孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベネズエラ  大規模反政府デモで広がる混乱 強引な延命で国際的孤立を深めるマドゥロ政権

2017-04-20 22:29:34 | ラテンアメリカ

(ベネズエラ・カラカスで行われたマドゥロ大統領に抗議する大規模な行進(2017年4月19日撮影)【4月20日 AFP】)

19日デモで2名、4月では7名が犠牲
南米ベネズエラ・マドゥロ政権の無理な価格統制やバラマキ、そして主要輸出品である原油の価格下落による経済破綻(物価上昇、食料・日用品・医薬品の品不足、通貨下落、財政逼迫)、また、そうした状況への国民不満を押さえつけての強権的な居座りについては、これまでもしばしば取り上げてきたところです。

2016年12月16日“ベネズエラ 崖っぷちのマドゥロ大統領 紙幣切り替えで経済混乱”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20161216
2016年9月22日“ベネズエラ  大統領罷免の国民投票を越年し体制延命を画策 マドゥロ政権から距離を置く国際社会”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160922など

民主主義本来のルールからすれば、とっくに政権交代が起きているべき状況ですが、マドゥロ大統領は国民の罷免要求も強引な手法で封じ込めています。

出口をふさがれた国民の不満は大規模反政府デモという形で噴き出していますが、マドゥロ大統領は故チャベス前大統領が1999年に開始した左派の「ボリバル革命」を擁護するよう軍隊に命令を下してデモへの対抗姿勢を明らかにしています。

19日のデモでは、投石するデモ隊に機動隊が催涙弾で応酬するなどの混乱の中で、何者かの発砲により2名が死亡。今月に入ってからでは7名の犠牲者を出す混乱状態に至っています。

****<ベネズエラ>複数の都市で大規模反政府デモ 数万人が参加****
AP通信は南米ベネズエラの複数の都市で19日、数万人が参加する大規模な反政府デモが起きたと報じた。

治安部隊が催涙ガスで鎮圧したが、騒乱に巻き込まれた市民2人が銃撃され死亡した。デモ参加者の死者は今月に入って7人となり、マドゥロ政権の強権化に拍車が掛かっている。
 
政権寄りの最高裁が3月末、野党が過半数を占める議会の機能を停止すると警告したのを契機に、国内では政権の独裁に抗議するデモが散発。19日は独立記念日の祝日で、野党がデモへの参加を国民に呼びかけていた。
 
一方、政府は首都カラカス市街地の地下鉄駅を封鎖し、デモ隊の結集を妨げた。デモ隊は移動した先の高速道路などで治安部隊と衝突し、催涙弾と石が飛び交う事態に発展。死亡した市民2人に誰が発砲したかは明らかになっていない。
 
ベネズエラのメディアによると、マドゥロ大統領はカラカスでの支持者集会で演説し、反政府デモを「テロ行為」と糾弾した。
 
産油国のベネズエラでは近年、原油価格の暴落に伴い外貨収入が激減した影響で、従来輸入に頼ってきた医薬品や食品の不足が深刻化。マドゥロ氏の支持率は20%まで下落し、早期退陣を求める世論が高まっている。
 
延命を図る政権は、与党の敗色が濃厚だった昨年12月の州知事・議会選を延期したうえ、今月7日には次期大統領選の野党有力候補であるカプリレス・ミランダ州知事の立候補資格も剥奪。

こうした強引な手法に周辺国政府は懸念を表明しているが、マドゥロ氏は内政干渉だと突っぱねて態度を硬化させており、混乱が収拾する見通しは立っていない。【4月20日 毎日】
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発砲の状況については、以下のようにも報じられており、治安部隊というより、政府支持者の関与が推測されます。

“目撃者によると、カラカスでは武装した政府支持者が反政府集会に近づき発砲した際、サッカーをしに自宅を出た男子学生(18)が頭部に銃撃を受けた。治安当局者3人はこの学生が搬送先のクリニックで死亡したと述べた。またサン・クリストバルでも、親族や目撃者によると、大学生の女性が射殺された。”【4月20日 ロイター】

また、人権団体によれば、19日のデモで400人以上が拘束されたとのことです。

議会からの立法権剥奪 野党指導者の政治活動禁止
政権への国民不満は今に始まった話ではなく、すでに2015年の総選挙では野党連合が与党に圧勝し、マドゥロ大統領は議会は対立を続けてきました。

これに対し、上記記事にもあるように、マドゥロ政権に近い最高裁は3月末、立法権を今後は最高裁が行使するとの判断を示しました。

さすがに、このような民主主義ルールを無視した“無法”は断念を余儀なくされています。

****<ベネズエラ>大統領、進む強権化 「立法権剥奪」は断念****
南米ベネズエラのマドゥロ政権が強権色を強めている。

野党が過半数を占める議会の機能を停止させ、立法権を最高裁に移そうとした動きは周辺国の批判を浴びて断念した。

だが国内には専制を防ぐ手段がほとんど残されておらず、マドゥロ大統領の任期が切れる2019年1月まで現状が続くことを、周辺国は懸念している。
 
「マドゥロはクーデターを謀った。これはまさに独裁だ」。ロイター通信によると、議会のボルヘス議長は3月30日、記者会見で大統領を糾弾すると、その場で最高裁の決定書のコピーを破り捨てた。
最高裁はその前日、議会が反政権的な態度を改めない場合、立法権を剥奪するとしていた。

野党議員の呼びかけに応じて31日には首都カラカスなど数都市で反政府デモが実施されたが、いずれも小規模で治安当局に即座に抑え込まれた。【4月2日 毎日】
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また、野党指導者のエンリケ・カプリレス氏の政治活動を15年間禁止するとの措置も。

****野党指導者の政治活動禁止命令か ベネズエラ****
南米ベネズエラで野党指導者のエンリケ・カプリレス氏は7日、政府から15年間の政治活動を禁止するよう命じられたと発表した。

カプリレス氏は過去2回、左派政権への対抗を訴え大統領選に出馬。2013年の選挙ではマドゥロ大統領に僅差で敗れた。経済が破綻状態にあるベネズエラは政府が野党勢力の締め付けを強めている。
 
カプリレス氏が自身のツイッターで明らかにした。ベネズエラ政府は公式見解を発表していないが、事実であれば18年に予定される大統領選への出馬を防ぐ目的とみられる。
 
マドゥロ大統領は、影響下にある最高裁を通じて野党が多数派を占める議会の機能を制限するなど、独裁色を強めている。カプリレス氏は反政府デモを主催するなど、野党勢力の象徴となっていた。【4月9日 日経】
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今回19日の大規模反政府デモは、こうしたマドゥロ政権な強引な弾圧・居座りへの国民批判として実施されたものです。

中南米でも孤立 今後のカギとなる中国の支援
マドゥロ政権の強引な延命には、中南米の周辺国からも強い批判が出ており、ベネズエラは孤立を深めています。

****米州機構、緊急会合でベネズエラに国会権限の完全回復求める****
米国や中南米諸国が加盟する米州機構(OAS)は3日、緊急会合を開いて国会の権限を一時的に停止したベネズエラへの対応を協議し、国会に完全な権限を回復することなどを求める決議を採択した。

民主統治の完全な回復に向け、マドゥロ大統領に対する地域の圧力が強まる中、OASのベネズエラ代表は会議を「クーデター」と非難し、席を蹴って会議場を後にした。

常設理事会の緊急会合は、マドゥロ政権下での民主制崩壊への懸念から、米国を含む20カ国の求めで開催された。

ベネズエラ最高裁は1日、国内外から非難の声が上がる中、野党が多数派を占める国会の権限を事実上停止した決定を取り消した。

OASのアルマグロ事務総長は会合で、ベネズエラをOASから追放するよう求めた。そうなれば、マドゥロ大統領の孤立はさらに深まることになる。

また、OAS加盟国は圧力手段として、ベネズエラに個別に制裁を科すことができる。

3日の会合はいったんキャンセルされたが、マドゥロ大統領に近い議長国ボリビアの反対にもかかわらず、ホンジュラスを議長国として午後に協議を開始した。

ベネズエラ代表は「会合の開催は不法だ。われわれはこれを拒否し、全世界に訴える。OASで起きていることはクーデターだ」と述べた。

会合では、ベネズエラに対し、国会の権限を完全に回復し、憲法に基づく法の支配と民主主義の実践による民主制の回復を求める決議が採択された。【4月4日 ロイター】
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孤立し、経済的苦境にあるベネズエラを支えているのが中国です。

****中国がベネズエラへの支援を続けるワケ****
いずれマドゥーロ政権は交代するので、中国はベネズエラへの支援を止めたほうが賢明であると、ベネズエラEl Nacional紙のダニエル・ロドリゲス氏が、2月15日付ニューヨーク・タイムズ紙で述べています。その要旨は次の通りです。
 
昨年、ベネズエラは、資産売却や輸入削減等、数々の犠牲を払って100億ドルに及ぶ国債等の利払いを行い、デフォルトを回避した。

しかし、それだけでは十分ではなく、中国の資金的支援が不可欠である。マドゥーロの政策が国際的孤立と人道的危機を招きながら、また、中国への石油による債務返済が滞るなかで、なぜ、中国は忍耐強くマドゥーロを支援し続けるのであろうか。
 
ベネズエラは、2001年に中国の「戦略的開発パートナー」となり、2014年には「包括的戦略パートナー」に格上げされた。

それ以来、中国は石油による返済を条件に600億ドルの融資を行い、600件以上の投資プロジェクトに出資している。

その見返りとして、中国企業はベネズエラ市場で優遇され、利益の上がるインフラ投資コンセッションを獲得している。中国からベネズエラへの輸出は、1999年の1億ドルから2014年には57億ドルに増加した。
 
中国がグローバルな役割を拡大しようとした際、ベネズエラとの同盟は、この地域に関与するための重要な足がかりを提供するものであった。

ベネズエラと同国の石油支援に依存する域内国の支援を得て、中国は素早く地域の主要なプレイヤーに成り上がり、米国を排除した金融機関や新たなパートナーシップを急増させ、台湾を制してOASのオブザーバー・ステイタスを獲得した。
 
原油価格の下落を受けて、ベネズエラの寛大な石油政策は過去のものとなったが、2014年に、中国が40億ドルの石油関係借款を供与し、翌年マドゥーロの訪中の際に多くの投資プロジェクトが発表されて以来、中国は、ベネズエラに恒常的に資金協力を行っている。
最近では国有石油会社に22億ドルの融資枠を提供し、食料や医薬品の配給のための数千台の車両を提供した。

反政府指導者は、政権が交代した場合、この借金はいったいどうなるのかとして中国に対し憤慨している。反政府派は、貸付条件が公表されずに承認された融資協定は無効であると主張している。
 
問題は単に債務だけではなく、反政府派が政権を取れば中国はベネズエラ市場やインフラ・プロジェクトから締め出されるリスクがある。それは、中国がカダフィに肩入れしたリビアで実際に起ったことである。ベネズエラでも、昨年12月の略奪騒動では中国人が経営する店がターゲットとなった。
 
今や中国がベネズエラを見捨てる時である。今日、マドゥーロを支持しているのは15%に過ぎないが、中国の支援がある限りマドゥーロ政権は生きながらえ、ベネズエラの苦しみは続く。

これを変えるためには、マドゥーロ支持派と折り合うことが不可能にならないよう、反対派が一致して妥協的なメッセージを送ること、そして、中国が腐敗した無能な政権を見放すことであろう。【3月20日 WEDGE】
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【WEDGE】は、上記ダニエル・ロドリゲス氏の主張に対し、以下のように論評しています。

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記事は、中国にマドゥーロ政権を見捨てるように呼びかけていますが、このままでは、2018年の大統領選挙で果たしてスムーズな政権交代が起こるのかも怪しいです。

トランプがTPPを廃棄し、メキシコと事を構える状況の中で、中南米では、中国は、「棚ぼた」的な勝利者であり、むしろ、この時とばかり同地域における影響力拡大に乗り出しています。

27億ドルの新たな投資案件
ベネズエラについては、石油価格が持ち直せば同国の利用価値は依然として大きく、中国は、つい最近、2月14日のハイレベル協議ではベネズエラ石油用の精油所の建設を含む22件、27億ドルの投資案件を約束しました。(後略)
【同上】
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ただ、昨今の状況を見れば、マドゥロ政権が極めて不安定な状況に追い込まれていることは明らかであり、債権国・中国もそのあたりのリスクを注視していることと思われます。

中国との契約は「借金の返済を原油で支払う」ということになっており、原油価格が下落すると債務返済に当てる原油量が膨らみます。

“インフレ率が800%に達し慢性的なドル不足状態にあるベネズエラ政府は、原油生産を続けるのに必要な契約の一部支払いができなくなっている。これにより原油生産量は過去13年で最低水準に落ち込んでおり、中国政府は「融資の返済としての輸入(未返済金額は約200億ドル)が滞るのではないか」と気が気でない。

このような状況を前にして、中国政府はベネズエラとの戦略的パートナーシップという方針を転換しつつある。(後略)”【12月16日 藤 和彦氏“歴史的減産合意でも産油国を待ち受ける「茨の道」” JB Press】


今後の中国の対応が、マドゥロ政権存続のカギとなっていますが、中国はベネズエラ国内の反政府運動の行方を見極めながら対応していくと思われます。

その国内の反政府運動については、野党側は今日20日にもデモ実施を呼び掛けていましたが、どうなったのでしょうか・・・・。
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