孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾  中国との関係で厳しい現実 頼みとするアメリカも・・・・

2017-04-29 22:19:48 | 東アジア

(2016年総統選投開票日に蔡氏の勝利を祝福する、独立志向の若者たち=16年1月、台北(NNA撮影)【4月18日 NNA ASIA】しかし、「独立志向」は現在、ここ10年では最低に低下しているそうです)

中国の圧力を止められない国際社会の現実
「一つの中国」という(中国側の主張する)原則を受け入れていない台湾・蔡英文政権に対し、中国が圧力をかけていることは蔡政権発足以来のことで、特に目新しいことでもありませんが、台湾は国際機関の会議などからも締め出されつつあり、また、数少ない外交関係を持つ国も失いつつあります。

国際民間航空機関(ICAO)総会、国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)総会に続いて世界保健機関(WHO)総会からも・・・・

****台湾、強まる中国の圧力 WHO総会の招請状届かず****
中国と台湾が「一つの中国」に属するという原則を受け入れていない台湾の蔡英文(ツァイインウェン)政権に対する中国側の圧力が強まっている。

来月ジュネーブで開かれる世界保健機関(WHO)総会の招請状が届いておらず、参加できない恐れが出ている。さらに中国は、台湾と外交関係のある国への「断交圧力」ともとれる動きもみせている。
 
WHO総会を巡っては、日本など加盟国にはすでに案内が届いている。総会は5月22日に開幕するが、同8日が登録締め切りだ。
 
台湾は1971年、中国の国連加盟に伴い、国連機関から脱退。WHO総会にも参加できずにいたが、対中関係改善を図った馬英九(マーインチウ)政権のもと中国が態度を軟化させ、2009年にオブザーバー参加が認められ、以降は毎年出席していた。
 
だが昨年の総統選で蔡英文政権の発足が決まり、状況は一変した。蔡氏は「一つの中国」原則を受け入れておらず、中国側は態度を硬化。

昨年5月20日の就任直後に開かれたWHO総会の招請状は、締め切り直前まで届くのがずれ込み、ただし書きとして「一つの中国」原則に沿った招請であることが明記された。
 
その後、中国側の圧力は強まり、昨年9月の国際民間航空機関(ICAO)総会には出席できなかった。前回はゲスト参加ができた会合だ。続く11月の国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)の総会は、オブザーバー参加を申し込んだものの断られた。
 
今年のWHO総会参加の見通しについて、台湾外交部は25日の会見で「更に困難で複雑だ」(報道担当者)と述べた。米国など友好国に働きかけ、参加を模索している。

台湾を訪問中の米国側窓口機関「米国在台協会」(AIT)のモリアーティ会長は同日出席した会合で「台湾の(オブザーバーとしての)参加継続を期待する」と表明した。
 
これに対し、中国外務省の耿爽副報道局長は25日の定例会見で、WHO総会での台湾の出席を認めるのかとの質問に対し、「我々は、『一つの中国』原則で関連する問題を処理することを堅持する」と述べた。中国は国連安保理の常任理事国であり、国連関係機関への影響力は大きい。

 ■他国に断交働きかけ
中国は台湾と外交関係を持つ国への働きかけも強めている。
 
台湾と現在、外交関係を結ぶ21カ国は、中米やアフリカなどの比較的小規模な国々だ。西アフリカの島国サントメ・プリンシペは、台湾に巨額の財政支援を求めたが、台湾が応じずにいた結果、昨年12月に断交に至った。同国はすかさず中国と国交を回復した。
 
今年1月には、同じく西アフリカのブルキナファソの閣僚が海外メディアの取材に対し、「中国側から500億ドル(5兆円超)の財政支援を条件に台湾と断交するよう働きかけられたが断った」などと語った。こうした「断交圧力」も続いているとみられる。【4月26日 朝日】
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中国・台湾と当事国だけで決まる外交関係については、中国が国民党政権当時のように“手を緩めなければ”、台湾が現状を維持するのは非常に困難でしょう。

ただ、WHOなどの国際会議については、中国の意向がストレートに反映するものでもありません。本来は・・・。

中国が台湾に厳しい対応で臨むこと自体は、良し悪しは別として、中国の立場からすれば、ある意味当然でしょう。
印象的なのは、そういう中国の対応を誰も止めらない国際社会の“現実”です。

台湾が頼りとするアメリカも、友好国である日本も、この問題で深入りすることはありません。
中国にとって“核心的利益”のなかでも最大のものである台湾問題で、台湾を擁護する形で中国と事を構えることは日米にとっても国益にかなうものではなく、結局“見て見ぬふり”というところでしょうか。

それが、国際社会の力関係であり、“現実”です。

台湾を“取引”カードとして使うトランプ大統領
アメリカ・トランプ大統領は昨年12月には、アメリカは「1つの中国」政策を必ずしも堅持する必要がないと発言、また、就任直前の1月には、「『一つの中国』政策を含め、すべては交渉次第だ」という「一つの中国」原則には縛られないという趣旨を発言、アメリカが外交方針を大きく転換するのか・・・とも思わせました。

しかし、単に認識不足だったのか、初めから台湾を中国との“取引”のカードとして使うつもりだったのか、中国の主張に沿う形で急速に変化したことは周知のところです。(2月9日の習近平主席との電話会談で、中国と台湾は不可分の領土だとする「一つの中国」原則を尊重することを容認することを確認)

台湾側には、“取引”のカードとして使い捨てされることへの強い警戒感があります。

****一つの中国」原則で米中に圧殺される台湾****
<中国の軍事圧力とアメリカの気まぐれの狭間で翻弄され、台湾は単なる二大国間の交渉の駒にされてしまうのか>

・・・・「台湾が一番恐れているのは、アメリカと中国の間で交渉の駒にされてしまうことだ」――台北に滞在中の私に、ルーズベルト通りに面した会議室で台湾の政治家がこう語った。

米大統領の名前が冠された通りの名称は、台湾とアメリカの特別な関係を物語っている。1979年にアメリカは一方的に台湾との外交関係を断ち、「赤い北京政府」を中国の正統政権として認めた。

台湾を自国の一部と見なす「一つの中国」原則を北京とワシントンはそれぞれ異なる意味で掲げることで、中国と台湾が対峙する台湾海峡の平和を維持してきた。

揺さぶりか相思相愛か
しかし、今や最大の問題は台湾に住む大半の人々が自分は台湾人であり、「中国人」だと意識しなくなったという事実だ。アメリカだけでなく日本もまた、玉虫色の「一つの中国」原則を国際的な約束事として守ろうとしている。

だが台湾にとって、日米のそのような姿勢は自らの意思が無視された外国からの圧力としか映らない。外交も所詮、自国の利益が最優先される。いつアメリカに裏切られるか、と台湾の政治家たちは日々危惧してやまない。

トランプは米大統領当選後の昨年12月初旬、北京よりも先に台北と電話で会談した。共産主義国家・中国への揺さぶりなのか、自由主義陣営の一員である台湾と相思相愛をアピールしたのか。その意図を誰も判断できないのがじれったい。

トランプにそのような思想的な戦略がどれほどあるのか、アジアの米同盟国も読み切れない。ひょっとしたら、ビジネスマンが得意とする交渉術だったのかもしれない。台湾をカードに、困難な対中折衝を有利に進めようとしているのではないか、と台湾は心配する。

トランプは国内で低迷する支持率を打開するかのように、中国への圧力を強めている。南シナ海における中国の覇権主義的行動、北朝鮮の核・ミサイル開発問題、為替操作や米中不均衡貿易の是正など、多くの懸案を解決しようとするかのようだ。(中略)

「台湾は中国の核心的利益だ」とする習のスローガンは、何よりも台湾の人々の利益と意思を否定している。トランプに自由主義陣営のリーダーの自覚が少しでもあるならば、台湾を中国に売り渡してはならない。【4月18日 楊海英氏 Newsweek】
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最近では、北朝鮮問題を中国に対処させたい思惑で、さかんに中国・習近平主席を褒め上げているトランプ大統領ですが、この状態に水を差すような台湾問題にかかわりあう気持ちは全くないようです。

****台湾総統と再電話否定=「習氏困らせない」と米大統領****
トランプ米大統領は27日、蔡英文・台湾総統と再び電話会談する可能性について「私は今、習近平・中国国家主席が困難に陥ることはしたくない」と述べ、否定した。ロイター通信とのインタビューで語った。
 
蔡総統は昨年12月に就任前のトランプ氏と異例の電話会談を行ったが、27日にはロイター通信のインタビューでトランプ氏に直接電話することを「排除しない」と述べていた。
 
トランプ氏はこれに関し「私は、習主席と良好な個人的関係を築いた。(北朝鮮問題について)彼は私たちを手助けするため、大事な局面で持てる力の全てを駆使している」と説明。「(蔡総統ではなく)習主席と先に話したい」と強調した。
 
トランプ氏は大統領就任前、中国本土と台湾は不可分とする「一つの中国」を経済問題との取引材料にする可能性を公言していた。しかし中国側の猛反発を受け、習主席との2月の初電話会談で「一つの中国」政策を尊重する考えを表明している。【4月28日 時事】
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まあ、正直と言えば正直ですが、このように公言された台湾側には悲しいものもあるのではないでしょうか。
台湾総統府は28日、蔡英文総統とトランプ米大統領の電話会談の予定は「現時点で」ないと表明しています。

台湾へのアメリカの武器売却
アメリカ側も、あまりに台湾につれなくするのも・・・というところでしょうか、武器売却で多少のバランスをとろうという話もあるようです。

****米、台湾に新たな武器売却を検討・・・・新型戦闘機も****
米国が、台湾への新たな武器売却を検討していることがわかった。
 
今夏にも売却が行われる方向だ。複数の米台関係筋が明らかにした。歴代政権が認めなかった新型戦闘機などが検討対象に入っており、売却額は最高となる可能性がある。(中略)
 
2月には習氏との電話会談で、中国側が神経をとがらす「一つの中国」政策について、維持することを確認するなど柔軟姿勢も見せた。歴代米政権が関係を維持してきた台湾に対しては、武器売却などにより防衛への関与を強めることで、バランスを取る考えとみられる。【4月2日 読売】
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アメリカはこれまで台湾への武器売却は、中国の反対を押し切って続けてきましたが、その内容については、中国への配慮もあって、最新兵器は含まない形となっています。

そうしたことで、現在の台湾側の防衛力は相当に貧弱なものになっているとの指摘もあります。

****台湾の兵器の現状****
台湾が中国に対して軍事的に劣勢に立たされているのは疑いない。しかも、いかに米国が台湾の後ろに控えているとはいえ、米国にとっても中国との関係は重要だから無用な摩擦は避けたい。結局のところ、米国も台湾の防衛力強化について真剣な対応を取ってきたとは言い難い現実がある。
 
米国は、国際的に孤立した台湾に対して、兵器売却について独占的立場を享受してきた。他の国が中国の反発を恐れて台湾への武器売却から手を引いた結果である。ただし、その米国自身も中国との関係を斟酌し、台湾が望む防衛用の兵器をそのまま売却することはしてこなかった。
 
その結果が、現在の台湾の貧弱な防衛力である。主力戦闘機のF-16A/B型については、オバマ前政権に対し、追加要求してきた能力向上型であるF-16C/D型66機の新規購入は認められず、現状保有する143機の改修による能力向上に抑え込まれた。それでも1機あたり25億円強の費用負担であり、2023年まで今後7年をかけて改修を行うことになる。
 
ただし、いくら能力向上を図ろうとも、F-16は所詮、第4世代機であって、中国が開発・配備を進めるJ-20のようなステルス性を備えた第5世代機に対抗するには役不足である。台湾もそうした観点から、近い将来米国に対し、第5世代機であるF-35ステルス戦闘機の購入を求めていくことになろう。
 
もう1つ、台湾が長年にわたって購入を希望してきたディーゼル潜水艦に至っては、2001年に当時のブッシュ大統領が8隻の供与を提示したものの、当の米国にその建造設備も技術もない「空手形」にすぎず、結局、蔡英文政権になって独自に建造する計画を進めることになった。(後略)【4月27日 阿部 純一氏 JB Press】
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もっとも、上記阿部純一氏によれば、ミサイルについては台湾は独自技術を開発しているそうです。

****中国が台湾を甘く見ていると痛い目に遭う理由****
台湾には独自の国防技術がある
このように、戦闘機や潜水艦などの難関はあるものの、蔡英文政権は防衛力の近代化を自主的に行おうとしている。

ここで看過してはならないのは、台湾の自主的な防衛力の近代化は決して机上の空論ではなく、国防技術の裏付けがあることだ。すなわち、台湾は独自の技術で先進的な戦力を構築してきた実績もあるのだ。
 
端的に言えばミサイル戦力であり、「雄風3」超音速巡航対艦ミサイルや、「天弓3」地対空ミサイル、「天剣2」空対空ミサイルは、国際水準で見ても最先端の性能を持つ。

「雄風3」は、300キロメートル以上の長射程をもち海面スレスレを飛翔するシースキミング・タイプで中国海軍艦船にとって深刻な脅威となり、「天弓3」は米軍のAMRAAM(AIM120)と同等の長射程で、敵戦闘機の対空ミサイルの射程範囲外からの攻撃が可能だ。

「天弓3」は、マッハ6まで敵のミサイル速度に対応する能力があり、限定的とはいえ局地防衛用のミサイル防衛にも使える上、コストはパトリオットPAC-3の5分の1と安価である。ちなみに、PAC-3の対応速度はマッハ5プラスといわれているから、「天弓3」の性能は相当な水準にあることが分かる。(後略)【前出 4月27日 阿部 純一氏 JB Press】
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そうは言っても、“もちろん、中国の巨大な軍事力を前に、台湾の自主的な防衛努力がどの程度の効果を見込めるかを考えると、悲観的にならざるをえない”と、阿部氏も論じています。

現実的な台湾世論
こうした台湾と中国の軍事的力関係、中国の国際社会における影響力、中国の台湾経済への影響力等については、台湾自身が一番認識しているところで、独立志向が暴走する状況でもないようです。

****台湾独立」賛成、この10年で最低に―台湾民間調査****
2017年3月28日、参考消息網によると、台湾の世論調査機関「遠見民調中心」が27日発表した中台関係に関する世論調査結果で、「台湾独立」に賛成と答えた人の割合がこの10年で最低になったことが分かった。

調査は今月初め、台湾在住の20歳以上の市民を対象に実施し、1007人から回答を得た「独立賛成」と答えた人の割合は24.9%で、2008年以降で最も低かった。

最高だった2014年「ひまわり学生運動」当時の28.5%からは5.1ポイント低下し、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統就任後の昨年9月からも1.5ポイント低下している。

20〜29歳の若者世代をみると、台湾総統選で蔡氏が当選してから2カ月後の昨年3月の調査では、「独立賛成」が36.8%だった。だが1年後の今回は26%となり、10.8ポイント急落している。

半数近い48.5%が蔡氏の中台関係処理能力を信頼していないと回答し、台湾の利益と中台の平和的発展の両立は不可能だとの認識を示している。信頼していると答えた人は全体の38.3%だった。

台湾独立色の強い蔡氏は昨年5月の総統就任以降、「一つの中国」原則に基づく「92年合意」の受け入れを拒否し、両岸関係は冷え込んでいる。【3月28日 Record China】
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