の締結のために米国の前にひざまずくつもりはない。木曜、欧州委員会のジャン=クロード・ユンカー委員長が述べた。

「交渉は行われているが、我々は米国の前にひざまずことはしない。欧州の成功を支えてきた原理をすべて放棄するようなことはしない」。ベルガ通信が伝えた。

TTIPについてEUは米国と2013年7月から交渉を行っている。米国の計画ではオバマ大統領の任期が切れる今年11月までに交渉を締結することになっていた。

米国は交渉妥結への意欲を捨てていないが、EU側はこの目標は不可能であると公式声明で言っている。 欧州ではエコロジー、法と雇用の分野における標準が侵害されるとの懸念からTTIPに対して多数の抗議が行われている。【10月14日 SPUTNIK】
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EU側の強い姿勢の背景には、自由貿易協定へ反対する世論が存在することがあります。

****ドイツ各地で米EU貿易協定TTIPに抗議、参加者16万人超****
ドイツの主要7都市で17日、米国と欧州連合(EU)が締結を目指している「環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)」への抗議デモが行われ、計16万人以上が参加した。
 
現地のAFP記者らによると首都ベルリンやミュンヘンでは雨天にもかかわらず、TTIP反対組織やNGO、政党、労働組合から多数の人々が「TTIPではなく民主主義を」「共有しよう、分断するな」などと書かれた横断幕やプラカード、旗を掲げてデモ行進した。(中略)

米国とEUは2013年、域内人口8億5000万人で世界最大となる二者間貿易協定を目指したTTIPの締結に向けた交渉を開始した。しかし保健や福祉、環境、労働市場などの主要分野においてEU基準がおろそかにされたり、海外への外注が増え失業増加につながったりするのではといった懸念が欧州側に広がり、交渉は暗礁に乗り上げている。
 
とりわけドイツでTTIPへの疑念が高まっている。世論調査会社イプソスの最近の調査では、回答者の約28%TTIPによって実際に恩恵がもたらされることに疑念を抱いており、半数以上の52%がEU基準が弱体化して劣悪な製品が大量に出回るだろうと答えている。(後略)【9月18日 AFP】
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なお、EUと日本とのEPA(経済連携協定)も同時並行して協議が進められていますが、こちらについては21日、EU首脳会議は年内の政治合意に向けて交渉の加速を支持することなどで一致したようです。【10月22日 NHK】

全体的な流れとしては、“ヨーロッパでは、雇用や地場産業を守るため第三国に市場を開放する自由貿易協定に後ろ向きな世論が高まっていて域内の通商政策を率いるEUは厳しい局面に立たされています。”【10月22日 NHK】とも。

アメリカでも立ち往生するTPP
そのあたりは、アメリカ国内も同様です。日本を含めたTPP。これを推進するオバマ大統領は四面楚歌状態にあります。

****TPP推進はオバマだけ、米の惨状****
・・・・TPPはアジアへの軸足移動の必須条件である。TPPは成長を加速させ、米国の同盟を強化し、中国に強力なシグナルを送ることになるが、最も重要なのは米国流のやり方で21世紀のルールを書くということだ。
もしTPPがなければ、中国が我々とは大きく異なる形のルールを描いていくことになってしまうだろう。
 
だが、TPPはあらゆる方面から攻撃を受けている。サンダースとトランプはTPPに真っ向から反対し、クリントンもライアン下院議長もTPPが基準を満たしていないと述べている。

貿易取り決めで米国が損をしているとのトランプなどの主張は、何もこれについて知らない人のみが主張できる。単純な事実として、米国は世界で最も大きな市場を持っており、それをテコに例外扱いなどを求めている。TPPも例外ではない。アジア諸国が諸々の譲歩をした。交渉の結果、彼らの市場がもっと開放される。
 
サンダースが、世界中の何億もの人々を貧困から救った貿易政策を批判するのは不思議である。トランプが、何を本当に信じているのかは誰も知らない。

最も重要なのはクリントンとライアンだ。彼らは間違っていることを知っている立場を、恥知らずにも採用している。オバマは、アジア・ピボットとともに、米国の国益を追求し続けている。しかし、ポピュリズムと保護主義、孤立主義で満ちているワシントンで、オバマは今一人ぼっちになっている。【10月5日 WEDGE】
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愛国主義を掲げる政治家たちは複雑な背景を無視し、自由貿易に対する国民の不満をあおり立てる
“米国流のやり方で21世紀のルールを書く”というあたりが、各国で反発をまねく要素にもなるのでしょう。
それとともに、自由貿易に支えられたグローバリズムが格差の拡大をもたらしたとも批判されています。

****世界に広がる自由貿易協定反対論の衝撃****
「壁」を築いて自国経済を守るべきという論調が各国で支持を集め、グローバル化の理念が危機に瀕している

イギリスには、異民族の侵入を防ぐために築かれた防塁が数多く存在する。そして今、イギリスは欧州大陸に対して新たな「壁」を築こうとしている。(中略)

彼女(移民制限の方針に傾くメイ首相)だけではない。アメリカでは自由貿易を強力に推進してきたはずの共和党が、移民を追い出し、TPP(環太平洋経済連携協定)から脱退すると明言するドナルド・トランプを大統領候補に選んだ。

長年、欧州の片隅にくすぶっていた経済的自由主義への反発が世界全体に広がっているのだ。 

しかも、これは一時的なトレンドではない。先進国の工場を閉鎖に追い込んできた自由貿易の恩恵を被るのは富裕層ばかり。自由貿易によって貧困から脱した国は少なくないが、そんな指摘は、メキシコや日本、中国が「俺たちの」仕事を奪ったというトランプの訴えで簡単に吹き飛んでしまう。

イギリスでも、ラッド内相が「外国人の雇用が多過ぎる企業」をあぶり出す方針を表明し、EU諸国の怒りを買っている。

米のTPP批准は望み薄
90年代以降、世界中で格差が拡大したのは事実だが、自由貿易に責任はない。エコノミストらは、この10年ほどの低成長やテクノロジーの急速な進化、消費の低迷などグローバル化と無関係の要因が複雑に絡み合った結果だと指摘する。
 
だが愛国主義を掲げる政治家たちは複雑な背景を無視し、自由貿易に対する国民の不満をあおり立てる。「グロー
バル化かこの数十年間で最大の政治的試練に直面しているのは間違いない」と、英フィナンシヤルータイムズの
ショーンードナンは指摘する。(後略)【10月25日号 Newsweek日本版】
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国際経済論の分厚いテキストの第1ページに登場するのが、19世紀初頭のイギリスの経済学者であったデヴィッド・リカードが提唱したシンプル・素朴な「比較生産費説」です。

‟自由貿易において各経済主体が(複数あり得る自身の優位分野の中から)自身の最も優位な分野に特化・集中することで、それぞれの労働生産性が増大され、互いにより高品質の財やサービスと高い利益・収益を享受・獲得できるようなることを説明する概念である”【ウィキペディア】

もちろん、第2ページ以降のいろんな問題・条件で制約をうけるものではありますが、第1ページに登場する「大原則」を否定するものでもないでしょう。

格差拡大への批判は、自由貿易・グローバリズムそのものの問題というより、そこで得られる利益をどのように分配するのかという国内政治の問題でしょう。

“比較優位は、全体で利益は向上するが、一部で仕事をあきらめるなどの犠牲を払う必要がある理論であるとする指摘がある。比較優位の考え方は、固定的に考えたり押しつければ強者の理論になる・・・・”【ウィキペディア】も、やはり国内政治の問題でしょう。

わかりやすい、国民が反応しやすい“敵”を作り出し、攻撃することで社会を扇動するポピュリズムには注意する必要があります。もちろん、現在の社会がそうした不満を作り出してきたことへの真摯な反省と対応が必須であることは言うまでもないことですが。

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国家の役割とは (愚者)
2016-10-23 01:12:41
極端な政治思想に基づく政策には、
必ず揺れ戻しが起こる。

右に振れ過ぎれば左へ戻り、
左に振れ過ぎれば右へ戻る。

民主主義国であろうと、独裁国家であろうと、
いつかの時点で必ず起こる。

国家(経済)の主体が人間である以上、
政治とは常に流動的なものである。

恒常的な最適解など存在しないのである。
原則はいつまでも原則だとは限らない。

極端な政治思想が台頭することの意味は、
流動化の波を起こそうとする動きであり、
人々が変化を求めているということだ。

世界を全てフラットにしたらどうなるか。

国境はない、戦争はない、国連も存在しない。
愛国者もいない、排外主義者もいない。

貿易はない、関税はない、貿易摩擦もない。
グローバリズムに反抗する勢力も存在しない。

ところが、地域性や民俗性などは残る。
物理的な制約は、撤廃できないのである。

生産性の優劣、および労働の利益差が決定的な
格差社会を生み出す。ユートピアにはならず、
各地の内乱や紛争で世界は崩壊するだろう。

格差是正の為には、規制や税制が必要になる。
これが貿易に規制や関税が必要な理由であり、
国家(地域・民俗共同体)の役割である。

ポピュリズムや扇動は良くないことであるが、
世界のフラット化に対抗しようとすることの
意味とは、必ずしも排外主義とは一致しない。

EU内のフラット化は、ギリシャの財政破綻
問題などに代表される地域格差を生んだ。

国家(地域民俗共同体)の存在意義を見直す
時期に来ていることだけは確かである。

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