孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾  難航交渉の末、中国と投資保護協定  馬総統、日本に対し「東シナ海平和イニシアチブ」を提言

2012-08-11 23:08:21 | 東アジア

(3.11の地震・津波被害に、台湾では日本支援チャリティー番組に馬英九総統が出演するなど、大きな支援の輪が広がりました。写真は、台湾の新聞に掲載された、台湾からの支援に感謝する日本側のメッセージ “flickr”より By 早見 @Fang-Jing, Chen http://www.flickr.com/photos/triamber/5683057984/

【「両岸(中台)関係の特殊性」がネックとなり交渉が難航
台湾の国民党・馬英九政権が中国との経済関係強化による台湾経済活性化を図っていることは周知のところですが、このほど中国との間で投資保護協定が調印されました。

****中国・台湾:投資保護協定に調印****
台湾を訪問している中国の対台湾窓口機関、海峡両岸関係協会の陳雲林会長と台湾側の海峡交流基金会の江丙坤(こう・へいこん)理事長が9日、台北市内のホテルで会談し、投資保護協定に調印した。
協定は、台湾のビジネスマンが中国に投資した財産を保護するのが主な目的で、中台間の紛争処理の方法などを定めた。

台湾から中国への投資総額は01年の27億8400万ドル(約2180億円)から昨年は143億7700万ドル(約1兆1260億円)に拡大。中国が最大の投資先となっており、協定締結を急いでいた。
一方、中国から台湾への投資は09年6月末に制限付きで解禁されたが、昨年末までの2年半で投資総額は1億7600万ドル(約138億円)しかない。締結を機に台湾側は、中国からの投資拡大も図りたい考えだ。【8月9日 毎日】
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今回の投資保護協定も、一連の中国との関係強化の流れのひとつということで、あまり気にもとめなかったのですが、“台湾側の主権の問題など「両岸(中台)関係の特殊性」(中国側幹部)がネックとなり交渉が難航したため、2年越しの締結実現となった”【8月9日 時事】ものです。

そもそも、保護協定が必要とされるという背景には、それだけ多くのトラブルが発生しているという現実があります。
台湾側からすると、中国進出企業において用地・工場が地方政府に収用されることが多く、“台湾企業が用地買収などで中国当局とトラブルになった場合、これまでは泣き寝入りするケースが多かったが、中台当局を通じて解決を図れるようにした”【同上】というものです。

また、企業関係者が身柄を拘束されるという事件も頻発しており、単に経済問題ではなく、「人権」もかかわる問題でもあります。それだけに交渉も難航したようです。

なお、中国と台湾という特殊な関係の両国の協議については、“互いを国として認めていない中国と台湾の間には正式な政府間協議がないため、経済関係の緊密化や人の往来の増加によって生じる問題については民間窓口機関の接触という体裁で話し合っている。そのために台湾は1991年に海峡交流基金会を、中国は92年に海峡両岸関係協会を設立。2008年以降は両機関トップが頻繁に会談を重ね、今回を含めて計18の協定を結んだ。”【8月10日 朝日】とのことです。

合意内容は、台湾側にとっては不十分な点もあり、最大野党・民進党は「台湾人民の期待に全く応えていない。台湾を中国の国内とする枠組みになってしまった」【同上】などと強く批判しているそうです。

****中台、投資協定ようやく署名 企業保護巡り際立つ相違****
中国と台湾の交渉窓口機関のトップ会談が9日、台北であり、投資保護協定に署名した。中台が互いに進出企業を公正に扱う目的の協定だが、2年近い交渉を経ても台湾の要求は十分に反映されず、むしろ「主権」と「人権」をめぐる立場の違いが表面化した。

会談には海峡両岸関係協会(中国)・陳雲林会長と海峡交流基金会(台湾)・江丙坤理事長が臨んだ。会談で江理事長は「協定の執行面で改善しなくてはならない」と含みを残した。問題の一つは、投資をめぐる紛争の解決方法だ。

協定を台湾側が求めた背景には、中国に進出した台湾企業が、地方政府に工場を収用されたり操業を停止させられたりする事例が頻発していた事情がある。
通常の二国間投資保護協定では、こうした問題の解決を国際的な仲裁機関に委ねているが、中国は、台湾に主権が及ぶという立場のため容認できない。協定では、中台双方で紛争対応の仕組みを作ることを定めた。実質的には現状とさほど変わらない。

交渉を長引かせたもう一つの争点は、中国での台湾企業人の安全確保だった。様々な理由で身柄を拘束される事件が後を絶たず、台湾側が把握しているだけで昨年、91件あった。

中国の「盲目の人権活動家」陳光誠氏が自宅軟禁を逃れ、5月に米国に出国した事件も影を落とした。台湾の対中政策責任者、頼幸媛・大陸委員会主任委員が、事件を受け「中台会談で人権を重視する立場を伝えたい」と述べたことに中国側が非公式ルートで猛烈に抗議、交渉が中断しそうになった。

さらに6月、中国江西省で台湾の企業家が「国家安全にかかわる」として捕まる事件が起きた。中国政府が「邪教」として禁じる気功集団「法輪功」のメンバーだったからだ。今も釈放されていない。

台湾側は「身柄拘束時は例外なく24時間以内に家族か企業に通知すること」を協定に盛り込むよう要求したが、結局、協定本文と別の合意文書を作成。すでにある司法機関同士の連絡制度を使って通報するなどの努力規定で落ち着いた。台湾企業からは早くも不安の声が出ている。

台湾の最大野党・民進党は9日、協定について「台湾人民の期待に全く応えていない。台湾を中国の国内とする枠組みになってしまった」などと強く批判した。【8月10日 朝日】
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国家主権と領土の面では妥協できないが、資源は分かち合える
一方、馬英九総統は、日本との関係では「東シナ海平和イニシアチブ」を提言しています。
日台間には沖縄県・尖閣諸島を巡る問題もありますが、「争いの棚上げ」して「資源の共同開発」「行動規範の策定」を行おうという提言のようです。

****馬総統が「東シナ海平和イニシアチブ」提言、日華平和条約60年で 台湾****
台湾の馬英九総統は5日、台北市内で開かれた「日華平和条約発効60周年」関連式典で、「東シナ海平和イニシアチブ」を提言した。「資源の共同開発」「行動規範の策定」などを呼びかけており、積極的な提言で東シナ海における台湾の存在感を示す狙いとみられる。

馬総統は沖縄県・尖閣諸島での台湾の主権を改めて主張し「平和互恵、共同開発」を強調。提言では、「対立行動の自制」や「争いの棚上げ」「対話の継続」「国際法の順守と武力行使の否定」を指摘したほか、関係国・地域での共通認識を求めて「東シナ海行動規範」を定めることや、「資源共同開発のためのシステム構築」などを呼びかけた。

馬総統は、日本と「中華民国(台湾)」が1952年に締結した日華平和条約の調印会場だった台北市内の台北賓館で、6日から開かれる関連史料特別展の開幕式の座談会に出席した際、提言を打ち出した。
日本と中華民国との戦争状態に終止符を打った日華平和条約は、72年の日中共同声明で失効した。【8月5日 MSN産経】
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馬英九総統の「東シナ海平和イニシアチブ」に対し、日本の玄葉外相が尖閣諸島に対する日本の主権を主張しつつも、台日関係への重視と、東シナ海に関する議題の上で協力する可能性を示したことに、台湾外交部は“我が国が平和かつ理性的な方式で争いに対処しようとする呼びかけに応えるもので、「東シナ海平和イニシアチブ」の主張とある程度合致するものだ”と評価しているとのことです。

****外交部、「東シナ海平和イニシアチブ」への日本側のコメントを重視****
馬英九総統は5日、「中華民国と日本との間の平和条約発効60周年記念展示会及びシンポジウム」での挨拶の中で「東シナ海平和イニシアチブ」を提唱、関係各方面に対して、自制、争いの棚上げ、平和的手段での争議の処理、東シナ海の平和確保を呼びかけた。これに対して、日本の玄葉光一郎外相は7日、定例記者会見でコメント。外交部は7日、このコメントを重視するとしている。

玄葉氏は、釣魚台列島(日本名:尖閣諸島)に対する日本の立場を繰り返し、「台湾の(釣魚台列島に対する)独自の主張は受け入れられない」とする一方、現在の台湾と日本の良好な関係に釣魚台列島をめぐる事態が影響を及ぼさないよう望むと述べ、東シナ海の平和と安定のため、具体的な協力を進めていくことは重要だとの認識を示した。そして、「協力形態は具体的にはなっていないが、考えられないわけではない」と述べた。

外交部は、「釣魚台列島の主権は中華民国にあり、同列島は中華民国固有の領土である」との立場を重ねて表明した上で、国家主権と領土の面では妥協できないが、資源は分かち合えるとの考えを示し、玄葉外相による釣魚台列島は日本が所有するとの言い方は受け入れられないが、中華民国政府は各国が争いを棚上げするよう常に主張していると説明した。

外交部は、玄葉外相が公の場で台日関係への重視と、東シナ海に関する議題の上で協力する可能性を示した談話は、我が国が平和かつ理性的な方式で釣魚台列島をめぐる争いに対処しようとする呼びかけに応えるもので、「東シナ海平和イニシアチブ」の主張とある程度合致するものだと評価した。

楊進添外交部長は7日、「東シナ海平和イニシアチブ」に対する玄葉氏の発言は、二者間もしくは多角的な協力が、「ウィンウィン」(二者が勝者に)さらには「ウィンウィンウィン」(みなが勝者に)を生み出す可能性を示したものだと評価した。

外交部は、「東シナ海平和イニシアチブ」に基づいて、これからも日本側と意思疎通を図っていくとしている。
また、中華民国の海洋調査船「海研二号」が5日、海洋調査研究を行っていた際、日本側に退去させられたことについて、外交部は7日、国立海洋大学の「海研二号」は中華民国の経済水域で海洋調査研究を行っていたが、その地点は日本の経済水域と重なる場所だったと説明した。そして、中華民国と日本の主張する経済水域が重なっていることについて、外交部は日本側と更なる対話と意思疎通を進めていく考えを示した。【8月12日 Taiwan Today】
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最も好きな国は日本41%、中国、米国は各8%
中国に顔が向きがちな馬英九総統はともかく、台湾全体では日本への親近感が強いことはかねてより指摘されています。

****台湾で4人中3人が「日本に親しみ」 交流協会調査****
日本の対台湾窓口機関、交流協会台北事務所が21日に発表した世論調査結果で、台湾人の4人に3人が日本に親近感を持っていることがわかった。調査期間は今年1月30日から2月22日、回答者は台湾各地の1009人。

日本に「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」と答えた人は合わせて75%。2009年末の前回調査の62%から増えた。特に20~30歳代で親近感が強い。日本のイメージでは「きまりを守る国」「経済力、技術力の高い国」「自然の美しい国」が多く挙げられた。

最も好きな国に日本を挙げた人は41%。前回調査の52%から減ったものの、中国、米国の各8%を大きく引き離した。ただ「今後親しくするべき国」は中国が37%で最も多く日本の29%を上回り、対中経済関係の深まりを反映した現実的な判断がうかがわれる。

東日本大震災の影響も尋ねた。日本産の食品について65%は「震災前から特に変化はない」。一方で日本への観光旅行は51%が「しばらく控えている」と答え、このうち半数が放射能の影響への心配を理由にしている。【6月22日 朝日】
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こうした“親近感”“信頼”は、日本にとってかけがえのない財産です。
もちろん台湾にも先鋭な民族主義的主張は存在しますが、国民全体の“親近感”“信頼”を基盤に、“国家主権と領土の面では妥協できないが、資源は分かち合える”との姿勢で、妥協を恐れず「ウィンウィン」な関係構築ができるように、日台双方の努力を望みます。

逆に言えば、これほどの“親近感”を有する台湾との間で成果が出せないようなら、韓国との間の竹島問題、ロシアとの北方領土問題の進展も全く期待できません。台湾との間で成果が出せれば、他の問題のアプローチにとっても参考になるでしょう。

【「軍紀違反」から「軍全体のミス」へ
なお、台湾海軍の艦隊が演習海域を離脱し、沖縄県・与那国島に接近した問題については、当初「軍紀違反」としての厳しい処分が出されましたが、その後「軍全体のミス」として再検討されるという不透明な展開となっています。

****与那国に接近「全体のミス」 処分、台湾海軍トップへ飛び火****
全面見直し、異例の決定
台湾海軍の艦隊が演習海域を離脱し、沖縄県・与那国島に接近した問題で、艦隊指揮官が事前に演習海域からの離脱を電文で演習監督部門に報告していたことが確認され、台湾国防部(国防省に相当)は10日までに、軍全体のミスを指摘し、関係者の処分を全面的に見直すとの異例の決定を行った。海軍トップの董翔龍司令長官(大将)も、自身を処分対象とするよう要請。国防部は同司令長官について権限者の馬英九総統の決裁を仰ぐとしている。

国防部が9日、発表した新たな調査報告書では、参謀本部、海軍司令部、艦隊指揮部から演習艦隊の司令だった張鳳強少将にいたるまで、関係した全ての部門においてミスがあったとし、当初の調査報告を撤回した。軍全体に及ぶ大量処分の可能性も浮上してきたといえる。

報告によると、張少将が指揮したキッド級駆逐艦「蘇澳」など3隻は、7月26日未明、演習海域を離脱して日本の防空識別圏(ADIZ)の公海に進入したが、直前の25日午後9時台に、2度にわたって演習監督部門に離脱の針路を電文で報告していた。同部門は電文を「見落としていた」という。

張少将は随伴艦の制止を無視したとされるが、証言などには食い違いもあり、すでに懲戒処分を受けた張少将ら将校5人についても見直しの対象となった。

当初、張少将には軍の指揮・統率に直接関わる「抗命罪」の適用も検討され、「日本にこびた厳しい処分」とする軍関係者の批判が噴出した。
国防部では「対日配慮ではなく軍紀違反」と釈明に追われたが「当初の決定は、『東シナ海平和イニシアチブ』を提言した馬総統のメンツを潰した責任を、現場に押しつけようとした」との指摘もあり、馬総統は「規定に沿った処分を望む」とコメントしていた。【8月11日 産経】
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